映画制作裏話ブログ

映画制作裏話をかき集め作品ごとに整理したブログです。mixi「独身社会人映画ファンコミニティ」のログ集!

伝記と映画比較「アビエイター」

2005年03月30日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
 テキサス州ヒューストンで名家に生まれたハワード・ヒューズは、
1924 年に19歳の若さで自身の帝国の基礎を築きます。
彼はもともとテキサスの裕福な家庭に生まれましたが、
両親の相次ぐ死により“お金持ちの孤児”になります。
ドラマの決まりごとのように彼の周りには遺産目当ての親族が群がりますが、
法廷で争い、ハワードは顧問弁護士に自身の権利を買い上げさせ、
父の会社ヒューズ・ツール・カンパニーが製造した石油掘削器の特許権継承に
成功します。

原作「ハワード・ヒューズ」は訳者によると、
“公式には映画「アビエイター」の原作とは呼べない“
ことになっているのだそうです。
原作本は、故人の財団と著作内容について激しく法廷で争い、
なんとか勝利を勝ち取って出版にこぎつけたといういわくつきのものです。
この裏の事情と、さらに映画そのものが多くの追加取材を経て脚色されたため、
そのような体裁となっているのでしょう。

ハワードは学校を7度も転校し、遺産争い後、すぐさま実業界に入ったため、
大学は一年の一学期を通っただけです。
映画の冒頭で、のちのトラウマを髣髴させる母親とのエピソードが出てきますが、
原作では父親との関係が描写の大半を占め、
母親のことはほとんど触れられていません。

映画に出てくるような神経症の兆候が幼年時代に伏線のある話である、
ということはもちろん、成長後、服を脱いで燃やしたりというあからさまな奇行
についてもほとんど出てきません。
それらは他のヒューズ伝説にお決まりのように登場する逸話ですが、
精神衰弱等の正規の医学的診断をくだされたという記録が無いので、
(故人の財団が証拠隠滅したのかもしれませんが)
伝記より排除されたものと推測できます。
(裏取引で、病気遍歴には触れないことになっていたのかも)

ヒューストンの故郷では、父親は「ビッグ・ハワード」、
息子であるハワード・ヒューズ本人は「リトル・ハワード」
あるいは「ジュニア」のニックネームで呼ばれていましたが、
ハワードは「リトル」「ジュニア」と呼ばれることが嫌いで、
家督を継いだあとは、自分をハワードと呼ぶよう周辺の人たちに繰り返し
要望していたようです。
レオナルド・ディカプリオの最初の登場場面でも、
「ジュニア」と声をかけられて「ハワードだ」と訂正するセリフがありますが、
これはそのような事情によるものです。

父親はテキサスの油田開発時代に岩盤を貫く強度のあるドリルの開発に成功しましたが、
掘削機のそのものの販売はせず、パテントをとって機器リースで巨万の富を得ました。
当時としてはとてもユニークなビジネスの展開方法でしたが、
すばやい資金調達と機器の製造とメンテナンスのための工場の整備、
それをリースする営業システムの同時開発に成功したのですね。
単なる技術屋でなく商才にもたけていました。
ハワードは父と対比されることを嫌がりましたが、
結果とてその経営センスを大いに学びヒューズ財団の帝王学のベースとなっています。

飛行機に興味を持ったのは14歳のころです。
父親にせがんで水上飛行機に乗る機会をもらったことが始まりです。
この時代、飛行機といえば複葉機でしたが、
父は、息子がバイクに乗りたいといえばバイクを与え、
飛行機に乗りたいと言えば乗せ、望むものは何でも与えました。
“実践的帝王学”自分で体験して初めて身に付くのだ、という哲学を
持っていた人です。
大変な遊び人で、ハワードは会社と一緒に法外な請求書の山を相続しています。
はじめて飛んだ彼はたちまち飛行機の魅力に取り付かれたようです。
ハワードはハム無線機の自作と飛行機に夢中になりました。
家督を継いだ直後、大叔母といとこたちとともに世界一周の旅に出ていますが、
どうやって老人を説き伏せたのか、イギリス海峡横断に、
飛行機旅行で出てかけています。

1925 年 6 月 1 日に、彼はヒューストン社交界の花エラ・ライスと結婚しています。
改革者でプレイボーイの彼がどうして旧家の娘と自ら望んで結婚したかのか、
不思議といえば不思議です。
世間にはやく自分が一人前であることを誇示したかったのかもしれませんが、
既婚者であるという事実を手に入れると彼はたちまち美しくも退屈な田舎者の妻への
関心を失い、好きな事業と新しいガールフレンド作りに励み、
1930 年には離婚しています。
映画では触れられていませんがハワードは3 度の結婚歴があります。

 映画産業への興味は以前からあったが、実際にハリウッドへ進出したのは、
父が高くかっていた元映画スターのラルフ・グレイグスを何か支援してやってほしい、
という遺言から始まったことでした。
ハワードがラルフと会うと、彼は自分の暖めていた映画の構想を打ち明けます。
もらいっ子を育てる浮浪者のドラマは「スウェル・モーガン」といタイトルがついて
撮影が始まります。
ラルフが当初、「四万ドルもあれば」と言っていた制作費は、
倍の八万ドルに迫る勢いで膨れ上がりました。

完成した映画は内容的にも興行的にも失敗しました。
父の遺言を果たしヒューストンに帰るつもりでいたハワードが足を止めたのは、
親族の一言でした。
「だから言わぬことじゃない」

ハワードは負けん気を起こして2作目「芝居の世の中」に15万ドルをつぎ
込みました。
マーシャル・ニーラン監督のこの作品は、評論家たちにも好評で、
興行的にも1作目の失敗の穴埋めをして更に10万ドルの利益をもたらしています。
これに味をしめたハワードは映画会社キャドー・コーポレーションを設立、
マイストーン監督と契約し「美人国二人行脚」「暴力団」という
コメディとギャング映画の二つでさらに成功を収めました。
「美人国二人行脚」のスタジオに夜な夜なハワードが現れ、勝手にフィルムを
編集していることを知ったマイストーン監督は激怒しますが、
ハワードに「まあ、一緒にドライブでもしましょう」と誘われ、
160キロもの猛スピードで走られ、恐怖のあまり「分かったからもう止めてくれ」。
「美人国二人行脚」はアカデミー賞に輝いています。

そして一番好きな飛行機をテーマにした作品づくりにルーサー・リード監督を
パナマウント映画より招き企画を進めましたが、
シナリオ検討段階で配役や演出方針で衝突し、
自らメガホンを取ることとなります。
映画「アビエイター」でレオナルド・ディカプリオの初登場場面となる
『地獄の天使 (1930)』の製作はこうして始まりました。

やっかいなことにハリウッドの名匠ホークス監督がこの時すでに
映画史上に輝く航空映画の不朽の名作「暁の偵察」の製作に取り掛かっており、
ある朝、ハワードはホークスの自宅に押しかけると…

以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/pro-aviator.htmlにて脚本レビューの頁をご覧下さい。

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制作裏話「シャーク・テイル」

2005年03月29日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
元々この映画の原題名は“シャークスレイヤー sharkslayer 〔サメ殺し〕”だった
のですが、全米公開の一年前に製作総指揮のジェフリー・カッツェンバーグが
“家族向きでない“として、『シャーク・テイル(サメ物語)』と変更させて
います。

ギャングのサメたちにイタリア系の名前が付いていたり、
彼らの台詞の中にイタリア語が使われていたりと、極悪なサメたちのモデルは、
イタリアのマフィア・ファミリー。
それ対してにイタリア系の市民団体がイタリア人=マフィアというイメージを
広めているとしてブーイング。
ドリーム・ワークスに映画内のそういう箇所を削除することなどを求めているという話を
聞いています。

フグのサイクス(声:マーティン・スコセッシ)がオーナーのクジラの洗鯨場
“ホエール・ウォッシュ”で働くホンソメワケベラのオスカーは、
(声:ウィル・スミス)日々クジラの口の中を洗っている。
歌ったり踊ったりしながら働く毎日、
いつかは金持ちになりリーフシティのトップに住むことを、オスカーは夢見ている。
人気者だが調子いいオスカーはトラブル続き、
好意を寄せるエンゼル・フィッシュのアンジー(声:レニー・ゼルウィガー)は
いつもハラハラ。

一方、大ボス鮫ドン・リノ(声:ロバート・デ・ニーロ)の
息子レニー(声:ジャック・ブラック)はベジタリアンの優しいサメで、
ドン・リノや乱暴者の兄フランキー(声:マイケル・インペリオリ)に
いつもハッパをかけられている。


 オスカーはフランキーとレニーに出くわす。
タフ・ガイなフランキーは殺し方をレニーに教えることになっている。
オスカーは、フランキーに狙われるが、
フランキーは大きなイカリに刺さって死んでしまう。
その次第を見た二匹のクラゲは、オスカーが殺したものと勘違い。
その機に乗じてオスカーは、“シャーク・キラーのオスカー”と名乗り始める。
魚仲間たちはオスカーの話を丸ごとすっかり鵜呑みにし、
嘘をついたおかげでオスカーは意外にもヒーローとなり、念願の名声と富を手に入れるのだが…。


この作品のウリはなんと言っても声のキャストです。
オスカー役のウィル・スミス
『アリ (2002) 』< 2002 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『アイ,ロボット(2004)』、先日地上波で放送があった「メン・イン・ブラック」シリーズ
で知られていますが、オスカーは、早口の小さな底魚という設定です。
底魚(そこうお)というのは、海底または海底に近い所にすむ魚のことで、
カレイ・ヒラメ・タラ・アンコウなどを言います。底棲魚とか、沈み魚などとも呼びます。
底魚という意味の英語bottom feeder/ bottom fish には、
最下層民、ゴミ漁り(のような連中)、
低俗な本能に訴える人という意味があるんだそうです。
彼は、リーフシティのスラム街に下宿し、
シティの天井にそびえる高級住宅のビルを見上げ、
「いつかあそこに住んでやる」などとアンジーに語る場面があります。

この映画の中では一番の悪役ドン・リノには、ロバート・デ・ニーロ。
言わずと知れた代表作は 『 レイジング・ブル (1980)』
<1981 年アカデミー主演男優賞受賞>『未来世紀ブラジル (1985) 』
『レナードの朝 (1990)』< 1991 年アカデミー主演男優賞ノミネート>
『RONIN (1998) 』と。
ホオジロザメ一味は、海底に沈没した客船に住んでいます。
劇中ではこの船は「タイタニック」と呼ばれてますけど、
本当に北大西洋のタイタニックという設定かどうかわかんないです。
ドン・リノの頬には、声を務めるロバート・デ・ニーロのようなアザがあります。

アンジー役のレニー・ゼルウィガーは『ブリジット・ジョーンズの日記 (2001) 』
< 2002 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
『シカゴ (2002)』< 2003 年アカデミー主演女優賞ノミネート>
『コールド マウンテン (2003) 』< 2004 年アカデミー助演女優賞ノミネート>
のあのレニー・ゼルウィガーなのですが、
アンジーはエンゼル・フィッシュという設定ですね、別の魚かと思ったけど。
これはルックスというより、取るに足らない魚のオスカーを愛し、
インチキヒーローを演じているオスカーを見て心底心配する、
本当にエンゼル〔天使〕のような存在である、というところから
きているのでしょう。

レニー役のジャック・ブラックは『スクール・オブ・ロック (2003) 』
の教師役で一躍売り出した(?)人ですが、
映画の中盤、捕食生活から完全にドロップアウトし、
隠遁生活であっというまに下腹が出てるのですが、
ひれは当人をモデルにしたと言われて、「そんなに出てないよ」と不満げだったとか。

ドン・ファインバーグという初老のホオジロザメ役で“刑事コロンボ”の
ピーター・フォーク が声を聞かせていますが、
日本のファンは吹き替え版しか知らないので、わかんなくて当然ですね。

『タクシードライバー (1976)』< 1976 年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞>
『ギャング・オブ・ニューヨーク (2001)』< 2003年アカデミー監督賞ノミネート>
『アビエイター (2004)』等の監督で知られるマーティン・スコセッシが
オスカーの雇い主サイクス役で登場しています。
太い眉毛がマーティン・スコセッシ監督にそっくりです。
熱い空気で膨らむフグ puffer fish 〔ハリセンボン porcupine fishっぽく見えるけど〕。
この魚は “ホエイル・ウォッシュ〔クジラ洗い〕社”のオーナーなのですが、
金貸しもしているとか、なんか怪しいやつですね。

『17歳のカルテ (1999) 』<2000 年アカデミー助演女優賞受賞>
『トゥームレイダー2 (2003)』『アレキサンダー (2004)』の
アンジェリーナ・ジョリーが演ずるローラというお魚は…



以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-sharktale.htmlにて脚本レビューの頁をご覧下さい。

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脚本レビュー「ギャング・オブ・ニューヨーク」

2005年03月24日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
「”ギャング”という言葉は100年前のニューヨークで生まれたのだ」
という知られざるアメリカ史の映画ですので、
情報量が多く日本人にはドラマの背景が掴めるまで結構時間が掛かります。  
雑多な移民の上陸港ニューヨークは、
それぞれの勢力毎に組(ギャング)を組織していて、表立っては 
自警消防団を結成活動していたのですが、
実態は地回りヤクザ集団で、ローカル政治家と金や仕事で 
繋がりがあり、特に勢力の大きかったネイティブ・アメリカンズと
アイルランド移民の対立は深刻だった様です。 

今日も消防関係者にアイルランド系が多いのは、
この時代からの流れを汲んでいるためです。 

この作品がニューヨークテロで公開が延期されていたのは、 
実際にプロダクトがテロの被害を受けたと言うことと、 
アイルランド系消防団を”ギャングのご先祖”と言いきってしまったため、
公開がはばかられた 
という事情があったのでしょう。 
映画ではアイルランド系が黒人と共闘を組んでおきながら、 
暴動場面では平然とぶちのめすところとか、 
ネイティブ・アメリカンズにこびを売るチャイナ華僑とか、 
選挙運動で、候補者同士がギャングをけしかけて相手陣営を腕づくで潰すとか、 
もう何でもありの世界です。  

120億円以上をつぎ込み、CGを排したライブ志向の撮影だそうで、 
だだっ広いセットに一杯のエキストラを使ったモブシーンがやたら多いです。 
でもCGも幾らでもあって、更に航空写真くらいの高度から眺めた街や、
港などが出てきます。 
ビル、アムステルダム、ジェニーがいずれも多面性のある人物で、
容易に感情移入を許しません。 
なじみのない時代背景とあわせて、作品をとっつき難くしています。  

ビルはビル・ザ・ブッチャーの名の通り本業は肉屋で、肉切り包丁で戦います。 
実在の人物だそうで、銃で撃たれてなおも敵を切り殺したと言うおっかない奴です。 
ダニエル・デイ=ルイスの名演により、
マクベスのような憂鬱な側面も持つ怪人になっています。 
孤児のジェニーを拾って育てる優しさもありながら、 
彼女が大人になると迷いもなく抱き、抱いておきながら娘として扱うアナーキーな男 
(スコセッシ監督の弁)という設定ですが、
むしろ時代のカオス(混沌)そのものを具現した 
人物じゃないかと見ました。  

9.11テロのおかげてホストプロダクション期間が長引き、 
十二分に編集が重ねられてますので、
大作でありながら過去のスコセッシ作品のような 
ドラマ的破綻はありません。大河ドラマとしてうまいこと完結しています。 
けど暴力肯定か、反対なのか、わかんないですけどね。 

エネルギッシュさが出ていれば良いわけで、批評はなしよ、という撮り方ですが、 
今日それでイイのかな、とは思いますね。 
モラルの問題でなくて映画的価値観テーマの話です。 
善悪無用と言うのは、もう古いんでないですか。 
ただラストの艦砲射撃で、
親父達が組(ギャング)の大儀の為に、「男」をかけて戦ったのとは 
時代が違ってしまっているところがセリフではなく、
スペクタクルとして 歴然と出ているところは良かったです。 
歴史ドラマの部分が重厚にまとめられている分、 
恋愛の方はついでの背景に押しやられてますね。 
あれはどう考えてもラブストーリーではないです。  

最後のU2の曲の歌詞は良かったです。
字幕のバックに現代のニューヨークのストリートの喧騒が聞こえてきます。 
なるほどね、いい編集です。

レオナルド・デュカプリオ扮するアムステルダムと、
キャメロン・ディアスのジェニー…

以下はネタバレになるので、この続きは<http://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-gony.html
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製作裏話「ウインドトーカーズ」

2005年03月20日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
 ナバホ族出身者が
コード・トーカーとして活躍したという逸話が
映画企画として映画会社に持ち込まれた時、
プロデューサー達は「優れたドキュメンタリーにはなるが、
エンターテイメントにはならないだろう」と感じたといいます。

 それが脚本を練る段階で、
コード・トーカーには護衛がついており、
彼等の勤めは
実は人命救助より機密保持が優先され、
追い詰められればただちに死刑執行人に早変わりするという事実が
クローズアップされ、
護衛役の苦悩を描けばドラマが成立する
見通しがたった時点で、
本格的な制作ゴーサインが出た様です。

 オファーをうけたジョン・ウーは脚本の準備校を一読、
感激して演出を引き受けたとインタビューで語っています。
 エンダーズ(ニコラス・ケイジ)はイタリア移民という
設定になっています。
ジョン・ウー自身を反映する役柄ではありませんか。

 一億二千万ドルの巨費を投じた戦闘シーンは…

以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-wito.htmlにて脚本レビューの頁をご覧下さい。

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製作裏話「グラディエーター」

2005年03月18日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
「グラディエーター」は
「プレードランナー」「エイリアン「ブラックレイン」等独特の世界観で、
知られるリドリー・スコット監督が一億ドルの制作費と五年の構想を経て、
発表した大作です。
「L.A.コンフィデンシャル」のラッセル・クロウが、主演してます。

ローマの英雄マキシマス将軍は、
新皇帝コモドゥスが実の父である先代皇帝を暗殺したことを見破ってしまったが故に
命を狙われる。
妻子を殺され故郷を追われ、行き倒れのマキシマスは、
奴隷商人に拾われ剣闘士グラディエーターに売り飛ばされてしまう。

凡愚で冷酷な皇帝コモドゥスは、政治の退廃から臣民の目を逸らすためコロッセウムを再建、
帝国全土から集めた剣闘士達を闘わせる。
くしくもローマにやってきた剣闘士達の中にマキシマスの姿があった。
コモドゥスはマキシマスが生き延びてグラディエーターとなって再び現れたことに驚くが、
コロッセウムに弓矢を放つ戦車や猛獣を送り込み、ショーのさなかにマキシマス殺害を企てるーー。

とまあ「ベンハー」「スパルタス」張りの内容を最新のCG技術を駆使して
バーチャルリアリティのローマ帝国に観客をいざなう映画です。
ストーリーの方は、かなり無理があるのですが、
映画冒頭のローマ軍とガリヤ人の戦争などアクションシーの迫力は大したものです。
皇帝コモドゥスは実在しましたが、マキシマスは創作された人物です。
コロッセウムの復興で臣民の目をたばかったのは史実のようです。

元老院での造反組がマキシマスを誘って、反乱を起こそうとしてコモドゥスに潰されます。
コモドゥスはマキシマスとの最終的な決着にあえてコロッセウムで一対一で闘う道を選びます。

映画を見た人たちの中では、
この展開に賛否両論で、反乱軍と皇帝軍が派手に闘ってから、
最後に決闘すればいいじゃないという、それなりに説得力がある意見も出ました。

この映画は「ベンハー」の様に見えて実は「マトリックス」寄りのお話なのではないか。
格闘技をする会場のことを「アリーナ」と呼ぶそうだけど、そのアリーナの元の意味は「砂」だとか。
かろうじて、マキシマスが戦いの前に土を握ることで、これは人間と人間の戦いなんだと確認していた。

マキシマスは死…

以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-gladiator.htmlにて脚本レビューの頁をご覧下さい。

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製作裏話「大統領の理髪師」

2005年03月10日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
「大統領の理髪師」の監督イム・チャンサンは公団の勤め人でしたが、
映画界への情熱を捨てきれず、
親子の縁を切ると怒る、両親の反対を押し切って
映画学校に入り、この「大統領の理髪師」で長編デビューしています。
彼が選んだテーマは、父親の時代。
60年の不正選挙により大統領になった李政権が
クーデターにより朴政権の軍事政権に取って代わられ、
79年にテロで朴が倒れるまでの
約20年間が舞台です。
韓国はベトナムへも参戦し、民主主義が弾圧されつつも、
高度経済成長を成し遂げるなど矛盾と混乱に満ちた時代でした。
この時代を正面から取り上げた映画、ドラマは韓国でもほとんどないそうです。
物語ることのはばかられることの多い時代だったのです。
韓国の大衆もこの時代を振り返ることに興味を持つことはなく、
時のかなたに忘れ去られようとしていました。

そして現在、イケメン若手スターたちの華やかな“韓流”ブーム下にあって、
一方で「シルミド」「ブラザーフッド」「殺人の追憶」等のタブーへの挑戦を
試みる作品も作られるようになりました。
この作品もそうした流れの中の一本であろうと思われますが、
軍人や政治家を主人公にするのではなく、
権力者のすぐそばにあって、何気なく忘れ去られたような庶民のひと家族を
主人公に
政治混乱期を過ごした平凡で愛情深い父親たちの世代を優しく描き出しています。

「大統領の理髪師」を監督したイム・チャンサンは小津安二郎に心酔しており、
多大の影響を受けたとインタビューに答えています。
なるほど、決してカメラアングルの物まね等はしていないのですが、
「大統領の理髪師」の根底にあるヒューマニズムは小津作品の流れを汲むものであろうと納得できます。
売れっ子スターであるソン・ガンホが新人の自分の作品に主演してくれるかどうか大変心配したとも言っていますが、
ソン・ガンホは、イム・チャンサンが書いた脚本がたいそう気に入り、
自らムン・ソリを食事に誘って共演してほしいと口説いたそうです。

ムン・ソリはソン・ガンホとは電話ひとつで食事にでかけるほど
親しい間柄ではなかったと打ち明けています。
球場で野球を観戦中に電話があり、途中で切り上げて会ったそうです。
ムン・ソリはソン・ガンホを俳優として尊敬しており、
妻役に是非と乞われて快諾しています。
また息子役のイ・ジェウンを「感の良い子がいる」と推薦したのも
ソン・ガンホだそうです。
イ・ジェウンは「殺人の追憶」の冒頭に登場しています。
ソン・ガンホはよほどこの作品が気に入ったのでしょう。

大泣きして“感動した”と叫ぶ作品ではありませんが、
ラストで父と子が青空の下、言葉を忘れて微笑みを交わす、
その幸福感は何ものにもかえがたいものがあります。

1960年代の韓国、
軍事政権による圧政の時代
大統領のお膝元、孝子洞で平凡な床屋を営む
ソン・ハンモ(ソン・ガンホ 「JSA」「殺人の追憶」)はある日突然、
大統領の専属理髪師に指名される。
ごく普通に生きてきたはずの親子3人が激動の歴史に翻弄される姿を、
時にコミカルに、時に感動的に描いた作品です。
韓国では200万人を超える大ヒットを記録しました。

小心者の夫を支えるしっかり者の女房に、
『オアシス』の演技で02年ベネチア映画祭新人俳優賞を受賞した
ムン・ソリ、
また「冬のソナタ」のヨンゴク役のリュ・スンスが脇を固めています。
監督は今回長編初監督となるイム・チャンサンです。

父の名はソン・ハンモ(ソン・ガンホ)。
“豆腐一丁”の“一丁” (ハンモ)と同じ発音なので、
住んでいる孝子洞(ヒョジャ町)では“豆腐一丁”のあだ名が付いています。

父は普通の理髪師で、我が家は普通の理髪店を営んでいました。
近所の人たちと同様、孝子洞が大統領官邸、青瓦台のお膝元であることに誇りを
持っていました。
政府を無条件に信じていた父たちは1960年3月15日の不正選挙に加担し、
対抗票を袋に詰めて山の中に埋めました。
新米の助手だった母のキム・ミンジャ(ムン・ソリ)を無理やり口説き、
妊娠5か月になった母が結婚を拒んだときも、
政府の四捨五入原則を当てはめて説き伏せました。
父は僕の長寿を願ってナガン(楽安)と名づけましたが、
「かっこわるい」と嫌がって母はますます泣いたのでした。

 僕が生まれた4月19日は、不正選挙に怒った学生デモ隊が通りに溢れていました。
産気づいた母を荷車に乗せて銃弾に怯えながら病院へ向かった父は、
白衣のせいで医者と間違えられ、負傷した学生たちも一緒に運ぶ羽目になりました。

ハンモが投票袋を穴に埋めてしまうくだりも深刻さはなく、
町の大統領のシンパたちと夜の食堂で盛り上がってそのままのノリで不正に加担します。
無知無学この上ない振る舞いです。
可笑しいのが不正のやり方そのもので、
昔の日本の不正選挙は
買収相手の名を投票したり、
白紙の紙を投票箱に投げ込んで、もらった投票用紙を人に渡すなどの手段が取られていたものですが、
韓国の場合は、開票場に手先がいて、敵対候補の投票用紙を食べてしまったり、
穴に埋めてしまったりと大胆というか、おおらかです。笑

産気づいて七転八倒するミンジャをリアカーに乗せてハンモが町へ飛び出すと、
デモ学生と警察の激突に巻き込まれて大騒動。
撃たれて血まみれの学生がリアカーに担ぎこまれて白衣のハンモに「先生助けて」
「違う、俺は床屋だ。これは理髪師の白衣だ」。
わけ分からなくなってリアカーでぐるぐる回りだすハンモの姿が可笑しい、可笑しい。

 そんなある日、父の運命を変える男、チャン・ヒョクス(ソン・ピョンホ)が
店を訪れました。
彼は中央情報部の関係者だと称し…



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脚本レビュー「I am sam アイ・アム・サム」

2005年03月04日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
「I am sam アイ・アム・サム」の監督のジェシー・ネルソンと言う人は舞台女優をやっていた人で、食えない役者時代のウエイトレス経験をもとに脚本を執筆したのが映画界との関わるきっかけだったそうですがその時、映画製作における脚本家の権限の低さに驚き、監督術を学び、本作では制作・脚本・監督の三役で活躍しています。ライターとしてはジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン主演、クリス・コロンバス監督の『グッドナイト・ムーン』、ロブ・ライナー監督、ブルース・ウィリス、ミシェル・ファイファーが主演の『ストーリー・オブ・ラブ』等を執筆しています。年齢は判らないのですが(女性はプロフィールに歳の無い人が多い)才能のある人が良い役者を得てヒット作を世に送り出すと言うことは、まだまだ男性上位のハリウッドにおいて、結構なことだと思います。

ハリウッド映画にしては物を食べるシーンがとても多かったです。
“消えもの“を扱うことは本当に珍しいと思います。ブラピやトム・クルーズが物食ってるシーンなぞおよそ見たこと無いのですが、(酒飲んでるシーンとかはある。テーブルの上にご馳走が並んでいても口もぐもぐのシーンはまず無い。)、ミシェル・ファイファーもショーン・ペンも本作では実によく食べてます。それもファミレスとかピザやヌードルのアウトレットとか安物ばっかし。 ^_^;  ミシェル・ファイファーが自宅のキッチンでマシュマロをほお張る場面は、テーマにも関わる重要なシーンです。
おなじテーブルで一緒に食卓を囲むのが“家族”というものです。

ホームレスの母親は女の赤ん坊を出産後、すがたを消し、以降7歳になるまでルーシーはサム(ショーン・ペン)によって育てられています。
彼の知性が7歳ならば、赤ん坊をおしめがとれるまで育てること自体不可能な筈です。夜昼構わず2時間おきに授乳が必要で、快・不快の意志を伝えることが出来ず泣くか笑うかするしかない赤ん坊を育てることは容易ならぬことです。
リアリティでこの作品を評価するなら、最初の10分ほどで落第点。
しかし、映画と言うものはドキュメンタリーでは、もともとありません。
現実の断面を切り取り、創作することで人生なり社会なりの真実に迫るものです。
7歳のルーシー(ダコタ・ファニング)は父親との蜜月の時代を終えて、社会と向き合う様になります。
そこで自分の父親が…

続きはネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-sam.htmlにて脚本レビューの頁をご覧下さい。

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