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移転しました(2014/1/1)

火怨・北の英雄 アテルイ伝(NHK)

2013-01-14 | ヒストリ:オール

なんかえねーちけーの回しもんのようになってきた。笑。
  
高橋克彦の蝦夷何部作のひとつ。
なんてか、どう数えていいのか…^^;今の段階だと蝦夷4部作かな。
『炎立つ』(平泉/平安)、『火怨』(アテルイ/奈良)、『天を衝く』(九戸政実/安土桃山)、『風の陣』(伊治公呰麻呂、道嶋嶋足/奈良)で、その2作目。
 
高橋克彦は大好きな作家のひとりですが(公認ファンクラブに入ろうと資料請求した事がある)、この何部作で真実面白いと思ったのは『炎立つ』だけだわ。
『天を衝く』は最後までは読んだ。
『火怨』は途中で読むのを止め、『風の陣』は10年待たせた挙句最終巻のあの内容。
…うん…この人は現代もののミステリの方が面白いと思う。 
歴史小説であるので全て東北側の敗北に物語が帰着するという結末が分かっているのだけれど、あまりにもワンパターンに嵌り過ぎているというか。あーうん。そうだよね、朝廷に金ばらまくんだよね、的な^^;
読み過ぎてちょっと飽きたのかもしれない…

で。
『火怨』ですが、BS時代劇と言う事でBSでの放送です。全4回。
NHK総合の方では全2回で放送(3月)と聞いたので全部放送されるのか分からず、総集編的なものが放送だったら悲しいのでとりあえず見ることに。
BSだとこのブログを御覧の方でも見ている人が少ないのではないかと思われますが…
わざわざチャンネル合わせてまで見る人が多いとはあまり思えない^^;
つーかおま、暫く近代て言ったやないかー!(笑)
 

 


●舞台と時代
舞台は岩手県です。
奥州市水沢とか胆沢郡の辺り(の辺り)が中心になります。
岩手という辺りでピンとくると思いますが、このドラマの作製も被災地応援の一環だそうです。(宮城の話もしてあげて…)

第1回で伊治公呰麻呂(これはるのきみあざまろ)が蜂起しました。
「伊治公呰麻呂の乱」と言われる蜂起ですが、これが780年なので今から1233年前の話。
前九年の役が起ったのが1051年で、そこからさらに271年前、奈良時代の話になります。
鳴くよ(794)うぐいす平安京なので平安遷都のちょっと前、桓武天皇の時代の話。 
ただこの時代のこの話、史料が『続日本紀』ともうひとつ位で分からないことばかりだと思うんだよね。
小説を書くのも本当に大変だったと思うけど、映像となるともっと大変だと思う。

ドラマを見ていて驚いたのだけれど、蝦夷の人々の住まいが 竪穴式住居 でござった…
いや、ちょっとびっくりしたんだけどどうなんだ。
でも当時あの辺りは辺境だからなー(当時国の北限が岩手の南部辺り)。
今の感覚で言うと地続きの外国。
それに竪穴式住居自体も平安時代ぐらいまではあったようだし。
多分『日本書紀』の形容を引いているのではないかと思うのだけれど…
『炎立つ』の時もそうだったけど、衣装なんかもあちらこちらオリジナリティ溢れる感じになってますな。

ちなみに当時岩手の辺りが国の北限と上で書きました。
東北の事を「陸奥」とも言います。「むつ」と読むけど「みちのく」とも読む。みちのくナントカ旅とか言いますが。
元々陸の奥(みちのおく)が語源になっている。
道の奥にある国、それが陸奥だった。
 
●時代背景
一般的には昨年の大河ドラマよりも遥かに馴染みがない時期で土地の歴史だと思うのだけど、あれだけ見てもよく分からない人も多いんじゃないかとは思います。
当時の朝廷と蝦夷の関係といった時代的な背景とか。
まあそれを言い出すとドラマは進まないのだけれど。
 
このドラマの中の蝦夷(えみし)というのは九州における熊襲(くまそ)と同じで、朝廷の政治や文化に服従しない人々、という意味。
同じ字で「えぞ」とも読みますが、これは近世以降じゃないかと思う。
江戸時代ではアイヌ、または地名(北海道)のことか。
本来は「勇者」とか「強い人」といった意味があったようで”蘇我蝦夷”と人名に使われていたりもするけれど、おおむね蔑称です。
 
蝦夷にも種類があって、朝廷に恭順・服従した人々を熟蝦夷(にきえびす)、逆に抵抗する人々を荒蝦夷(あらえびす)と言った。
ただ前者は「俘囚(ふしゅう)」という言い方の方が一般的かな。
後者は「まつろわぬ人々」と表現されたりします。

●時代背景2
平和に暮らしていた蝦夷を朝廷が追い詰めていくというドラマでしたが、これは当時突然始まった話ではありませんでした。
時代的には天智天皇の辺りからだと思う。大体100年くらい前からそういう動きがあった。

ただこれ、力を以て恭順させるというのでは無く、基本的には懐柔策を取るんです。
地理的に南から北へと朝廷の手は伸びていくわけで、その先々で「柵」が作られる。
柵、城柵のことですが、これは基本的には軍事施設ではなくて行政施設であったらしい。
 

 
この図からも分かりますが、時代が下るに従い朝廷の支配が及ぶ範囲が北上しています。
今回のドラマではアテルイたちの住む土地に柵を作るからお前らどっか行けという流れだったけれど、要するにそこにお役所を作るから立ち退けという話です。

ちなみにアテルイらの住む土地、胆沢の辺りですが衣川柵のほんの少し北方になります。
後に鎮守府(胆沢城)が置かれた所ですが、これはアテルイと坂上田村麻呂の戦の後なのでまだ作られていない。



で、ドラマの中で先頭に立ってアテルイたちを説得しようとしていたのが伊治公呰麻呂。
呰麻呂は上記の俘囚、朝廷に恭順した蝦夷で、伊治は今の宮城県栗原市の辺り。
この方、朝廷に恭順し国衙に出仕して出世しています。
陸奥国按察使(あぜち)であった紀広純からも信頼されていたようですが、同じ俘囚出身の同僚からうけた侮りに堪えかねて大乱を起こしたとされています。
その際に呰麻呂はこの同僚と紀広純を殺害している。
ただその蜂起の後消息不明でどうなったか分からんのだよ。
多分死なずに逃げのびたんだろうと言われている。
 
●時代背景3
当時東北の重要基地は多賀城です。
権限が大きくて東北における「遠の朝廷(とおのみかど)」と言われていた国衙になります。
九州の大宰府と同じ。


 
この多賀城には陸奥国府が置かれていました。
行政機関であり軍事行政機関でもあり、要するに陸奥国の政治と軍事を一手に握っていた。



それがどんどんこんな風に柵を北進させていくわけです。
何故かというと朝威を広く及ぼす…という事もあったと思うんですが、要するに税収を増やすためという理由が大きかったと思う。
 
当時人民支配の仕方として既に戸籍が使われています。
戸籍でどこに誰が住んでいるのかという管理をして、それを基に税をかけている。
陸奥国においては、
 
蝦夷を恭順させる=戸籍に載る人間が増える=税収が増える
 
そしてそれが更に陸奥国の国司(県知事みたいなもの)の成績になるんです。
蝦夷を朝廷の支配下に組み込むほど自分の勤務評定がアップする。
そら蝦夷懐柔に励むよね。
 

しかしそうした懐柔策にも靡かずNOをつきつけた蝦夷がアテルイになります。
元々土着していた人たちからするとまあ、迷惑な話以外の何物でもないよね。
いきなりやってきた人間に出て行けと言われた挙句、支配下に入れ、税を払えとなると。

しかも大和から来た人間にとってはあの辺りは未開の開拓地。
余所から移民を連れてきて米を作れるように開拓するんですけど、いやいやいや人住んどんねん。
開拓地でもなんでもないねん。
住む所を追われるのは深刻な問題です。
深刻な対立にならざるを得ない。
 
●母礼(モレ)=北村一輝


ノーマークだった(笑)
  
というかアテルイレビューがこのまま続くかどうかは不明です。
めんどくさかったら止める。 
 

>MVさん
御指摘ありがとうございました。ちょっとブログがお留守だったのでorz
展覧会いかがでしたか~?子規博なら同市某所(…)と違って見応えがありそうだな~と想像しつつ。
ピンポイントでそこだけなら本当に日帰りで行きたい感じですよねえ…
私の所からだと松山は色んな意味で微妙で。バスが一番便利なのですが夜行になるかどうかのはざかいですっごく中途半端。
それに料金的にも微妙で。高速バスが仙台まで5000円(最安値)なのに松山まで4500円(最安値)て何だろう(真顔)
こういう時は心底どこでもドアが欲しいと思います^^;



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4 Comments

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土地問題&水野の展覧会 (MV)
2013-01-14 13:27:25
いやいやお元気そうで安心しました。

>住む所を追われるのは深刻な問題です。
>深刻な対立にならざるを得ない。

ですねぇ。
これは古今東西ほんっと~に深刻です。
パレスチナなんかも、宗教問題のように思っている人が多いけど、結局はイスラエルがパレスチナ人を追い出して土地を奪ったのが根本ですもんね。
(だからユダヤ人入植地の維持や拡大が大問題になる。)

まあ、イスラエルの場合、土地に執着する心情も分かるんですが。
先日ヴェネツィアでゲットー(ヴェネツィアはゲットー発祥の地。現在でもシナゴーグがあります)を見て来ましたが、狭い区画に居住地が限定され、かつ高い建物が作れないために建物の一階層が非常に低い。普通なら4階建てになるような高さで6階建てにしていると思っていただけばいいかと。
同じヴェネツィアにあるムスリムのトルコ商館が大運河に面した立派な館であることを思うと、いかにトルコ商人は商品を搬入する都合上大運河に面した方がよく、金融業のユダヤにその必要はないとはいえ、ユダヤに対する風当たりのきつさが分かりますな。
宗教に寛容なヴェネツィアでこれとなると、他のヨーロッパでは推して知るべしでありましょう。

>ノーマークだった(笑)

あ、そうでしたか(笑)。
東北の蝦夷と北海道のアイヌの方々がどの程度近いのかよく知らないのですが、アイヌの方々は眼鼻立ちがくっきりしているので、北村さんがアテルイをやればいいのにと思ってました。
合いませんかね?

展覧会良かったですよ~。
一部屋だけの展示でしたが、水野の生涯がおおまかながらも一通りたどれるし、何といっても展示されているのが現物なので。
しかし、あの展示を2日計8時間も見たのは私ぐらいなものではありましょう(笑)。
欲を言えば、水野の主張や論理がどのようなものであったのかをもう少し詳しくしてほしい所でした。

学芸員の方と少し話してきましたが、常設展にするにはやはり水野は子規と直接の交流がないのがネックなのだそうで。ひ~ん。

ついでに同市某所のミュージアムでやっている企画展も見て来ましたが、ビデオ十数分を含めても20分ちょっとで出てきちゃいました。興味の範囲が違うとはいえ展示が残念すぎます……。

今回、ANAの飛行機&宿泊のネット販売で行ってきましたが、オフシーズンだと往復の飛行機プラスホテル1泊がJRの往復料金だけより安い(笑)。
ホテル代を引くと夜行の高速バスと同じくらいなんですが、飛行機の料金設定ってどう決まっているんでしょうねぇ?

しかし、松山まで飛行機使って行って、水野の展示会と水野のお墓参りと、ついでの某ミュージアムの企画展しか行ってない私って(笑)。
どこでもドア、ホントに誰か作ってほしいです~。
返信する
>MVさん (ヒジハラ)
2013-01-14 22:14:26
住む土地を追われるというのは、一番身近で切実な問題だったと思うんです。
要するに何もかもを奪われるという事ですし。
本当はその後にくる支配や宗教の問題の方が長期的には深刻だと思うのですが、そういった事も他者が入ってくることで始まる事でもありますし。
 
ユダヤに対する風当たり…
アル・パチーノがシャイロックを演じていた『ヴェニスの商人』を思い出さずにはいられませんねえ。
ああした差別は現代の日本人には理解しにくいですが、ドラマの主人公である蝦夷たちもあれに似た扱いを受けていたのかもしれません。
ただ対蝦夷政策の柱が懐柔策で、王化して自分たちの間に取り込んでいくいう辺りは西洋とは随分と違う日本的な所だと思います。
 
ノーマークでした…笑。
いやー笑いました。濃いです、相変わらず(笑) 役も濃い役が合いますねえ…
高橋克彦の主人公は無駄にやけどしそうに熱い主人公が多いので、やっぱり脇を固めている方がいいかもしれません^^; 色んな意味で(私が)見られなくなりそう(笑)
といいますか、アテルイも確か現時点では17、8歳位だったと思うんですよねー…エライ老けた青年で…(笑)
 
水野、一部屋の展示ですか。特別展とはいえあちらのメインは子規ですもんねえ。
これでほんの少しでも交流があれば…!
それだけが悔やまれますねえ。 
同市某所は…余程の事がないと私はもう行くこともないだろうと…^^;

しっかしどこに行くにしても一番高い交通費…
もう少し何とかならんかといつも思いますが、飛行機のプランは本当に謎です。
利益全くなさげなのに、本当にどうなってるんでしょうねえ。
旅行は私も似たような感じになる事が多いです。
こんな遠くまで来たのに見たのこれだけ、みたいな。
そして普通の観光地に行くことが稀な感じになっていて、それもどうなんだという…prz
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Unknown (ジゴロウ)
2013-01-14 23:02:45
入院してた年だから…
今から10年近く前に、小説読みました。

おそらくは創作でしょうが、すごい軍師みたいな人物がいて、アテルイが、その妹と結婚したような記憶があります。

あと、都の人間は、騙し討ちでばかり勝ってる印象が…

東北応援流行りですが、最後は負け、以外のものも、みたいと思いました。
返信する
>ジゴロウさん (ヒジハラ)
2013-01-15 05:52:28
そうですね~上記の通り史料がほっとんどないので…
戦争の推移など以外はほぼ創作でしょう。

小説ではアテルイはモレの妹と結婚していましたが、ドラマではどこぞの下女を奥さんにするようで。
大筋では原作をなぞっているようですが、ドラマでは居ない兄妹がいたりとかなり違う部分も出てきてます。

高橋作品においては都の人間は大体において極悪人です(笑)が、見ていると確かにかなり酷い事もしてます。
アテルイとモレの末路もそうですが、彼らにとっては蝦夷は同じ人間じゃなかったんでしょう。

仰る通り素直に良いねえと言われるような話も見たいですねえ。
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