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移転しました(2014/1/1)

原敬、その日 2

2008-11-05 | ヒストリ:近代MTS
東京駅で暴漢に襲われ、その場でほぼ即死した現職総理大臣、原敬。
その遺体は原の妻・浅の意向で首相官邸ではなく、芝にある自宅に運ばれました。
(因みに財部彪の家も芝にあり、原敬宅の近所だったようです)



原は3人家族。奥さんの浅さんと養嗣子の貢さんと。
原の前妻は貞子といい、中井弘の娘にあたります。
中井弘は中井櫻洲といえば聞き覚えのある方もおられますでしょうか。
元薩摩藩士で志士歴のある政府でも古株の人物。
その貞子夫人とは後年離婚し、浅さんと暮らすようになった。
この辺り色々と微妙なのですが興味ある方は調べてみてください。

貢さんは後年原奎一郎というペンネームで作家になっています。
その彼が「ふだん着の原敬」という、家族で過ごした日々のメモワールを出版している。
原敬関係の出版物で、私が一番好きな本です。
その中に彼の父・原敬が亡くなる前の日の話が載っています。
とはいえ原が暗殺された時、貢さんは父の勧めで留学するため渡欧している最中だったのですが。

彼がその前日の話を聞いたのは昭和10年頃。
とある縁でベルギー大使を紹介されています。
大使は貢さんを「こちらは元首相原敬の御子息です」と紹介されて、えっ、と思ったんでしょう。
「私はあなたのお父さんが亡くなる前日にお会いしたのですよ」と。

この大使が着任したのが大正10年で、挨拶の意味を込めて原首相をベルギー大使館に招待したのだそうです。
当時ベルギー大使館は、旧大久保利通邸を利用していた。
それもあって牧野伸顕も招待されています。
牧野は大久保利通の次男で、遠縁にあたる牧野家に養子に入った人物。
近代史では外交方面に多く足跡を残しています。
牧野の次女雪子が吉田茂と結婚し、さらにその孫にあたるのが麻生総理。
かつては自分が住んでいた家という事もあってか、牧野はやはり懐かしかったようで、父大久保が生きていた当時の話をしながら原や大使を案内して部屋を回ったのだとか。
最後に辿り着いたのが奥座敷。
紀尾井坂で絶命し、運ばれた遺体が安置されたのがこの部屋。
そういう話を牧野が英語で大使に説明した後、日本語で原に説明し直した。
(原はフランス語は堪能なのですが英語はそれほどでもなかったようです)
それを聞いて、原は特に感想を漏らすでもなく、ひとつ頷いてじっとその部屋を見つめていたといいます。

翌日、大使にも原が暗殺されたという話はすぐに飛び込んだらしい。
それを聞いて大使は、たった24時間前の原の様子を思い出し、夢ではないかと思ったのだと。
暗殺という言葉はこの頃、原敬の周囲でもちらりほらりと落ちており、浅夫人もあるご婦人と気をつけないとね、みたいなことを言っていたといいます。
ただ本人は
「護衛がいてもやられる時はやられるし、無事な時は無事なもんだ」
と言い張る大の護衛嫌い。周囲は結構大変だったのじゃないかと思います。
警護が薄かったから易々と刺殺されたとは思いませんが…ちょっとたまらないですね、こういう話は。
 
あともうちょっとだけ続きます(笑)

 
27歳の頃の原敬。
かっこいい。



…原敬は山本権兵衛つながりで好きになりました(笑)
山本に関しては江藤惇「海は甦える」という名著がありますが、そこで。
ごんべさんは大正2年に内閣総理大臣となるのですが、それを与党として支えていたのが政友会。中でも原敬と松田正久です。
原は内務大臣として、松田は司法大臣としての入閣。
因みに当時の外相は先出の牧野伸顕、蔵相は高橋是清、陸相は木越安綱、海相は斎藤実です。木越さんの話とか、したいなぁ…(遠い目)
まあそのなんですわ。江藤惇の描くはらのけーさんがそらーもーそらーもーカッコ良くて…!(笑)
なんかねー…歩くと着物がシャラシャラなりそうな感じなんだよ。原さんの所だけ普通に瀟洒って言葉が使われてるし。
ぱりっときらっと颯爽と清廉に!(みさわちゃんが腹抱えて笑ってそう。笑)
思うといつもこんな単純な事から始まって泥沼じみたことになるんだよなあ。
自分が調べていた所と重なるから余計に執着したな、とも。
陸軍との対立軸で原敬(内閣)を見ていましたので、なんというか、勉強していた頃の私にとって原敬は一条の光でした(爆笑)
明治中頃の対清対朝鮮外交関係を勉強していた友人の話を聞くと、そんな原敬の印象も若干変わるのですが。
同じ人物を見ているのに、対象としている時代や照らす方向によってこんなにも感じ方が変わるのだなと、これはすごく勉強になった。
本当に知らない事と分からない事ばかりです。

…つか、大正には興味無いでしょうか、皆さん…(;


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>往晴さん
再びありがとうございます!
いえいえ。
ブログにアップして下さったお心遣いがとても嬉しかったです(^^
凛々しいですか~今度江田島に行った際はばっちり目に焼き付けてきます(笑)


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