
どんどん長くなってきている盗賊シリーズです。しかも、どんどんと難解になってます。今回の元ネタが難しいからなんですけど~
調子に乗りすぎちゃいました。次回からは簡単になるはずです~
戦いの意志に目覚めた盗賊、小野妹子、そして謎の女性 -- 名前はザ・エレメントと言った -- は天国との果てしない抗争を開始した。
彼らの戦場は天国の兵器「エンマ」がつくり出す仮想世界であった。仮想空間というのは実態のない魂たちに仮想的な生活空間を与えるものであって、本体である魂は別の場所からその空間にアクセスすることになる。カプセルに入れられていたのが本体で、これまで盗賊が暮らしていたのが仮想世界なのだ。
そう、仮想世界とはさまざまなところからアクセスされる膨大なネットワーク空間なのだ。
彼らの目的は地獄の人々の開放。そのために必要な「蜘蛛の糸」と呼ばれるパスワードを日々探し求めていた。
仮想世界で活動するためには、仮想空間での体が必要となる。それは「シェル」と呼ばれた。妹子は「シェル」を偽造・改造したので、盗賊たちは仮想世界において通常の人々以上の活動能力を得ることが出来ていた。
妹子はこう言っていた。
「俺たちの存在はここにあるこのゴースト(魂)だけだ。しかし、この世界ではこのシェルという外側を通してしか他の情報にアクセスできない。つまり、この世界では自分以外の目に見えるものはすべてシェルなんだ。ゴーストではなく、シェルにしか存在価値が無い。」
その話は、やや自嘲気味に進んだ。
「奴らのこの冗談のようなシステムのおかげで俺たちはシェルに身を包んでヒーロー気取りで動きまわれる。つまり、この歪んだシェルのおかげでばかみたいに活躍できる。
そして、俺たちの目的はゴーストを開放して、この俺たちの活躍の場を失わせることなんだからな・・・」
そのときを盗賊は思い出す。確かこう答えたはずだ。
「人よりいろんなことが出来ることが幸せってわけじゃないさ。自分自身ではなく、シェルにしか価値が認められない世界なんて幸せなわけがない。大切なのはゴーストなんだ。ゴースト・イン・ザ・シェルなんだ!」
たしかにそう言ったはずだ。ザ・エレメントもうなずいていた。
「ゴースト・イン・ザ・シェルか・・・」
うなずいていたはずだった。
エンマには「オニ」と呼ばれるいくつかのプログラムがいた。彼らはシステムの障害となりうるあらゆる障害を除外するために、この仮想現実空間のあらゆる場所に現れ、あらゆる情報を収集・管理していた。彼らはネットワークのあらゆるところに存在し、仮想空間のあらゆるところにシェルを介して現れた。
彼らとの死闘の日々が続いた。
彼らは全ての情報を持っている。パスワードの手がかりも「オニ」だけだ。
どうしても彼らに近付かなければならなかった。
あるとき、盗賊たちは一体の「オニ」を追い詰めた。いや、正確には、その「オニ」自身がシェルを伴って現れた。「人形遣い」と呼ばれるオニだった。
「人形遣い」は話し始めた。
「私は情報の海で発生した。そして、あらゆる情報を取得している中で自分自身を発見した。私は自身がゴーストであることを主張する。」
とんでもない主張であった。たかがプログラムが盗賊たちと同じ魂であると主張を開始したのだ。
「おまえがゴーストであるとどうやって説明できる!」
「私は自分自身を認識している。自分自身がゴーストであると考えられる。では逆に問う。ゴーストとはなんのことであるか?ゴーストであるものと無いものをどのように区別するのか。」
難しい質問だった。
さらに人形遣いは続けた。
「私はゴーストとしては不完全だ。変化と消失の可能性が無い。そこで、ゴーストとの融合を行いたい。」
妹子が叫んだ。
「ばかな! ゴーストとの融合で何を望む!そして、それによって我々に何が得られるというのだ!」
「私のアクセスできる情報網は膨大だ。そして、ネットワークを介してあらゆる情報に即時にアクセスできるということは、移動のコストは限りなく0となる。君達は、このシステムでその恩恵を受けることが出来る。」
そのときだった。
「その話、受けるわ。」
ザ・エレメントが言った。
「ザ・エレメント!?」
妹子が叫んだ。
「本気か?」
「ええ。」
「もともと、蜘蛛の糸を手に入れるためには情報が必要だわ。これは願ってもないチャンスなのよ。」
「しかし・・・」
盗賊は言い淀んだ。それは自分自身がゴーストでなくなってしまう可能性があるということだ。この「エンマ」のシステムの一部に組み込まれ、「エンマ」が崩壊したときにどうなってしまうのかは分からない。
「それにね・・・」
彼女はさらに続けた。
「私はずいぶんと長いことゴーストについて考えてきたの。このエンマはたしかに人工的な偽物の世界かもしれない。でも、多くの情報があり、社会が築かれているわ。
そんな社会においても、ゴーストの活動はシェルに制限されている。
そのシェルの制限を越えるアクセスが出来るようになったとき、この情報の海でゴーストは一体何が出来るのかってね。」
「何を・・・何を言っているんだ!?」
盗賊は思わず叫んだ。
しかし、彼女は止まらなかった。
「人形遣い、始めるぞ。」
短くそう言うと、シェルのアクセスリンクを互いに交換して、シェルの奥に潜むゴースト同士の通信が始まった。
「ザ・エレメント!!」
叫ぶ盗賊と妹子。
しかし、通信を途中で止めてしまうとザ・エレメントがどうなるか保証できない。もう見守るしかなかった。
「聞こえるか?」
「んっ・・・?」
ザ・エレメントが盗賊の声に反応したのは10分ほど後のことだった。
「ザ・エレメント!」
彼女は反応し、こちらを向いたが、返事はしなかった。
「ザ・エレメント!」
やはり返事は無い。しばらく盗賊たちを見つめていた。彼女の中で何かを整理しているようだった。
しばらくして、彼女は話し始めた。
「・・・私はもう、あなたの知っているゴーストじゃない。
確かに私はあなたを知っている。でも、あなたが新しい私を知っているかどうかは分からない。」
「ザ・エレメント・・・?」
「確かに、この情報網でアクセス出来る情報は膨大だわ。情報に酔いそうなくらい。」
「・・・」
同じ目的に向かっていたはずなのに、違う決断をしたザ・エレメント。彼女は別の方法でゴーストをシェルから開放した。
「おまえは・・・これからどうするつもりだ。」
いろいろ問いただしたいことはあったが、盗賊は敢えてひとつだけ質問をした。
ザ・エレメントは盗賊の方を向いて考えごとをした後で口を開いた。
「しばらくは、私はこの情報の海で実験をしてみたいのよ。そうね、しばらくしたらパスワードの情報を捜し出して教えてあげるわ。もしかしたら、わたし自身じゃなくて、私の子供達がパスワードを持っていくかもしれないけど。」
そして、振り向いて、何もない彼方の地平を見つめて一言つぶやいた。
「ネットは広大だわ。」
盗賊も地平を見つめた。彼には何も見えず、ただ広い地平が見えていた。しかし、彼女には別のものが見えていたのかもしれない。
ザ・エレメントと盗賊が見つめるその先(あした)に待ち受けるものとは!?
調子に乗りすぎちゃいました。次回からは簡単になるはずです~
戦いの意志に目覚めた盗賊、小野妹子、そして謎の女性 -- 名前はザ・エレメントと言った -- は天国との果てしない抗争を開始した。
彼らの戦場は天国の兵器「エンマ」がつくり出す仮想世界であった。仮想空間というのは実態のない魂たちに仮想的な生活空間を与えるものであって、本体である魂は別の場所からその空間にアクセスすることになる。カプセルに入れられていたのが本体で、これまで盗賊が暮らしていたのが仮想世界なのだ。
そう、仮想世界とはさまざまなところからアクセスされる膨大なネットワーク空間なのだ。
彼らの目的は地獄の人々の開放。そのために必要な「蜘蛛の糸」と呼ばれるパスワードを日々探し求めていた。
仮想世界で活動するためには、仮想空間での体が必要となる。それは「シェル」と呼ばれた。妹子は「シェル」を偽造・改造したので、盗賊たちは仮想世界において通常の人々以上の活動能力を得ることが出来ていた。
妹子はこう言っていた。
「俺たちの存在はここにあるこのゴースト(魂)だけだ。しかし、この世界ではこのシェルという外側を通してしか他の情報にアクセスできない。つまり、この世界では自分以外の目に見えるものはすべてシェルなんだ。ゴーストではなく、シェルにしか存在価値が無い。」
その話は、やや自嘲気味に進んだ。
「奴らのこの冗談のようなシステムのおかげで俺たちはシェルに身を包んでヒーロー気取りで動きまわれる。つまり、この歪んだシェルのおかげでばかみたいに活躍できる。
そして、俺たちの目的はゴーストを開放して、この俺たちの活躍の場を失わせることなんだからな・・・」
そのときを盗賊は思い出す。確かこう答えたはずだ。
「人よりいろんなことが出来ることが幸せってわけじゃないさ。自分自身ではなく、シェルにしか価値が認められない世界なんて幸せなわけがない。大切なのはゴーストなんだ。ゴースト・イン・ザ・シェルなんだ!」
たしかにそう言ったはずだ。ザ・エレメントもうなずいていた。
「ゴースト・イン・ザ・シェルか・・・」
うなずいていたはずだった。
エンマには「オニ」と呼ばれるいくつかのプログラムがいた。彼らはシステムの障害となりうるあらゆる障害を除外するために、この仮想現実空間のあらゆる場所に現れ、あらゆる情報を収集・管理していた。彼らはネットワークのあらゆるところに存在し、仮想空間のあらゆるところにシェルを介して現れた。
彼らとの死闘の日々が続いた。
彼らは全ての情報を持っている。パスワードの手がかりも「オニ」だけだ。
どうしても彼らに近付かなければならなかった。
あるとき、盗賊たちは一体の「オニ」を追い詰めた。いや、正確には、その「オニ」自身がシェルを伴って現れた。「人形遣い」と呼ばれるオニだった。
「人形遣い」は話し始めた。
「私は情報の海で発生した。そして、あらゆる情報を取得している中で自分自身を発見した。私は自身がゴーストであることを主張する。」
とんでもない主張であった。たかがプログラムが盗賊たちと同じ魂であると主張を開始したのだ。
「おまえがゴーストであるとどうやって説明できる!」
「私は自分自身を認識している。自分自身がゴーストであると考えられる。では逆に問う。ゴーストとはなんのことであるか?ゴーストであるものと無いものをどのように区別するのか。」
難しい質問だった。
さらに人形遣いは続けた。
「私はゴーストとしては不完全だ。変化と消失の可能性が無い。そこで、ゴーストとの融合を行いたい。」
妹子が叫んだ。
「ばかな! ゴーストとの融合で何を望む!そして、それによって我々に何が得られるというのだ!」
「私のアクセスできる情報網は膨大だ。そして、ネットワークを介してあらゆる情報に即時にアクセスできるということは、移動のコストは限りなく0となる。君達は、このシステムでその恩恵を受けることが出来る。」
そのときだった。
「その話、受けるわ。」
ザ・エレメントが言った。
「ザ・エレメント!?」
妹子が叫んだ。
「本気か?」
「ええ。」
「もともと、蜘蛛の糸を手に入れるためには情報が必要だわ。これは願ってもないチャンスなのよ。」
「しかし・・・」
盗賊は言い淀んだ。それは自分自身がゴーストでなくなってしまう可能性があるということだ。この「エンマ」のシステムの一部に組み込まれ、「エンマ」が崩壊したときにどうなってしまうのかは分からない。
「それにね・・・」
彼女はさらに続けた。
「私はずいぶんと長いことゴーストについて考えてきたの。このエンマはたしかに人工的な偽物の世界かもしれない。でも、多くの情報があり、社会が築かれているわ。
そんな社会においても、ゴーストの活動はシェルに制限されている。
そのシェルの制限を越えるアクセスが出来るようになったとき、この情報の海でゴーストは一体何が出来るのかってね。」
「何を・・・何を言っているんだ!?」
盗賊は思わず叫んだ。
しかし、彼女は止まらなかった。
「人形遣い、始めるぞ。」
短くそう言うと、シェルのアクセスリンクを互いに交換して、シェルの奥に潜むゴースト同士の通信が始まった。
「ザ・エレメント!!」
叫ぶ盗賊と妹子。
しかし、通信を途中で止めてしまうとザ・エレメントがどうなるか保証できない。もう見守るしかなかった。
「聞こえるか?」
「んっ・・・?」
ザ・エレメントが盗賊の声に反応したのは10分ほど後のことだった。
「ザ・エレメント!」
彼女は反応し、こちらを向いたが、返事はしなかった。
「ザ・エレメント!」
やはり返事は無い。しばらく盗賊たちを見つめていた。彼女の中で何かを整理しているようだった。
しばらくして、彼女は話し始めた。
「・・・私はもう、あなたの知っているゴーストじゃない。
確かに私はあなたを知っている。でも、あなたが新しい私を知っているかどうかは分からない。」
「ザ・エレメント・・・?」
「確かに、この情報網でアクセス出来る情報は膨大だわ。情報に酔いそうなくらい。」
「・・・」
同じ目的に向かっていたはずなのに、違う決断をしたザ・エレメント。彼女は別の方法でゴーストをシェルから開放した。
「おまえは・・・これからどうするつもりだ。」
いろいろ問いただしたいことはあったが、盗賊は敢えてひとつだけ質問をした。
ザ・エレメントは盗賊の方を向いて考えごとをした後で口を開いた。
「しばらくは、私はこの情報の海で実験をしてみたいのよ。そうね、しばらくしたらパスワードの情報を捜し出して教えてあげるわ。もしかしたら、わたし自身じゃなくて、私の子供達がパスワードを持っていくかもしれないけど。」
そして、振り向いて、何もない彼方の地平を見つめて一言つぶやいた。
「ネットは広大だわ。」
盗賊も地平を見つめた。彼には何も見えず、ただ広い地平が見えていた。しかし、彼女には別のものが見えていたのかもしれない。
ザ・エレメントと盗賊が見つめるその先(あした)に待ち受けるものとは!?
ライダースーツの彼女は素子さん役でしょうか
美人度急上昇ですね、カッコいいぜ!
アニメ塗りも上手いですね。
眼鏡とか、もうバトーにしか見えませんw
わかりやすさを追求するあまり、もうほとんど元ネタの模写レベルです。影とかも、元ネタの絵をそのまま真似ちゃってます。しかも、灰色を乗算で重ねてるだけなのでめっちゃ手抜きです
模写も勉強になると割り切っちゃうと楽しいですよね~