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松竹創業百三十周年 四月大歌舞伎・夜の部@歌舞伎座

2025-04-29 | 歌舞伎

久しぶりの仁左衛門主演の「毛谷村」。

 

最近の仁左さまはダブルキャストで主役を勤めることが増えています。

「体力的な問題。大丈夫とは思うのですが」と語られていましたが、後進育成にもなるし、それはそれで良い試みではないでしょうか。

とは言え、絶対に仁左衛門バージョンを見たいので、Web予約の際は間違えないように緊張を強いられます。

だって仁左さまだから一等席を取るんですもの。

 

う~ん、何度見てもやっぱり可愛い!

定番とも言える愛嬌、ぶりっ子演技が愛おしい。

小首を傾げて若さを強調、声も高め。

若者の設定ですから。

 

体力の充実ぶりにも驚かされました。

 

何度も階段をタンタンターンと軽快に上り下りする安定感。

気は優しくて力持ちを表すように、子供をひょいと抱えて中腰で寝かしつける動作。

スクワットのような型を決めるときは両足がまさしく直角で、年齢を全く感じさせない姿に惚れ惚れしました。

片手で子供を抱き抱えての大団円もすごい。

普通は後ろで黒子さんが子供を支えますが、それはありませんでした。

 

泣き叫ぶ子供を抱き締めたり、頭を撫でたりする手の優しさ。

壊れ物を扱うようにソッと優しく触れます。

「子供になりたーい!」と誰もが思ったことでしょう(もちろん私も)。

 

本来、「通し狂言」の一部である「毛谷村」の前に「杉坂墓所」を加えて、代わりに最後の敵討ちを省いたのも後味良し。

「生意気なようですが、私の毛谷村です」と語っていた仁左さまのご意向だと思われます。

 

続いて右近の「春興鏡獅子」は前評判も劇評も大絶賛で大いに期待していたのですが、やはり若さや力業でどうこうなる演目ではないと痛感しました。

演舞場で初めて見て大感激した菊之助鏡獅子を超えるか?! と期待し過ぎた私が悪い。

右近は頑張っていました。

菊ちゃんの鏡獅子を上回るレベルを期待するのは酷と言うものです。

 

二列目中央という席で見えなくていいところまでよく見えたのも災いしました。

お腹が動いて息が切れてるのが分かり、ついそこに目がいく。

足袋の裏が汚れて見えたのは照明のせいか、でも玉さんならありえない。

 

胡蝶の亀三郎君と眞秀君が見事に合わせて、キビキビと舞っているのを観られただけでも収穫と思わなくてはね。

 

130周年記念だからか、豪華に松緑主演の新作歌舞伎「無筆の出世」もありました。

「荒川十太夫」で好評を博した同じ講談シリーズで、こちらは面白くないはずがないと思っていたら期待以上の大当たり。

人間国宝の講談師・神田松鯉が節目で登場し、目の前で江戸時代の身分制度などを分かりやすく解説してくれたのは大変勉強になりました。

「士農工商」は「武士と武士以外」の分類で、武士以外の三つはずーっと下で横並びのような身分制度だったとは知らなった。

武士の身分にも大きな格差があった事情を具体的に説明され、こういう知識があって観るほうが断然面白くなることを感じさせる素敵な試みは大成功!

 

悪人が一人も出てこない話が歌舞伎にはあって、これもそう。

素直で勤勉なキャラクターが松緑にぴったりとはまり、適役。

「荒川十太夫」のように泣かせる展開にしていないのも新鮮です。

「二匹目のドジョウ」を狙う、あざとさがないのも松緑らしい。

 

文盲を「無筆」といい、松緑は武家の主人に仕える無筆の中間(小間使い)の治助を好演していました。

文字は読めなくても頭が良くて気も利く努力家の彼の周囲には、善人が入れ替わり立ち替わり現れて引き立ててくれます。

 

船上での手助けに感謝する治助に対して「名乗るほどのことじゃない、受けた恩をよそでまた返してくれ」と名前も告げず

爽やかに別れる亀蔵@紺屋職人。

普通ならお節介はしないだろう吉之丞@大徳寺住職は、治助の様子に好感を持って彼の危機を救います。

その寺に出入りする右筆の中車@夏目佐内に見込まれて、治助は寺男から再び中間に戻るという巡り合わせ。

 

中車と笑三郎夫婦もすごくいい。

高い身分にふさわしい、慈愛に満ちた人徳のある夫婦の存在が治助の出世を加速させます。

 

ラストでは、酒の上の過ちで治助を殺させようとした元主の鴈治郎@佐々与左衛門も登場して己の罪を悔いて切腹しようとするのを

止める治助の心情が語られます。

その仕打ちがあったからこそ、最後はお奉行様にまで出世できたと元主に心底感謝するシーンが感動的。

それまで大きな体を縮めるように丸めて小さくなっていた治助がラストで松山伊豆守治助となって、襖を空けて入ってきたときの

堂々とした立派な姿が本当に大きく見えました。

 

松鯉さんが言うところの「恩を恩で返す、恩を仇で返す、仇を仇で返す復讐」は数あれど、「仇を恩で返した」この芝居。

真面目に努力したらそれが報われる社会、基本的に悪人はいない。

今やおとぎ話のようなストーリーかもしれませんが、「いい話だね~」と終演後の客が口にする言葉を耳にして心の中で「ホントにね~」と呟き

穏やかな気持ちで帰路につきました。

 

三日間限定の亀蔵@治助バージョンも見てみたい!

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