いつだってワークライフバランス

「仕事と生活の調和」を意味する
ワークライフバランス。
より良いあり方を考えるブログです。

八月納涼歌舞伎・第三部@歌舞伎座

2023-08-31 | 歌舞伎

通し狂言「新・水滸伝」、「水滸伝」好きとしては見逃せない。

「三国志」と違って北方謙三版しか読んでいないため、私の中のキャラクター設定は北方水滸伝に大いに偏ってます。

今回は北方版を原作に据えているわけでなく、違うのが当たり前ですが、そのあまりの違いっぷりに驚かされました。

 

最も驚いたのは燕青を寿猿さんが勤めたこと。

一瞬、誰?!と思い、次に「えー、燕青は違うでしょー」と。

だって、男臭い梁山泊メンバーの中では異質なクールで中性的魅力あふれる美青年。

それを御年92歳(?)の寿猿さんが勤めるとは……。

 

ただ、最近の寿猿さんの活躍ぶりはめざましく、いわゆる人寄せパンダ的に「超高齢者でも舞台に立ってます」とアピールするのではなく、

台詞は大きくはつらつとしているし、身のこなしも信じがたいほど軽やかで俊敏。

役者って場を与えられたら、いくらでも進化するんだなぁと感心します。

これも猿之助の功績と言えるでしょう。

 

主役・林冲が隼人君なのは知っていたけれど、林冲にこんな美しさは必要ないんですけど~。

北方版では林冲はしごくまっとうな人ですが、一般的には悪人と評されていることを歌舞伎で初めて知りました。

それも隼人君が演じると綺麗さが前面に出て、到底悪人には見えません。

 

イケメン隼人君には、林冲より楊氏のほうが合う気がします。

暗くクールに演じてほしい。

青面獣・楊氏は顔にアザがあるのが特徴で、歌舞伎にも出てきましたが、扱いが小さいっ!

 

燕青と楊氏、北方水滸伝で最も好きな二人がこれほどイメージと違うと芝居に集中できなくなります。

なので、途中から北方先生のことは忘れようと自分に言い聞かせて見た次第。

 

そんななか、猿弥@王英は合ってたかな。

小説では好きな女に尽くし抜き、最期はまさに身を呈して妻・扈三娘(こさんじょう)を救出する王英の純愛に、読みながら涙がとまらなかったほどで

その王英の一途さは十分出ていました。

笑也@青華との息もぴったりで微笑ましいカップル。

 

猿弥は、どんなお役も見事に演じ切る素晴らしい役者さん。

決して器用貧乏などではなく、役にしっかり入り込んで悪人でも善人でも情けない役でも立派な役でも金持ちでも貧乏人でも、

全く無理なく人物になりきって、その場に溶け込みながら存在感を放つ名脇役。

得難い役者さんです。

 

他にも笑三郎や若手の青虎など、猿翁さんに厳しく仕込まれた澤瀉屋の面々は一般的な評価以上の実力者揃いだと思っています。

そんな中、常連の客演・浅野和之さん@高俅はやや厳しかったかもしれません。

大変な芸達者の浅野さんはこれまでも、「弥次喜多」でドラァグクィーンなど意外性に満ちた役どころを好演してきた功労者。

しかし、高俅は巨悪なので、少々物足りない。

 

中車は梁山泊の親分・晁蓋を勤めていましたが、高俅のほうが面白かったかもしれません。

ダブる場面は確かなかったと思うので、二役という選択肢もあったかなと。

 

小説「水滸伝」を改めて読みたいと思わせてくれる舞台ではありました。

本家「水滸伝」では王英&扈三娘は夫婦で壮絶な死を遂げるらしい。

舞台では泣けなかったので、小説で泣きましょうか。

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八月納涼歌舞伎・第二部@歌舞伎座

2023-08-30 | 歌舞伎

歌舞伎座での「新門辰五郎」は47年ぶりの上演で、なるほど毎月通う私でも知らないのは当たり前。

あらすじで火消しが登場する世話物だと分かっていたので、楽しみに出かけました。

 

コロナに翻弄された3年間、舞台が密になるのを避けて登場人物の多い演目は上演できない事情があったのが、ようやく縛りから解放されて

大勢が一堂に会する内容で、それだけでも感動モノ。

 

これだけ同時に集うと各役者の個性や技量の違いが顕著になり、コロナ禍にみっちり稽古を重ねてきたであろう人、そうでなさそうな人が

素人目にも分かるものですねぇ。

 

幸四郎@辰五郎と敵対する、勘九郎@会津の小鉄が群を抜いて素晴らしかった。

勘九郎は勘三郎お父さんからスパルタ教育を受けて、その真面目さや努力家ぶりには定評のある役者ですが、今ひとつ「いい人」の殻から

抜け出せていないようで正直なところ、あまり面白みを感じられませんでした。

役者には少々ワルでクールな雰囲気、つまり危うさがあるほうが好みなので。

 

ところが、今回はカッコ良かったです~。

粋でいなせな様子は江戸っ子の辰五郎を凌ぐほどで、きっぱりとした台詞回しも世話物に格調を添えています。

現代言葉の調子でしゃべると、テレビ時代劇と変わらなくなって興醒め。

 

一方の辰五郎には江戸っ子の颯爽とした気風の良さがあまり感じられなくて、やや拍子抜け。

原作がそういう描き方なのかもしれませんが、これが菊五郎ならもっと粋に魅せてくれたでしょう。

 

もうお一人、歌六さんからも目が離せませんでした。

ご本人は播磨屋一門らしく時代物がお好きなようですが、この人が世話物で老け役を勤めると大変素敵なんです。

地でやってるの? と思うほど自然で何とも言えない良い味を滲ませます。

人間国宝となり、芸域の広さは折り紙付きですが、私はこういうちょっと頑固でカッコいいオヤジの役の彼が大好きです。

 

途中、BGMのように背後で「木遣り」が流れてきたのにもワクワクしました~。

今年から木遣りを習い始めた私としては歌舞伎座で聴くお手本は何ものにも代えがたく、「もっと大きな音にして~」と心の中で呟いてました。

 

舞踊「団子売り」は、踊り上手な若手の巳之助&児太郎コンビで。

内容と全く関係ないのに、「巳之助君はこれを猿之助と踊りたいんじゃないかなぁ」とフッと感じて胸が詰まりました。

大柄な児太郎は低く膝を折って巳之助に合わせ、可愛らしく健気に踊ります。

でも、踊りってビジュアル的な相性というかバランスが大切で、二人の様子がピッタリ合っているだけで完成度が高まる気がします。

踊りに無知なので、つい雰囲気を重視してしまう私……。

 

幕間も入れて二時間半強で、とっても楽~。

三部制のほうが入場者数は増やせるのではないかと思われますが、松竹にもいろいろ事情がおありのようで。

最近はサブスク制も取り入れてさまざまな取り組みをされています。

 

要は内容! 芝居が面白ければ自ずと客は集まるんじゃないでしょうか。

第二部も楽日のせいか、客入りはなかなかのものでした。

 

27日千穐楽。

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処暑の茶会・虫聞きの茶会

2023-08-27 | お茶ときどきお花

処暑を過ぎても猛暑が続くなか、久しぶりのお茶会に参加しました。

 

「処暑の茶会」は私が会員として所属する会の主催ですが、今回は一般の方も参加できる軽めのものでお着物の方は少なかった。

この暑いなか、着物で外出なんて正気の沙汰とは思えない?

いえいえ、ゴルフ場のキャディさんが全身を包んでいるように体を覆ったほうがマシなケースもありまして……。

 

秘書時代に上司ご夫妻の避暑ゴルフに動員されたとき、奥さまから「必ず長袖長ズボンでいらっしゃいね」とご忠告がありました。

冷感何とかというウェアの効果は不明ですが、助言に従ったところ、プレー後お風呂で悲鳴を上げている人を尻目に私は無事。

暑いからとノースリーブで一日プレーして、露出していた肩が火傷状態で炎症を起こしていたわけです。

高原は日差しがキツイですからね~。

 

確かに暑かったけど、ノースリーブでも半袖でも長袖でも暑いのは同じ。

暑いからといって裸になっても涼しくなるわけもなく、できるだけ熱(日差しとは言えません!)を浴びないのが得策だとそのとき学習した次第。

 

何を着ても暑いに変わりないのなら、せっかくの茶会なので着物で出かけました。

 

数人しか着物姿はありませんでしたが、さすがと唸るようなお召し物のご婦人がいらっしゃって。

茶室に向かうエレベーターを待っていると目の前に豪華な蘇州刺繍(?)の白い袋帯が見えたので、「素敵な帯ですね~」と声をかけてしまいました。

すると「え~、嬉しい、ありがとうございます。そんなふうに言っていただけただけで今日は着物で来た甲斐がありました」と言われ、

私も嬉しくなりました。

 

褒めても「そんなことないですっ!」と強く否定される人は結構いて、そう返されると何だかこちらがお世辞を言ってへつらったようで

居心地が悪くなることがあるのです。

謙遜かもしれませんが、知らない人が思わず褒めた言葉に嘘はないので、そのまま受け取っていいと思うんですよね。

なので、私も稀に褒められたら必ず「ありがとうございます! そんなこと滅多に言われないので嬉しいです」と応えるようにしてます。

 

暑い中、目の保養をさせてもらって非常に有意義なひとときでした~。

 

一方、「虫聞きの茶会」は庶民的。

植物園の中の茶室で、誰でもその場で千円払って参加できる気軽な会。

これまで何度か参加していて、季節ごとに変わる園の花々を見るのが楽しいし、茶会のお道具も家元のお花押が入った物などしっかりしたものが出されます。

 

今回の趣向は初めてで、洋服でも全然構わないけど夕方からなので浴衣で参加。

鈴虫を放虫して、虫の音を楽しむという風流な催しの一環として茶会も開催されました。

 

茶室に入ると澄んだ虫の音がそこここから密やかに聞こえてきて、最初は「録音?」と不埒な考えが浮かんだ無粋な私……。

録音のはずはなく、お若い席主のご説明で「もっと日が暮れるとさらに虫たちがよく鳴くんですよ」と。

そりゃそうだよね~、「虫聞きの会」なのに録音のはずがないよね~、申し訳ありません!

変なこと口走らないでよかったわぁ。

 

そこではお若い茶道男子が入られて、お正客を完璧に務められ立派でした。

茶道は元々男性しかできなかったものなのに現在は女子供の習い事にように思われる向きもあり、コロナの影響も受けて茶道人口は減少しているとのこと。

そんな状況下、若い男性が真面目にお茶に取り組んでいるお姿を拝見し、美しい虫の音も相まって清々しい気分になりました。

 

お干菓子は、そこでしか入手できない野菜の砂糖漬け。

茶道男子が「珍しいですね」と興味をもたれていたので、次客の私はここでもまた厚かましく声をかけ、「ここに来たら必ず買うんですけど、

お店は既に閉店して現在はこちらのためにだけ作られていると売店で言われました」と、購入したお菓子の箱を見せながらお教えしました。

前回までは大きな箱があったのに半分のサイズのしかなかったので、尋ねて売店の方から事情を伺えたのです。

 

その後、灯篭点燈体験ができるということで、歌舞伎でよく目にする灯篭の扉のような板を開けて灯を点す経験までさせてもらえました。 

LEDでなく本物の火を使うため、ちゃんと職人さんが付いて指導してくれて、お子さんでも安心。

大人がやっていいのかな? と少し恥ずかしかったのですが、集まってみるとほぼ大人ばかりでホッとしました。

 

これ意外と難しいんですよ~。

私たちはローソクの火を灯篭の中のローソクに点けましたが、昔の人は火打ち石で油を吸った芯に火を点けていたわけで、もっと大変だった?

いやいや日常だから子供でも点けられたのでは?

こうして現代人は便利さと引き換えに風情のある暮らしを失っていったのね、と思いをはせた貴重な体験でした。

 

そこで驚いたのが、茶席でご一緒した茶道男子も参加されていて爽やかな笑顔で近づいてくると、お菓子を見せながら

「教えていただいたので買えました」と。

これは嬉しかったですね~。

「売店にありますよ」と言ったものの、実際に買うかどうかは分かりませんよね。

それをちゃんとお買い上げになって、しかも報告までしてくださるとは!

 

二日続けての茶会で、まさに一期一会の素敵な経験ができました。

こういうのがお茶会の楽しみの一つです。

 

ただ、ちょっと後悔したのは茶席に入る前に「暑いよね~」と売店で枝豆をつまみに二人でビール大瓶一本飲んだこと(大半が私)。

上品な茶道男子の隣で酒臭かったのではないかと後からクヨクヨ考える始末で情けないこと、この上もなく……(遅いよ)。

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歌舞伎舞踊特別公演@レイボックホール

2023-08-12 | 歌舞伎

鷹之資君のトークショーに行った流れで、この公演に出かけました。

 

舞踊は苦手で必ず途中で居眠りしてしまう不届きな私ですが、本公演は3幕、正味80分間で幕間もその都度入れる構成だったため、楽でした~。

「踊りだけで3演目!」と不安に思っていたのが嘘のように、アッという間に終わって舞踊に不案内の人でも十分楽しめたのではないでしょうか。

 

おめでたい「三番叟」、男女の恋模様の「汐汲」、そして喜劇「釣女」。

やはり一番受けていたのは「釣女」でした。

 

舞踊ってそれぞれの型に意味があって、さまざまな動きに関する知識がないとなかなか理解できません。

ところが、「釣女」は外国人にだって容易にストーリーが分かる単純明快さで歌舞伎初心者にもってこいの演目です。

 

さいたま市が政令指定都市に移行して20周年の記念事業として企画された公演なので、多くの人に楽しんでもらうには何をやればよいかを

きちんと考えられたことがうかがえます。

さすが、文教都市・さいたまの面目躍如。

 

錦之助@太郎冠者&鴈治郎@醜女と、右近@大名&米吉@上臈の配役が絶妙で、自分だけ美女を釣り上げた大名の右近君がちょっと意地悪なのが面白い。

 

一方、人の好さをとぼけた化粧に滲ませる、イケメン隼人君のパパ・錦之助もうまいですねぇ。

自分も主の大名にあやかって美女を! との目論見が外れて不細工な女に当たってしまって困り果てたり、未練がましく上臈にちょっかいを出す

など二枚目役者が演じるからこそ、滑稽味が引き立つわけです。

 

それにしても鴈治郎はこういうお役をさせたら天下一品。

元々ふくよかなお餅のようなお顔を白く塗り、太郎冠者にグイグイ行く様子が可愛くて、確かにおブスなんですが、非常に味があるというか

「お嫁さんにしたら誠心誠意尽くしてくれそう~」と味方の視点になってしまい、「太郎冠者よ、彼女になさい」と諭したくなります。

 

今はハラスメントやルッキズムの影響で「醜女(しこめ)」なんて禁句。

あからさまに書いたり(パンフレットのお役は「醜女 中村鴈治郎」!)言ったりできるのは、もはや伝統芸能の場だけでしょうが、

昔は許されていたというよりも、歌舞伎に出てくる醜い女は誰もが自分を不細工だと思っていないところが清々しく、潔い。

 

「自分なんか」などと一切卑下せず、堂々とおおらかに好きな男に迫ります。

そんなところに作者・河竹黙阿弥の優しさ、洞察力の深さを感じて心から笑えるのです。

顔の造作なんてしょせん皮一枚(骨格もあるけど)、一皮むけば皆同じ、あとは中身(心)で勝負ってことでしょうか。

 

お目当ての鷹之資君は「三番叟」では美しい女方、「汐汲」では立役の漁師。

ふだん、女方はしないので「一体どうなることやら」と思っていると、見事、知的な美女に変身していました。

歌舞伎では化粧を施すことを「顔をする」と言うそうですが、そこにも技があります。

立役メインの若い彼が立派に女方を勤める姿を見て、「刀剣乱舞」とはまた違う、お父さんの故・富十郎丈譲りの才能がうかがえて

頼もしく思いました。

 

新会場のレイボックホール(旧・さいたま市民会館おおみや)は立派な建物でしたが、吹き抜けの構造のせいかどこもかしこも暑すぎる!

それを差し引いても、楽しい真夏のひとときと思えたのは公演内容に加えて……。

大宮って鰻専門店が多いんですね。

奮発して「松」を頼んでエネルギー補給をして行ったのも良かったのかも。

 

8月5日。

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松竹大歌舞伎 令和五年度東コース@王子・北とぴあ

2023-08-01 | 歌舞伎

一日限りの巡業公演は夏のお楽しみですが、コロナの影響で中止されていたので、再開は非常に喜ばしいことです。

 

今夏の演目は「菊畑」と「土蜘」。

故・吉右衛門丈を思い起こす演目です。

それを親戚の一人である松緑が、どちらも主役を勤めます。

 

開演前に会場ホールで出演者のビデオメッセージが放映され、中でも若い萬太郎君が初役で奴智恵内を演じることを

「身体が震えるほどの緊張感を持って」と真剣な表情で話していたのが印象的でした。

抜擢されて嬉しい、というよりも数々の名優が演じてきた大きなお役を受け継ぐ畏れのようなものを感じている様子で、

その神妙な姿勢が立派。

 

歌舞伎役者にはこうした行儀の良さが何よりも大切で、それさえあれば他に望むものはありません。

芯がしっかりしていれば、芸はあとからついてくるはず。

と言いつつ、堂々とした素晴らしい出来でしたけどね。

さすが時蔵さんの息子さん。

 

松緑が若手を引っ張る、いわば座頭で「菊畑」では鬼一法眼のお役でかなり老けた拵えで登場。

この人はね~、手足が長く腰高で顔は小さく現代的なスタイルの上、丸顔童顔なので老け役だと「老け役やってます」的な

雰囲気で実はあまり似合ってない……。

 

一方、「土蜘」になると本領発揮で、大柄な体格を生かして「これは俺の役だ」と言わんばかりの貫禄を見せて頼もしい。

やはり、重厚な衣装の勇猛な姿がシックリくる役者です。

 

巡業の良い点は役者総出になることで、今回も2つとも全員がお役を勤めました。

松緑の息子・左近君も同様で、お父さんと同じ板に乗ります。

父親としては大いに気になるところでしょうから、ときたまチラリと左近君を見やる視線が微笑ましい。

 

正体を現した松緑@土蜘の精が立ち回りの要所でパーッ、パーッと千筋の糸を繰り出すと非常に華麗で、ようやく彼らしいお姿を拝見できて満足、満足。

同行者も「やっぱり体が大きいと舞台映えするねぇ」と感心しきり。

 

猿之助も蜘蛛の精をよく演じていますが、彼だとジョロウグモのようなシャープな雰囲気、松緑はタランチュラ的なずんぐりした大蜘蛛のようで

糸の吐き方(飛ばし方)にも違いがあって、そういうところに注目するのも面白い。

 

巡業公演には市民割引があり、歌舞伎を観たことのない人もたくさんいらっしゃるようです。

「あんなに綺麗に糸を飛ばすって、普通はきっとできないんでしょうね」と傍らで感想を交わす年配のご婦人方の会話が耳に入ってきました。

「あの白い糸、片づけて再利用するのかしらねぇ」と真面目な顔で話していたのを聞いて、「え? どうなんだろう、考えたこともないけど、

そもそも材質は何だろう」と私まで一緒に悩んでしまいました~。

 

綺麗に糸を飛ばすには絡まったりしていたらダメでしょうからそのままは使えない、でも大量にあるから解すのも手間だし??

会報誌を読むと、最近は歌舞伎の小道具に使う材料そのものが入手困難になって大切にメンテナンスを施しながら使っているなんて

エピソードも紹介されているので、カギは材質だなと。

調べてみると和紙でした。

なので多分使い捨てかな。

 

これだけ通っているのに歌舞伎の専門知識に乏しい私。

たまに、こういう疑問をもって調べたりするのもまた楽しからずや。

 

酷暑の中、7~8月と二カ月にわたる過酷な公演。

役者はじめ関係者の方々が楽日まで健康を維持して、無事に巡業を終えるよう成功をお祈り申しあげます。

 

7月16日

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