恒例の「歌舞伎納めは玉さんで」が、クリスマスイブの観劇で今年も叶って良い締めくくりができました。
「天守物語」は玉三郎@天守夫人・富姫を熱望していましたが、後進育成に熱心な玉さんは七之助に譲って、ご自身は妹分の亀姫を勤めました。
玉さん@富姫&海老蔵@図書之助という奇跡のカップルで何度か観ていた身としては、配役発表のときの落胆と言ったら!
ちょうどシネマ歌舞伎で泉鏡花特集を組んでいて、亀姫の登場場面を確認(十分わかっているんですが念のため)し、今回は3階席でいいかなと。
シネマ歌舞伎はね~と思っていたのが、実際に見るとこれがなかなか。
細部がよく分かり、生舞台を補完する意味で映像も観る価値があると認めます。
玉三郎@亀姫の登場は中盤。
舞台に真っ赤な衣装で現れると、客席の空気がまさに一変しました。
声にならない「待ってましたっ!」がじわじわ広がり(これを「じわる」と言うらしい)、待ち侘びていたものを得たときの
満足感や高揚感が溢れ出すような豊かな雰囲気に満たされたのです。
こういう空気を感じたことは、これまでにありません。
亀姫の優美さ、可愛らしさ、妖しさ。
これは一体どういうことでしょう。
七之助とは親子以上の年齢差がありながら、きっちり妹分になりきっているのです。
「要りません~」と拗ねて扇子をポイッと投げ出す様子など、もう見ているほうは全員デレデレになりますよ。
お持たせの生首(以前よりさらにリアルで生々しい)をイタズラっぽい視線で扇子越しに眺める、その無邪気さ。
双眼鏡は完全に玉さんにロックオン。
目が離せないとはまさにこのこと!
人間ではない異世界の美しき魔物。
一方の七之助は現世の人。
これは勘三郎丈をして「玉三郎の兄さんにしかできない」と言わしめたとおりだと唸るほどでした。
あまりに綺麗なので、海老蔵襲名以来、封印していた舞台写真を買ってしまいました。
天守の獅子の傍らに佇む玉さん。
うう、美しすぎるっ。
あまりにもすごいものを目の当たりにして、他が目に入らなくなった私。
図書之助もね~、虎之介君は頑張っているのは伝わってくるのですが、当時空前の人気を誇った海老蔵@図書之助とは比較にならず、
申し訳ないけれど、見ていて気の毒になりました。
美しき魔物から「帰したくなくなった」「たった一度の恋だもの」と絞り出すような言葉をいただける美貌の役者でないと勤まらず、
「天主物語」は非常に難易度の高い演目だと改めて思いました。
うーん、今できるとしたら美少年の染五郎かしら?
しかし、美形の男性にありがちの困った方向(「俺は顔だけじゃない」という自負からなのか、故意に汚くするのは外国の映画俳優にも見られる傾向)
に行っている気がするため、どうなるか。
仁左さまのように「そや、わしはイイ男やで」と開き直って(かどうか不明、私の勝手な思い込み)、「水戸黄門」のようにベタな展開で
美男ぶりを見せびらかしてほしいものです。
「猩々」の松緑もお稚児さんのようでとっても可愛らしかったのですが、最後に「天守物語」で玉さんに撃ち抜かれて他の記憶が吹き飛びました。
それはそれで幸せなことですね。
心残りは双眼鏡越しの玉さんだったこと。
なので、お正月は久しぶりに大阪に遠征して玉さんを最前列で堪能する予定です。
雪とかで新幹線止まったりしないでよ~。