いつだってワークライフバランス

「仕事と生活の調和」を意味する
ワークライフバランス。
より良いあり方を考えるブログです。

六月大歌舞伎・夜の部@歌舞伎座

2018-06-26 | 歌舞伎

本日、無事に千穐楽を迎えた歌舞伎座。

 

確か、吉右衛門の「夏祭難波鑑」を見るのは私は初めてです。

時期も季節早取りでふさわしく、颯爽とした姿の吉さま@団七を真ん前で堪能しました。

激しい動きのあるこのお役、吉さまの年齢を考えると、今後めったに見られそうにはありません。

 

で、思い切って1等席で観劇!

その甲斐はありました。

 

勘三郎が勘九郎時代から得意として、よく上演していたこの狂言は海外でもかけたそうですが、悪党の義父とはいえ、

最大の見せ場が親殺しなので外国人の受けは良くない、という談話がインタビューで紹介されていたのが思い出されます。

 

吉右衛門と仁左衛門とでは殺人シーンの空気が全く異なるのが、本当に興味深い。

仁左衛門はまさに悪の華を咲き誇らせ、凄惨な場面も様式美で華麗に魅せてくれます。

荒唐無稽でもあり、悪いことなのに安心して楽しめるんですね。

 

一方、吉右衛門は心底震え上がるような恐ろしさを滲ませて、見る者を重苦しい気分にさせます。

こういうことって現実にもあるかも、自分だったらどうするかと、見ているほうまで考え込ませるリアルさがあるのです。

殺したくないのに裏切られ追い詰められ、止むに止まれず気がつけば罪を犯していたという人間の弱さ、哀しさを感じさせ、

これまた激しく引き込まれます。

 

殺される舅は全くいいとこなしの悪人で、何でこんな奴からお梶のような娘が生まれたのか、と見るたびに憤慨してます。

今回は婿の菊之助@女房・お梶、孫の寺嶋和史君が団七倅を演じたので、なおさら、この幸せな家族に不幸をもたらす

とんでもない疫病神の舅・義平次を憎らしく見ていました。

思わず、芝居に入り込むってことですね。

仁左さまだったら、どんな場面でもうっとり夢見心地になりますけど。

 

役者によって見せてくれる世界が違ってくるのが歌舞伎の醍醐味。

それを改めて感じた時間でした。

 

「夏祭」目当てでしたが、もう1つの「巷談宵宮雨」もかなり面白い内容でした。

初めての演目だなぁと思っていたら、24年ぶりの上演とのこと。

 

ここに出てくるのは、ほぼ全員悪党。

でも、それぞれにユーモアがあり、客席はゲラゲラ笑って和やか。

と思っていたら最期どんでん返しで皆、死んでしまいます。

 

トンデモ住職の芝翫@龍達が勘三郎を彷彿とさせる過剰な演技で、金の亡者を面白おかしく演じます。

普段、折り目正しく硬い松緑も触発されたのか、小悪党のチンピラぶりを楽しげに発揮し、これがなかなかの出来。

清楚という言葉が似合う雀右衛門まで嫉妬と欲の深い、女房おいちをごく自然に演じていました。

この人、こういう役も行けるんだ! と新発見。

 

こういう役といえば福助姐さんですが、その息子の児太郎は悪役ではなく、薄幸の娘・おとらを可愛らしく勤め、

意外なほど合ってました。

リハビリ中のお父さんに代わってもっと、いろんなお役が巡ってきたらいいねっ! 

 

そんなこんなで、海老さまや玉さんが出るわけでもないのに1等席だなんて、そんな贅沢していいんだろうかと

考えていたことが吹っ飛び、今月も素晴らしい舞台を十二分に楽しんだ次第。

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「着物で京都」の予行演習@結城

2018-06-17 | 旅行

着物で京都散策、憧れますね~。

 

でも、私の友人は京都の旅企画で着物をレンタルして観光中、知らないオジサンから「そんな安物の着物でよく出歩けるね」

と罵られたそうです。

「何、その人? 酔っぱらい?!」と驚きましたが、そうではなく素面だし別に絡んでるわけでもなく、

苦々しく吐き捨てるように言われたとのこと。

 

え~、だって化繊の着物での町歩きを企画・提供したのは京都でしょ?

それ聞いて、外国人観光客ならいいけれど、日本在住者はNGなのか、と考えさせられたことがあります。

 

確かに着物文化が廃れるのはよろしくないし、歌舞伎役者も「着物で観劇」を奨励するくらいなので、

悪意はなく寂しい気持ちから、ついキツイ言葉が出たのかもしれませんね。

 

なので、もしも着物で旅行するなら、それなりにおめかしして行きたいなぁと思うようになりました。

ま、身の丈にあったことしかできませんが……。

 

その予行演習というわけではありませんが、誘われて結城紬の産地・結城に行って参りました。

首都圏から小一時間で行ける紬の名産地。

大宮~小山は新幹線を使って15分! 楽だ~、早~い♪

 

目的地は、つむぎの館

JR水戸線「結城」駅から徒歩10分(迷走しなければ……)。

お茶の社中の人の情報によると、周辺は春の桜が素晴らしく、観光客も少ない絶好の穴場だとか。

 

館内では専門家がお蚕さんの話や実際に糸をどう撚っていくのかなど、実演を交えて分かりやすく説明してくれます。

売店には名刺入れやハンコ入れ、手鏡など日常雑貨などもたくさんディスプレーされていて見るだけでも楽しい。

見るだけとはならず、思わず、両面鏡とハンコ入れを買いましたけどね。

 

長細いガマ口のハンコ入れは、外出時のアクセサリー入れにもいいと言われて、納得~。

落とすと怖いイヤリングなどは電車内で外すことがあるので、ぜひ使いたい!

 

数百円の匂い袋などもある、リーズナブルなラインナップですが、全てれっきとした正絹の結城紬。

帯や反物は買えなくても、これなら楽しく見て回ってお土産も買えます。

 

新社会人のお祝いに名刺入れなんて素敵だわぁ。

これで名刺交換したら、かなりイイ!

男女問わずというか、むしろ男性にこそ合いそうな渋くてカッコいい小物が揃ってます。

 

この時期の着物は、1年のうち6月と9月の2カ月しか着ない単衣です。

出番がないので、ここぞとばかりに私たちも単衣でGO!

 

私は御召でしたが、同行者は結城紬。やるぅ~。

展示物をひと通り見て回った後に、案内の方が遠慮がちに「お着物、結城ですよね」と声をかけ、

「どんどん着てください。体に馴染んでもっと柔らかくなりますよ」と嬉しそうだったのが印象的でした。

 

結城に結城紬で出かけるなんて気が利いてますよね。

とすると、京都に行くときは友禅に西陣か?

粋な紬は似合わない私なので、京都に行くときは柔らかもので、はんなりと決めたいものですなぁ。

コメント (2)
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出張の合間のお楽しみ♪

2018-06-07 | 仕事

5月末、宇治に出張しました。

 

4月あたまから始まった連日の新入社員研修の余韻が冷めやらぬ5月も末ともなると、ようやく平常モードになりまして、

今年の超繁忙期も無事に乗り切れて安堵しているところです。

これで当分、遠出の仕事はナシ。

 

2時間の講演で日帰りだったので、万一の交通機関トラブルに備えて早めに出かけることにしました。

早く着いたら、美味しい京料理ランチでもゆっくり食べたらいいしね~。

と思っていたら、出張直前にNHK「ブラタモリ」で宇治を取り上げていたのに触発されて、プチ観光しちゃいました~。

 

京都は何度も行っていますが、いわゆる「洛中」で終わってしまい、実はJR奈良線を使えばすぐの宇治に行くのは初めて。

 

まずは宇治駅から徒歩10分で行ける、平等院へ。

塗り替えが終わって綺麗になっていましたが、あまりにも整然とし過ぎて、私はあまり感銘を受けませんでした。

でも、世界文化遺産に登録されている観光スポットですから、自分の浅薄な知識で好き嫌いを言うのではなく、

足を運んで実際に見ることができたのは良かったです。

 

平等院からほど近い、宇治橋たもとにある平安時代から続いているお茶屋さんが実は今回のお目当て♪

 

とても小さなお店ですが、ちゃんと喫茶室もあり、店の外には歌舞伎に出てくるような、ソフトクリームでもなめながら

ちょっとくつろげる、いわゆるテラス席(?)もあります。

せっかくなので、喫茶室で抹茶フロートを注文。

暑い日で、小さく砕かれた氷をガリガリ音を立てて食べました。

んまぁ、お下品。

 

何といっても新茶の季節! 仕事前だというのに、買いまくりましたよ~。

幸い、お茶は軽いし薄いので、ビジネスバッグに詰め込んで、大きな紙袋を下げて会場に行くのは避けられました。

だって、仕事前なのに遊びに来とるんか?! とお客様に思われたら困りますから。

 

それにしても、さすがお茶の名所・宇治!

そのお店だけでなく、お茶屋さんがものすごくあるのね~。

お茶の稽古で馴染んでいる「神林」も「神林一筋の店」とか看板が出てまして。

思わず、フラフラと引き寄せられそうになり……。

 

幸い、講演会場も近かったため、いろいろ立ち寄ったわりには時間の余裕がありました。

観光や買い物の疲れを引きずって仕事に入るなんて、とんでもないことですからねぇ。

 

私は通常、出張の前後に観光や遊びを絡めたりしません。

旅行のときは服装もそれ用に、ONとOFFをきちんと切り替えたいので、服だけでなく靴もバッグも時計さえ

遊びのときに仕事用のは使わないことにしているのです。

実際、平等院の砂利道にパンプスは難儀でした。

 

でも、今回のように仕事のために早めに現地に入り、生まれた時間を有効に活用するのもささやかなワークライフバランス?

お陰で、京都・宇治愛にあふれた態度で仕事に臨めた気がします。

 

宇治駅前にあるポストは茶壺。

うーむ、さすがでございます。

こういう状態にしたのをお茶の炉の季節になると、「口切り」といって上の白い封を切って、新茶を楽しみます。

5月に摘んだ新茶を10月まで壺の中で熟成させて、11月に「茶人の正月」ということで開封するわけです。

 

ホームでは男子高校生が自販機から出した缶を振って、おいしそうに何か飲んでました。

ものすごく暑かったので、電車があと1分で来るのに思わず駆け寄り見ると、宇治抹茶ゼリー飲料。

こんなんアリ?! 甘党でない私だから知らないだけ??

勢いで思わず真似して買ってしまったけれど、仕事後の疲れた頭に持って来いの、ほのかな甘さとお茶の優しい苦みが

マッチした絶妙なお味でした。

 

こんな日帰り出張もいいね! と思える充実の1日♪

 

http://shu-ha-ri.co.jp/

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六月大歌舞伎・昼の部@歌舞伎座

2018-06-03 | 歌舞伎

初日だというのに、いつになく空席が目立つ歌舞伎座。

やはり、襲名や追善などのイベントがないと、最近はなかなか客が入らないようです。

 

周囲からも歌舞伎座への足が遠のいたとの声が聞こえてきて、寂しい限り。

かくいう私も必ず毎月昼夜観劇していたのが優先予約権が得られる公演数の目途が立つと片方だけの月もあります。

 

この状況は立て続けに幹部俳優、人気役者が他界したことと無縁ではないでしょう。

 

今月昼の部では、次代を担う菊之助が「文屋」と「野晒悟助」の両方に出演していますが、どちらも立役。

彼は最近、立役が多いですね。

 

立役も女方も兼ねる音羽屋の御曹司なので、意欲的なのは立派だと思いますが、三之助(菊之助・新之助・辰之助)

時代には美しく可憐な女方が多かった菊ちゃんが女方で登場すれば観客動員数が違ってくるのでは、と思うのは私だけ?

 

一方、お父さんの菊五郎は立役のほうが断然カッコいい!

 

「野晒悟助」は初めて見る演目でしたが、河竹黙阿弥らしい面白いストーリーで2時間近い長さを感じさせません。

生きのイイ侠客・悟助は「青二才」といわれる若者ですが、スキッと伸びた背に堂々と歩く姿は貫禄たっぷりで、

二人の娘のみならず、その親からも惚れられる男を小気味よく菊五郎が演じています。

長い台詞も初日からしっかり入っているのはさすが!

 

今は男も女もではなく、まず片方を揺るぎのないものにしてから、もう片方にも重点を移していく方法が望ましいと

著名な評論家や歌舞伎役者の重鎮が語る「菊之助評」が頭をよぎります。

 

そうそう、やっぱり男っぽく粋な菊五郎には立役、上品でおっとりした菊之助は女方をメインにやってほしいのよ。

 

他には、見慣れた「妹背山婦女庭訓」が意外や新鮮でした。

恋に身を焼くお三輪を、時蔵さんで見るのは初めてでしたが、とてもいい!

玉さん演じるポカンとした、年若い娘という雰囲気のお三輪も可愛くて好きですが、時蔵のは恋する男への執念が物凄い。

 

刺されて瀕死の場面では「生き変わり死に変わり……」と呪いの言葉を吐くのですが、大熱演の大迫力で怖いよぉ~。

この怨念に通じる執着心は、町人の娘が大胆にも男を追って御殿に乗り込むプロセスと合致して、説得力があります。

すさまじい様子ですが、時蔵さんならではの典雅な雰囲気は壊さず、格調さえ感じさせるのは素晴らしい。

 

彼なら、今は玉さんしかできないという「阿古屋」もいけるんじゃないかな。

 

毎朝、楽しみに読んでいた朝日新聞の連載小説『国宝』が先月末に完結し、その最終回が終演後、阿古屋の衣装のまま

歌舞伎座前の道路に飛び出した主人公・喜久雄が死ぬ(?)という切ないものだったため、

女方の最高峰「阿古屋」のことをちょうどここ数日考えていたせいか、時蔵さんの阿古屋も見たいとふと思ったわけです。

 

次世代組としては菊之助が筆頭だと思っていましたが、今の流れからいくとそれはなさそうな感じ……。

 

空席の目立つ歌舞伎座、『国宝』の理不尽な最終回でやや気が滅入っていた初日の私。

いけない、いけない! 来週は吉さまを最前列で拝見して気分を盛り返さなくては。

 

26日千穐楽。

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