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三月大歌舞伎・第二部@歌舞伎座

2021-03-31 | 歌舞伎

テレビで吉右衛門の能舞台での「熊谷陣屋」を見た後に、仁左衛門のを見ると

二人の役者の人物造形の違いが鮮明で、本当に興味深いものでした。

 

吉右衛門の熊谷直実は、義経に対して「あなたの命令どおりにやりましたよ、これで良かったんですよね」

と迫る場面に忠誠心だけではないものを感じさせます。

 

子殺しは院のご落胤・敦盛を救うためでもありますが、とりもなおさず自分と妻が若い時分に世話になった

敦盛の母親・藤の方への返礼でもあります。

しかし、同じ子を持つ親である藤の方なら昔の借りを返せとばかりに身替りを頼みはしないでしょう。

 

一方、義経は苦渋の決断とは言え、何となく薄情に感じられて共感できないものがあります。

直実が戦の最中なのに出家を願い出ると、「武士が戦場で戦うのは家のためで、家を継ぐ子を亡くした今

出家する気持ちも分かる」と物分かりの良いところを見せますが、「え~、分かってて命じる?!」と

思わずにいられません。

出家は暗に実子殺しを強いた主君・義経への無言の抗議かと思わせる、吉右衛門@熊谷直実(独断と偏見!)。

 

仁左衛門@熊谷直実は吉右衛門より文人系というか、根っから武将という感じでなく、

理不尽ながら従わざるを得ないという「寺子屋」の源蔵的な人物に思えました。

源蔵も他人の子を、主君の子の身代わりに殺めたからには自分たちものうのうと生きてはいられない

と思っています。

寺子屋の師匠にとって、通ってくる子供たちは「我が子も同じ」なわけですから。

その子を手にかける苦しさ、辛さに通じるものを今回、感じました。

 

残念ながら、もっぱら松王丸ばかりで仁左衛門の源蔵を見たことはありませんが、

もしも、演じるならやはり「苦悩する人」が前面に出る気がします。

 

揚幕のすぐそばに陣取っていた私は、ラストで仁左衛門が花道から耳を覆って走り去る全てを

見ることができました。

 

仁左さま、泣いてました。

出家すると決めたのに、陣太鼓の音を聞くと体が反応してしまう自分が忌まわしいという様子で

何もかも振り払うかのように、逃げるように引っ込みました。

何て哀しい、と思わずにいられない最期です。

 

もう一幕の「直侍」は菊五郎の当たり役で彼の直次郎しか見たことがないほどの定番。

 

雪が降り積もった設定の花道を、筋肉隆々のふくらはぎ丸出しの裾からげで出てきます。

うーん、決まってますね~。

菊五郎って努力しているところを見せたくないタイプのようですが、年齢的にこれだけの体を

維持しているだけでも普通じゃないっ!

 

歌舞伎会の会報誌に時蔵さんの談話が載っていて、今の状況で吸い付けタバコを渡すのはどうか

と悩まれていました。

以前、渡す前に煙管を拭うと菊五郎から「水くせぇことするなよ」と言われたそうで。

さすが、江戸っ子ですなぁ。

恋人同士なので、確かに水臭い、無粋よ~。

でも、見ている客がどう思うかを考えてやり方を工夫されたようで、実に自然な煙管受け渡しの

場面になっていたのは、さすが。

 

安心して、ゆったり見ていると後半でアクシデント発生?!

逃亡前に、恋煩いで病んだ三千歳の元に忍んで出かけますが、彼女の部屋で連れて逃げて、

いや、できねぇ、そんなら殺してともめる場面で菊五郎が立とうとしているのに立てないのです。

足がバタついてる……。

 

何度も見ている芝居なので、ここで直さんがこんなにグズグズにはならないと記憶している私は

ものすごく焦りました。

心なしか、時蔵さんが縋りつく演技で支えているような。

 

最後にまた一人で花道を去って行く場面は無事に終えて、幕。

でも、何となく出の時より足取りが弱々しく感じたのが私の思い過ごしでないことを祈ります。

幸い千秋楽まで勤めあげられたようなので、無用な心配だったと思いたい、うん、そうに違いない。

 

大御所たちの素晴らしい芝居を今後も見続けたいと願っています。

5月の「勘平」も頼みますよ~、待ってますからね~。

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三月大歌舞伎・第三部@歌舞伎座

2021-03-30 | 歌舞伎

今月も無事に千穐楽を迎えて、とならなかったのを吉右衛門休演のニュースで知りました。

 

数日前には第二部の奏者の中から新型コロナウィルス感染者が一名出たため、二日間の休演。

松竹はリスクマネジメントがしっかりしていて、各部で役者はもとより奏者からスタッフまで全員

総入れ替え制のため、全館休演にしなくても当該舞台のみ閉じれば済むようになっています。

 

終盤の公演で最小限の休演に留められたのは、不幸中の幸いでした。

私は第二部をその前の週末に見ていたため、仁左衛門の「熊谷陣屋」を見逃さずに済みましたし。

 

「薄氷を踏む思い」というのが、まさに現在の松竹の心境かもしれませんね。

客としても、一幕一幕を大切にしっかり心に焼き付けたいと真剣になります。

 

第三部では、吉右衛門は「桜門五三桐」の石川五右衛門役で全体15分間のご登場。

南禅寺の上から「絶景かな絶景かな」とゆったりと放つ台詞はやっぱりいいっ!

 

ただ、私は気づきませんでしたが、後方のお客さんが「何だか後ろから支えられているみたいだった」

と心配そうに話すのを耳にして、1月途中休演の原因がまだ影響しているのかと気にはなっていました。

 

わずか15分間でも登場するだけでパッとあたり払う華やかな雰囲気の吉右衛門@五右衛門は

何回見てもいいものです。

5月も現時点ではご出演予定なので、必ず見に行きますっ!!

 

もう一本は玉三郎と鴈治郎の「隅田川」。

今回は趣向を凝らし、日程を分けて玉三郎が2バージョンにご登場♪

 

Aプロ「隅田川」、Bプロ日程では玉さん一人で美しい芸妓やお姫様として踊り、どちらにするか

かなり悩みましたが、「隅田川」は鴈治郎のお父さん・藤十郎の鴈治郎時代に一度見た記憶があり、

玉さんとの違いを見たくてAプロを選択。

 

誘拐された子供を探す母親と、それを行きずりの船頭が見守る哀しいお話です。

舞台道具は最小限で、シンプルだからこそ母親の辛い心情が際立ちます。

 

故・藤十郎丈はまさに半狂乱になって子を探し求め、かどわかされた挙句に亡くなってしまったと

知ると激しく感情を表しました。

一方、無機質な魅力の玉さんは呆然自失となり、心身共動きはあまり激しくありません。

 

どちらも子供を失った親の悲しみを体現していて、同じ演目を異なる役者で見る楽しみを

満喫できました。

 

あまり取り乱さないからこそ伝わってくる、深い悲しみというものもあるでしょう。

そんな玉さんを見守る鴈治郎@船頭の控えめで慈愛に満ちた接し方は胸に迫るものがあり、

スンスン泣いているお客さんもいました。

土饅頭のような粗末な子供の墓に手向けるようにと、花を摘んできて渡すところは秀逸。

 

この人のふくよかで、上方特有のおっとりした様子は品がよく、こうしたお役も合うなぁと

発見すると共に、必ずお父さんと稽古をしたに違いなく、鴈治郎自身が父親への思いも秘めて

勤めているのかもと勝手に考えたりしました。

 

今こうして歌舞伎を見ることのできる幸せに感謝しなくてはと思わずにいられない

心に残る第三部でした。

 

29日千穐楽。

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歌舞伎名作入門「時今也桔梗旗揚(ときはいま ききょうのはたあげ)@国立劇場

2021-03-29 | 歌舞伎

大河ドラマ「麒麟が来る」のテーマ曲と共に花道から登場する、鶴屋南北の弟子を名乗る亀蔵さん。

こんなことができるのも、国立ならではか?

 

今回は歌舞伎名作入門「歌舞伎の明智光秀」というサブタイトルがある入門講座で、解説後に本編上演

という流れで行われるのは知っていましたが、グーグルマップで本能寺や醍醐寺まで映し出す念の入れよう。

面白おかしく講談師のように喋る亀蔵を「もったいない」と評している新聞劇評もありましたが、

こんな時期だからこそ、歌舞伎入門講座のような工夫は大切ではないでしょうか。

 

京都にはほぼ毎年1回は出かけますが、同じところばかりを訪れるため行ってない場所も結構あって、

光秀が本能寺討ち入りの前にお御籤を引いたと言われる愛宕神社には次回、必ず立ち寄ろうと決めました。

そんなことを考えさせる導入を経て、いよいよ討ち入り前の経緯を披露していく展開は面白い趣向です。

 

光秀は菊ちゃんのいわゆる「ニン」ではないものの、岳父・吉右衛門の当たり役(一体いくつあるのか?!)

を丁寧に引き継ぐのは意義あること。

 

発声術なのでしょうか、低音で唸るような場面では吉右衛門とそっくりの声で驚かされました。

自分に合わないお役でも、挑戦すれば勉強になることが多々あるはず。

しかも、吉右衛門から文字どおり手取り足取り教えてもらえる幸運を生かさないってことはあり得ません。

 

濃い紫の衣装をまとった菊ちゃんは光秀としては美しすぎるかもしれませんが、奮闘しているせいか

見ていて違和感は全くありませんでした。

 

ただ、自分が欲しがっていた名刀を目の前で、春永(信長の劇中名)が光秀の縁故で家臣になった者に

下賜するのを見て「お羨ましいことで……」と呟く無念さは吉右衛門には及びません。

 

私はいつもこの場面で「ダメだよ~、そんなに怒らせて、そのへんにしておかないと殺されちゃうよ」

と心の中で春永の説得にあたりたくなります。

 

吉右衛門のどす黒いまでの暗さ、粘りつくような執念は本当に鬼気迫るものがあって、恐ろしい。

決して大袈裟に演じるわけではなく、台詞ひとつで「これはかなり来ているっ!」とビビらせる効果絶大。

貧しい時代に妻が売った切り髪を春永に突き付けられたのも謀反への導火線かもしれませんが、

武将としては名刀に恋着した挙句にあしらわれて、のほうが侮辱だと感じるのではないかと思えるのです。

 

暗く沈んだ情念みたいなものは、菊之助のような大切に育てられた御曹司では醸し出せないのかも。

芸の力だけではなく、やはり役者の個性は確実にお役に出ます。

それを承知の上で果敢にこの役に初挑戦した菊ちゃんは本当に素晴らしいし、偉いなぁと感心します。

 

それにしても、彦三郎@春永の大音声の迫力のあること。

彼の声や口跡が良いのは誰もが知るところですが、前から3列目(最前列は空けてるので実質2列目)

で近いせいではなく、張りがあってバリバリと響く声が春永の威勢を物語っているかのよう。

 

去年の浅草歌舞伎以来、ご無沙汰だった新悟ちゃんも光秀の妹役で予想以上に出番が多く、

かなり満足度の高い舞台でした。

 

3月27日千穐楽

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最期のお別れが叶わない異常事態を実感

2021-03-18 | その他

身近にコロナ関連の被害を被っている人がいない私は、ニュースもどこか他人事でした。

しかし、妹の嫁ぎ先のご不幸で、お通夜にも行けず告別式にも列席できない体験をしました。

 

ご病気で他界されたわけではないのに、さまざまな制限があるのは報道のとおり。

起業前に相談にのっていただいたり、社中開催の花展にわざわざ駆けつけてくだっさたり、

親戚として私も大変お世話になったので、最期のお別れをしたかったのですが……。

 

救いは、妹から「とても穏やかで綺麗なお顔で、眠っているようだった」と知らされたこと。

 

お香典は妹に預けて、四十九日ご法要にはお花を送ろうと考えていたところ、「無事法要を営みました」

のお手紙を私が予定していた数日前にいただき、「あ~、きっかり49日後に行うわけじゃないのよね」

と慌てて手配済みのお花を止めました。

 

本当に、何もかもひっそりと済まされたようです。

喪主として気丈にあれこれやっているうちは感じない寂しさが身にしみるときもあろうかと、

供花の代わりではありませんが、喪主宛てに癒しのお花を贈ることにしました。

 

なじみの花屋さんに相談してお任せすると、今が旬のお花をアレンジしてくれました。

 

花材は啓翁桜、チューリップ(アップピンク)、スイートピー(紅式部)、ラナンキュラス(綿帽子)等。

メッセージカードでなく、少し長めのレターを添えて……。

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二月大歌舞伎・第二部@歌舞伎座

2021-02-28 | 歌舞伎

仁左&玉をたっぷり楽しめる、何て嬉しい第二部♪

 

「土手のお六」ではあばら家に住む小悪党夫婦、一転「神田祭」では目にも鮮やかな芸者と鳶頭。

そうそう、これでなきゃね。

汚いなりのお役も面白いけれど、二人が揃うなら美しいお姿を堪能したいというのはファン共通の願いのはず。

それをよーく心得た演目、さすがです。

 

ラストで、玉三郎@土手のお六と、仁左衛門@鬼門の喜兵衛が収穫ナシの空の籠を担いで花道を去っていく

情けない場面も二人なら惨めでも何ともなく、笑えます。

普段は美男美女でならす役者が、バカにされながら籠を担ぐさえない役をやるからこそ、意外性があって面白い。

 

お上品な玉さんの口から、蓮っ葉な台詞が飛び出すと客は大喜び。

仁左さまがドスのきいた声で「15両ぱかしの目腐れ金」と吐き捨てると、その崩れた様子に

退廃的な香りが漂ってウットリとなります。

 

周りも権十郎や彦三郎などの確かな芸の役者が固め、寺嶋しのぶの愛息・眞秀君が出ると

世話物らしく楽屋ネタも飛び出し、楽しい雰囲気を盛り上げます。

 

「しのぶママからしっかり仕込まれているからね~」と言われる眞秀君。

もう少し大きくなったら、きっと嫌がるだろうけど、今はしのぶママを喜ばせてあげたらいいよね。

 

それにしても、「神田祭」の玉さん@芸者の美しさは特筆モノ。

新聞劇評で「初演から半世紀以上を経て、依然変わらぬ美しさ」と称えられるとおり、

もはや人間の域を超えてます。

いくら土台が良いと言っても、ここまで美を維持していること自体が奇跡的。

仁左さまもスッと粋で、上方というよりお江戸の雰囲気を醸し出しているのは、この人なら自由自在か?

 

15分の幕間に三階の様子を見に行くと、久しぶりにトイレの外に長い行列ができているのを発見!

私は以前から、三階トイレの行列の長さで客の入り具合を測っていて、この1年はそれが見られず悲しかった。

 

観客数は半分に絞っていますが、間違いなく満席になっている証拠です。

そのせいでしょうか、4月の第三部もお二人がたっぷりご登場とのこと。

 

私の仕事は4月が1年で最も忙しい時期ですが、月末にでも絶対に良い席で見る!

それを楽しみにハイシーズンを乗り切るつもりです。

楽しみは続く♪

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