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「仕事と生活の調和」を意味する
ワークライフバランス。
より良いあり方を考えるブログです。

大名茶人 松平不昧と天下の名物ー「雲州蔵帳」の世界@畠山記念館

2018-05-27 | 美術

茶の湯の世界に接したことがあれば知らない人はいないと思われる、松江の不昧公。

その方の没後200年ということで、白金の畠山記念館と日本橋の三井記念美術館両館で

「大名茶人・松平不昧」の特別展が同時開催中です。

 

今回の展示会で初めて畠山記念館の存在を知り、まずはそちらに行ってみようと。

 

嬉しかったのは、お道具の解説が非常に充実している点。

誰が所有してきたか、そのすべての来歴が細かく記されているのが興味深く、「ああ、これが信長の好み」「秀吉らしい」

などと勝手に感じながら、じっくりと鑑賞してきました。

 

以前、上野の国立博物館で見た信長所有の茶壺、今回初めて拝見した、本能寺の焼け跡から拾い出された茶入

「円乗坊(えんじょうぼう)」のどちらもどっしり、たっぷりした姿で信長の好みに共通性を見出せます。

 

一方、不昧公が「茶会に決して使ってはならない」と厳命したという天下の名品「油屋」は、秀吉が所有した優美な茶入です。

後に不昧公が1万両以上するものを格安で買ったと大喜びしている逸話も記された、まごうことなきお宝。

艶々として華やかながらも上品で、遠目に見ても立派な茶入だなぁと嘆息するような逸品です。

 

「円乗坊」も「油屋」も「肩衝(かたつき)」と呼ばれる形の茶入ですが、雰囲気がまるで違うのは非常に面白い。

人物像とは異なり、茶道具の好みは神経質そうな信長のほうがむしろ武骨で、足軽からのし上がってきた秀吉は

意外にもはんなり綺麗なものがお好きだったのかも。

 

なんだか、分かる……。

私は国宝だ重文といわれても、いびつな織部の型や色はどうも苦手。

お茶の先生からも、「あなたは『綺麗さび』が好みね」と指摘されたことがありまして。

 

茶道具の好みは実に人それぞれで、天下人や大名はそれこそ大変なこだわりがあっただろうと改めて思いを馳せた次第。

 

千利休直筆のお軸など、茶道に親しんでいなくても誰もが「おお~っ」と思える充実の展示物のほとんどが間近で

拝見できる贅沢な空間なのも素晴らしい。

 

お道具を拝見した後は、明治天皇の行幸もあったという手入れの行き届いたお庭を散策し、GW限定で公開された

茶室で呈茶体験♪

資料によると庭園には6つの茶室があり、毎年、そのなかの1つを期間限定で公開しているとのこと。

 

今回は「新座敷」という、高いところに階段を使って昇って行く見晴らしの良い茶室が使用されました。 

床の間には、横一行の「波和遊(はわゆう)」のお軸。

お薄の提供だけでなく、記念館の方がとても分かりやすく説明してくださり、掛け軸の由来を知りました。

 

 

記念館の名前にもなっている、荏原製作所を興した畠山即翁氏のどことなく可愛らしさも感じさせる筆による掛け軸は、

ロックフェラー来日の折、茶会を開き、そのときに掛けたものとのこと。

「遠い波の向こうの国から、ようこそ遊びに来てくださいました」「HOW ARE YOU」の言葉遊びとは粋だねぇ!

漢字三文字に込められた、何てステキなオヤジギャグ?!

 

茶室ではないけれど、会期中、呈茶もあるそうです。

新緑の美しいこの時期に訪れるには最高の素敵な会館。

 

不昧公が「天下の宝」と分類したのは、「名物は単に一個人や家、国のものではなく、人類の宝」であり、

優れた美術品を後世に残すことが自らの使命だとの考えからだといいます。

畠山即翁氏も同様で、私財を投じて作ったのがこの贅沢な私立美術館。

 

人類の貴重な宝を、財力のある経済人が奉仕の気持ちで「形」として残すという使命にかられて集めたものだからこそ、

お宝たちは、さらに輝きを増すのでしょう。

 

6月17日まで(三井記念美術館も同じ)。

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團菊祭五月大歌舞伎・夜の部@歌舞伎座

2018-05-26 | 歌舞伎

夜の部のメイン「弁天娘男女白浪(べんてんむすめ めおのしらなみ」。

主役の弁天小僧・菊之助を演じるのは息子の菊之助ではなく、人間国宝の父・菊五郎です。

 

菊五郎の艶やかな声に、まったく衰えなし。

そりゃ、外見的には婚礼準備で呉服店を訪れる武家の息女という設定はやや厳しくても、歌舞伎に役者の年齢は無関係。

むしろ、芸が練り上げられているため、「予定調和」を楽しめる良さもあるのです。

 

ところが、今回は團菊祭ということで、ラストで「立ち腹を切る」ところまでやると知り、驚きました。

 

3階の最前列正面の席を確保し(海老さま@日本駄右衛門の登場場面が少ないからでは決してない)、

弁天小僧菊之助が屋根に上って乱闘の挙句、そこで立ったまま切腹して果てる最後の最後、屋根がせり上がり、

裏手に投げ出されるまでの全てをしっかり見ることができました。

 

この演目では3階席が絶対いい。

1階席だと高い屋根を下から見上げる形になるため、屋根が反っていくと役者の姿はすぐに客の視界から消えますが、

3階席は上から舞台を見おろす形なので、ずっと見ていられるのです。

 

そこを役者も心得ていて、ギリギリまで踏ん張るわけですが、これは立ったまま体が後方斜めにゆっくり傾いていくため、

菊五郎の年齢では相当なハードワーク。

 

落ちていく直前にはかなり傾斜がついているので、菊五郎の足元が少しふらつきました。

でも、腹を切ってすでに瀕死の状態で、ふらつくのはむしろ自然。

見事な最期でした。

 

こんな過酷なお役を今日まで25日間、お怪我もなく元気いっぱいに勤められたことに菊五郎の役者としての

技量と意地の深さが感じられました。

歳をとろうが怪我をしようが、自分の持ち役を奪われるのは我慢ならない、それがたとえ実の息子であっても……。

 

亡き勘三郎丈や團十郎丈がよく口にされていた言葉です。

菊五郎もそうなのでしょう。

 

確かに、菊五郎の弁天小僧と左團次の南郷力丸のコンビで登場されたほうが、菊之助と松緑コンビよりも断然楽しい!

まだまだ観客の大半は、そう思っているのではないでしょうか。

だからこそ、連日大入りのお客様。

 

本当にお疲れ様でございました!

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最近の葬儀事情

2018-05-24 | その他

先日、茶道の講習会で「師との別れ」についてのご講話を拝聴したばかりだというのに、早くも現実になってしまいました。

お茶の師匠ではありませんが、私が最も尊敬する師との辛い別れです。

 

ご主人様から永眠された旨を知らされ、「最期のお別れはできますか」と尋ねたのですが、近親者のみで送りたいとのこと。

 

最近は、こうした密葬が増えましたね。

密葬では香典はもちろん、供花や弔電さえも「遠慮します」と言われることがあり、その場合は先方のお考えに

従ったほうがよいでしょう。

今回、私も葬儀のお取り込み中を避け、日をおいて御霊前へのお花をお送りしました。

 

冠婚葬祭の中で唯一、葬儀だけが突然起きる人生最期のイベントです。

訃報を聞いた人に迷惑がかからないように、身内だけで葬儀をするという考え方が一部で一時ありましたが、

最近はどうも少し違うらしい。

 

大勢の他人につめかけられると、心から死を悼んでお別れができないというご遺族のお気持ちや、

「闘病で別人のようになった姿を見せたくない」という亡くなったご当人の遺志もあったりするようです。

今回、私が遭遇したのがその後者。

 

大変お洒落で素敵な先生だったので、入院されているときから親戚のお見舞いさえ拒み、ご家族だけが見舞うという

状況でした。

 

ただ、少し落ち着かれたご主人様と昨日、ランチをする機会を得て闘病中や最期のご様子をうかがうにつけ、

「行かなくてよかった」という気持ちが心の底から湧き上がってきました。

 

遺影に使われたという先生のお写真をくださり、手に取って拝見していると生前の先生の華やかで明るいお姿が偲ばれ、

思わず微笑みがこぼれました。

辛いお姿を見せたくないというお気持ちは、実は弟子への思いやりでもあったのでしょう。

 

綺麗で優しく、知的な先生の笑顔だけを記憶に留めよう。

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團菊祭五月大歌舞伎・昼の部@歌舞伎座

2018-05-23 | 歌舞伎

通し狂言「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」は海老さまが5役を勤める、必見の演目。

 

前回は確か、新橋演舞場で上演されたと記憶していますが、今月は團菊祭ということで成田屋の今や旦那の海老さまが

最初から最後まで、出ずっぱりで奮闘していました。

ああ、何てお得なんでしょ。

 

歌舞伎座2階には成田山新勝寺からお不動様も御目見えで、開演の口上で海老さまが「邪気を払う、ぜひお参りを」と

熱く語った効果で全ての幕間で大混雑のため、見ることすら叶いませんでした。

そこで、後日、夜の部を拝見した際にしっかり拝んで参りました。

ここでは空いてた~♪

 

内容的には歌舞伎十八番の「鳴神」「毛抜」は数えきれない回数を見てきましたし、前述したように通しでも見たので

新鮮味はありませんでしたが、ここぞとばかりに最前列中央に陣取り、鳴神上人の迫力を目の当たりにできたのには感激!

やはり、海老さまは鳴神が適役です。

 

ただ、陰陽師の安倍清行があまり美しくなかったことに、「え~?!」とやや失望。

従者が「お若く見えても百歳を超えてる」と言いますが、そこは尋常ではない陰陽師なので、年齢に関係なく美しく

あってほしいというのが観客の願い?

少し太ったのかしら、それとも老けが入ってきているのか。

 

玉さんや仁左さまのいくつになっても美しい容姿を考えると、加齢は言い訳にならないのよねぇ。

歌舞伎役者は「顔・声・姿」といわれるように、顔は筆頭。

いつでも、大好きなホッソリうりざね顔を見たいのです。

 

一方、死んであの世に行っても冥界の王になりたいと願う、権勢欲の強い早雲王子はなかなかイイ感じでした。

 

二枚目が普通に綺麗に演じても、面白みはありません。

悪役だったり、情けない役を、大きく演じてほしいと願います。

そう、お父様の團十郎丈のように。

 

十二世市川團十郎五年祭でもあった、今回の團菊祭。

他界されてもう5年経ったのだと感慨深いものがありました。

 

26日千穐楽。

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ボタン、シャンシャン、プーシキン

2018-05-01 | 美術

ボタン(牡丹)、シャンシャン(香香)、プーシキンと韻を踏んだような、この3つ一挙に上野で満喫してきました。

 

「プーシキン美術館展」(於・東京都美術館)は久しぶりに質量共に満足できる、充実の作品群。

日本人が大好きなモネの作品もたくさん展示されていて、「綺麗ねぇ~」と皆さん、つぶやきながら幸せそうに

鑑賞されていました。

 

会場入り口にはモネの「草上の昼食」の大スクリーンが張られ、見る者を絵画の世界にまさしく誘う素敵な仕掛け。

あれ? 「草上の昼食」はマネじゃなかった? と一瞬考えた私は、モネの「草上の昼食」を知らなかったわけです。

 

オルセーが誇るマネの「草上の昼食」。

3回パリに行って3回、見た大好きな作品です。

 

裸体の女性が「裸ですが何か?」といった飄々とした視線をこちらに投げかけてきます。

別に開き直っているわけではなく、厭らしくもなく、ごくごく自然体なんですね~。

とても刺激的なシーンなのに、登場人物全員が淡々とした印象を与えるところがお気に入り。

 

この絵を見た若き日のモネが触発されて描いたのが、モスクワのプーシキン美術館所蔵の「草上の昼食」。

あ~、全然違う。

モネらしく女性は優雅なドレスをまとっています。

こちらもいいですねぇ。

綺麗なので、当然のごとく絵葉書ゲット♪

マネのは葉書として使うには、少々はばかられるかも。

 

海外で美術館を訪れると、教科書に載っている名画がズラズラ並び、息つく間もないほど興奮しますが、

解説はないし、あっても意味は分からないし、自分で勉強して予備知識を仕入れて出かけるのが最良と分かっていても

できない私のような人間には、日本開催の美術館展は大変ありがたい。

 

他にもセザンヌ、ルノワール、ルソー、シスレーやコロー、ピカソやマチスまで、日本人になじみのある巨匠たちの作品が

数多く展示され、リラックスして楽しめる内容です。

これほど素晴らしくも大規模な蒐集をされたロシアの大富豪たちに、遠く日本より感謝!

 

芸術もいいけれど、この時期、上野ではシャンシャン人気が再燃?

大型連休中は整理券配布でなく、抽選だとか。

私、2回目のシャンシャンを前回よりも長くじっくり、近くで見てきました。

なので、今回は写真を撮る余裕もあったのですが……。

 

発光禁止の設定にしていたのに光ってしまって、「ぎゃぁ~、光った! 何で?! シャンシャン、ごめん!」と

思わず悲鳴を上げてしまい、係員さんは注意もできず苦笑い。

本当に失礼しました……。

 

何か、ウロウロ回っておしっこする場所を探していたようで。

赤ちゃん連れのお母さんと同じグループ(1グループ4~5人ずつ正面に立たせてくれます)だったので、

お母さんが「パンダちゃん、チーしたいのかな、あ、チーしてるね」と赤ちゃんに話しかける声が聞こえてきて和やか。

 

うーむ、排泄する姿までもが愛らしいとは、恐るべきシャンシャンの魅力。

 

シャンシャン観覧後は入苑料700円を払って、上野公園敷地内にある「上野・東照宮」のぼたん苑を散策。

これまで何度も入ろうかどうしようかと迷って、入苑したことのなかった場所です(ケチ!!)。

まぁぁ、なんて美しいんでしょ!

 

今年は花が何もかも早咲きなので、ちゃんとあるのか疑心暗鬼でしたが、さまざまな品種の牡丹とシャクヤク、山野草も

見事に咲き誇っていました。

大きなツボミをたくさんつけていたので、GW中は十分もつと思われます。

近場でも、こんなにいろいろお楽しみスポットがある上野界隈、お勧めです!

 

「プーシキン美術館展」7月8日まで。

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