
いつもお世話になっている松竹が創業130年とはおめでたい!
その御祝なのか昼夜とも新作歌舞伎、古典、世話物いろいろかかってありがたいことです。
ところが、美少年の誉れ高い染五郎主演の「木挽町のあだ討ち」を楽しみにしていたのですが、これがどうにも薄味でやや期待外れ。
いつも感じるのですが、染五郎、化粧濃すぎ!
綺麗な顔立ちなのに、そんな口紅を赤くしなくても白塗りにしなくても、いやむしろ化粧で顔を隠さないほうが絶対に美しいはず。
誰か言ってやれよ~と思わずにいられない。
直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した原作の小説は面白いのでしょうが、短くまとめた歌舞伎ではテンポが悪く今ひとつ面白みに欠けました。
重要な役どころである中車@下男作兵衛も歌舞伎の匂いが薄まった気がして、残念。
いくら新作でも、これじゃテレビの時代劇ドラマです。
猿之助と共演していた当時は、いとこ同士の気安さでおそらくビシビシしごかれていたのではないでしょうか。
見るたびにうまくなり、幕間でも客は口々に「中車いいよねぇ」と褒めていたのに。
本当に歌舞伎って誰と組むかでこんなに違ってくるんだ、と座組の重要性を今さらながら思い知らされた気分です。
「黒手組曲輪達引(くろてぐみ くるわのたてひき)」は「助六」を模したものですが、主演の幸四郎の声が通らず分かりにくいし面白くない。
終演後、「何だかよく分からなかったね」という話し声が聞こえてきました。
分からなくてもただ歌舞伎の様式美を眺めるだけで満足という演目もありますが、そういう内容ではないし。
久しぶりに途中で寝てしまい、今月昼の部は外れだった! と滅多にない複雑な思いにかられた帰り道。
幸四郎の大谷翔平ギャグは退屈で「それをやる意味は?!」と聞きたい……。
唯一の救いは白鴎の存在。
お身体の状態が良くないようで正座するのは難しいのでしょうが、正座して見える仕掛けと工夫がすごい。
大道具さんたちも知恵を絞って何とかご出演願いたいと、これまでにないことをしている努力とアイデアが素晴らしい。
歌舞伎を観ると思い出す、「悪くても悪いなりにやる」という言葉の意味をこの日も噛みしめました。
ひと月の公演中毎日が本調子というわけにはいかなくても、客にとっては観劇する日が唯一無二。
悪いなりに技や工夫を凝らして鑑賞に堪えうる芝居をする心意気に触れると、何となく励まされるのです。
三日目に見た由次郎は台詞が全く出ず、たまりかねてプロンプターさんが駆け寄ってきたほどの不調でとうとう休演されました。
一方、白鴎は無事千穐楽を終えられたようで、すごいことです。
息子と孫の三世代出演への執念を感じます。
高齢化が加速する歌舞伎ですが、皆さん一日でも長く悪いなりにでも立派に勤めてくださることを願います。
25日千穐楽
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