論語を詠み解く

論語・大学・中庸・孟子を短歌形式で解説。小学・華厳論・童蒙訓・中論・申鑑を翻訳。令和に入って徳や氣の字の調査を開始。

微子

2008-03-26 08:43:35 | 論語
微子:微子なるは殷に仕えし仁の人十八編の出だしの二文字

微子 一 その行為違いはあれど國憂う至誠の人ぞ仁の人なり

       
メモ:暴君の殷の紂王に仕えた微子・箕氏・比干の三仁人の
           言動にふれた孔子の言葉。

微子 二 主に仕え正道進む意志あらば直言避ける事はかなわず

       直言し職免ぜらる事あれど三度程度は恐るに足らず

      
メモ:魯の賢大夫の柳下恵の言葉。

微子 三 孔聖は仕えるわが身待つ君の変節聞いてその國離る

      
メモ:齋の景公が孔子の処遇について、度々態度を変えたときに
          取った孔子の行動。

微子 四 謀略にはまりし君に失望し仕えし孔子その國離る

      
メモ:魯の國が齋の謀略にはまったときの話。

微子 五 乱れたるこの世の政治危うしと遠ざかる事孔聖嫌う

      
メモ:世捨て人が乱世の世に見切りを付けて隠者になれと孔子に
          勧めたときの話し。

微子 六 人間の社会に暮らす者として隠者たること孔聖嫌う

       世の中に道徳あれば取りたてて改めるべき事何もなし

      
メモ:無駄な骨折りをしていると批判した隠者に対する孔子の
          思いを述べたもの。

微子 七 農事さえ知らざる者を夫子とは呼ぶべからずと隠者の言葉

      長幼の節度と同じ君臣の大義もこれを廃すべからず

      一身の清潔だけを考える隠者の暮らし道乱すもと

      君子たる者が仕えるその意義は君臣の義を行うがため

      
メモ:孔子の弟子の子路が隠者と会ったときの話や、思いを
          述べたもの。

微子 八 世を捨てて生きるにしても志を高くわが身を清く保つが大事

      志が低く身を汚しても言動に過ち無くばこれも良しとす

      身は清く世の捨て方もほどよくばこれも一つの人の生き方

      世を捨てず道義によって進退を自在に決めるそれが孔聖

      
メモ:世捨て人としての伯夷・叔斉・虞仲・夷逸・朱張・柳下恵・少連
          についての孔子の批評。

微子 九 殷の末雅楽は乱れ楽人は他国に去って散り散りとなる

      
メモ:音楽の乱れた殷の世をあらわしたもの。

微子 十 君子とは如何なる事があるにせよおのが肉親棄てるべからず

      重臣は適所に用い不信感抱かせること有ってはならぬ

      旧友は大きな過誤がない限り見捨てることがあってはならぬ

      一人にあれもこれもと完全を求めることがあってはならぬ

      
メモ:周公が子の魯公に君子の心得を説いたもの。

微子 十一 周朝に四組の双子存在し皆優れたる人物という

        
メモ:時代事蹟はよく解らぬが、伯達と伯适・仲突と仲忽・叔夜
            と叔夏・季随と季かの名が見える。
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陽貨

2008-03-01 08:23:38 | 論語

陽貨:陽貨とは季氏の家臣の陽虎にて十七編の出だしの二文字

陽貨 一 有徳者が國の乱れをそのままに留めおくこと仁とは言えず

       まつりごと好んで志する人あらばその機を逃すことは不智なり

      
メモ:陽貨が孔子に仕官を進めたときの言葉。

陽貨 二 人間の天性は皆似ているが習慣により隔たることに

      
メモ:人間は皆均しく持っている本然の性(仁義禮智の四徳、道心)と、
           生まれながらに異なる気質の性(清濁の別、人心)を持つ。前者
           は後者の影響を受け、陰に隠れ勝ちである。そこで人による隔
           たりが生じ、教育の重要性が求められてくる。

陽貨 三 天性の賢者と過度の愚の者は本質的に変え難きもの

      
メモ:学ぶ意志のない愚者は救いがたいと孔子は言う。

陽貨 四 礼と楽國を治める法にして國の大小問うことはなし

       物事の大小によりその処理をする人材も適不適あり

       為政者が道を学べば人愛し民が学べば服することに

      
メモ:小国の宰をしていた弟子の子游に孔子が与えた言葉。

陽貨 五 孔聖は理想の政治実現の為には君主選ぶことなし

      
メモ:孔子は儒の教えを広める為には手段を選ばなかったという。

陽貨 六 しっかりと五つの徳を世の中で実施する事それが仁なり

      敬虔と寛大なこと更にまた信と機敏に恵みの五つ

      わが態度恭しくば世の中で他の者から侮り受けず

      わが態度寛大なれば世の中で厚き人望得ること出来る

      わが態度まことがあれば世の中で人々からは信頼される

      わが態度機敏であれば世の中で仕事の成果自ずと上がる

      わが態度恵み深くば世の中で上手く人々使うはやすし

      
メモ:仁を為すには恭・寛・信・敏・恵が大切。

陽貨 七 わが心堅固であればどのような環境にてもくじけざるべし

      心から潔白なれば絶対に悪いものには染まることなし

      才あれば謀反の主に仕えても世直しするに差し障りなし

      乱世で才生かさずに傍観し手こまぬくを孔聖嫌う

      
メモ:何かと噂のある家宰の胇きつに会うことを、止めた弟子の子路
          に答えた孔子の言葉。

陽貨 八 仁智信直に勇剛六徳に學あらざれば六害起こる

      仁愛を好むも学を為さざれば情に溺れて愚かなことに

      知識をば好むも学を為さざれば識見つかず物まとまらず

      信義をば好むも学を為さざれば頑なになり人をそこなう

      正直を好むも学を為さざれば融通きかずゆとり無くなる

      勇猛を好むも学を為さざれば乱暴になり秩序を乱す

      剛強を好むも学を為さざれば身勝手となり常軌をはずす

      
メモ:六徳は大事なことだが、学問の裏付けが無いと害になる
          畏れもあることを孔子が説いた言葉。

陽貨 九 人として詩を学ぶこと大事なり心を奮い立たせるために

      人として詩を学ぶこと大事なり物事をよく観察のため

      人として詩を学ぶこと大事なり人と仲良く過ごすがために

      人として詩を学ぶこと大事なり怨みも上手く伝えるがため

      人として詩を学ぶこと大事なり親や主君に仕えるがため

      人として詩を学ぶこと大事なり鳥獣草木その名識るため

      
メモ:詩とは五経の中の「詩経」のことで、風(地方の民謡)・
          雅(朝廷の雅楽)・頌(祭祀の寿詞)からなり、作者は
          王侯から庶民の各層にわたっている。

陽貨 十 人として道徳的に優れたる詩修めるが正道の學

      正道の學為さざれば真実の知識得られず前進もなし

      
メモ:詩経を学ぶことの大切さを、子の伯魚に説いたときの
          孔子の言葉。

陽貨 十一 儀礼でも雅楽にしても本質は形式よりも精神にあり

        
メモ:形式に流れやすい風潮を諫めた孔子の言葉。

陽貨 十二 顔つきは厳めしけれど内心はだらしなき者小盗のごと

        本質を見抜かれぬ為うわべだけ取り繕うは恥ずべき行為

       
メモ:うわべを取り繕うことの愚かさを説いた孔子の言葉。

陽貨 十三 村里で有徳者らしく見せかける偽善の者は徳を損なう

       
メモ:偽善者の有害なことを説いた孔子の言葉。

陽貨 十四 聞きし事只引き継いで他に説くは學する者の態度にあらず

        学問はよく考えて学ばずば道徳棄てる事ともなろう

       
メモ:学問は体得すべき者で、耳学問は学問をする者の態度
           ではない。

陽貨 十五 思慮のないつまらぬ者が主の君に仕えることは極めて難し

         仕えても目指す禄位を手に入れる事ばかりをば考えるもの

         もし仮に望みかなえたその後はそれを失う事を恐れる

         失脚を恐れるあまり小人はどんな事でもやりかねぬもの

       
  メモ:小人の行為を戒めた孔子の言葉。

陽貨 十六 いにしえの民の三つの病弊の意味するところ今は異なる

        のびのびと心の広い狂の意は今では気儘し放題の意

        謹厳で几帳面なる矜の意は今では怒り争うの意


          真っ直ぐで正直という愚の意味は今では偽り人だますの意

         メモ:民の三疾すなわち①狂(心が遠大過ぎる)②矜(謹厳で
            几帳面過ぎる)③愚(正直過ぎる)の変わり様を嘆いた
            孔子の言葉。

陽貨 十七 諂いが己の性となりぬればその仁徳も次第にかすむ

        
メモ:有名な言葉、「巧言令色、すくなし仁」のこと。

陽貨 十八 本物に取って代わって偽物が出しゃばることは憎むべき事

        正統な雅楽が俗な音曲で乱されるのは憎むべき事

        口先の巧みな者が国体を危うくするは憎むべき事

        
メモ:孔子が憎むべき事のいくつかを述べたもの。

陽貨 十九 何事も言わずに天は生き物に化育の恩を与え続ける

        無言でも教えを受ける事多し言論だけに頼るべからず

        
メモ:口先だけの言論にはたいした効果はない。天は何も言わ
            なくとも、世は円滑に動いているではないかと孔子は言う。

陽貨 二十 過ちを無言の内に気づかせて反省させる事も大切

        
メモ:相手の性格をよく見て処する事も大事。

陽貨 二十一 君子が喪三年の間服するは全てに於いて楽なきがため

         児は三年経ってようやく父母のふところ離れ育ち行くもの

         その間に親の愛受け育つものそれを考え服喪は三年

         
メモ:服喪は父母から受けた愛情に答えるものであることを、
             弟子の宰我に諭した孔子の言葉。

陽貨 二十二 飽食し終日何も為さざれば世に処してゆくことは難し

         何事も為さざるよりは勝負事如きものでも為すがましなり

         
メモ:無為徒食の輩を戒めた孔子の言葉。

陽貨 二十三 君子とは社会秩序を守るため義を第一に考えるもの

         上に立つ者が勇なる場合でも正義なければ乱れることに

         下々の者が勇なる場合でも正義なければ盗みはたらく

         
メモ:統治する上で正義を第一にする事が、世の乱れを防ぐ
             策であることを説いた孔子の言葉。

陽貨 二十四 徳高く品位備えた君子でも時によっては憎むことあり

         他の人の悪いところを言い立てる者を君子は憎むものなり

         下位にいて上にいる者批判する者を君子は憎むものなり

         勇ましいばかりで礼儀守らない者を君子は憎むものなり

         果敢だが道理はずれた事をする者を君子は憎むものなり

         他人の意をかすめて取ってそれを智としている者を人また
         憎む

         傲慢な態度振る舞いすることを勇とする者人また憎む

         他人の秘事曝いてそれを真っ当なこととする者人また憎む

         
メモ:君子についての言は孔子が、残りは弟子の子貢の言。

陽貨 二十五 未熟なる女性や品位備わらぬ下々の者扱い難し

         かかる人親しすぎれば増長し疎遠となれば怨みを抱く

         
メモ:有名な言葉”女子と小人は養い難し”のことを云う。

陽貨 二十六 四十にもなって他人から憎しみを受けては末の望みは難し

         
メモ:四十とは不惑の年、人格の定まるときでもある。

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