明け方のこちらの記事をアップして以降、温家宝首相の国会での演説の全文を見つけた。前の記事は、主に日本のマスコミやマスゴミでの採りあげ方を中心に長々と書いたので、こちらでは簡潔に、演説自体の批評をしておく。
温家宝首相演説全文 国会演説(中国新聞 共同 07.04.12)
(前略)
>中国の古い世代の指導者がかつて度重ねて指摘したように、あの侵略戦争の責任は、 ごく少数の軍国主義者が負うべきであり、一般の日本国民も戦争の被害者であり、 中国人民は日本国民と仲良く付き合わなければなりまぜん。 戦火が飛び散っていたなかで、 聶栄臻元帥は戦場で日本人の孤児(栫)美穂子さんを救助し、自ら世話をし、 そして手を尽くして彼女を家族の元に送りました。 1980年、美穂子さんは家族とともに中国へ行って聶栄臻元帥を訪ねました。 この話に多くの人々が心を打たれました。戦後、 2808人の日本人の子供たちが中国に置き去りにされ、残留孤児となりました。 戦争の苦痛をなめ尽くした中国人が彼らを引き取って、 彼らを死の危機から救い出し、育てあげました。中日国交正常化の後、 中国政府は孤児たちの肉親捜しに大きな支援を与えました。 現在までにすでに2513人の日本人孤児が日本に戻りました。 彼らの多くは帰国後に、「中国養父母謝恩会」 などのような民間団体を自発的に設立し、中国で養父母たちの共同墓地と 「中国養父母感謝の碑」を寄付・建立しました。 その中に次のような碑文が書かれています。 「中国養父母の人道的精神と慈愛心に深く感謝し、ご恩を永遠に忘れません」と。
(中略)
>中国政府と人民は従来、未来志向を堅持し、一貫して歴史をかがみとして、未来に向かうことを主張しています。 歴史をかがみとすることを強調するのは、恨みを抱え続けるのではなく、歴史の教訓を銘記して、 よりよい未来を切り開いていくためであります。中日国交正常化以来、 日本政府と日本の指導者は何回も歴史問題について態度を表明し、侵略を公に認め、そして被害国に対して深い反省とおわびを表明しました。 これを、中国政府と人民は積極的に評価しています。日本側が態度の表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望しています。 中日両国は和すれば双方に利益をもたらし、争いあえばともに傷つきます。 両国人民の子々孫々にわたる友好を実現することは、歴史の流れと両国人民の願いに完全に合致し、 アジアと国際社会の切実な期待でもあります。
(後略)
おぉ~、やってるやってる、「雪解け」などとにっこりほほえみながら、「中国の考え方を日本にしっかり押しつける総会屋演説」を。さすがジャイアン。
>中国の古い世代の指導者がかつて度重ねて指摘したように、あの侵略戦争の責任は、ごく少数の軍国主義者が負うべきであり、一般の日本国民も戦争の被害者であり、中国人民は日本国民と仲良く付き合わなければなりまぜん。
ハア?戦争責任をどういう枠組みで捉えるかを、外国に要求される筋合いなどどこにもないのだが。ここで「ハッキリ」と要求しているね。「侵略戦争の責任は、軍国主義者が取れ!」と。
んでもって、「軍国主義者が祭られている靖国神社には、未来永劫、絶対に行くな!」と持って行きたいわけね。
あんたら中国の指導者ががっつり反日教育をやったせいで、当の「中国人民」は、前の記事で紹介したように、こんなふうになってるがね。押さえられるのかね?
>「日本の国連安全保障理事会常任理事国入り断固反対!」「お笑いだ」「譲歩しすぎだ」
>プレス発表が、「日中双方」は歴史を直視するとしたことも、「違う。日本は直視しなければならない、だ」などと批判された。
>当局から目をつけられる危険がほとんどない単純な中傷、反日言論は、相変わらず目立ち、「小日本」「日本鬼子」 などの蔑称も飛び交っている。
>「風格ある首相が小日本にさとす」的な表現も多い。
>「日本のいいところをもっと宣伝すべきだ」という意見は集中的に批判を浴びていた。いま、公的メディアが、 日本のプラス面を積極的に宣伝している状況にもかかわらず、だ。
>ネット上には「抗日戦争映画をたくさん見たせいか、日本は信じられない」との書き込みもあった。
自国民を押さえられもせずに、「こういう枠組みで歴史認識を捉えてくれれば、中国政府は(自分たちが作ったクセに)反日世論を押さえ、日本と今以上に友好関係を築いてやる」などという「交換条件の雰囲気」を醸しだし、無責任に他国の戦死者の祀り方に口を出すなよ。中国政府の発想は何も変わっていないな。
>中日国交正常化以来、日本政府と日本の指導者は何回も歴史問題について態度を表明し、侵略を公に認め、そして被害国に対して深い反省とおわびを表明しました。これを、中国政府と人民は積極的に評価しています。日本側が態度の表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望しています。
「日本側が態度の表明と約束を実際の行動で示すことを希望する」とはどういうことだ?少なくとも中国政府と人民は、さらに何かしてもらうことを希望しているという意味で「何かが不満だ」と解釈せざるを得ないのだが。
ということは、「評価」してないじゃないか(笑)。本当に評価しているのなら、こんなことを発言する必要などどこにもないだろうに。
読めば読むほど自己矛盾している演説である。これも、さすがジャイアンだと感嘆せざるを得ない。
演説後、例によって加藤紘一が「歴史問題を中心にしゃべったなという感じ。前向きに取り組んでいこうという意味で、練りに練った演説だという気がします」などと評していたが、どこをどう練っていたのだ?練っていたとするならば、
・中国は何も明確に要求していない(=内政干渉していない)
かつ
・日本が歴史認識問題で、自主的に中国に妥協する
という、「中国が、何の交換条件も示さずに、日本からの一方的な妥協を引き出す」演説のためだろ?
こういう言葉の選び方をする中国政府にいくらしっぽを振っても、例えば中国が日本の国連常任理事国入りに賛成するわけなどなかろうに。誰も何も公式に言っていないエサを、勝手に自分の頭の前にぶら下げて走っても、
お前、何一人で走ってんの??
って笑われるだけだぞ。
ふう。毎回、このくらい短く書きたいものだ。
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