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中国政府と人民に歴史認識を「評価」していただくことが「日中友好」なのですか?

2007-04-13 04:06:52 | Weblog

それは「友好」などではなく、昔世界史で習った「冊封体制」に向けた布石にしか見えないのですが…(苦笑)。

 

 中国の首相が日本の国会で初めて演説したことを、おおむねどこのメディアも「日中友好へのステップ」として位置づけているようである。例えば、ここでは、これ系のネタではいつも常連となっている朝日さんのヘッドラインはこれ。

中国・温首相、「日本の反省評価」 国会演説(朝日さん 07.04.12)

 中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相は12日午前、中国の首相として初めて国会で演説し、今後の日中関係について「戦略的互恵関係の新たな局面」を切り開く必要性を強調した。日本による 「侵略戦争」が日中両国民に大きな被害を与えたとしながら、日本側の「反省とおわび」 を中国政府が「積極的に評価している」と明言した。

(後略)

 「戦略的互恵関係」とは、時事通信によると、

「地域の安全保障や経済、環境、エネルギーなど幅広い分野で、共通の利益を目指すという日中両国の関係」

とのこと。

 んでもって、私の抱く最も重要な疑問は、「共通の利益を目指す」ときに、お互いの発言権に差があっていいのかい?ということである。 お互いの発言権に差があるような関係でありながら、「共通の利益」を目指すとは、さながらジャイアンが、

「のび太~~、二人でアイス買おうぜ~~~!カネは半分ずつだ~~。オレとお前で60円ずつな~~!」

のび太、おそるおそる60円を出す。ジャイアン、120円でアイスを一つ買う。ジャイアン、先にアイスを食って、 のび太にカップを渡す。

「……ジャイアン、ほとんど残ってないんだけど。」

あ゛あ゛??オレの方が体が大きいだろうが~~。だからそれが『は・ん・ぶ・ん』 なんだよ~!」

「ジャイアン~~!それを先に言ってよぉ~~!」

「うるせー! 『はんぶん』を決めるのはオレだ!##」

 

という状態のことであるはずなのだが…朝日さんは例によって気づいていないらしい。いや、「ジャイアン中国に逆らわない方が、最終的には、必ずや、日本の国益になる」と心底から思いこんで疑っていないor思いこもうと必死なのだろうな。

 

>日本による「侵略戦争」が日中両国民に大きな被害を与えたとしながら、日本側の「反省とおわび」を中国政府が「積極的に評価している」と明言した。

 

 うーん、さすが朝日さんらしい。「明言した」という言葉を強く読み上げたいのだろうな。んでもって、

「中国が『評価』してくれたよ!日本、がんばったね!これからもこの調子で、ジャイアン(中国)にもっともっと『評価』してもらえるようにがんばろうね!」

と「応援」でもしたいのだろう。その証拠が昨日(12日付)の朝日さんの社説である。

 

日中会談― 相互訪問を定着させよ(朝日さん 07.04.12)

 「新たな高みへと発展させていきたい」と安倍首相が言えば、温家宝首相も「安定的な軌道に乗せる必要がある」と応じる。

 6年半ぶりに日中首脳の相互訪問が再開された。東京での会談で、2人の首相は口々に関係修復への積極的な言葉を連ねた。さらに、 安倍首相は年内に訪中する考えを表明した。

 小泉前首相の靖国神社参拝をめぐって険悪になっていた日中関係が、 ようやくここまで戻ってきた。一時は国交正常化以来、最悪の状態とまで言われた両国の関係だ。今回の会談や合意は、昨秋の安倍訪中で扉を開いた関係改善の流れに勢いをつけるものであり、歓迎する。

 だが、懸案がなくなったわけでは決してない。温首相は歴史問題でクギをさすことも忘れなかった。 「今年は日中戦争70周年にあたる。歴史問題を善処することが非常に重要だ」。靖国神社参拝を牽制(けんせい)しての言葉だろう。

 一方、安倍首相は日本の国連安保理常任理事国入りへの支持を求めたが、明確な回答はなかった。

 両国の間にはなお、重要な問題をめぐっての懸念や見解の相違があることを忘れてはならない。

 それでも、互いの利益が一致するテーマを数多く並べ、 それをめぐる共同作業を通じて日中関係を発展させていくことで合意したことの意味は大きい。

 省エネなどエネルギー分野と環境保護の分野で協力を強化するための二つの共同声明もできた。温室効果ガスの排出規制をめぐって、 京都議定書のあとの枠組みづくりに中国が積極的に参加するとの表明もあった。

 急速に発展する中国にとって大きな利益のあることだし、日本が得意とする技術分野でもある。 関係修復のための目玉事業に位置づけたのは納得できる。

 日本側に不信感が強い中国の軍事については、中国国防相の訪日や艦艇の相互訪問など防衛交流を深めることが合意された。 透明性を高め、相互不信を除いていくために、欠かせない措置だ。 これを手はじめに、さらに交流を広げていくことが急がれる。

 歴史問題などについてのわだかまりは一気に消えるはずもない。温首相は日本滞在中、記者会見を予定していない。 歴史認識などの微妙な問題のやりとりが、双方の国民感情を刺激しないように慎重に構えたのだろう。

 だが、こうした問題をいつまでも避けて通るわけにいかない。時間はかかるかもしれないが、 共同の歴史研究や若者交流などを通じて相互理解を深め、 信頼を築いていくことが必要だ。

 双方の政治家が互いにナショナリズムをあおる愚は繰り返すべきではない。

 再出発の土台はできつつある。着実に首脳往来を積み重ねていくことだ。 日本側が要請した胡錦濤国家主席の訪日も、ぜひ実現させてもらいたい。

 

 真の「相互的互換関係」の構築のためには、「平等な発言権」が前提条件として必要不可欠であると、私などは思うのだが、この社説のどこをみても、そんな指摘は見あたらない。赤くした部分を中心に見えてくる朝日さんの価値観は、

日中友好=(・∀・)イイ!!

のみである。この社説が書かれた「前」に行われた日中首脳会談でも、温家宝首相がこういう発言をしていたはずなのだが。

【 日中首脳会談の要旨 歴史問題 】(読売本誌より)

温首相 歴史問題は、民族の感情と日中関係の基礎に関わる問題で重要だ。 うまく処理できなければ、両国関係の障害となる我々が「歴史を鑑(かがみ)にして」と言うのは、過去にこだわっているわけではない、 「歴史カード」を切っているわけでもない。

安倍首相 平和国家として歩んでいくことが、私の気持ちであり、歴史認識そのものだ。 これからも変わることはない。

 

 私なんぞには、

>(歴史問題を)うまく処理できなければ、両国関係の障害となる

という発言と、

我々が「歴史を鑑(かがみ)にして」と言うのは、過去にこだわっているわけではない、「歴史カード」を切っているわけでもない。

という発言は、明確に矛盾しているようにしか読めない。あくまでも、歴史問題を処理する側であるのが日本であればと言う前提つきだが、この前提を外し、歴史問題を「両国」でうまく処理しようとする温首相の発言であったと解釈するには…国会演説における

「日本政府と指導者は、何回も歴史問題について態度を表明し、侵略を公に認め、被害国に深い反省とおわびを表明した。これを中国政府と人民は積極的に評価する」(ソースは産経

この「評価する」という言葉づかいからして、ありえないことだろう。

 

 だとすれば、日中首脳会談の段階から、温首相の発言は、少なくとも歴史認識問題においては整合性のない発言をしており、

・中国は歴史問題を「外交カード化」しているわけではない。

・歴史問題については、日本側がうまく処理すべきだ。

のどっちとも解釈できるような状態のまま、「戦略的互恵関係」なるものを作ろうとしているということになる。

 にもかかわらず、朝日さんは、上記のような「友好マンセー」な社説だったわけだ。ま、それが朝日クオリティだから仕方がないのだが、事実は事実としてここで確認しておく。

 

 …朝日以外のマスゴミさんも、この程度のことにはしっかりツッコミを入れ、「後で、歴史問題をテコに、他分野で日本に譲歩を求めるような可能性はある」程度の指摘はしておかなければなかろうに。その程度の指摘がすらすらとできて、初めて中国も、日本に対して「整合性のある発言」を心がけるようになるわけで、少なくともそういう関係が作れなければ、永遠に「戦略的互恵関係」など作れないのではないのかい?

 このあたりをかすっていたのは、メジャー紙の中では意外と毎日新聞のみであった。

社説:日中関係 首脳交流を定着させよう(毎日 07.04.12)

>今年は日中戦争の勃発(ぼっぱつ)から70年に当たる。温首相が歴史認識の問題で「善処が必要だ」と指摘し、安倍首相が 「平和国家として歩むのが私の認識そのものだ」と答えたのも、 この問題がなお両国民の間に摩擦を生じさせかねないデリケートな問題であることを示している。

 

 産経は、歴史問題以外のところで、中国に対する警戒感を示している。

【主張】日中首脳会談 互恵の道筋をより明確に(産経 07.04.12)

(前略)

 こうした中で、「互恵」関係の行方を占う象徴的な問題として注目されたのは、 両国の資源開発をめぐる利害が対立する東シナ海の石油ガス田開発だった。この問題では政府間協議を加速し、 今年秋に共同開発の具体的方策について報告を受けるという。

 昨年の訪中では「東シナ海を平和・協力・友好の海とするため対話と協議を堅持」 することが共同プレス発表に盛り込まれた。しかし、政府間協議は平成16年以来、すでに7回行われたが、解決の糸口は見えていない。

 その間、中国側は17年に日中中間線付近にある白樺ガス田(中国名・春暁) と中国浙江省間の海洋パイプラインを完成させた。昨年の安倍首相訪中直後の11月には、採掘施設「八角亭」のやぐらで炎が確認された。 試掘あるいは生産に向けた活動とみられ、政府は中国側に抗議したが、中国側は「正当な開発活動」と反論している。

 「平和の海」といって握手をしたあとでも、中国側は着々と開発を進めてきた。 協議に期限を設けた点は前進だが、中国側の基本的な姿勢に変化が生じるのかどうかはまだ分からない。

 今後は中国国防相の来日などを通じた防衛交流も進展するだろう。 安全保障面での信頼醸成は不測の事態の防止に有意義だが、中国海軍の艦船は自国の権益を誇示するようにガス田開発地域にも出没している。

 こうした行動が続く限り中国の脅威は消えないし、互恵の実も見えてはこないだろう。

 

ごもっともな話であるが、歴史認識についての温首相のあいまいな発言については、社説でのツッコミはなかった。

 

 そんなわけで、まとめとしては、「評価する」などという「上から目線」で国会で平気で演説しておいて、「戦略的互換関係」あるいは「雪解け」とは、日本も中国に随分と足下見られてるんじゃないの?ということである。歴史認識問題に関しては、相も変わらず「日本:改める側 中国:評価する側」という構造を残したまま、他の分野で「戦略的互恵関係」とは…それは単なる、ジャイアン中国を君主とする冊封体制づくりの一環に他ならないとしか、言いようがない。

 

 ここまで読んで、「だって中国は『被害者側』なんだから、日本の歴史認識を『評価』するって言ったって問題ないじゃないか!こういう日本の姿勢が中国や韓国を怒らせ、逆に日中の友好を阻害しているんだ!」などという、きわめて「リベラル」or「朝日さん」or「きっこ」的な見解をお持ちの方は、以前に書いたこういう記事をお勧めしておく。

日本のマスゴミや中韓が使う「解釈の強制装置」(前編)

日本のマスゴミや中韓が使う「解釈の強制装置」(後編)

 『被害者』だからといって、『歴史については何でもフリーハンドで解釈権がある』という姿勢を許していると、長期的に見たらとんでもないことになるよ。現に竹島問題は、バ韓国によって「韓国併合問題」と見事に同一化されているし、東シナ海ガス田についても、こちらのブログ様などを読んでも、一進一退、実にもどかしい展開を繰り返している。

中国が、「靖国」など歴史カード不使用(遊爺雑記帳 様)

 

 最後にご紹介するのが、読売の記事。当局が管理しているはずの中国のネット掲示板には、反日的な意見が多数寄せられているそうだ。

 

対日友好ムードのメディアVSネット掲示板には反日世論(読売 07.04.12)

 【北京=杉山祐之】中国の温家宝首相の訪日で、 共産党政権の指導下にあるメディアが一斉に対日友好ムードを打ち出しているのに対し、インターネット掲示板には、 反日的な意見が多数寄せられている。

 そこでの対日不信は相変わらず強く、日本と握手した温首相を暗に批判する声さえ出ている。「当局の世論誘導」(北京の知識人)の裏で、中国の対日世論は、なお非常に不安定な状況だ。

 温首相の国会演説があった12日、大手ニュースサイト掲示板には、1分間に何本というペースで書き込みが入ってきた。 各サイトでは日中首脳会談が行われた11日夜から書き込みが続いている。

 「日本の国連安全保障理事会常任理事国入り断固反対!」「お笑いだ」「譲歩しすぎだ」――。 中国が国際社会での日本の役割拡大に期待を表明した共同プレス発表の国連改革の項目に何人もがかみついた。 ちょうど2年前の2005年4月、中国各地で吹き荒れた反日デモで多くの中国人が「日本の常任理事国入り反対」を叫んだ。 デモは当局に封じられたが、強い感情が残っている。

 プレス発表が、「日中双方」は歴史を直視するとしたことも、「違う。 日本は直視しなければならない、だ」などと批判された。

 現在は、「当局のネット監視網が整備され、不用意な発言はできない」(知識人)状況にあるとされ、 直接の政権批判はほとんどない。「政権転覆を扇動した罪に問われる可能性がある」(中国筋)反日デモ呼びかけも見られない。ただ、 日中首脳間合意に対する非難は、実質的に温首相非難の意も含んでいる。

 当局から目をつけられる危険がほとんどない単純な中傷、反日言論は、 相変わらず目立ち、「小日本」「日本鬼子」などの蔑称も飛び交っている。

 もちろん、温首相の今回の訪日を高く評価する声も非常に多い。だが、「風格ある首相が小日本にさとす」的な表現も多い。

 互恵関係の重要性を説く声も少なくない。その一方で、 「日本のいいところをもっと宣伝すべきだ」という意見は集中的に批判を浴びていた。いま、公的メディアが、 日本のプラス面を積極的に宣伝している状況にもかかわらず、だ。

 複数の知識人は、「中国の対日世論を真に安定させる条件は、当局の宣伝ではない。報道、言論の自由だ。 多角的な情報を自由に得られ、何でも自由に発言できる状況を作るしかない」と口をそろえる。

 ネット上には「抗日戦争映画をたくさん見たせいか、日本は信じられない」との書き込みもあった。

 

中国での反日教育の「ツケ」ということだね。こんなジャイアン国家と、国家として「友好を深める」必要を私は全く感じていない。必要最小限の関係で良かろう。

 

 


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