京風流吟詠会 11月の吟は、坂井虎山(さかいこざん)作「泉岳寺(せんがくじ)」です。
山嶽(さんがく)崩(くず)すべし 海(うみ)飜(ひるが)えすべし
消(しょう)せず 四十(しじゅう)七臣(しちしん)の魂(たましい)
墳前(ふんぜん) 満地(まんち) 草苔(そうたい)湿(うるお)う
尽(ことごと)く 是(こ)れ 行人(こうじん) 流涕(りゅうてい)の痕(あと)
作者 坂井虎山(1798~1850年)江戸時代末期の儒者。
【通釈】
世には天変地異というものがあり、不動不変と思っている山さえ崩れることもあり得るし、
はてしなく広々とした海でもひっくりかえることもあり得る。
だが、四十七士の魂は永久に消滅することがないのである。
いま、この墓前にぬかずけば、地上一面に草や苔がしっとりとしめっている。
これこそは墓参りの人びとが義士のために流した涙のあとなのである。