京風流吟詠会 令和3年5月の吟は、月田蒙斎(つきた もうさい)作「暁(あかつき)に発(はっ)す」です。
残月(ざんげつ)の滴露(てきろ)人(ひと)の袂(たもと)を湿(うるお)す
暁風(ぎょうふう)を吹(ふ)いて 秋冷(しゅうれい)を覚(おぼ)ゆ
忽(たちま)ち驚(おどろ)く大蛇(だいじゃ)の
路(みち)に当(あた)って横たわるを
剣(けん)を抜(ぬ)いて斬(き)らんと欲(ほっ)すれば
老松(ろうしょう)の影(かげ)
作者 月田蒙斎(1807~1866年)江戸末期の朱子学者
剣舞の詩として有名。
通釈 月が西の空に残る早朝に出発すれば、したたる露がたもとをしっとりと濡らしている。明け方の風が髪を吹いて、はやくも、ひんやりとした秋の気配が感ぜられる。ふと見れば、巨大な蛇がゆくての道をさえぎるように横たわっているではないか。すわ、と刀を抜いておどりかかって退治しようとしたが、よくよく見れば、それは年を経た松の影であった。