京風流吟詠会 10月の吟は、亀井南冥(かめい なんめい)作「鹿児島(かごしま)客中(かくちゅう)の作(さく)」です。
誰(た)が家(いえ)の糸竹(しちく)か 空明(くうめい)に散(さん)ず
孤客(こかく)楼(ろう)に倚(よ)る夢後(むご)の情(じょう)
皎月(こうげつ)南溟(なんめい)波(なみ)駭(おどろ)かず
秋(あき)は高(たか)し一百(いっぴゃく)二(に)の都城(とじょう)
作者 亀井南溟(1743~1814年)江戸時代後期の儒者。
通釈
どこの家で奏でているのか、琴や笛の音が月光に照らされて明るい夜空に広がっていく。いま、夢からさめ、孤独の旅人である自分が、旅館の欄干にもたれて、この調べを聴いていると、旅愁をかきたてられる。見渡せば、月はこうこうと照りわたって、南方の大海は波もなく穏やかである。この百二の都城を持つ鹿児島に、秋空は高く澄んでいる。