どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

協力するフサオマキザル――分業、コミュニケーション、互恵的利他性

2007-06-01 04:09:51 | 社会的知性
A35 Hattori, Y., Kuroshima, H., & Fujita, K. (2005).
Cooperative problem solving by tufted capuchin monkeys (Cebus apella): Spontaneous division of lebor, communication, and reciprocal altruism.
Journal of Comparative Psychology, 119, 335-342. [link]
フサオマキザル(Cebus apella)による協力問題解決:自発的分業、コミュニケーション、および互恵的利他性
実験的に誘発した協力課題を用いて、著者らは、フサオマキザルCebus apella)が以下の3つの協力の特徴をヒトと共有しているかどうかを調べた:分業コミュニケーション、および互恵的利他性実験1では、著者らは、個々のサルを訓練し、報酬を得るのに必要な一連の行為をおこなうようにしてから、自発的に一連の行為を分配して課題を解決できるかどうかを評価するため、2個体1組にしてテストした。すべての組がこの課題を解決した。実験2では、サルは、協力課題と相手の助けを必要としない課題との両方にとりくんだ。前者〔協力〕の課題のほうで、後者の〔相手の助けを必要としない〕課題よりも有意に長く相手を見たが、コミュニケーション上の意思があるかは決めることができなかった。実験3では、毎試行、2個体の参加者のうち1個体しか報酬を得られなかった。サルは、試行ごとに役割を交替させても、協力を維持した。彼らの協力の遂行では分業が示され、結果から課題に関連するコミュニケーション互恵的利他性が示唆される。
京都大学の服部裕子、黒島妃香、藤田和生によるフサオマキザルの協力行動にかんする研究。自発的な分業(division of labor)、協力のさいのコミュニケーション(communication)、互恵的利他性(reciprocal altruism)について検討している。

装置は、2個体のサルが入っている2個の箱の横についている。(1) 個体Aが、目の前の小さな板を引く。(2) 個体Bが、今までその小さい板のせいで動かなかったブロックを押す。(3) 個体Bは、ブロックの下に置かれていた食物を得ることができ、個体Aはブロックに押されて落ちてきた食物を得ることができる。

藤田和生 (2007). 動物たちのゆたかな心. 心の宇宙 (4). 学術選書 (22). 京都: 京都大学学術出版会.
ISBN4876988226
比較認知科学の新刊です。著者の研究室でおこなわれていることが中心に書かれています。知覚や道具使用から、近年のトピックである協力行動まで幅広いです。もちろん今回紹介した研究も収録されています。比較認知科学における動物観といったことにも触れられています。

「学術選書」は、京都大学学術出版会が出している科学関連の選書です。「心の宇宙」は、そのなかのシリーズで、京都大学心理学連合の面々によって書かれています。比較認知科学だけでなく、神経心理学や臨床心理学、そのほかのさまざまな分野が含まれています。
シリーズ「心の宇宙」全13巻
(1)前頭葉の謎を解く』 船橋新太郎(2005)
(2)コミュニティのグループ・ダイナミックス』 杉万俊夫(編)(2006)
(3)心理臨床学のコア』 山中康裕(2006)
(4)動物たちのゆたかな心』 藤田和生(2007)

以下続刊
『多重知能理論』 子安増生
『心のなりたち:比較発達科学の視座』 板倉昭二
『脳の情報表現と神経回路網:実験方法と研究例』 桜井芳雄
『脳と高次機能』 苧阪直行
『ヒトの行動神経科学』 松村道一
『顔の認識とコミュニケーション』 吉川佐紀子
『ポスト・モダンの意識』 河合俊雄
『心・身体・言葉』 伊藤良子
『人生心理学』 やまだようこ
以上の続刊の部分は『2005年12月学術選書京大から』というチラシによる。それによると、杉万俊夫(編)『コミュニティのグループ・ダイナミックス』の旧題は『コミュニティーのグループ・ダイナミクス』、山中康裕『心理臨床学のコア』の旧題は『心理臨床学外論』、藤田和生『動物たちのゆたかな心』の旧題は『動物たちのゆたかなこころ』。

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