愛犬耳袋

 コーギー犬・アーサーとの生活と喜怒哀楽

旅立ち

2006年09月17日 | 仔猫
 仔猫たちの旅立ちの日がやって来た。

 里親さんのご夫婦とは夕方、新大阪駅にて落合い、タクシーにて移動。自宅で仔猫たちとの初対面という段取りである。
 予定の時刻より少し早めに到着し、指定の場所で待つ。
 里親さんは仔猫用のキャリーを、こちらはペット雑誌をお互いの目印に決めてある。
 早めに着いたせいで、改札を出てくる人の姿が数々目に入ってくる。
 太った人、やせた人、歳をとった人、若い人。どこかでライブでもあったのか、紫のドレッドを何本もなびかせるビジュアル系男子や、金時計にモノグラムのボストンを下げた、強面の男性もいる。
 どんな人が仔猫たちの家族になってくれる人だろう。どんな人が現れても、猫を愛する心に揺らぎが無いことは、メールを通じていたいほど感じている。大丈夫。
 そんなことを考えながら、改札の前に立っていると、人ごみをかき分け進んでくる、薄いグリーンのキャリーバッグが目に飛び込んで来た。あれだ!
 そのおふたりは清潔感に溢れた、なんとも言えない優しげな雰囲気をまとった方々であった。

 その後スムーズに自宅に移動。自宅では玄関前にスタンバイしていた、お客が大好きな愛犬アーサーが熱烈な歓迎をお見舞いする。その後もお客様の膝ににじり寄って、なでてくれと甘えかかる。あつかましいぞ。
 おふたりはこんなアーサーでも「仔猫の命を救ってくれた犬」と丁寧に遇してくださり、なんとアーサーのオモチャまでお土産にお持ち下さった。
「会いたかったよ! アーサー君」
 と呼びかけて撫でられ、アーサーの喜んだことといったら、もう。





 さて、お待たせしました。
 アーサーがオモチャに夢中になっているスキに、ようやく仔猫たちとの対面タイム。
 昼寝中の2匹をベッドごとすくう様に抱き上げ、猫部屋から連れ出す。
「わあ、小さい!」
 目を覚ました2匹は、いつも通り好き放題じゃれはじめた。座布団のスミをかじったり、ローテーブルに登ったり。
「この2匹でいいですか?」
 一応、お聞きしておくと、おふたりは満面の笑みで「はい、もちろん」と答えてくださった。そして
「ブログを読んで、この2匹以外に考えられなくなりました」
 とも。





 ヤンチャに走り回る2匹を捕まえ、一匹づつ抱いてもらう。妹猫は少し抱かれると遊び足りないのか、パッと走っていってしまったが、兄猫は初対面の相手だというのに、ゆったりと足をのばしウトウトしはじめた。そして時折、里親さん、いや本当の飼い主さんの顔をじっと見上げていた。仔猫の兄妹に、家族が出来た瞬間だった。





 楽しい時間はあっという間に過ぎる。帰りの時刻となって、走り回ってじゃれあう2匹を順番に捕まえてキャリーに収めていく。妹を捕まえ、
「あれ、お兄ちゃんは?」
 と振り返ると、飼い主さんは
「もう入ってます」
 2匹は静かにキャリーの中で、声も立てずにじゃれあっていた。私が動物病院に連れて行った時と、なんという違いだろう。
 これが最後だからと、待たせてあったタクシーまで、おふたりと2匹を一家総出で、アーサーも一緒にお見送りした。
「元気でね」
 キャリーの窓に、めいめい指や鼻を押しつけ挨拶すると、飼い主さんは丁寧にお辞儀をして車中の人となった。ドアがバタンと締まるとき、アーサーが小さく鳴いた。






 2匹を送り出した後、寂しくて涙がこぼれるだろうと思っていたが、予想に反して涙は出なかった。むしろうれしかった。本当にうれしかったのだ。
 飼い主さんの喜ぶ顔、飼い主さんの膝でくつろぐ仔猫の姿を目の当たりにして、ただただ幸せな気持ちが一杯になっていた。飼い主さんのお人柄、環境、仔猫の反応、すべてにおいて不安がまったく無かったからだ。
 これほどの方に2匹を見つけてもらい、遠距離をものともせず引き取られ、そして愛されることは、本当に希有な事だと思う。
 見送った後、家族は
「仔猫にとって、きっとこれ以上の飼い主さんは現れないよ。そんな人と出会えた確率はすごいと思う」
 とつぶやいた。その狭き門を、仔猫兄妹は備わった強運と生命力で、見事くぐり抜けたのである。
 仔猫が去って、我が家には笑顔が残った。

 さて、今日まで仔猫たちを、兄猫・妹猫と呼んで来たがそれも終わりにしたい。飼い主さんから本当の名前をもらったのだから。
 その名前は、かねがねおっしゃっていたように、2匹が命をつなぐきっかけとなった愛犬アーサーから文字を取って名付けられた。
 妹猫は「サリー」。そして兄猫は―、我が愛犬と同じ「アーサー」と言う。







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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご苦労様でした (abyhome)
2006-09-18 18:58:30
素晴らしい里親さんのお家で今頃は元気に走り廻っている事でしょうね、何よりここまでこの子たちの面倒を見てこられた事に頭が下がります。本当にご苦労様でした。
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Unknown (mount)
2006-09-18 22:08:41
今まで楽しく拝見させてもらいました。本当にご苦労様でした。もうこのブログで見れなくなるのは残念ですが、よい飼い主に出会えてよかったです。
返信する
ありがとうございます (setsu_cats)
2006-09-18 23:26:43
コメントありがとうございます。



abyhome様

ずっと見守っていただきこちらこそ、ありがとうございました。

仔猫たちのお世話ですが、最初こそ戸惑いましたが、

うちの手のかかる愛犬に比べるとずっと自立していて、

トイレも食事も驚くほど楽な、いい仔猫たちでした。

その後、飼い主さんから御連絡もあり、ご想像通りよく走り回っているそうです。



mount様

こちらこそ、ありがとうございました。

ブログの方は、跡地にしてしまうのもなんとなく寂しいので、犬の日記でも続けようかと思っていたところです。

飼い主さんから、近況報告が届きましたら、ご紹介します。

もし犬もお嫌いでなければ、宜しくお願いします。
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