絆の法則

澤谷 鑛

シンクロニシティの伝説(前編)

2009-09-01 | Weblog
澤谷 鑛
 
 ずっと前の話です。散歩をしていると自転車に乗った近所のおばさんが、
「聞きました。澤谷さん」
 と声をかけられました。
 一瞬、誰だろう? とどぎまぎしました。が、思い出しました。ボランティアスタッフとの打ち合わせで行った居酒屋風の「でんでん」という天板焼のお店の奥さんでした。
 
 ある会社の経理部長をやっている学生時代からの友人から電話がかかってきました。
「相変わらず早口で、歯切れの良さと饒舌は健在だね」
 と笑いました。
「初めて聞いた時は、感じなかったのだが、何回か聞いているうちに間違いに気づいたよ」
「間違い?」
「ああ、高崎山の猿の話だけど……」
「塩水とサツマイモの話ね。アイル・ワトソンという学者が発表した話なのだけど、ずっと以前にNHKのTVでも取りあげたことがあったよ」
「そう。高崎山は、群馬県ではなくて大分県だよ。家内は出身地だから、録音する段階で気づいたそうだけど……」
「ええっ! 何を勘違いしたのかな? 事実誤認だね」
 とは、電話で言ったが、おそらく私の心の奥底(潜在意識)に何かがあったのでしょう。その何かとは何か???
 
 大阪に住むヤマト タケ司さんからメールをいただいた。
『……澤谷先生のお話を聞かせて頂きました。どのように話されるのか、凄く聞きたかったのです。ありがとうございます。
その中で1点、疑問があります。高崎山のサルの話です。101匹目の猿の話ではないでしょうか? もしそうであるのなら、確認したくてできていないことがあるのです。
WEBサイトで101匹目の猿で検索をかけたところ、あの話は、外人の研究者のでっちあげであったとの記事があったのです。事実関係を確かめたいと思っていたのですが、詳細に書く時間がありません。後はあらためて……』
 
「101匹目の猿」ではなく「100匹目の猿」が正しいタイトルです。
 宮崎県の幸島に棲息する猿を研究する学者がおり、その猿の一頭が塩水で洗って芋を食べるのを見ていた他の猿が、二匹、三匹……十匹とどんどん増えていき、100匹を超えると大分県の高崎山の猿や隣の島で猿がおなじことをする、というものです。
 これは、数学上の量子力学の考えや脳科学上のカオス理論をはじめ、哺乳類の生物学上の共鳴理論からいっても裏づけがある、といわれるものです。あくまでも考えや理論にです。
 しかし、アイル・ワトソン博士が『生命の潮流』に1979年に書いたこの猿の話は、事実ではなく間違った逸話としてシンクロニシティの代表的な伝説となっています。
 もともと京都大学の河合雅雄博士が研究していたもので、1965年に書かれた河合博士の論文をもとに、アイル・ワトソン博士が書いたものです。アイル・ワトソン博士自身が、このことは事実ではなく、まったくの創作であることを認めています。河合雅雄博士自身もアイル・ワトソン博士の書いた事実はない、と断言しています。
 また、『生命の潮流』には、グリセリンの結晶化に纏わる話も出ており、これも間違った逸話としてシンクロニシティの代表的な伝説になっています。
 
 シンクロニシティは、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユング(1875年~1961年)が提唱したドイツ語の英訳ですが、日本語訳では共時性といわれ、“意味のある偶然の一致”のことです。
 ユングは、全てではないにせよ、いくつかの偶然の一致は単なる偶然ではなく、文字通りの「同時発生」か、あるいは普遍的な事象を作り出す力の連続性によるものであると信じました。これらの力により、直観的な意識と行動が調和する過程を、ユングは「個体化」と名付けました。集合的無意識による、個体化された人間の意識のコミュニケーションを通じて、現実の出来事が形成されるというのが、ユングの主張です。
 
「非因果的関連の原理」と呼ばれ、因果関係の外部、或いは、因果関係に付随して働く連絡の形式といわれるものです。この理論は、科学的方法による検証が不可能であるといわれ、科学よりも疑似科学として扱われています。
 しかし、良く考えてみて下さい。「この理論」ということは、「理論」はあるのです。「理論」はあるのですが、科学的方法による検証が不可能であるのです。だから、シンクロニシティは科学的には“ただの偶然”であるわけです。では“意味のある偶然の一致”は、科学的ではない何の「理論」が働いているのでしょうか。科学的な検証が不可能なだけなのです。理由は一時、流行になった「波動」によるものだとか、様々な説が唱えられていますが、明確な答えは見つからず、現代でも研究が進んでいるのだそうです。科学的には原因不明・謎とされています。科学的に証明できないから「ない」のではなく、確かに「ある」のですが科学的に証明できないだけなのです。だだそれだけにまやかしも蔓延しやすいのでしょう。(つづく)

 
 
 

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17 コメント

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あれっ シンクロニシティ? (三谷和英)
2009-09-01 06:37:35
昨夜、シンクロニシティについて考えていたら、今朝この記事を読みました。シンクロニシティを感じました。

考えてみると、小さいころからずっと、「科学的に証明できないことは価値のないこと」、そんなことを信じるのは「宗教や占いの類でよくないこと」、というようなことを教えられてきたように感じます。

でも近頃、科学的に証明できるのは「すごく狭い世界」で、その周りには証明できない「もっと広い世界」が広がっているのかもしれないということを感じるようになりました。

後編はどう展開していくのでしょう? 楽しみですね。
理論は世界をカバーしない (澤谷 鑛)
2009-09-01 07:17:54
三谷さん。

西欧的な論理、近代的な合理精神が科学技術の世界を支えた二つのものだと言われています。勿論、この二つは重要なものです。しかし、これだけでは人間はやっていけないことも事実ですね。

数学者の藤原正彦氏は、
「人間にとって最も重要なことの多くが、論理的に説明できないということです」
といい、
「もし、人間にとって最も重要なことが、すべて理論で説明できるならば、理論だけを教えていれば事足りそうです。ところがそうではない。論理的には説明出来ないけれども、非常に重要なことが山ほどあります」
と言います。そして、
「理論は世界をカバーしない」
と言います。

オーストリアの数学者クルト・ゲーデルは、「不完全性定理」というものを照明したそうです。それはどんなに立派な公理系があっても、正しいか正しくないかを論理的に判断出来ないことが、数学においてさえある、という照明なのだそうです。
1+1=2か、そうでないかに決まっています。どちらが正しいかは今は決められなくても、いつか必ず論理的に決めることが出来る、と信じていたのを「どちらとも永遠にきめられないものがある」ということが、数学的に照明されたのだそうです。
藤原氏は、
「数学の世界でさえも、論理では説明できないことがある。まして一般の世界では、論理で説明できないことの方が普通です」
と言います。

思考の世界から思惟(しゆい)の世界へということでしょうか。
なんかおもしろいことを書いたはりますねえ (はにー☆)
2009-09-01 07:23:27
mixiから来ました。

なんかおもしろいことを書いたはりますねえ。

後編が楽しみです。

何かおもしろいことを書いたはりますか?(笑) (澤谷 鑛)
2009-09-01 07:47:35
心理カウンセラーであり、僧侶である「はにー☆」さん。
お久しぶりです。

2年前の10月20日(土)に新大阪のチサンホテルでの講演会を21:00に終了し、スタッフと軽く呑みながらの打ち上げののち、京都まで新快速で帰りました。京都駅で降りたホームで「はにー☆」さんが私にお声をかけて下さいました。講演会ののち、友人と親しく呑みながら楽しく歓談したとのこと、僧侶であるということ、講演会はすばらしかったということ……ホームでの短い時間でしたが、大変充実した時間に感じたのを今でも覚えています。

何かおもしろいことを書いたはりますか?(笑)
嬉しいですね。明日もつづきをお楽しみください。
訂正いたします (澤谷 鑛)
2009-09-01 09:33:48
コメントで書きました「理論は世界をカバーしない」の中で、
「証明」とすべところが三カ所「照明」となっておりました。「証明」の間違いですので訂正いたします。

二人の方からご指摘のメールをいただきました。
後編が楽しみです (ランチャン)
2009-09-01 09:44:34
おはようございます。
mixiからこちらに来ました。
シンクロニシティとは、ユングが提唱したものなのですね。おはずかしながら知りませんでした。最近、私は心理学の言葉をよく聞きます。
後編が楽しみです。
シンクロなのでしょうか? (澤谷 鑛)
2009-09-01 09:56:12
熊本市にお住まいの「ランチャン」さん。
阿蘇のタオさんとお知り合いなのでしょうか?
最近心理学の言葉をよく聞かれるそうですが、それもシンクロなのでしょうか? 明日もお楽しみください。

今年の7月5日(日)と2月22日(日)にセミナー開催のため熊本に行きました。夏と冬、どちらも熊本は良かったですね。また行きたいと思っています。
自然に恵まれたとても良いところ (ランチャン)
2009-09-01 14:12:51
タオさんのお知り合いというほどではありませんが、8月菊池養生園で行われたタオさんの講座を聞き、その1週間後にTAO塾であった女神講座最終回「宇宙につながる自然なお産」の話を聞きました。
阿蘇は、熊本の中でも自然に恵まれたとても良いところです。
どうぞお出でくださいませ。
はじめまして! 沖縄からメッセージを送ってます (mami chan)
2009-09-01 14:47:17
はじめまして! 沖縄からメッセージを送ってます
突然のメッセージ失礼致します。
mixiから辿りつきました

沖縄に住んでます~ mami chan といいます。
意識を高めることが大好きです

ブログと日記拝見させて頂きました
とても素敵な内容でした

「眠りから目覚めていく感じ~」良かったです

読ませて頂いて有難うございます
ランチャン さん (澤谷 鑛)
2009-09-01 14:52:38
そうだったのですね。
タオさんの講座やTAO塾でお話をお聞きになられたのですね。

7月5日(日)に熊本市でセミナーを開催し、次の日に、どうしてもタオさんにお会いしたくて、熊本の仲間二人に塾まで連れて行ってもらい、短い時間でしたがお会いしました。

その時に書いたものが、これです。

http://kizunanohousoku.blog34.fc2.com/blog-date-200907-24.html

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