中国の古典に、「天の時」も「地の利」には及ばず、「地の利」も「人の和」には及ばないというものがあります。確かに、その通りなのですが、それでも「天の時」というのは絶対にあるのだと思います。そして、「天の時」だと思ってしまう時もまたあるのだと思います。
最近、この「天の時」をしっかり自分のものにしたのは、サッカーW杯のスペイン代表でしょうね。本当に美しいパスサッカーで「世界一」と称するにふさわしいチームでした。オランダ代表も三度目の挑戦で強さも相当でしたが、ロッベンが決定的チャンスをはずしたり、後半での審判への八つ当たりなど、自ら「天の時」を手放した感があります。オランダチームも、「天の時」だと思えばこそ、熱くなったのは分かりますが、スペインの方が熱くならずに、いつも通りのパスサッカーを展開し、しっかり「天の時」を手にしたのだと思います。
そして、「天の時」だと思ってしまったのは、菅首相でしょうね。鳩山前首相からバトンタッチをすると、内閣支持率がV字回復しましたが、それを自分への支持と勘違いし、「天の時」だと思ってしまったのでしょう。しかし、実際は菅さんへの支持ではなく、鳩山・小沢の退陣で変化を期待した民主党への支持が復活しただけで、消費税で評判が落ちると、一気に腰砕けになりました。
数年前の「加藤の乱」を思い起こさせます。あれも、ネットへの反応を世の中全体の反応と見誤り、「天の時」と思ってしまったための失敗でした。あの時、涙を流して、政治家としての弱さをさらけ出した谷垣さんが、自民党のトップに座り、党内部から指導力、リーダーシップがないと突き上げられながら、今回民主党の敵失で大勝してしまうのだから皮肉なものです。
原典では、天の時よりも地の利、地の利よりも人の和ということですが、私はやはり、ここを逃したら次はないという「天の時」はあるのだと思います。その時に大事なのは、それを決して逃さない肝の据わり方というか、覚悟なのだと思います。「今」を逃さないこと。事の大小はあるかもしれませんが、誰にも一度は訪れることではないでしょうか。それを逃さないようにいつも準備をしておきたいですね。まるで、野球の守備のようですね。