ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(119)

2008-02-22 12:34:22 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠    加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女。
智太郎 柳葉敏郎 :悠の初恋の人。商社マンになった(ユウワ貿易)
良子  末広真季子:長屋の部屋の前住人、水仙で働く(笹原の妻)
おばあさん  タイヘイ夢路:長屋の、笹原の部屋から出て行かない老婆

      アクタープロ
      キャストプラン
      東京宝映

お初  野川由美子:「水仙」の女将。かつて「おたふく」の女将で悠を預かっていた



・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

悠は、お金をおいていったのは、智太郎だと確信していました。
しかし、どうしてその時、堂々と会ってくれなかったのか、腹立たしい気持ちで一杯でした。



悠はお初にズバリ聞いた
「女将さん、あのお金、まだ返してくれてはらしませんね」
「え」
「いつか、うちに黙って置いていかはった、あのお金です」
「ああ、あれなぁ。
 社長さんが直接返してくれって言わはるさかいに、まだそのお連れさん来てはらへんし。
 わてがちゃんと預かってます」
「そのお方が智太郎さんやいうこと、女将さん、ご存知やったんですね?」
「‥悠‥、なんでそれ‥」
「やっぱり‥」
「智太郎さんに会うたんか?」
「いえ。雅子、いえ妹さんにお会いしたんです。女学校の時の親友です」
「まぁ、そういうことか‥。‥‥それで?」
「お金は、会社宛てにうちから送ります」
「あ、そうか。 まぁ、あんたがそうすると言うのなら、それもよろしいわな」

お初はお仏壇の引出しから、封筒を出した

「何やまぁ、わてがいろいろと、いらん気ぃ使うたみたいやな」
「一度は、あんたも惚れたお人や。ボンボンが病気の時にそのお人に会うということは、
 第一、ボンボンがいい気はせんやろと、そない思ってな。
 で、あの人が来はったら、わてから直接返して、
 『もう悠の心を惑わすようなことはせんといてください』と頼むつもりやった」
お初は、封筒をバンと卓において、「いらんお節介やったようやな」と言った

「女将さん、昔、おたふくに女将さんのもとの旦那さんが押しかけて来はったことありましたな」
「なんやの、そんな古いこと、今さら言いださんとてぇな」
「あの時、女将さん、旦那さんの前で、『今は精二さんが好きや』って、はっきり言わはりました。
 うちあの時、いっぺんすきになった人を忘れるなんてこと、考えられませんでした
 けど、今やったらわかります。
 今は、うちは雄一郎さんが好きです。
 智太郎さんとお会いしても雄一郎さんが好きやって、はっきり言えます。
 智太郎さんかて、うちのこと忘れるって言うてくれはったんです。
 せやから堂々と会うて、雄一郎さんともお友だちになってほしかった。
 それが、こんなこそこそしはることにうち、怒ってるんです」

「悠、気持ちはわかります。けどな、男はんというのはな、おなごと違うて
 その時その時のホンマの気持ちというのはな、なかなか言えんもんや。 
 それぐらいのことがわからいで、おなごとしてまだまだ一人前やおまへんな」
「‥ すんません」
「憚りながら、このお初さんな、男とおなごのことは修羅場、なんべんもくぐり抜けてきてますのや。
 お嬢さん育ちのあんたとは、おなごの中身が違います。うふふ、あはは」

バタバタと足音がして良子が「女将さん、高橋興業の社長がお見えになりました」
「あれ、予約あったかいな」
「いいえ。この間の東京のお客さんが突然来はったよってに、お連れしました、言うて‥」
「あ、そうか。2階へお通ししてんか」
「はい」

「大丈夫や。気ぃ悪くしはらへんようにな、わてが会うて、これ、お返しします」
「女将さん、お会いしたらあきまへんか」
「え?」
「雄一郎さんがいたら、きっとお会いしろって言うと思うんです。
 お会いして自分で返して来なさいって‥」
「大丈夫かいな」
「はい。ちゃんと言うてお返しします。お願いします」


智太郎は、いらいらしながら手酌で酒を飲んでいた。

「失礼します」と(悠の)声
「社長はどこへ行ったんですか。ビジネスの話がないのなら失礼する」と立ち上がる智太郎

しかし、入って来た仲居が悠なのに気づいて、驚く

「いらっしゃいませ」
「‥」
「社長さんは、女将と用がおありですから、その間、私にお相手をと言わはったんです」

座る智太郎

「ここにいるのは、悠やのうて、ここの手伝いをしてる女、そう思ってください。
 ま、お一つどうぞ」
盃を出す智太郎
「私もここにおられるお方が智太郎さんやとは思いません。ただのお客さんやと思います」
「(うん)」軽く頷いて、酒を口にする智太郎

「この間は、お気を使うていただきましてありがとうございました。
 お気持ちはありがたいんですけど、お気持ちだけいただいて、このお金はお返ししたいんです。
 お気を悪うせんといてください」
「‥‥」 返事をしない智太郎

「ここの女将さんは、昔、おたふくいう食堂をやってはって、
 私はそこで働いていたご縁で、ここも働かしてもろうてるんです。
 お客さまは、東京にお住まいですか」
「ええ」
「お忙しいんでしょうけど、いっぺん主人に会うてくださいませんか?」
「ご主人は、どこが悪いんですか」
「はっきりとはわからへんのです。
 ただ、主人はあの原爆が落ちたすぐ後で友だちを探して歩き回ったことがあるそうです」
「血液検査はしたんですね?」
「はい」
「白血球はどれぐらいありますか。標準は7000~8000、3倍ですか5倍ですか」
「お客さま、お詳しいんですね」
「いや、昔、ちょっと医学を勉強したことがあったもんで‥」
「何でおやめになったんですか?」
「よくある話ですよ。戦死の公報を見て、両親は私の墓を立てました。
 自分の墓を見るということは、どういう気持ちかわかりますか?」
「‥」
「戦争のせいにするのは卑怯かもしれない。ただ、それまでの自分の生き方が無意味だったのは確かです。
 今の会社は、外国へ行けるというので入りました。
 向こうで無茶苦茶に働いて、日本に帰って来たら、会社は二倍にふくれ、
 気がついたら、ボクはそこの中心にいたんです。今のボクは仕事が全てです。
 戦争中はお国のために戦いました。お国のために戦友たちが死にました。
 しかし今は、自分のために生きています。
 生まれ変わったからには、以前と同じことをする気はありません。
 自分のお墓の前でそれまでの自分を捨てたんです。好きだった人と一緒に‥。
 また会うことがあっても、その人は自分を別の人だと思うでしょう。
 このお金をあなたにあげてくれと言ったのは、一人一人が豊かにならなければいけない、
 そう思ったからです。
 しかし、やっぱりこれは私が引き取るべきでしょうね」

そう言って、智太郎は、封筒を内ポケットにしまった。

「お気持ちは、ようわかりました。今日のこと、忘れません。ありがとうございました」
「そのかわり、一緒に付き合ってください」 ちょっと微笑む智太郎
盃を受け取り、お酌してもらう悠 ‥‥ そしてぐっと飲んだ



「んもう、いったいいつまで話してんのや」とお初は気が気でない
「見てきましょか」と良子
「いやいやいや、悠のこっちゃ。言うだけのことはちゃんと言うてますやろ」
「でもねぇ‥」
「そやな!」 と、お初は立ち上がり、良子もあとに続く。


しかし、部屋からは陽気な手拍子と歌声が聞こえてきた

あの子かわいやカンカン娘~ 赤いブラウス、サンダルはいて~

「悠! 
「はいっ!」



夜道


「ここへ来て、もう4ヶ月になるんです。
 今日すいません、女将さんに一緒に怒られて‥」
「いや。つき合あわしたのはボクです。
 長い間のわだかまりがとれたような気になって、嬉しかったもんで、つい」
「他の人になっているうちに、だんだん、自分も智太郎さんも他の人みたいに見えてきて‥。
 おかしなもんですね」

家の前まで送ってきてくれた智太郎を、長屋の向いのおばあさんが見ている

「もう、ここでけっこうです」
「そうですか。今度大阪に来た時は、ご主人のお見舞いに行きます」
「ハイ」
「今日はありがとう」と手を出す智太郎

一瞬握手し、一瞬見つめあい、そしてさっと踵を返す智太郎の背中に、悠はお辞儀をしていた


(つづく)


『ちりとてちん』(120)

2008-02-22 12:34:10 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り 上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母 
和田正典   松重 豊  :喜代美の父、一家で鯖江から小浜に戻り、塗箸職人に
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子
和田清海   佐藤めぐみ:喜代美と同姓同名の同級生 エーコ。小浜に戻って来た
竹谷 修   渡辺正行 :箸問屋「丸竹」、観光協会の事務局長
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子
和田正平   橋本 淳 :喜代美の弟。大学卒業後、就職はせず小次郎化しバイト中
咲      田実陽子 :酒場「寝床」の店主・熊五郎の妻
木曽山勇助  辻本祐樹 :草々に弟子入りした、徒然亭の新弟子

野口順子(回想 宮嶋麻衣 :高校時代の三味線ライブの回想
沙織(回想)  村上佳子 :高校時代の三味線ライブの回想
由美子(回想  和田はるか:高校時代の三味線ライブの回想
恵(回想)   中井飛鳥 :高校時代の三味線ライブの回想 飛香 だと思う NHKさん ^^;

      NAC
      劇団東俳
      日本芸能センター

和田小梅 江波杏子 :喜代美の祖母、もと芸者、スペインを堪能し帰国




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勇助(辻本祐樹)が理由をつけては修業を抜け出すようになり、喜代美(貫地谷しほり)としては信じるべきか、悩んでしまう。一方、喜代美の留守の合間を見て、清海(佐藤めぐみ)が草々(青木崇高)の元を訪ねてくる。かつて恋人同士だった時のことを思い出す二人だが、草々にとってはすでに遠い過去の出来事になっていた。そんな草々を見て清海は、けいこを見せてほしい、と頼む。