ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(101)

2008-02-01 08:03:35 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女、吉野屋に嫁ぐ
雄一郎 村上弘明 :悠の夫。「吉野屋」の息子。古墳発掘はやめ、吉野屋を手伝うが‥
喜一  桂 小文枝:雄一郎の父
板井  河野 実 :「毎朝新聞」の記者、雄一郎の元同僚 前回は 第36回
          板井 になってますが、坂井 かと‥
秋子  酒井雅代 :喜一の浮気相手の連れ子、吉野家の養女。大阪に出ている

      アクタープロ
      キャストプラン

お常  高森和子 :奈良の旅館「吉野屋」の女将、雄一郎の母

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

朝靄の中、悠は表に水打ちをしていた

市左衛門は、静と一緒に京都に帰っていきました。
2人の姿を見ながら、微妙な夫婦の結びつきを考えていました。 



そして雄一郎は、新聞社から来た手紙を読み返し、
また市左衛門の言葉を反芻して考えていた

 人間同士が殺しあうのは間違いや ‥ それをはっきり言える勇気のある人間が
 世の中に出ていかんならん時代と違うんどすか
 そうせんと、戦争で死にはった人間が化けて出てきまっせー

悠が部屋に入って来ても、雄一郎はその手紙を広げたままにし
「悠、大阪に行ってきてもいいか」と訊いた
「はい」
「断るにしても、一度はデスクに会わんとな」
「はい」
「ばかに素直だな」
「はい。あなたの思わはる通りにして下さい。うちはついていくだけです」
「ありがとう。 俺、お前みたいな嫁さんもらって、良かったよ」
「私も、あなたみたいな旦那さん持ってよかった 
「はっはっは。そこまで調子あわせることない」
「いいえ、ホンマどす。この間、お父ちゃんととことん飲んでくれはったあなたを見て
 うちが男やったら、きっとそうしたやろ思ったんです」
「いや、あれは気がついたらお義父さんの調子に巻き込まれただけで、
 あんなに酔っぱらうつもりはなかったんだ」
「何でもよろし。けど、お父ちゃんもホンマの息子のような気がするって嬉しい顔してくれました」
「俺もお義父さんに教えられたよ」


「四月十日  婦人週間  の立て看板のある毎朝新聞社。

雄一郎は、久しぶりに前に立って「奇蹟だよなぁ、ここが焼け残ったなんて」と言い
ビルに入って行った。

資料部の扉を開け「よお! 戻ったんだって」と話しかける雄一郎
「今、デスクから聞いてきいたんだ」
「よぉ、お前も戻るのか」
「いや、迷ってる。前のような気持ちでとても勤まりそうにないからな‥」
「あいかわらずボンボンだよ、お前は!
 勤めなくても食っていけるから、いい気なこと言ってられるんだよ」
「相変わらず厳しいな。ま、幸いか不幸か、お互い生き残ったんだ」握手する2人。
「よし! 久しぶりだ。バラックの飲み屋にでも招待するか」
そう言って、坂井は松葉杖をついた。

「もういいんだろ? 行こう」

コップ酒を飲む二人

「田舎に引っ込もうかとも思った。しかし妻子がいるからな。
 俺だって、できるなら一線で働きたいよ。
 おやじ、もう一杯。 復職して俺の分もやってくれよ、な、吉野」

そこに、若い女が初老の男性と入って来てにぎやかにした。
「おやじ、冷、二杯」
「うわー、お肉おいしそうやな。おっちゃん、うちお肉」と雄一郎のとなりに座る

化粧をして赤い大きなイヤリングをしたその女性を見て、雄一郎はぎょっとした
「秋子」

吉野屋から大阪に出している秋子だった
秋子は、雄一郎を認めると目をひんむいて、そのバラックから逃げ出した。

追いかける雄一郎

「もう離してよ、いや!」
「秋子!」


そのまま秋子は奈良まで連れて行かれた。

吉野屋の前で「いや!」と抵抗する秋子だが、雄一郎は手をひっぱって、離さなかった
悠が「お帰りやす」と出てきたが、雄一郎の連れている女性を見て驚く
「あっこちゃん‥」

「コイツを風呂に入れてやってくれ」そっぽを向いている秋子
お常も出てくる
「何で? そんなかっこして一体どうしたんえ?」 
「ほっといてー! うちはもともとこの家の子やないのや」
「あんたはうちの妹や、こんなことになる前になんでうちに一言言うてくれはらへんかったんや」

「ふんっ。何が妹や。うちのことなんか全然心配したことなんかないくせに!
 好きな人と結婚して自分だけ幸せだったらそれでええのや」
「秋子! あんたなんてこと言いますのや」とお常
「都合のいい時だけ娘にして、都合が悪くなったらやっかい払いや!
 うちはうちの勝手で生きていくよりしょうがないやろー」
「あんた、デパートの洋裁部で働いてたんと違うんですか」
「最初の三ヶ月だけや‥ うちは負けたんや。
 負けたから言うて自分の家でもないところへ、のこのこ帰ってこられへんやろー」
「あっこちゃん!」 悠は平手打ちをした

秋子は頬を押さえて茫然とするが、悠の言うまま、玄関から中に入っていった。
お常もついていこうとしたが、雄一郎に「悠に任せておいたほうがいい」と止められる。

「あの子一体、何を考えてますのやろか‥‥」


雄一郎は、机に向かって復職願いを書いていた
悠が「すんません、先にお風呂に入ってしもて‥‥」と部屋に入って来た
「秋子はおとなしく寝たか」
「はい。お布団に入るなり、安心したみたいに、すぐに」
「何か話したか?」
「何も‥」
「あいつなりに懸命につっぱっていたんだ」
「元気にやってはるもんとばっかり思って、私に対する反発もあったんでしょうね‥」
「‥秋子のことはもう心配するな。きっと立ち直る。
 悠、俺、もういっぺんやってみるよ。
 お前も知ってるだろ、文芸部で一緒だった、坂井」(サカイ って言ってますね♪ 坂井)
「いっぺんお会いしたことがあります」
「あいつが復職していた。戦争で足をやられて、それでもがんばっていたんだ。
 自分では走り回れないから、俺にもういっぺんやってくれないかって言ってくれたんだ。
 お前や薫のこと、一時でいい、忘れさせてくれるか」
「1人で大阪、行かはるんですか。あなたと離れるのはいやです」
「お前だけならともかく、薫も一緒に連れて行って生活する自信はない。
 新聞記者ってやつは夜も昼もない、お前や薫のことを気遣いながらやれる仕事とは違う。
 それに、今ではここの仕事も、お前がいなくなってはやっていけないだろう」
「‥はい‥
「一週間に一度は薫の顔を見に帰ってくる。それだけは約束する」
「(うん)」
頷きあう2人


翌朝

「母さん、もう一度、俺の身勝手許してくれよ。頼みます」
「悠さえいてくれたら、あたしはもう何にも言いません」と呆れ顔のお常
「な、あんたさん」
「うん。ま、良かった良かった」
「んもう、またそんな気楽なことを。たまには父親らしいことを言うてやって下さい」
「まぁ、女と体には気をつけてな。しっかいやんない」
「父さんじゃないんだから、俺は」
「まあな」
「考えようによったら、息子にとってはいい親父さんなんやろ?」とお常
「せやろ。そう思うてワシも無理して、どうしようもない男になってまんのや」
「これはこれはご苦労さんなことです。うっふふ」
悠と雄一郎は、目で、良かった‥というように合図を送る

「ほいで、いつから行きますのや」
「うん、正式な復職の手続きをとって、多分、来月くらいになると思う」
悠は、寂しそうにお味噌汁を口に運ぶ
「悠、おおきに。よう承知してやってくれはりましたな」
「やっとその気になってくれはって、嬉しいような半分、寂しいような半分てとこです」
「けどな、こんな嵩高い男はんがおらんようになって、のんびりと仲良うやっていきまひょ。な」
「はい」
笑いあう悠とお常


秋子は部屋で布団に入ったまま、手鏡で目を見ていた
「秋子ちゃん」 悠の声 「入ってよろしいか」
秋子は背を向けて寝たままでいる

「なぁ、秋子ちゃん。お願いがあんのやけど」
「お手伝い代わりはもう嫌や」
「お手伝い代わりとちごて、ホンマの女将さんになってくれはらへん?」
「嫌や」
「何で?」
「うちはこの家と、何の関係もあれへんもん」

「‥そっか。この家にいんのは嫌か。また大阪へ行きたいの? 
 誰か好きな人でもいはんの?
 もしそんな人がいはんのやったら、何も言わへん、あっこちゃんの好きなようにしはったらええ」
「何、寝言うてんの!」起き上がる秋子
「お姉ちゃんなんかに言われんでも、うちはうちの好きなようにする」
「せやな。うちがあっこちゃんの一生を決めることはでけへんもんな」
「‥」
「うちも昔な、京都の家を継げと言われて、家を出てしもうたんや。
 親の身勝手さが許せんかった。
 せやのに、他人のうちが、あんたにそんなこと言うても聞いてくれはらへんわな。
 雄一郎さん、大阪に行かはんねん。元の新聞社に戻らはるんやて。
 うちは、連れてってもらえへん。ここの女将になると約束した以上、一緒に行かれへんのは当たり前や。
 けど、あっこちゃんが女将になってくれはったら、あの人と一緒にいける‥
 そんな虫のええこと、考えてたのや。堪忍え。
 これからのことだけを考えはったらええのや。
 人の一生には自分で決めんならんことがなんべんもあんのや。
 一番大事なことだけは、見失うてはいかん」

話を聞きながら、悠の口調に何かを感じる秋子

悠は、秋子にそう言いながら、雄一郎と一緒に大阪に行くことが自分にとって一番大事なことだと
言い聞かせていました 


(つづく)

『ちりとてちん』(102)

2008-02-01 07:59:33 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り :上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子
菊江      キムラ緑子:「菊江仏壇店」の女主人。酒場「寝床」の常連

徒然亭草々(少年時代) 森田直幸 :中学生の草々(青木 一)
徒然亭小草若(少年時代)榎田貴斗 :中学生の小草若(吉田ヒトシ)
吉田志保  藤吉久美子:草若の亡くなった妻
徒然亭草若 渡瀬恒彦 :天才落語家。天狗座での徒然亭一門会の後、正式に高座復帰




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草々(青木崇高)、四草(加藤虎ノ介)、草原(桂吉弥)ら兄弟子皆に落語の悩みを相談した喜代美(貫地谷しほり)。だが解決策は見えないままだ。たまたま母の仏壇に線香をあげにきた小草若(茂山宗彦)に相談するが、小草若に良いアイデアが出るわけでもない。一方小浜の草若(渡瀬恒彦)も息子の行く末を心配していた。そして小草若が「底抜けに~」を思いついた日の話をはじめる。




ヒグラシの抜け殻と言わせるとは、なんてなんてなんて暗示的 


つれづれなるままに、日ぐらしすずりにむかひて、こころにうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 
(吉田兼好『徒然草』)



そして、小草若ちゃん。

脚本家さんは、小草若ちゃんをどこに着地させるのか

「寿限無」+ α しかできないまま?


天狗芸能の会長に「誰やったかな?」と言わせ
四草にも「このままでは、草若の名前も女も、草々兄さんにとられますよ」と言わせ
覚醒のチャンスはあったのだけれど …


小草若ちゃん役の茂山さんの素(もっぴー)を知ると、
「 家の子 」
の重さをまた感じますね