ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(107)

2008-02-08 21:48:17 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女。吉野屋に嫁ぐ
雄一郎 村上弘明 :悠の夫。「吉野屋」の息子。毎朝新聞の記者に復帰
葵   松原千明 :竹田家の長女
        (バツイチ後、看護婦・ジャズシンガー・代議士の後援会と転職し、新劇女優)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)
義二  大竹修造 :桂の夫(婿養子)、竹田屋の若旦那
忠七  渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)復員後もそのまま番頭さん  
長屋の女 タイヘイ夢路:笹原の部屋から出て行かない老婆

      キャストプラン
      アクタープロ

笹原  原 哲男 :雄一郎の住む長屋の部屋の前住人。もと地主
お初  野川由美子:「水仙」の女将。かつて「おたふく」の女将で悠を預かっていた
          前回は第36回

市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
静     久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

お初さん! 女将さん! 再会です 



・‥…・・・★・‥…・・・★・‥…・・・★・‥…・・・★・‥…・・・★

「市左衛門はいらんのと違いますかっ」と義二
「いいや、竹田市左衛門が正式な社名どす! 発起人は家族6人。他のもんにも株主になってもらいます」

市左衛門は竹田屋を、竹田市左衛門株式会社 と改めることを告げたのです。


「資本金50万円、額面は50円とします。
 発行株数は1万、発起人は、私、静、葵、桂、悠、義二とします。
 株は発起人、店のもん全員に持ってもろて、役員は私、静、義二と桂、それに忠七になってもらいます」

忠七は両手をついて頭を下げる

「店のもんは新しい会社に入ることになります。それでよろしいな」
忠七の後に控えていた、新人2人も一緒に頭を下げた。

「わかりましたけど、私は株を何株持たせてもらえますのやろ」
「義二は、1000株どす」
「そしたら、他の株はどうするんどす」
「竹田屋のホンマの主人は、竹田 静どすさかいに、静には半分の5000株を持ってもろて、
 社長になってもらいます」

「お母ちゃんが社長!」と悠
「えーっ。お母ちゃんが社長?」と葵
「‥となると、お義母さんは大株主というだけで社長どすか」と義二
「はい。ただし、社長としての全ての権限を竹田市左衛門に委任いたします。
 私は大株主として監査役にならしてもらいます」

「お義母さん‥、それはおへんやろ」 桂も口をきつく結ぶ
「義二はん。異議があんのんどしたら正式に発言しておくれやす」
「‥‥」

「そらま、義二はんは不満やろけど、私が社長になることに賛成のもん!」
挙手する静、忠七、新人2名。

「反対のもん」 挙手する義二と小さく挙げる桂

「葵と悠はどっちどすねん」
顔を見合わせて、葵が「うちら、賛成でも反対でもありません」と言う

「お父さん、こんなことあんまりどす。こんなやり方しはるやなんて‥」桂が抗議した
「株式会社にすべきやといい続けはったんは義二どっせー。
 株式会社の仕組みっちゅうもんがどういうもんか、義二やったらようわかってはりますわなぁ」
「はい‥。
 そらそうどすけど、会社になったらお義父さんは相談役で私は社長になれると思ってきばってきたんです。
 そんなに私が信用できまへんのか」
「義二さんに尽くして尽くして、やっと義二さんの言わはることどしたら、何でも聞けるようになったのに
 今ごろになってこんなあこと、ひど過ぎます」

「桂、落着きやす」と静が言った
「うちは今まで何のために我慢してきたんどすか。何のために生きてきたんどすか? 
「桂、いずれこの店は、市太郎が継ぐことになるんどす。
 そことを忘れんようにな」

「そんな‥ 私は一体 何どしたんや。私はお義父さんから市太郎へ継がれる間の中継ぎどすか」
「‥ 養子 っちゅうもんはそういうもんどす。
 わしゃあんたに、それをわかって欲しかったんや」
「義二さん、頼みます。専務取締役営業部長として、どうぞ主人を助けてあげておくれやす。
 店のことはあんたが取り仕切ってくれたらよろしい。
 そいでも、形だけでも竹田屋の主人でいさせてやってください、お願いします」

「お母ちゃん。中京の女は、そんなことまでして旦那さんを立てなあかんのどすな」と桂が言った
「せやったらうっちも、うちのダンナさんを立派に立てて見せます」

桂は自分たちの部屋に入り、鏡台の前に座った。
悠が入ってきたのが、映った。

「何も言わんといて。うちがアホみたいに見えるやろ?
 竹田屋を逃げ出してよかったって思ってんやろ?」

葵も来る「すごかったなぁ。あんなお母ちゃん、初めて見た。女が強うなったって言われるわけや」

「違うえ。お母ちゃんはただお父ちゃんのために一生懸命やらはっただけや」と悠
「うちかて、旦那さんのためやったら、あれぐらいのこと、言えます」と桂は言ったが
「無理やと思うわ」と悠に言われる
「お母ちゃんのやらはることぐらい、うちにもできます」
「そうか。せやったら、お母ちゃんがお父ちゃんを愛してはるのと同じぐらい、お義兄さんを愛せますか?」

「‥‥ お母ちゃんはあんなこと言いとうないはずや。
 お店のことはお義兄さんに譲って、2人で旅行行ったり、お芝居見に行ったりしたい筈や。
 けど、お父ちゃんはそんなことでのんびりできる人やないことを知って、
 やりとうないことしはったんや」
「ほな、自分の娘が傷ついても、主人の方が大事やて言わはんの?」
「親は、子どものことやったら意識せんでも大事にできるけど
 夫婦のことは努力して大事にせんといかんやろか」
「ええなぁー、ふたりとも子どもがあってー」と葵

「葵姉ちゃんかて、結婚しはったらよろしんや」
「うちはもう子どもなんか産まへん」
「いっぺん流産したかて、子どもは産めんのえ?」
「うちの前でもう子どもの話せんといて‥ 
 いつまでも女は夫や子どものことだけ考えてたらええいう時代やないのえ。
 それにしてもお母ちゃんの演技力、すごかったな」
「芝居と違うえ」と悠 「言うてはることはキツイけど、心の中はお父ちゃんへの思いだけや」

「そんなことが言えんのは、好きな人と結婚できた人だけやー」ちらっと悠を見る桂
「お父ちゃんが決めはった人と結婚させられて、好きにならんといかん思うほうがどんだけしんどいか
 悠にわからへんのや」
「でも、ま、これからの女の人は、好きでもない人と結婚なんかせえへんようになるえ。
 親に無理矢理結婚させられるなんてこと、うちらの時代でお終いや」
「ぁーぁ。ぅちもう、こんな家のこと忘れて好きなことしてみたい‥」と桂

どすどす! と義二が廊下を歩いてきた

「あんた。お帰りやす」

悠と葵は立ち上がった。

「あんた、堪忍しておくれやす」 と桂が言っても義二は何も言わず、姉妹をちらっと見る。
悠と葵は、目で「出ましょう」と合図したが、義二が
「あのー、葵さんと悠さんの持ち株は、500株ずつどしたな」と話し掛ける
「もし良かったら、私に売ってもらえまへんやろか」

「そんなこと、できんの」と葵
「できんことおへん。あの、お金が要るような時は、いつでも私に言うておくれやす」
「はぃ。おおきに‥」と2人は返事をして、そそくさと部屋を出て行った
「お願いしますわな!」

「こうなったら実力を見せるしかないな」と義二は、桂に言った




竹田屋の電話が鳴った。
「竹田屋でございます」と悠が出ると、雄一郎だった。

「広島からは帰って来たんだが、資料の整理をしないといけないから今日は社に泊まりだ」
雄一郎の手には原爆ドームの写真。
「もっというっくりしてきていいぞ」
「いいえ。今日帰ろう思ってたところですし、帰ります。
 何や、元気のない声で。具合、悪いんですか」
「いや、ちょっと疲れただけだ。 いやそうもしてられないんだ。
 8月15日の特集号に間に合わせなきゃいけない。はぁー。悠、俺はやるぞ!」
「はい  
 私のことなんか気にせんとやりたいようにやってくださいね。  ほな。」


その電話を聞いていた葵が「結婚して2年以上経つんやろ? ほんで旦那さんの電話そんな嬉しいのぉ?」

「もうしびれてしまうわ   『悠、俺はやるぞ!』(と真似をする)」
「あはっ! あほらしい~。 うち、もう行こう」
「葵姉ちゃん。うちも帰る。一緒に行こう」

静は薫を抱っこしていた。

「ゃあ~、薫ぅ~、かぁいらしいぇ~。またええのつくってもらって、良かったなぁ」
静の手作りの上下のお洋服を着ていたのだった。
「あせもができんように、風通しのええようにしたえ」

葵も帰り支度に入って来た。

「おおきに。おとうちゃんは?」
「寄合どす」
「挨拶せんで悪いけど、うち、帰ります」
「たまには、薫の顔見せに来てや、な」

「お母ちゃん、うちお母ちゃんみたいな親を持って誇りに思うわ」
「何を言いますのや」
「あんた、よう面と向かってそんな恥ずかしいこと言えんなぁ」
「けど、ホンマにそう思うねやもん」
「葵、今度こそ、ちゃーんと結婚すんのどす。
 お父さん、あんたの好きな人やったら、どんな人でも結婚させる言うてはりますえ」
「へぇ。おおきに。また敷居高うなって、今度くぐり抜けならんな」
「もう」と静
「さ、薫、お父さんのとこ、帰ろうな」



悠は薫をおんぶして、長屋に帰って来た。

鍵が開いたままで、「笹原さん、あれだけ閉めて言うたのに」とぶつぶつ言う悠だったが
笹原はうずくまっていた。

「笹原さん! どうしはったんですか?」
「お腹が痛いんです。持病ですわ」
「お医者さん行きましょうか」
「いつも薬飲んだらすぐに治るんですけど、それがどこにあるかわからしません。
 えらいすんません、うちのやつ、呼んできてもらえまへんやろか」
「はい。もう仕事行かはったんですか」
「〝水仙〟いう、料理屋ですわ」
「電話番号は? わからへんですか」
「いやー、新町で人に聞いたら、すぐにわかると思います。あー」
「ダイジョブですか1人で」
「あたた、すぐにお願いします」
「はい」


悠は、そのまま薫をおんぶして猛ダッシュした!

水仙の通用口から入り
「すんません、ごめんください。笹原良子さん、呼んでいただけませんか」
と声をかける悠の前に現れたのは、お初だった!

「誰や~、この忙しい時に」と言いつつ出てきたお初も
最初に目に入ったのは、背中の薫、それから頭をあげた女性の顔、それが悠だったのだ

「女将さ~ん」
「悠! 悠やないか! 悠!」

抱き合って、生存を喜び合う2人 「悠、ホンマやな、ホンマやな」


悠がはじめて家を出て世話になったおたふくの女将、お初でした。
それは、9年ぶりの再会だったのです



(つづく)



『ちりとてちん』(108)

2008-02-08 21:48:05 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り :上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母  
和田正典  松重 豊  :喜代美の父、一家で鯖江から小浜に戻り、塗箸職人に
和田小次郎  京本政樹 :喜代美の叔父・正典の弟、奈津子とそのまま同居中
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子
緒方奈津子  原 沙知絵:塗箸の取材に来た、フリーライター、小次郎と同居中
磯七      松尾貴史 :散髪店(磯村屋)の店主。酒場「寝床」の常連
菊江      キムラ緑子:「菊江仏壇店」の女主人。酒場「寝床」の常連
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子
和田正平   橋本 淳 :喜代美の弟。大学卒業後、就職はせず小次郎化しバイト中
土佐屋尊建(回想)  浪岡一喜:落語家・とさのやそんけん
和田小梅  江波杏子:喜代美の祖母、もと芸者、スペインを堪能し帰国
徒然亭草若 渡瀬恒彦 :天才落語家。 




゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜・。+☆+。・゜

「お前の創作落語でおれを笑わせてくれ」病身の草若(渡瀬恒彦)の頼みに、喜代美(貫地谷しほり)はついに創作落語をする決心をする。だが、いざ準備にとりかかると、いったいどうしたらよいのか見当もつかない。奈津子(原沙知絵)に相談すると、面白いと思うものを書いたらいいのでは、と言われてしまう。そんな中、師弟落語会に出ようとして、草若が病院を抜け出してしまう。







あらま、また和田家 大集合 ^_^;


小草若ちゃんの「いったい何見とったんじゃ!」は
おそらくは自分にも言ってる‥‥かな‥‥

草々と若狭を責めなければ、自分もやりきれない




小草若ちゃん、
あんた霊柩車が通っても親指隠さないからだよ~~~~~っ  




磯七さんの言う「人が死ぬことの最大の不幸」は‥‥
散髪の技術やら、落語の何たらには普遍性はあるのかなぁ‥‥

ただただ身内としとて無条件に悲しい上にある(底にある、のかも)
伝統や技術を持つ人間が灰になってしまうこと‥‥



「草若」の名前が重い「小草若」

いつか「小」が取れる日をと 枕で語っていたけれど‥‥




病室の草若師匠に語る小梅ちゃん
もし、志保さんが生きていたら、やはり同じようなことを語っただろうか


   「なんで気ぃついてやれんかったんやと、長いこと後悔しました。
    ‥男いうもんはそれぞれ、ゆずれんもん抱えて生きてますねんやろなぁ―。
    ほやけど、たまには気にかけたってください、
    何よりも師匠の命を大事に思うてるもんらのことを。
    
    ‥正太郎ちゃんは知らんままでしたけど、結局正典が塗り箸継いでくれました。
    そねやっきにならんでも、師匠が伝えたいもんは、
    師匠を大事に思うてるもんらがちゃんと受け継ぎますやな。
    立派な弟子が5人もおるんやで」




『ちりとてちん』は、決して〝死〟を軽くに扱ってはいないと思うけれど
大事な人の死をどのように体験したか、どのくらい経ったか、
病人と自分との関係によって、感想は別れるような気がする