ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(110)

2008-02-12 12:58:04 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女。

雄一郎 村上弘明 :悠の夫。「吉野屋」の息子。毎朝新聞の記者に復帰

葵   松原千明 :竹田家の長女
        (バツイチ後、看護婦・ジャズシンガー・代議士の後援会と転職し、新劇女優)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)

義二  大竹修造 :桂の夫(婿養子)、竹田屋の若旦那(専務)

忠七  渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)→部長

染屋  千葉保 竹田屋の取引先の染屋
医者  伝法三千雄 「水仙」に往診に来て雄一郎を診た医者

文子  三沢恵里 竹田屋の新しい従業員
従業員 井本寛一 竹田屋の新しい従業員
      堀田新五郎  竹田屋の新しい従業員


薫   大塚麗衣 :【子役】雄一郎・悠の長女(赤ちゃん)

      キャストプラン

お初   野川由美子:「水仙」の女将。かつて「おたふく」の女将で悠を預かっていた
市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人(社長)、三姉妹の父(婿養子)


・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

悠は帰ると言い張る雄一郎を無理に寝かせ、医者の診察を受けさせたのです

「血圧もちょっと低いし、熱も少しある。ま、疲れがたまっているんでしょう」と医者
「時々めまいがする言うのは、どういうことなんでしょうか」と悠は訊いた
「ご心配なら、入院していろいろ調べはった方がよろしいですなぁ」
「とんでもなーい」と起き上がる雄一郎「入院なんかしてる暇ありませんよ」

「病人が口出ししなはんな」とお初
「先生、入院せな、あきませんのか?」
「安静にしておられるにこしたことありまへんからな。
 なんなら病院を紹介しましょうか」
「いや、結構です。どうもありがとうございました」と礼を言う雄一郎
「じゃ、‥ お大事に」

お初は医者を見送りに出て、悠は「寝ててください」と雄一郎を再度寝かせる
「‥‥ わかったよ」

悠も見送りに出て丁寧にお辞儀をした
「まぁー、もう。頼りないなぁ、ええコンビやときいたんやけどなぁ。
 なぁ、やっぱり一度ちゃんとした病院で診てもらったほうがええのんと違うかなぁ」
「はぁ、その方が安心なんですけど、雄一郎さん、絶対嫌やって言わはるんです」
「そんなもん、あんたこっちゃが段取りせんとあきまへんがな。
 病人がやで、自分で入院する言うたらあかん時でっせー」
「はぁ」
「ちょっと、葵姉さん、どうしてはるの? もう看護婦さんやめはったん?」
「命からがら京都帰って、それからー、」と指を折る悠
「何してんの」
「あれから、いろんなことやってるんです。 歌手になって」
「はぁ?」
「選挙事務所勤めて、今は新劇の女優になってます」
「女優さん!? わからんもんや~~。連絡つくんやったらな、こっちに来てもらいなはれ」
「葵姉ちゃんにですか?」
「そうやー。こういう時はちょっとでも伝手のある人にいてもらったほうがええのや」
「けど、葵姉ちゃんに言うたら京都にわかってしまうし。心配かけとうないんです」
「借金と病は隠したらあかんて言いましたやろ?
 心配さしとうないって誰にも言わへんかったら、なんぼでも手当てが遅れてしまいます。
 あんたかてはよ安心したいのやろ?」
「はい」
「思い立ったらはよ電話しや、はよ、はいはい」と促すお初だった


竹田屋の表には竹田市左衛門株式会社 とかかっていた。

机に書類などが並び、仕事をしている義二や新しい店員たち。
その奥で、市左衛門が今までのように、畳で、着物を広げて見ていた。

「こんな品のないんは、竹田屋には置かれまへんなぁ」と市左衛門
「旦那はん、それは私が注文をしたんです。これからはこういう柄が流行るんどすわ」と義二
「旦那はんやおへん、社長どす」

「柄はよろしいけど、色があんまり気に入りまへんな」と義二
「二本目からはもっと鮮やかな色のはずどしたな」

「そんな役者が着るような色、いったい誰が着ますねん 
「若いお嬢さんの婚礼のお色直しどすがな」
「ふーん、そんなもん着せはる親御さんの顔が見とうおすな」
「もうちゃんと私が注文受けたんどすから、ごちゃごちゃ言わんといておくれやす! 
「社長はワシや! 
「えーえーわかってます!
 それでもお義母さんが店のことは私の思うようにしてええと言うてくれましたし
 社長の判が必要な時はお願いしますし。 おとなしうそこに座ってておくれやす 

「これもういっぺんやり直してくれはるか」と指示する義二
「へぇ。けどウチではこれが精一杯だす」
「そうどすか、それやったらよそに回しまっせー」

「部長!」と呼ぶ義二の声に忠七が「へぇ」と返事をする
「秋の大阪のデパートに出す見本、どうなりましたんや」
「今、仕上にかかっているそうです」
「急がさんと間にあいまへんで!  え?」
「へぇ」

「忠七!」と今まで通りに呼ぶ市左衛門
「へぇ」
「やない、部長! 見本できたらワシに見せぇない。
 竹田屋の暖簾傷つくような柄は出さしません! 
「へぇ」


そこに電話

「もしもし。ハイ。竹田市左衛門株式会社でございます」
「『竹田屋』でよろしい!」と義二が言えば
「『竹田市左衛門』!」と市左衛門が怒鳴る。

「すんません。あ、いいえ、こっちのことどす。あ、大阪からどすか」
「ほら見てみなはれ、催促の電話がきましたがな」と義二がかわろうとする
「はいもしもしそうどすけど、ああ、悠お嬢さ~ん」

市左衛門がいそいそと電話の方に来る

「はい、ちょっと待っておくれやす。 あ、社長やのうて桂お嬢さん呼んでくれいうことですけど」

がっかりして戻る市左衛門

「桂姉ちゃんか? あんなぁ、葵姉ちゃんのいはるとこ知っとったら、連絡とってほしいねん」
「葵姉ちゃんに? ふーん。何か急用か?」
「着物貸して欲しい言うてはったし、取りにきてくれるようにって言ってくれはる?」
「わざわざそんなことで電話してきたんか?」
「ふん。他にちょっと用あるし、とにかく急いで来てくれるように言うてくれはる?」
「そやけど、なんやわけのわからんお芝居の稽古してはるし、言うだけは言うてみるけど?」
「おおきに。お父ちゃん元気か」
「うーん。元気え、毎日店に出て、義二さんとも仲良うやってはりますえ」

渋い顔をする二人

「ちょっとかわろうか?」 立ち上がる市左衛門だったが、悠は
「ううん、ええのや。また今度ゆっくり行くし。葵姉ちゃん頼むえ、ほなね。さいなら」と切った

「もしもし悠か、元気どすかいな、え? もしもし、もし‥。
 ちっ、切れてますがな」
「ひどいわぁ、せっかくお父ちゃん出てはんのに」と桂
「そんなに悠に会いたいんやったら大阪にいってきはったらよろしいのに。
 店は義二さんに任せといて」
「ワシは社長や。みんなのやることに目ぇ光らさんとあきまへんのや!」
「へぇ、そうですか。なら気ぃのすむようにしておくれやす」

桂はそう言って、義二の耳元で「負けたらあきまへんえ、ウチがついてます」と言った。


「桂、ばっか!」と顔をゆがめて悪態をつく市左衛門



日が落ちてから、雄一郎と悠、薫は帰って来た
「大丈夫ですか?」
「病人扱いするな。ビフテキ食べたら元気が出た 言うたやろ?」


悠が薫を寝かせると、雄一郎が「悠、荷造りしてくれ」と言う

「‥‥、なぁ雄一郎さん? 今度の出張だけはやめて下さい」
「いや、行く。俺の書いた記事が間違っていないことを証明するためにもな」
「笹原さんにひどいこと言われはったし ですか」
「今の国民の大半は、笹原さんと同じ気持ちなんだと思うよ。
 食っていくために働かなくてはいけない。
 だからこそどんなに反論されても、何を言われても正しいと思うこと、言いつづける人間が必要なんだ」
「けど、何にも体を壊してまであなたがせんでもええことでしょう」
「いや、そう言う考え方が一番卑怯なんだと思うよ。
 お前だって、俺がやりたいことをやっているのが一番好きだと言ってくれたじゃないか」
「私は、あなたの体が心配なだけです」

机をばん!とたたき「大丈夫やと言ってるやろう」と雄一郎
「体には気をつけるから‥ 心配するな‥」

「そんなさみしそうな顔するな。さみしかったらまた京都へ帰ってもいいんやぞ」
「いいえ。ごめんなさい。
 けど具合が悪うならはったら電報打って下さいね。すぐお迎えに行きますし。
 それだけは約束してください」
「わかった‥」



満開のひまわりの咲く中、悠はおむつを干していた

悠はお盆に帰って来いという京都からの誘いも断り、
ただ雄一郎が無事に帰ってくることだけを祈っていました。 


がらっと玄関の開く音がして、悠は嬉しそうに「もう帰ってきはった」と小走りに向かう
「なーんや、葵姉ちゃんか」
「なーんえ? その態度は‥。人、呼びつけておいて‥」
「堪忍。今、ウチは雄一郎さんのことしか頭にないのや」
「そんなん、今に始まったことやあらへんわ。ほなウチ、帰るな」と葵
「ちょっと、待って‥。あがって、よう来てくれはった、うちずっと待ってたんえ」
「それを最初に言うべきやと思うわ」
「すんません。さ、あがって」

薫をじーっと見、それから「なんや狭い家やなぁ」と葵
「どんなとこでも、親子三人いれたら御殿や」
「幸せなことで。お盆にも帰って来ぃへんし、お母ちゃん心配してはったえ」
「ええなぁ、京都は平和で」
「一見、そう見えるだけでな、お父ちゃんと義二さんの戦いはすごいえ。
 ううん、あれはな、お父ちゃんと桂の戦いやなー。
 桂も今は義二さんのことしか頭にあらへんみたいよ」
「ふーん‥、な、お姉ちゃん。
 中之島病院の先生で知ってはる人あったら紹介してほしんやけど」
「あっ! あんた、また赤ちゃんできたんか?」
「ううん、そんなんと違う。雄一郎さんをな、入院さしてほしいんや」
「入院って、何で? 雄一郎さんは?」
「広島に出張してはる‥」
「出張してはる人がなんで入院しぃんならんの」
「ちょっと休ましてあげんとあかんねん、なんやこの前から具合悪そうやし、
 お医者さんはな、夏負けや言わはるんやけど、何やちょっと違うような気がすんねん」
「悠の旦那さん思いはようわかるけどなぁ、
 仕事に燃えてはる人に、水さすような奥さんにだけは、なったらあかんえ」
「けどな」
「あんたから聞いてたしな、雄一郎さんの書かはった新聞記事、読んだんや。
 ホンマに勇気のある人や、思うたわー。
 劇団の仲間も同じ思いえ。戦争に巻き込まれる恐怖に対して、一人一人が勇気を持って戦うべきや。
 うん。
 ウチらはな、そういうこと、芝居で民衆に訴えようとしてんねん。
 やっとやる気になった人休ませるやなんて、悠らしないなぁ」

そこに雄一郎がふらふらっと帰って来た

「あんた。大丈夫ですか? 立てますか? つかまって」

葵も、悠の言うことが大げさではないと感じたようだ


(つづく)



約束の旅

『ちりとてちん』(111)

2008-02-12 12:57:54 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り 上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母  
和田正典(回想) 松重 豊  :喜代美の父、一家で鯖江から小浜に戻り、塗箸職人に
和田小次郎  京本政樹 :喜代美の叔父・正典の弟、奈津子とそのまま同居中
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子  
和田清海   佐藤めぐみ:喜代美と同姓同名の同級生 エーコ。小浜に戻って来た

喜代美(回想) 桑島真里乃 :小学校3年生の喜代美
正平(回想)   星野亜門 :小学校1年生の喜代美の弟
看護婦(回想) 井内菜摘 :正太郎の運ばれた病院の看護師

和田正太郎(回想)米倉斉加年 :喜代美の祖父(故人)、塗箸の名職人で落語好き。
和田小梅(回想) 江波杏子 :喜代美の祖母、もと芸者、スペインを堪能し帰国

徒然亭草若  渡瀬恒彦 :天才落語家。 


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正太郎(米倉斉加年)との思い出を話す喜代美(貫地谷しほり)に向かって、草々(青木崇高)は過去の思い出を創作落語にしたらどうか、と提案する。一方病室の草若も、糸子(和久井映見)と喜代美の話をしていた。そこに小次郎(京本政樹)が現れ、糸子と見舞いを代わる。「あなたは本当に面白い人だ」草若の言葉に、小次郎は父や兄にいかに劣等感を感じていたかを話し出す。