ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(116)

2008-02-19 08:16:31 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女。
雄一郎 村上弘明 :悠の夫。「吉野屋」の息子。毎朝新聞の記者に復帰したが入院中
葵    松原千明 :竹田家の長女
        (バツイチ後、看護婦・ジャズシンガー・代議士の後援会と転職し、新劇女優)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)

医長   楠 年明 :中之島病院の内科医長

若い女  森下祐己子 中之島病院の付き添い仲間
中年の女 小林 泉  中之島病院の付き添い仲間
      朝比奈潔子  中之島病院の付き添い仲間

      アクタープロ

お初  野川由美子:「水仙」の女将。かつて「おたふく」の女将で悠を預かっていた
市左衛門(声) 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人(社長)、三姉妹の父(婿養子)


・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

水仙の客が、悠に大金を渡してくれと言って、名前も告げずに去って行ったのです

千円札 だ…

悠は、それが智太郎だとは思いたくありませんでした


「そうですか、やっぱり沢木さん‥」 お初は高橋興業の社長からの電話で、智太郎だと知った
「もしもし、そのお客さんは大阪へはお見えにならしませんのですか?
 ええ、是非またお連れしとくれやすな、へえ。 
 いいえ、別にそんな。ええ、またおいでになった時に‥。お待ちいたしております。
 今日はわざわざすんませんでした。 おおきに」


お初は部屋に戻った

「どなたかわかりましたか?」
「ふん」
「やっぱりな、おたふくの頃のな、学生さんらしんやわ。
 社長さん、またお連れするそうやから、その時また‥聞きまっさ」
「やっぱり智太郎さんとは違うてましたでしょ?」
「ふふ‥」
「あのお人は昔から医学の勉強の事以外は、考えられへんお人やったんです。
 智太郎さんがこんなことするはずありません」
「そやな。へへ。 けどなぁ戦争で負けて、世の中何もかもひっくり返ってしまいましたんや。
 男の人が、若い頃とおんなじ思いでいるとは限りまへんで」
「そんな。ウチの夢を壊さんといてください。
 ウチの初恋の人は立派な病院の先生。 そう思わしといてください。
 これ、お返ししといてくださいね」
「うん」
「薫寝てますし、よろしくお願いします‥」
「はいはい」
「ほなまた、夕方来ます」
「ああ、ボンボンにお昼のご飯届けんの忘れんようにな」
「はい。すんません、いっつも‥」



「ああ、‥‥ おなごは昔のことは忘れられるけど、男はんはそうはいきまへんのや。
 今の悠が知ったら辛いだけや、これは‥」



病院の時計が13時11分をさしている。

悠お手製の寝巻きを着た雄一郎は、女性たちに囲まれていた

「雄一郎さん? どうしはったんですか」着替えとお重を持った悠が声をかける
「助けてくれよ」

「すんません、主人がなんか‥‥」

「奥さんですか! この寝巻きつくらはったの‥」
「お願いです、ウチのお母ちゃんにもこんなんつくってもらえませんか?」
「え?」
「あったかそうで便利やし、どないしてつくったんか教えていただけませんか?」

笑い出す悠



雄一郎は水仙のお重を食べながら、話しだした

「参ったよ。俺が便所へ行こうと思ったら、ぞろぞろとついてくるんや」
「ようもてる 思うて、嬉しかったんでしょ」
「そう、そんなにいい男かと思って、便所に行って顔洗って出てきたら、まだ待ってて
 それをどこで買ったか教えてくれって」
「やっぱり着る人がええさかい、カッコ良うみえるんです」
「今さらおだててもあかん」

ノックして医長が入って来た

「おお、やっと食べる気になったな。奥さん、美味しいもんを食べたいだけ食べさしてください。
 この調子やったら、正月には自宅療養も可能や」
「ホンマですか? 
「ただしムリをせんと、疲れたらすぐに休むと約束するならな」
「はい」
「半年は、仕事のことは忘れる、ええな」
「‥‥」 むっとする雄一郎
「先生、この寝巻き、カッコいいでしょう。ウチがつくったんです。
 今病院中で評判になっててみんなに教えてあげてるんです」
「吉野くん、あんたにはこんなに明るい奥さんがついてるんや。頑張らんと」
「はい」



廊下のイスに集まる女性たち

「決まった型紙なんかないんです‥」と悠
「せやし病人さんに着せやすいように、脱がしやすいように縫いはったらええんです」

「せやけど、奥さん若いのに、こんなこと、どこで習はりましたのや?」
「誰にも教えてもろうてませんけど、母がいつもはぎれでいろんなもんつくってくれるの見てたしと
 違いますやろか」
「ええお母さんやねぇ。」
「ほんまにねぇ」
「母にもろたお裁縫箱見てたら、いろんなもんが浮かんでくるんです」
「子どもは親の背中見て育つ言うけど、ホンマやなぁ」
「そうやなぁ」


「ちょっと悠? あんた何してんの」と葵登場

「葵ねえちゃん!」
「病人さんほっといて井戸端会議してんのんか?」
「ううん、新しい寝巻きの縫い方、教えてあげてんのや。姉です」 と紹介する悠

「今日はー」

「ご主人の、お姉さんですか?」
「いいえ、あたしの一番上の姉です」
「えー?」
「おんなじお母さんでも、ちゃうもんやねぇ」

「なんえ?」と悠に訊く葵
「うん、何でもない」
「どうせウチは出来が悪いんですね、妹と違うて不器用やし」

「うふふ」と愛想笑いをする女たち

「お姉ちゃん、地方公演、終わった?」
「そうや。あんたな、こんなことしてる暇あったら、ウチの舞台衣装、作り直してくれへん?」
「お姉ちゃん! こんなことって何‥」

「そうです、あのお、あたしらねぇ、何も暇持て余してこんなことしてんのと違いますねや」
「妹さん、子ども抱えて看病してはるのに、子どもさんの面倒ぐらい見てあげたらどうですか?」

「すんません」と謝る葵

そこに「ちょっと~、2人ともこんなとこで何してはんのぉ?」と桂登場!

「桂姉ちゃん!」
「桂、ちょうど良かったぁ。うち今な、吊るし上げにあうとこやってん」

一礼する桂

「家の二番目の姉です」と、紹介する悠
「いっつもいっつも、妹がお世話になりまして‥」と丁寧に挨拶をする桂
「勝手なことを平気でやってしまうようなとこがあって、
 みなさんにご迷惑をかけていることと思いますねやけど、主人が病気で普通の状態と違う思いますし
 堪忍してください」
「い、いいえぇ~」

「ちょっと、葵ねえちゃんも桂ねえちゃんも‥!」 と、2人をそこから連れて行く悠だった

「わからへんとこあったらすぐに来ますし、続けてくださいね」



「んもう! 2人ともぶち壊しや。せっかくようできた奥さんやって思われて
 付き添いの人とも仲良うなったとこやのに‥」
「せやけど、葵ねえちゃんが怒られてはるなんて思いもせえへんかったわ」
「うち、また悠のことやしな、暇つぶしに縫いもん教室でも始めたんか思うて‥」
「ええお母さんや、言うて、せっかくお母ちゃんの株があがったとこやったのに。
 うちら三人見たら、とても同じお母ちゃんの子どもやとは思はらへんな」
「ふふふ」


「けど、そのお母ちゃんも、雄一郎さんや薫ちゃんのことばっかり心配して
 市太郎や都が風邪ひいても知らん顔え」
「そらしょうがないやん、桂は両親と旦那さんとお手伝いさんに囲まれて、
 いざとなったらなんぼでも助けてもらえるんやもん」
「そう思うさかい、薫ちゃんだけでも預かってあげようか思うのに、悠はいやや言うし‥
 ウチは、家族みんなに気を使うているのに、誰も大変や言うてくれはらへん」
「わざわざ来てくれはったのに、堪忍ね」
「どうえ? 雄一郎さんは」
「だいぶ元気にならはったけど。今お昼のお休み時間」
「そうか、残念やな、うちあんまりゆっくりしてられへんし‥。
 あ、これお母ちゃんから上等の大島。 あんたのために作ってあげはったんえ。
 いざという時に必要やろ言うて」
「おおきに」
「お母ちゃんな、悠の箪笥空っぽやったって心配してはったえ」

「‥‥」 バツの悪そうな悠

「それからこれ」と封筒を出す桂

「悪いけど、お金はもうええ 言うといて。夜だけ女将さんのとこで洗い場の仕事さしてもろてるし」
「ううん。これは雄一郎さん宛てに、お父ちゃん書かはった手紙や、ふん」

受け取る悠

「ホンマは自分でお見舞いに行く、言わはったんやけど、
 返って気を使わしたらいかんってお母ちゃんに止められはってな。
 ほんで、三日がかりで書かはったんえ」
「おおきに‥」
「うん」 笑う桂

「なぁ、悠。あんたの意地もあるやろけどな、
 薫ちゃん、ちょっとの間だけでも京都で預かってもろた方がええのんとちゃうか?」と葵
「お母ちゃんも離れてた方がかえって心配みたいやし、そう何べんも来ることもできへんしな。
 京都で預かる方がみんなが安心するのと違うか?」
「‥うん」
「奈良のお義母さんには、1週間ぐらいやったらわからんやろうし。
 あんた今、雄一郎さんのことだけ考えんといかんのやろ?」
「うん。けど、薫はうちと離れたことないし‥」
「大丈夫や。市太郎や都もいるし。 な、ウチに任しといて。 
 その気になったら、いつでも薫ちゃん連れといな」
「な、そうしよし」
「‥ うん ‥」




病室で、市左衛門からの巻き手紙を読む雄一郎



( オオギ? )

貴君、新聞記者として原爆病を通して戦争の悲惨さを世論に訴えつづけるには
この際、充分に療養に専念し、健康回復を図るが肝要と存じ、一筆したためし次第に候

( かくの、うどき? ) 闘病生活の後に書かれる貴君の記事こそ、被爆者への最大の励ましとなりうるものに候ゆえ、治療専念が最上と存じ奉り候

                   敬具 竹田市左衛門



「考えてみたら、俺はお義父さんに励まされて復職したようなもんだ。
 戦争で生き残った俺たちがやることをやらないと、戦争で死んだ人間が化けて出るって言われて‥
 
 そのお義父さんが、お前や薫のために生きていてくれとおっしゃっている‥

 男が命をかけた仕事を諦めるのがどれだけ辛いか、お義父さんはよくわかっていらっしゃる‥

 悠。
 半年の休職願い、書くよ。
 
 今の仕事場で、半年も仕事を離れれば、もう今のような仕事はさせてもらえないだろう。
 俺はそれが怖かったのかも知れない。
 ま、仕方がない。お前の言うことも聞かんで、ムリをしすぎたバチが当たったんや」


「これからはうちのいうこと、ちゃんと聞いてくださいね」
「はいはい。何でも聞きますよ」
「薫をしばらく京都に預けよう、思うてます」
「え?」
「あなたが顔が見たい言わはったら、いつでも連れてきます」
「俺よりも、お前が我慢できるのか」
「いいえ。できません。けど、あなたが我慢してはるのに。ウチも薫も我慢せんと。
 今は、あなたの病気を治すことだけを考えることにします」

 
(つづく)




『ちりとてちん』(117)

2008-02-19 08:11:17 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り 上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子
和田清海   佐藤めぐみ:喜代美と同姓同名の同級生 エーコ。小浜に戻って来た
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子
徒然亭草若(写真)  渡瀬恒彦 :故人。天才落語家。吉田仁之助
和田 静   生稲晃子 :和田エーコ(清海)・友春の母、体調を崩し入院中
木曽山勇助  辻本祐樹草々に弟子入り志願の22歳




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葬儀を終えた喜代美(貫地谷しほり)と草々(青木崇高)の元に、弟子入り志願者が現れた。「自分はまだ未熟だから弟子はとれない」と草々は拒否するが、おやじの落語を伝えていくなら弟子を取ってくれ、と小草若(茂山宗彦)に頼まれる。数日後、一門全員で弟子入り志願者と会うことに。喜代美も草々も落ち着かぬ気持ちで待つが、そこに見るからにまじめそうな青年(辻本祐樹)が現れる。



出ました!辻本くん

http://www.granpapa.com/production/tsujimoto/