ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(113)

2008-02-15 23:48:15 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女。
雄一郎 村上弘明 :悠の夫。「吉野屋」の息子。毎朝新聞の記者に復帰したが入院中
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)
お康  未知やすえ:「竹田屋」の奉公人

医者  川下大洋 :中之島病院の若い医者
看護婦 橋野リコ :中之島病院の看護婦(葵の元同僚)

薫    川上玲魅 :【子役】雄一郎・悠の長女(1歳~)
都    神村 恵 【子役】桂・義二の長女
市太郎  神村市太郎【子役】桂・義二の長男


お初   野川由美子:「水仙」の女将。かつて「おたふく」の女将で悠を預かっていた
お常   高森和子 :奈良の旅館「吉野屋」の女将、雄一郎の母
市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人(社長)、三姉妹の父(婿養子)
静     久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

悠は不安で眠ることもできず、一晩中雄一郎のそばについていました。



目を覚ました雄一郎に微笑みかける悠

「ホンマは怒ってるんやろ?」
「顔で笑って、心で怒ってます」
「すまん」
「そんなことでは許しませんえ。これからはうちの言うことちゃんと聞くって約束してください」
「薫は」
「約束してくれはらんと何も言いません」
「難しいな」
「医長さんに叱られました。ねきについてて何をしてるんですかって」
「お前はいつでも俺の味方やろ?」
「いいえ。今度は阿修羅になります」
「わかったよ。お前が本気で怒ると始末に負えないからな」
「(はい) 医長さんがよろしい言いはるまでここにいて下さいね」
「医長、何て言ってた?」
「もう知らんっ言うて、怒ってはっただけです」
「しかし、今度ばっかりは降参や‥」

ノックの音がして看護婦が顔を出す
「おはようございます。奥さん、ちょっと来てください」

廊下に静がいて「悠‥」と声をかける
「お母ちゃん。京都に帰りはらへんかったんですか」
「当たり前です」
「薫は?」
「今のとこは、お初さんに頼みましたけど、面会謝絶やなんてよっぽど悪いんどすなぁ。
 どこが悪いのえ?」
「うん‥お医者さんにもようわからんのどすって」
「お医者さんにもわからんへんような病気どすか」
「うん‥」

「何で、なんにも私に言うてくれへんのどす?
 夏からずうっと悪おしたんやてな。
 とにかく今日は雄一郎さんにも会わんと、いっぺん京都に帰って、
 お父さんにちゃんと話して、薫を連れに来ます」
「え」
「病気の時ぐらい、親に知らせるもんどす」

「はい、これ着替えどす。またすぐに来ますさかい、しっかり看病してあげんのどすえ」
「はい」
「ほなな」

風呂敷包みを開く悠。  封筒の中にお札が入っていた
「おおきに‥」



京都では市左衛門がイライラしながら待っている

「お父ちゃん、そんな心配しはらんでも、すぐに帰ってきはりますって。
 お茶でもお入れしましょか?」 
桂に言われても
「お康に迎えに行かすんどす!」と立ったり座ったり。

「お母ちゃんってホンマに幸せなお人や。
 旦那さんにそこまで心配してもろて」
「いつもいるもんがおらんと、おちつかないだけどす!」

「奥さんが帰って来はりましたぁ~~」とお康の声が聞こえて、慌てて座る市左衛門

「ただいま、戻りました。えろう遅うなってしもうてすんまへんでした」
「夜、遅うなって帰ってこれんのんどしたら、朝一番で帰ってくるのが常識と違いますいのんかいな」
「ええ、すまんことでした」
「何ぼ遊んできてもよろしいおすのんけどな、電話ぐらい自分でするもんどす」

桂は、微笑みながら、静を見る。

「お康どん、あっちでこの子らに食べさしてやってくれるか」
桂は、都と市太郎をはずさせた

「ちょっとお茶でも淹れてもらいまひょか」と市左衛門
「お母ちゃん、淹れてあげておくれやす。ウチではなんやら気に入らんようですし」
「あ、桂。 桂もちょっと聞いてくれるか」
「ん?」

「あんた。しばらく薫を預かってもよろしおすやろか」
「悠、二人目ができんのどすか?」と桂
「そんなことと違うのどす。雄一郎さんが入院しはったんどす」
「! 入院て」
「どっか悪いのどすか?」
「夏から具合が悪かったんどすって。
 疲労が重なったんや思いますけど、しばらく入院して安静にしてんといかんらしいのどす」
「よっぽどムリしはったんどすなぁ」
「悠はずっとついてんといかんし‥、なぁ、よろしおすか?」
「薫だけでなくて悠も、帰って来たらよろしおすがな」
「そんな、雄一郎さんを1人追いとくわけにはいきまへん」
「ほな、京都の病院に入院して、悠も薫も一緒に帰って来たらよろしいがな。
 何も、大阪にいんならんことおへんのやし」
「そな勝手なこと、できるわけがおへん」
「ワシが行ってそない言うて来ますがな」

「お父ちゃん、何もそこまでせんでとええのと違いますか」
「病人と子ども抱えて知らんところで苦労するんやったら、帰ってきたらよろしねや!」

「そやったら、奈良に帰るべきどす。悠は吉野さんへお嫁に行った人どすえ?
 そうどすやろ? お母ちゃ~ん」
「そうどすなぁ」
「悠のことになると、お父ちゃんは常識をはずしてしまいますな。
 あ、せやったら奈良にもお知らせした方がよろしおすな。
 ウチが電話してきます」

「桂、ホンマに冷たいやっちゃ! 病気の時に常識もへったくれも、おすかいな!」
「あんた、悠はきっと帰って来ぃしまへん。
 奈良でお世話しとうおくれやすお人いやはらへんしませんし、な、薫だけでしたらよろしおすな」
「うーん、雄一郎さんもお気の毒に。
 せっかく自分の思いに叶った仕事 できるようになったちゅうのになぁ」
「‥‥ (うん) 」


病院

雄一郎が着替えている

「汗かかはったでしょう、すぐ着替え出します」 風呂敷包みを開く悠
「お初さんが持って来てくれたのか? 着替えは‥ 薫の所に帰ってやれ。
 お初さんのところにいるんやろ?」
「はい」
「俺は覚悟を決めた。治るまで大人しくしてるから‥」
「夜、あんたがお休みになってから行きます」
「それじゃぁ薫が眠っている。かわいそうだよ」
「はい‥ けど、暇見て帰りますし。
 心配せんとゆっくり休んでてくださいな」

そこにノックもせずにお常が飛び込んでくる

「雄一郎!」
「お義母さん‥」
「まぁ、こないになるまで‥。 あんたなんで言うてくれませんのや。
 悠、あんたも冷たいお人ですなぁ」
「すんません」

「で、一体、どこが悪いんです?」
「ただ疲れただけや。お初さんが知らせたんか?」
「いいえ、京都のお姉さんが知らせてくれはったんです」
「桂姉ちゃんがですか?」
「あんた、京都に知らせる前に、あたしに言うてくれてもよろしいやろ!」
「すんません‥。入院騒ぎの時、京都の母が来てたんです」

「そんなことどっちでもよろし。雄一郎、奈良に帰っておいでなれ
 こんな倒れるまで働くやなんて、もう‥」

「母さん、ただ疲れただけや言うてるやろ? 言うとくけど社はやめないよ」
「はぁ‥ 子どもの時から病気ひとつしたことなくて、丈夫だけが取り得やったのに‥。
 それで? 先生は一体なんと言うてはるんです」
「‥はい。まだはっきりわからへんのです。ただ安静が必要やって」
「え゛~? なんや、頼りない病院ですなぁ。
 そうや、奈良にな、母さんの知ってる病院がおますよってに、
 同じ入院するんやったらそこにしなれ」
「母さん、怒るよ! そんな勝手なことばっかり言うたら」

子どもの泣き声が聞こえて、「薫は? どこにいますのや」と聞くお常。
「はい、預かってもろうてます」
「どこで! そんなとにかく薫はあたしが連れて帰りますさかいにな」
「悠、早く薫のいるところに連れて行ってくだはれな! 悠! はよう!」
「はい‥」


顔を見あわせる悠と雄一郎 「お前の思うとおりにしろ」「はい、すぐ帰ってきます」


水仙には、静とお康が来ていた

「これ以上お初さんにお世話になるわけには参りませんし、薫を京都に連れて帰ろう思いまして」
「ええ、でも悠さんがどない言わはるか‥」
「へぇ、悠にはそう言うてあります」
「あ、そうだすか。薫ちゃんのためにはそのほうがいいかもわかりまへんなぁ」

静がお茶をいただこうとすると、「お客さんどす」の声に案内され、お常登場!

「お母ちゃん!」
「吉野さ~ん」「まぁまぁ、お母さん、これはこれは」

「女将さん、主人の母です」
「へ?」 座りなおして「ようこそ」と頭を下げるお初
「初めまして‥吉野でございます」と挨拶をするお常


「まぁ、この度は雄一郎のことで、えらいご迷惑をおかけしました」
「ホンマにえらいことだしたなぁ」

「もっと早うに言うてくれてらよろしおしたのになぁ」と静
「ホンマにいつまでたっても親に心配かける子ぉでして ‥‥
 あ、薫のことですけど、薫は家で世話せんことには
 もう悠さんまで体こわしてしまうと思いましてな」
「いいえ、薫は私どもで預かろうと思いまして来たんどすけど、
 悠には雄一郎さんの看病につきっきりでいてもらわんことにはあきまへんしなぁ」
「いいえ‥ お母さんそれは困ります。そんなことしていただくわけにはいきません」
「けど、私どもの方でも‥」
「そんな迷惑をかけるわけにはいきませんので‥ 薫はうちの方で‥」

譲らない 母たち

呆れ気味のお初は、悠を見る。

「お母ちゃん! お義母さん、
 薫やうちのこと心配してくれはってホンマにありがとうございます。
 勝手なようですけど、薫は私のねきにおいておいてください。 お願いします。

 どっちに預かっていただいてもありがたいことだと思います。
 けど、雄一郎さんの世話も、薫と一緒にさしてください。

 たまには、ここで預かってもらうこともあると思います」

それを聞いて微笑んで頭を下げるお初

「けど、ウチは今、薫と離れとうないんです。
 どこまでやれるかわかりません。入院もどれだけなるのかわかりませんけど
 私にやらせてください。 お願いします。

 子どもは、親がどんな時でも一緒にいたいと思っているはずです‥
 薫と一緒に、必ず雄一郎さんの病気は治してみせます」


成長したなぁというように、悠を見つめる、静、お常 ‥ お初



(つづく)


 

『ちりとてちん』(114)

2008-02-15 23:35:47 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒
演奏 フェイス・ミュージック

語り 上沼恵美子

  出 演

青木喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母
和田正典   松重 豊  :喜代美の父、一家で鯖江から小浜に戻り、塗箸職人に
和田小次郎  京本政樹 :喜代美の叔父・正典の弟、奈津子とそのまま同居中
徒然亭草々  青木崇高 :喜代美の夫。落語家、徒然亭草若の二番弟子
緒方奈津子  原 沙知絵:塗箸の取材に来た、フリーライター、小次郎と同居中
徒然亭小草若  茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
吉田志保(写真)  藤吉久美子:草若の亡くなった妻
熊五郎    木村祐一 :酒場「寝床」の店主
咲       田実陽子 :酒場「寝床」の店主・熊五郎の妻
磯七      松尾貴史 :散髪店(磯村屋)の店主。酒場「寝床」の常連
菊江      キムラ緑子:「菊江仏壇店」の女主人。酒場「寝床」の常連
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子
和田正平   橋本 淳 :喜代美の弟。大学卒業後、就職はせず小次郎化しバイト中

      柳川昌和  :北天満中央病院の草若の主治医

      キャストプラン
      NAC
      劇団東俳
      グレース

和田正太郎(写真)米倉斉加年 :喜代美の祖父(故人)、塗箸の名職人で落語好き。
和田小梅  江波杏子 :喜代美の祖母、もと芸者、スペインを堪能し帰国
徒然亭草若 渡瀬恒彦 :天才落語家。 


 
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天狗座での「草若弟子の会」の前日。草若(渡瀬恒彦)は外出許可をもらい、家で喜代美(貫地谷しほり)ら弟子全員が顔をそろえての食事をとる。それは師匠との最後の夕食だった。食事の途中、草若は弟子一人一人の名前を呼び、「ありがとう」と伝える。翌日。喜代美たちはそれぞれの思いで師匠にあいさつをし、天狗座へ向かった。糸子(和久井映見)とともに見送る草若だが、容体が悪化する。