ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『都の風』(78)

2007-12-28 13:34:38 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女
葵   松原千明 :竹田家の長女(バツイチ後、家出しジャズクラブで歌の勉強中)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)

忠七  渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)、復員後もそのまま番頭さん 
岩谷  草川祐馬 :造り酒屋の次男坊、かつては葵の踊りの兄弟子

お康  未知やすえ:「竹田屋」の奉公人(悠付きの女中さん)
会長  溝田 繁 :山鉾連合会の会長

      アクタープロ
      東京宝映

雄一郎  村上弘明 :「吉野屋」の息子。戦後、家を出て墨屋の「大和園」で働く 
お常    高森和子 :奈良の旅館「吉野屋」の女将、雄一郎の母
巴          宝生あやこ:(故人)三姉妹の祖母、静の母
市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
静     久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

みなが見送る中、忠七が揃えた草履を履く市左衛門。

市左衛門は祇園祭を復興すると決心して、連合会会長を説得しにいくことになりました。

「忠七どん、お父ちゃん、弱気になりはったら、ぎゅ(と抓る仕草)やで」
「わかりました」

見送る悠は、祇園祭のおかげではじめて家族の心がひとつになったことを感じていました


「おはようお帰りやす」と静のお見送り
「行ってらっしゃい」

神棚に手を合わせる、桂と悠。見守る義二、葵

都を抱っこしてお康が「若奥さん、お嬢さんのこと忘れてもろたら困りますえ」
と言いに来た
「こんな大きなってんなぁ」と葵
「なぁ、ちょっとおばあちゃんに似てると思わへん?」
「せやろかー。義二さんはうちに似て、美人や言うてくれはりますえ」

笑い出す三姉妹

「信じられへんな、桂がおのろけ言うなんて」
「人間ておかしなもんやな、お父ちゃんやお母ちゃんの手前、仲のいい夫婦のふりしてたら
 どんどん仲良うなってくるもんえ」
「桂らしいな、そこまでお芝居できるなんて」
「立派なもんや、うちも皆見習わんとあかんな」
「うちは我慢することしか取り得がないし、しょうがないねん」
「また、お芝居して。ホンマは自分が一番えらいと思うてんのやろ?」
「んもう。そうは思うてへんて。
 ただ女はやっぱり子どもを産まんと一人前やないと思うわ。
 自分を捨てることができるのは子どもだけや。
 この世の中に、母親の愛情だけを求めている人間がいるいうことは、ありがたいことえ。
 悠、ほんまに一生結婚せえへんんのんか?」

「ん」

「いつまでも智太郎さんのこと考えてるし、雄一郎さんにも振られてしまうのえ」
「ふん、結婚なんてな、よっぽど好きな人以外やったら、誰としても同じえ」
「うちは桂姉ちゃんと違うもん。
 まだ結婚に夢がある間はええけど、うちみたいに結婚はもうええけど、1人でいんのも寂しいえ。
 うちのことはどうでもええけど、悠の結婚相手、探してあげんといかんなぁ」
「うーん。
 なぁ、祇園祭が済んだら、もっぺん奈良に行ってきよし」
「もうええねん」


(悠の独白)うちはある時期、智太郎さんを心から愛した。それだけで十分や ‥



静が筆で手紙をしたためている

  「親馬鹿とお笑いでせうが、悠の行末を思ふと不憫で、
   いっその事、無理にお見合いでもさせようかと
   主人と話しております。
   悠はもう雄一郎様との結婚も諦めているようですが、」

(えらい達筆どす。おそらく自筆かと。
なんたって、お公家さまの出です。久我美子さん)


「また余計なことした言うて叱られますやろうけど、お見合いなんてしてくれる悠と違うし、
 ホンマに困ったもんどすなぁ。 お母さん ‥」と、巴の写真にかたりかける静




「まぁ、竹田屋さんがそこまで言わはるんどしたら、どうどすやろ、
 祇園祭を代表する鉾をせめて一つ立てるいうのは‥」と会長!
「一つだけ どすか」
「鉾町それそれに鉾と立てるいうのは、どう考えても無理どす。
 それぞれの鉾町は、できるだけの資金を持ち寄って一つの鉾をみんなで立てるぅ言うんどしたら
 まぁ、できんこともおへん」
「祇園祭を代表する鉾っちゅうたら、まず、長刀鉾どすわなぁ」
「まぁ、そうどすなぁ。
 資金の集まり具合によっては、引き鉾か、まぁせいぜいそれぐらいが精一杯どすなぁ」

「それは困ります。自分らの鉾町の鉾だから命かけることができるんどす」 と忠七

「お前は黙ってなさい」
「いや、番頭さんの言わはる通りどす。 それそれの鉾が競いあってこその祇園祭どす。
 せやけど、竹田屋さんみたく、祇園さんのために家族ぐるみで協力してくれはるところなんてあらしません
 祭りが今、どうしても必要やいう意味もようわかります。
 長刀鉾ならどっからも文句でないのと違いまっか」

「わかりました。一つでも二つでもよし、祇園さんさしてもらえるだけでありがたいことどす」

「それでは悠お嬢さんが承知しはりません‥」
「うるさい、お前は先に帰ってない!」
「いいえ、長刀鉾だけどしたら、私ら、ただ見てるだけどす。 綱も引けへんのどっせ。」
「そいで、よろしいがな。たった一つでも、みんな協力して祇園さんあることが大事どすねや」

「竹田屋さん。よう言うてくれはりました。これで町がひとつになったらこんなありがたいことはおへん。
 お嬢さんによろしくな」
「おおきに‥」



竹田屋の台所。

「久しぶりやなぁ、家族が揃うの‥」
「お母ちゃんが台所手伝うなんて珍しいことどすなぁ」
「私はいっつも家付き娘で苦労が足らん て、言われてましたえ? 
 何でもおばあちゃんに聞いて、そのとおりにしといたら良かったんどすさかいになぁ」
「お母ちゃんは1人娘やったけど、うちは三人の間で揉まれましたし。苦労は三倍してますえ」
「お母ちゃんは、娘三人で、三倍苦労してますな」と葵
「親が子どものことで苦労するのは当たり前どす。葵、あんたも」
「うちのことはこのへんで」と葵
「お父ちゃんに心配だけはかけへんといてや」
「はい」

悠がいらいらと「お父ちゃん、何してはんのやろ‥」と台所に来る

「会長さんと喧嘩でもして、帰るに帰られへんし、どっか行ってしまはったんと違うか」
「お父さんはそんなひとやおへん。会長さんが承知しはるまで粘ってはりますねや」
「昔のお父ちゃんやったらそうかも知れへんけど‥」

そこに「ただいま帰りました」と忠七

「おかえり。お父ちゃんは?」
「へえ‥」
「やっぱり会長さんと喧嘩しはったんか」
「あのー」
「祇園祭できんのんか?」
「それがー」
「できるか、できんか、はっきり言いよし!」 お康まで言う

「お康どん。お前までそんなやぁやぁ責めることないやろ」
「すんまへん」

「なあ、お父ちゃんは?」悠
「へぇ。 世話役さんのところまで行かはることは行かはったんですけど‥」
「ほな、できんやな?」
「‥ できる ことは できる んどすけど、でけへん言うたら、でけへん」
「もう! ハッキリしよし!」

「それが、長刀鉾とつき鉾だけやったら、なんとか出来るんやないか いうことで」
「わぁ~~~!」と歓声を上げる女たち!
「良かった~~」
「放下鉾なくてもいいんどすか?」
「祇園祭は今度だけと違う、お父ちゃんが一生懸命にならはるもんがあったらええねや」
「それに、うちら鉾にあがられへんのやし、同じこっちゃ」と桂

「そうと決まったら、食べるもんもってこんとあかな」と悠
「いつごろにしましょ」
「うちも手伝いますし」とお康たちが、わいわい相談し始めるのを見て、静は台所を出る


懐から手紙を出して「お母さん、やっぱり出した方がよろしいなぁ」



奈良縣奈良市今御門町  吉野 常 様


   悠がこれほど懸命になれますのは、やはり雄一郎様の励ましが支えになっているのだと存じます。
   つきましては、私どもも感謝の気持ちをこめまして、今年の祇園祭が悠の思い通りに復興しました節には
   ぜひぜひ雄一郎様に、京へお運びいただきたく御案内申し上げます。

手紙を読んだお常は「雄一郎が京都へ行くなんて、考えられんことやしな‥」と迷う




祇園祭の準備が始まり、忠七も手伝いをした。
悠たちは、職人さんの差し入れをつくり、また衣裳を縫い、協力をした。
葵は、岩谷を使って食料を仕入れていた。

( ご褒美にチューをねだる岩谷はん、ちょっとかわいいじゃん ) 

鉾を見上げて嬉しそうな市左衛門。
その市左衛門を見て、嬉しそうな悠と忠七

「お嬢さん、旦那さんのあんな笑顔見るの、何年ぶりでっしゃろな」
「(うん)」
「始まってみると、どこの鉾でも一緒どすな」
「(うん)」


桂と葵は蒸しパンを作っていた
「できたできた」
「こんなぎょうさんの何箱(なんばこ)の蒸しパン、あっというまになくいようになってしまうのやなぁ」
「うん。初めは反対してはった人も、鉾立てが始まるとみんな手うてくれはるし、
 縄が足りひん言うたら、自分で作って持って来てくれるお年よりもいはるし、良かったな」
「みんな、誰かがやってくれはるのを待ってんやなー」
「うん」

悠が「お囃子の練習が始まった」と興奮気味にやってくる

「小さい音やなぁ」
「囃子方さん、お腹すいてはんのと違うか?」

「はよ見に行こ」と桂はエプロンを外した

「これ、桂。 桂、これーー!
 あんたのお母ちゃんは、あんたより祇園さんの方が大事みたいえ。かわいそうになぁ」と都に話し掛ける静


市左衛門は、お囃子の音を聞きながら事務所に座っていた
裃を着た会長さんに「なんでこんなトコにいますのや、鉾の巡行が始まりまっせ」
と言われたが「私はここで」と固辞する。

「何を言うてはりますの、綱を引いておくれやす」
「めっそうもない」 涙声の市左衛門
「去年、義母が亡くなりましてな、まだ1周忌もすましておへん」
「綱をひくぐらい神さんも許してくれます、はよう来ておくれやす」
「へえ」

にぎやかな鉾の巡行が始まった

昭和22年、5年ぶりに復活した祇園祭。
人々は敗戦後の暗い生活をふきとばすような祇園囃子に酔いました 



三姉妹は朝顔の着物を着て、巴の写真をもち、鉾を見る。

綱を引く市左衛門と忠七の姿を見て、涙ぐむ葵、桂、悠。


その人ごみの中に、悠は雄一郎の姿を見つけ、かきわけ進んでいく


(つづく)

『都の風』(77)

2007-12-28 13:33:25 | ★’07(本’86) 37『都の風』
脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子

   出 演

悠   加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女
葵   松原千明 :竹田家の長女(バツイチ後、家出しジャズクラブで歌の勉強中)
桂   黒木 瞳 :竹田家の二女(竹田屋を継いだ)

義二  大竹修造 :桂の夫(婿養子)、竹田屋の若旦那
忠七  渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)、復員後もそのまま番頭さん 
岩谷  草川祐馬 :造り酒屋の次男坊、かつては葵の踊りの兄弟子

会長  溝田 繁  山鉾連合会の会長 
世話役 柳川 清 :祇園祭の世話役

      アクタープロ

市左衛門  西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
静     久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

雷が鳴っている

密かに祇園祭復興の準備をしていた悠でしたが、市左衛門より先に
山鉾連合会の会長に知れてしまったのです 


連合会会長と世話役に頭を下げる市左衛門を見て、また2人が帰ろうとするのを見た悠は
「待って下さい」と、市左衛門の少し後ろに正座した。

「申し訳ありませんでした。私が勝手にしたことで父は何も知らないんです」

帰りかけた2人は、座りなおしてくれたが、市左衛門は諌めた

「悠、お前の出る幕やない」
「会長さん、父を責めんといて下さい。
 私は父にその気になれば祇園祭はできるということを見せたかっただけなんです。
 職人さんも日当もなんとかなるとこまでこぎつけました。
 進駐軍の許可もとってあるんです」

「 黙ってない!  」

「まぁ」と会長 
「お嬢さんの気持ちは私にもようわかります。
 せやけどな、祇園祭いうのは、ひとつの鉾町でできることやおへんのや」
「放下鉾を一つ立てるのも、職人さんがおったら立てられるいうもんやおへん」

「私ひとりでできるなんで思てしません。私はただの誘い水やと思うてます。
 室町でお商売できるようになるのはいつのことやらわからんし
 せめて町のひとが、ひとつになって何かしてほしい、
 そのために私にできることをしよう そう思っただけなんです」
「祇園祭は女こどもの遊びとは違うんです。老舗の誇りをかけて男が命がけでやるもんです」
「巡行するには、役所も警察も町衆もひとつにならんといけまへん。
 万が一事故でもあったら、それこそ、千年の歴史をぶち壊すことになりかねまへん」
「ま、お嬢さんは、祇園さんよりも、はよお嫁に行かはった方が親孝行と違うんどすか。
 なぁ、竹田屋さん」


雨が降る中、葵のアパートで、悠、忠七、そして岩谷が話しをしている

「あーあ、せっかく買い集めた食糧も無駄やったなぁ」
「すんまへん。職人さんには固う口止めしといたんですけど、私が至らんで堪忍しておくれやす」
謝る忠七

「ま、これだけ食料があったら、小さな店を借りて雑炊屋でもやりまひょ、な、葵さん」
「あほなこと言わんといて!
 これだけのもん買い揃えられたのはおばあちゃんの着物のおかげや。
 そんなことしたらバチがあたってしまうわ」
「ほんなら、これを全部ヤミで売って、山林を買うたらよろし。投資としては一番儲かります」
「やめて!」と悠「そんなこと言うの。うちはまだ諦めてへん」

「でも、お父ちゃんも会長さんに釘さされてしもうたし、今さらどうにもできひんの違うか?」
「ま、あの会長さんは話のわかる人格者やし、誰でも一目置いてはりますさかいな」
「そいでもうちは悔しい。はやく嫁に行った方が親孝行やて」
「そんなこと言わはったん」
「せめて昔みたいにうちをひっぱたくぐらいの気力を見せてくれはったら‥」
「‥‥」

「こうなったら、うちはやるえ」と悠
「協力したげるわ」 葵も決意した
「悠お嬢さんのためやったら、クビになってもやります」
「おおきに」
「それに、鉾も神木も飾りも、1年にいっぺんは出してやらんと、ホンマに黴がはえてしまいますわ」

岩谷は1人、物色していて葵に怒られる。

「ちょっと岩谷さん、あんたも協力するんえ」
「ワシは充分協力してます。もうこれ以上は、堪忍しとくれやす」
「あ、そうですか。ほな、二度とここへはこんといておくれやす」
「そんな殺生な‥、やっと一緒に‥」と言いかけて、あっ! となる岩谷

「お姉ちゃん! じゃぁやっぱり?」
「そんなんと違うわ。ちょっと1人でいるのが寂しいから‥」
「わしもこんな気の強いお嬢さんを1人でほっといたら、何をしはるかわかりませんし‥。
 見張り番してるようなもんです」
「お父ちゃんには内緒え」
「そんなこと言わんと、ちゃんと結婚しはったらええのに」

「この人も、今はヤミやってるけど、大きな造り酒屋のボンボンえ。
 うちみたいな出戻りとは、結婚できひんねん。
 そんなことどうでもええわ。 悠、はよいこ」
「どこへ?」
「お父ちゃんのとこやないの」
「一緒に行ってもらえんの?」
「何が何でも祇園さん、やってもらうんやろ?」
「(うん)」




神棚に灯を入れて手をあわせる市左衛門

「お父ちゃん、何を祈ってますのや?」桂が来た
「あ、悠のしたこと謝ってはるのどすか。
 けど、今度は鉾にあがったわけやないし、許してあげておくれやすな。な?」

何も言わないで行ってしまう市左衛門。

忠七、悠、そして葵が帰ってきて驚く桂

「こんにちは」
「葵姉ちゃ~ん!」
「みんな元気か。 なんや若奥さんらしゅうなったなぁ」
「そら、一児の母やもん」
「都ちゃん元気か?」
「うん。 なんやみんな揃って‥」
「な、お父ちゃんいはるか?」
「奥にいはるえ」
「そっか、ほなおじゃまします」

市左衛門は静に手伝ってもらい、紋付きに着替えているところだった。

「いや、葵、いったいどうしてたんえ」と静
「お父ちゃんにちょっとお話があって来ただけなんです。
 帰ってきたんと違いますし、心配せんといてください」

正座する葵、悠、そして忠七

「いったい、何どすかいな」
「忠七どんまで‥」

悠たちの前に座る市左衛門夫婦に、悠は「これを受け取ってください」とバックから封筒を出した。

「葵姉ちゃんと、ゆ ‥(言い直して)葵姉ちゃんが働いて作ってくれはったお金です。
 それだけでは十分の一にも足りないでしょうけど、せめて鉾を立てて飾るだけでもして下さい」
「お父ちゃん、昔はいっぺん口にしはったことは必ず実行しはりました。
 世間の常識や人がどう思おうと、ここぞと言う時はやる、
 あんなお父ちゃんに、うちら戻ってほしいんです」
「お母ちゃん、うちのために残してくれてはる結婚の支度金、あれもちょっとでもあるんだったら
 祇園祭のために使ってください」

桂が廊下で聞いている

「悠、それだけは、なんぼ祇園さんっていうてもなぁ」
「いいえ、うちはもう結婚することはないように思います」
「雄一郎さんとは、そんな話はなかったんどすか」
「雄一郎さんは、もともとうちと結婚しはる気なんかありません。
 雄一郎さん、真っ黒になって墨、作ってはりました。うちはその姿に感動したんです!
 たった一人でも何かせんといかんと思ったんです。
 祇園祭をどうしてもせんといかんと思ったのは雄一郎さんにお会いしてからです」
「悠、そう言うてもな、女は結婚して子どもを産んでこそ、一人前になりますのえ」
「結婚だけが女の幸せと思いません。
 こんな時代に生まれた女として、せんならんことが仰山あります。
 今、祇園祭は女が表に立ってできる事と違います。
 せやけど、いつかは女も男と同じように鉾にあがれるようにせんといかんと思うてます」
「悠の言う通りです。お父ちゃん、祇園さんやるて言うてください」

「旦那さん。番頭の身で差し出がましいようですが、言わしてもらいます。
 この室町の若旦那さん、金はないけど、誰かがやらはる言うたら、手伝わしてもらう、
 そない言うてくれはりました。
 とにかく、旦那さんがやると一言お言いやしたら、みんな付いて来ます
 お願いどす、旦那さん、跡を継がはった若旦那さんらのために腰をあげておくれやす」

廊下に義二も来る‥

「あんた」
「どいつもこいつも勝手なことばかり言いおって‥。わしの気持ちも知らんと‥。
 悠、わしはなぁ、もうさっき、神さんに謝りましたんや。」
「え?」
「まともに神事はできまへんけども、鉾を立てます ちゅうてな」

「お父ちゃん!」

「会長さんに頭下げながら、ワシはそう決心しましたんや。
 古き伝統を守り新しきを知る、今こそ、家訓を守る時や、そう思うてな。
 で、今から会長さんとこ行って、古いしきたりどおりにすることだけが伝統を守ることやおへん、
 今の時代におうた精一杯のやり方で、やる方法もおす ちゅうて話して
 どうしてもあかん言うのやったら、放下鉾だけでも立てる覚悟はしてましたんや」

「お父ちゃん、おおきに‥」涙でいっぱいの目で悠が頭を下げ、忠七も何も言えず頭を下げる‥


桂が入って来た。

「お父ちゃん、そんな大事なこと、勝手に決めんといてください」
「桂姉ちゃん、お義兄さんには迷惑はかけません。お金もうちらでなんとかしますし」
「そんなこと、当たり前どす。うちは今、みんなが食べていくだけで精一杯どす。
 うちが言うのは、会長さんや世話役さんに逆らってまで鉾を立てても、
 その後商売ができんようになったら どうしてくれはる っちゅうことどす。
 葵姉ちゃんや悠は祇園祭さえできたらよろしいやろけど、うちは竹田屋を守っていかんとあかんのえ。
 お父ちゃんだって、それまで保証してくれはるんどすか。
 義二さんが今までしてきはった苦労も水の泡になったら義二さんの立場があらしません」

廊下で聞いていた義二が入って来て、桂の隣に座る

「あんたからも言うておくれやす。竹田屋の主人はあんたどすさかい」
「桂、お前こそ、わしに気ぃつかうことあらへん。
 お義父さんがやると言わはるのやったら、わし、何もいいまへん」
「(え?)」と義二を見る桂

「あんた‥」
「今、わしがやってる商売は竹田屋の看板を借りた別の商売どす。仮の姿や。
 旦那さんとか関係ないことどす。
 旦那さん、手伝うことはできまへんが、思いっきりやっておくれやす。
 たとえ無理とわかっていても、大旦那さんの命令には絶対従うのが養子の役目やとも教えて頂きました」
「あんた、おおきに‥」 泣き出す桂 「どんなに祇園祭が見たかったか‥‥」

「桂姉ちゃん‥


(つづく)


約束の旅

『ちりとてちん』(77)

2007-12-28 12:17:28 | ’07 77 『ちりとてちん』
作  :藤本有紀
音楽 :佐橋俊彦
テーマ曲ピアノ演奏:松下奈緒

語り :上沼恵美子

  出 演

和田喜代美  貫地谷しほり
和田糸子   和久井映見 :喜代美の母、魚屋食堂でパート中
和田正典   松重 豊  :喜代美の父、一家で鯖江から小浜に戻り、塗箸職人に
緒方奈津子  原 沙知絵:塗箸の取材に来た、フリーライター、小次郎と奇妙な同居中
熊五郎    木村祐一 :酒場「寝床」の店主
磯七      松尾貴史 :散髪店(磯村屋)の店主。酒場「寝床」の常連
菊江      キムラ緑子:「菊江仏壇店」の女主人。酒場「寝床」の常連
徒然亭草々  青木崇高 :落語家、徒然亭草若の二番弟子。
徒然亭小草若 茂山宗彦 :タレント落語家、徒然亭草若の実の息子、草若の三番弟子
徒然亭草原  桂 吉弥 :落語家、徒然亭草若の一番弟子。
徒然亭四草  加藤虎ノ介:落語家、徒然亭草若の四番弟子。
和田正平   橋本 淳 :喜代美の弟、福井理科大学2年生
咲       田実陽子 :酒場「寝床」の店主?熊五郎の妻
徒然亭草若  渡瀬恒彦:天才落語家。天狗座での徒然亭一門会の後、正式に高座復帰

 
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喜代美(貫地谷しほり)は年季が明けたら、小草若(茂山宗彦)のマンションで一緒に暮らすことになった。大みそか当日、喜代美はゴミ捨て場で、自分が縫い直した草々(青木崇高)の座布団が捨てられているのを見つける。二人の気持ちがすれ違ったまま迎えたその夜。徒然亭一門や磯七(松尾貴史)らが集まった寝床の忘年会の席で、喜代美は突然「落語家になんかならなければよかった」と言いだす。





 朝ドラにはあり得ない、バイオレンス?プロポーズだったなぁ。
 草々兄さんっていうか、青木くん、よーく足が上がっていた! 



結婚して入籍したとしたら、新年からはキャストクレジットは
青木喜代美? 
それとも年季明けで、徒然亭若狭?




あぁそれにしても小草若~~~~ かわいそう