脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子
出 演
悠 加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」の三女、大阪の「おたふく」で住み込み働き始める
雄一郎 村上弘明 : 新聞記者、「おたふく」の常連
精二 江藤 潤 :「おたふく」の従業員・板場さん(女将の若いツバメ)
雅子 山本博美 :悠の同級生
佐七 國村 準 :「竹田屋」の奉公人(番頭)、桂の夫になるか?
悦子 雅 薇 :「おたふく」の従業員
松吉 小林秀明 :「おたふく」の従業員(見習い)
松川 寺下貞信 :「竹田屋」の奉公人(別家支配人)
お松 山田富久子:「竹田屋」の奉公人(ベテランの女中さん)
三吉 井上義之 :「竹田屋」の奉公人(丁稚頭)
長吉 安尾正人 :「竹田屋」の奉公人
客達 山田交作 :「おたふく」の客
蓮 一郎 :「おたふく」の客
三村伸也 :「おたふく」の客
客達 門田 裕
「おたふく」の客
松本省三
「おたふく」の客
多々納 斉
「おたふく」の客
アクタープロ
お初 野川由美子 大衆食堂「おたふく」の女将。市左衛門の遠縁
市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
静 久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻
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半日でしたが、生まれてはじめて働いたのです(と ナレーション)
夜食の時間になり、並んだお皿を見て「すごい、お客様でもいらっしゃるんですか?」と悠。
自分たちが食べるのだと知り
「毎日、こんなのいただいてるんですか?」「私もいいんですか?」と驚く。
そりゃぁ、お粥さんばかりだったんですもんねーー
女将のお初は「日給なしでおいてやる」と言ってくれた。
みんなで食卓を囲むのを見て、驚きをかくして一緒に食べる悠だった。
お初は、従業員たちを紹介する。
「板場さんの精二、こっちが見習いの松吉、通いで来てる。そして悦子」
そう言っている間もお初は、精二にしなだれかかってお酌するので
悠は目のやり場に困っている様子。
「惚れた男といたいがために、あくせく働いて金を稼ぐ。
うまいものを仕入れて、お客に喜んでもらって、
好きなモンは好き、嫌いなモンは嫌いやという生き方をせんとな」
とお初は豪快にガハハと笑う。
食事が済み、悠は悦子との相部屋にやって来た。
「一階は店、二階は女将さんと板場さんの部屋。ここは屋根裏部屋やけど」
と説明する悦子。
驚きはまだあって、風呂(銭湯)に行こうという悦子に、
悠は「今日はやめとく」と動揺を隠しつつ断る。
竹田屋に、雅子が訪問。
「そうだったんですか、なぜそんなことを私に何も言わず‥」と雅子。
「兄のことが原因なんですね? 兄が帰ってきたらなんて言ったらいいか‥
兄は、本当に好きだったんです」
静は
「もう済んだ事どす。
うちの人、今はお兄さんのことを一番恨んどると思うんです。
娘よりも男はんのことが憎いものだす、もうこれっきりにしといてください」
と話をした。
仕事中の市左衛門に、お茶を持って来る佐七
「無理せんといて下さい。ワシらで何とかするし」と言う佐七に
「余計なことはいわんでもええ!」と大声を出す。
丁稚たちは「(佐七は)分家やのうて養子にならはるんやろか」と噂をするが
新聞を読み、情勢を見た市左衛門は、別家支配人の松川に
「やっぱり亜米利加との関係はややこしくなってきた。
竹田屋を継ぐものは、よっぽどしっかりした者でないとな‥」とうちあけていた。
「悠に継がせるつもりだったのに」と悔しそうな市左衛門。
「おたふく」では、悠は相変わらず、丼やコップを割っていた。
雄一郎が「ニュースがある」とやって来て「来月から、肉なし日が作られる」と教えるが
お初は「ばかばかしい」と一笑する。
「そんなんできても、出すで。お上の目がこわくてこんな店やってられるか」
悦子は、どうやら雄一郎が気になるらしいが
お初は悠には「こんな男にひっかかったらあかんで」と言い聞かしていた。
夜、悦子は悠の荷物をこっそり開けて見ていた。
悠の足音が聞こえると、慌てて閉めて「お風呂行こう」と誘うが
「あんた、銭湯なんて行ったことないやろ。
ええとこの人かも知れんけどここでは関係ないんやで」とチクリと言う。
悠はくじけそうになったが「一緒に(銭湯に)行きます」と付いていく。
表に出ると、お初が荷物を運び込んでいた。
「手伝います」と声をかけたが「はよ、風呂に行って」と言われる。
「ヤミで仕入れてるんよ」と教える悦子。
銭湯で着替えながら、悦子は身の上話をした。
女将のお初は、大きな料亭の仲居をしていたが、旦那さんの惚れられて店を買ってもらった。
それが奥さんにばれて、身を引いたが、若いツバメをすぐ見つけた。
悦子(自分)は、田舎から駆け落ちしてきたが、やっと2人で暮らし始めたら
相手に召集令状が来てしまった、‥‥ のだと言う。
屋根裏部屋に戻り、母・静が持たせてくれた裁縫箱を見る悠。
箱の下段に通帳と手紙が入っていた。
結婚の費用にと積み立てていたものです。
いざという時に、使うのですよ。
お父さんが持たせてやれと言った事を、忘れないように‥‥
竹田屋では、市左衛門が飲み歩いてはつぶれていた。
今晩も、酔っぱらって帰ってきて「水! 悠、水くれ‥ 悠 ‥ 」と繰返していた。
(つづく)