荒野に叫ぶアイツの部屋

生き物絡みの仕事しながら空手やったり、漫画描いたり模型作ったり海の生物求めて津々浦々旅したりする男ばるぱんさーのブログ。

ツチクジラの涙

2011-08-03 23:12:51 | 生き物

~グロ注意!!でもできるだけ見て欲しい。~





こ・・・これは・・・!!
ツチクジラだ!!
で、でかい!
10メートルはあるんじゃないか!?

勿論、既に息はなく、左右の尾羽は切り落とされ、血抜きのため腹を裂かれ、腸が波に漂っている。
白い浮きかと思われたモノは胃か?


おそらく昨日の今頃は仲間達と悠然と大海原を進んでいたであろうツチクジラも、今は目を閉じ、口を半開きにしながら沖を向いている。


す・・・すげえ・・・
クジラって本当に居たんだ!
これまで何度か、ひょっとしたらクジラって実在しなかったりして?
実在するのはゴンドウとかシャチまで。
映像は全てCGで、博物館や水族館で見てきた骨格標本はじつは発泡スチロールで出来てました。
・・・なんてことはないかと思ったことがあった。

海は広いし大きい。
こんなくそでかい生き物が本当にゴロゴロしてるのだ!!
そう思うと、なんかドキドキしないか?


6時30分から準備開始。
それまで辺りをぶらつくことにした。
近所のヒトであろう爺さんに時間を聞かれた。
犬を連れたおばさんに挨拶された。
この近所の者と思われただろうか?
見知らぬ土地で近所の人々に挨拶されると嬉しくなる。
6時を告げるチャイムが聞こえ、に戻るといつの間にか見物人も増え、にも解体さん達が集まり、忙しそうにフォークが走り回っている。

やがてクジラを岸壁に繋いでいたワイヤーが外され、ウィンチが無慈悲にクジラをに引きずり込んでいく。

若い解体さんが勢いよくホースで水をかける。
全身がに収まり、ツチクジラは海と今生の別れをする。

水産庁の職員がクジラの測定をする。

10・08メートルのオス。
銚子沖で捕獲。

解体さんに付き添われ、幼い兄妹がクジラの顔を触る。

「ぷにぷにしてた。」

解体が始まった。
横になったツチクジラを五枚に下ろす。
薙刀とノコギリが合体したかのような刃物で切り込みを入れ、分厚い皮をウィンチで引っ張り、バリバリと剥がしていく。
まるで工事現場のようだ。
血と脂と小便の混ざったような臭いがたちこめる。



首に赤い銛が刺さっており、体内からも黄色い銛が取り出された。

どちらもぐんにゃりと曲がっている。
おそらく、凄まじい勢いで抵抗したのだろう・・・

右半身の肉が剥がし終わり、首が切り落とされた。
横になっていた頭がゴロリと縦になる。

その時、確かに見た。
クジラの閉じた目から水が零れ落ちた。

目の中に溜まっていた海水が零れ出ただけかも知れないが、俺には無念の涙のように見えた。

水産庁の方の話によると、年齢は不明だが、体に付いた傷(同族やイカと争った痕)の多さからこれで十分大人らしい。

このツチクジラも産まれてから最期の時まで色々あっただろう。

危険な目にも遭っただろう。

友の死を経験したこともあっただろう。

メスとヨロシクしたこともあったかもな。

そして、今日と言う日も無事に過ごせると思っていただろう。
 
それが昨日、おそらく俺が仕事しながらスケベな事考えていたであろう頃、このツチクジラは銚子沖で二発もの銛を受け絶命した。


コンビニに行けばいくらでも食べ物が転がっている飽食の時代。
何故わざわざクジラを殺して食うのだと言う人々も多い。
だが、考えてみてくれ。
コンビニで売っている食べ物の中にだって生き物の体だったモノは沢山含まれている。
そいつらだって生きてたんだ。
無念の涙を流してバラバラにされ死んでいったのだ。
体を切り刻まれ、頭だけになってしまったツチクジラ。
こいつの魂は何処に行くのだろう?
何を思うのだろう?
さぞかし無念だろう。

どうしようもなく可哀想といった感情が込み上げて来た。
この感情をどう整理すればいい?

食べよう。
ひたすらに感謝して食べ、こいつと、死んでいった同胞達の分まで生きよう。

そして、このクジラの分まで人間社会という名の弱肉強食の大海原を生き抜いて命を未来に繋ぐ。


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