先週末、東京に呼吸器の研究会に行って来ました。症例を通して、画像診断、鑑別診断について勉強をし合う会なのですが、そのときの1例が超急性経過の呼吸不全、びまん性陰影の症例で、急性好酸球性肺炎と診断された症例でした。急性好酸球性肺炎というとカンファレンスではよく出てくる常連の疾患かと思いますが、正直に言いますと、鑑別疾患のひとつにもこの疾患を入れることが出来ませんでした。
急性好酸球性肺炎の画像所見としては、まずは胸部単純写真にて心拡大のないすりガラス陰影、胸水貯留で、広義間質病変を示唆するKerley line(特にA line)が見えるとされています。今回の症例は多発浸潤影が主体の陰影で、明らかな胸水貯留、Kerley lineは見えなかったように思いました。(もしかしたら見えていたのかもしれませんが)胸部CT所見の典型例としては胸水貯留を伴い、小葉間隔壁肥厚など広義間質病変を伴うすりガラス陰影主体の陰影かと思います。この症例は小葉間隔壁肥厚を伴うすりガラス陰影ではあったのですが、それ以上に多発浸潤影、一部は多発腫瘤影に見え、腫瘤影の周囲には一見halo sign様のすりラス陰影あるように見え、すべての陰影を一元的に説明することが出来ませんでした。僕が見た範囲では胸水はなかったように思います。その会場にいた私の尊敬する胸部放射線科の先生が「ここまで肺実質影が強い急性好酸球性肺炎は見たことがない」とコメントしてくれました。
では、急性好酸球性肺炎の胸部HRCT所見はどうなのでしょうか?
教科書的には①びまん性分布、②すりガラス陰影(100%)、③浸潤影(55%)、④境界不明瞭な結節(31%)、⑤平滑な小葉間隔壁肥厚(90%)、平滑な気管支血管束肥厚(60%)、胸水(79%)と記載されています。自分が普段あまり認識していない浸潤影についても55%も認めるということ、注目している胸水も決して全例ではないということです。典型例だけにとらわれてはいけないということかと思いました。
では、当院で経験した急性好酸球性肺炎のHRCT所見はいかがでしょうか?
喫煙関連の急性好酸球性肺炎の1例ですが、これは小葉間隔壁肥厚、気管支血管束肥厚など広義間質病変をメインにするすりガラス陰影、胸水貯留であり、典型的なHRCT所見かと思います。
次の症例も喫煙関連の急性好酸球性肺炎の1例ですが、上記症例と比較して浸潤影が散在しているのがわかります。
さらには薬剤性の急性好酸球性肺炎の1例ですが、小葉間隔壁肥厚など広義間質病変はありますが意外と軽く、まあまあ浸潤影が広がっているかと思います。
今回の研究会の症例は本当に浸潤影の程度が強く違和感を覚えましたが、確かに浸潤影は高頻度に認めるということは今回勉強になったことかと思いました。
もちろん、Kerley lineはあまり目立っていなかったかと思いますが、小葉間隔壁肥厚など広義間質病変を認める鑑別疾患として当然ながら急性好酸球性肺炎は上げなければいけないと思います。
今回の症例で素晴らしいと思ったことは主治医の先生がきちんと吸入歴(土埃を吸った)をきちんと問診したことが素晴らしかったと思いました。呼吸器内科の醍醐味かと思います。
急性好酸球性肺炎の画像所見として、今回浸潤影(肺実質陰影)に注目が集まりましたが、浸潤影(肺実質陰影)の有無、程度は原因によって異なる可能性も挙げておきたいと思います。同じような浸潤影主体の画像所見を呈した急性好酸球性肺炎症例がいたとをそのときコメントしてくれましたが、その症例もタバコ以外の吸入歴を有していました。我々の症例も喫煙関連よりは薬剤性症例の方が浸潤影の程度が強いように思います。今回の症例のように原因によっても画像所見が異なる可能性があるのではないでしょうか?
呼吸器内科の診療、画像所見の解析の重要性のみでなく、問診含めた総合的な解析が必要であることを実感することが出来ました。今後も頑張って診療していきたいと思います。
ひたち海浜公園のネモフィラです。本日行って来ました。とてもきれいでした。今月末までは楽しめるのではないでしょうか?(5月は厳しそうですが?)今週末いかがでしょうか?いや、今週末は呼吸器学会総会ですから無理ですよね。では、来年楽しみにしてくださいね。
今は秩父の芝桜もきれいのようですよ。