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さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

臨床情報の重要さ

2016年10月23日 | カンファレンス室

10月19日(水)にさいたま赤十字病院にてチェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)を開催いたしました。講師の佐藤雅史先生をはじめたくさんの先生方に参加していただき、本当に活発な討論をすることが出来ました。参加してくれた先生方に感謝したいと思います。

胸部画像カンファレンスですから、胸部画像を丁寧に読影することが重要なは言うまでもないことですが、臨床情報をとても大事だということを勉強出来た一日でした。そのいくつかを紹介したいと思います。

①20歳代の女性が急性経過の発熱、咳、痰で来院、胸部レントゲンにて左肺野主体に浸潤影を認めていました。読影を担当した先生、「マイコプラズマ肺炎」と答えました。その通りその症例はLAMP法によるマイコプラズマ陽性、血清マイコプラズマ抗体価(PA法)の有意な上昇を認め、マイコプラズマ肺炎と確定診断された症例でした。胸部CT所見としてマイコプラズマの気道親和性を反映して粒状影、気管支壁肥厚などを認め、画像的にはマイコプラズマ肺炎の典型例でした。回答者の先生は胸部単純写真の段階からマイコプラズマ肺炎と答えていました。「現在マイコプラズマ肺炎が流行していること」「若年者の肺炎を見たらマイコプラズマが原因のことが多い」という情報(常識)から答えたようでした。理想的な形としては臨床的にマイコプラズマ肺炎を疑い、胸部CTなど画像所見からマイコプラズマ肺炎と確信するという流れでしょうか?

②外国人(発展途上国から来日して1年)の胸部異常陰影の患者さん。胸部レントゲン上は肺門および縦郭リンパ節腫大を認めていました。カンファレンスですから日常臨床とは若干かけ離れているかもしれませんが、参加者の先生から「外国人を見たら結核は考えないといけないですよね」との意見が出ました。その通りその症例は結核性リンパ節炎でした。日本も結核感染症中蔓延国であることは間違いないですが、東南アジア、アフリカなど発展途上国はもっと結核感染症の頻度が高いのは間違いないですね。人種、民族で決めつけてはいけないかとは思いますが、診療上とても参考になる情報であることは間違いないですね。

③乳癌にて乳房温存療法後に出現した両側びまん性陰影の症例です。陰影は多発浸潤影でした。何も情報がないと悩む症例ですが、上記臨床情報があると、「器質化肺炎」と正解を出すのは難しくないかと思います。案の定、その症例は経過とともに陰影が移動してきました。気管支肺胞洗浄を施行し、リンパ球有意の細胞数増多を認め、器質化肺炎に矛盾しない所見が得られ、現在ステロイド内服にて経過良好です。胸部レントゲンを細かく読影できなくても、知っていれば簡単に答えが出てしまう症例でした。ちなみに移動する陰影を見たら、特発性器質化肺炎(COP)のみでなく、慢性好酸球性肺炎、寄生虫感染症、ABPA、肺胞蛋白症、肺胞出血くらいは挙げれるようにしてくださいね。

④70歳代の女性で、急性経過の咳、呼吸困難で紹介されました。

 胸部レントゲン、両側下肺野に浸潤影を認めます。ただ、「病名は?」と言われると大変難しいですね。ただ、診察し、胸部の聴診をすると、両側背側の著明なfine cracklesを認めました。「fine cracklesイコール間質性肺疾患」と考え、胸部CTを施行すると、OPまたはDADパターンの間質性肺炎を疑えました。

 入院時にすぐに気管支鏡を施行し、現在ステロイド、免疫抑制剤にて治療中です。

胸部レントゲン所見のみで病名を決めるのは至難のわざかと思いますが、きちんと診察すると病名がついてしまうという内科医冥利に尽きる症例かと思いました。「きちんと診察しましょうね。!」

⑤呼吸不全を伴う症例はほとんど胸部単純写真にてそれなりの陰影を認めています。もしレントゲンの陰影以上に呼吸状態が悪かったらどういう病態を考えるでしょうか?一番多いのが血管系の異常で、急性肺血栓塞栓症が一番有名ですが、それ以外にはPTTM、IVLなどのまれな疾患も隠れていることがあります。それでは、胸部単純写真にていくつか結節影を認め、思った以上に呼吸状態が悪かったときはいかがでしょうか?血管系の異常ということで、肺動静脈奇形(AVM)が挙げられます。今回は遺伝性疾患のオスラー病に伴う多発AVM症例を勉強しました。

最後に画像所見の勉強としては、①上肺野優位分布の疾患は?(⇒CASSET-Pで覚えていますか?)②細菌性肺炎にて上肺野に分布することはたまにはありますが、両側上肺野優位に陰影が分布したら細菌性肺炎はほぼ否定的です。もし両側上肺野優位分布の陰影を来す感染症は?⇒結核を含めた抗酸菌、アスペルギルスを含めた真菌感染症くらいでしょうか?

今回のカンファレンス、本当に勉強になりました。11月のカンファレンスも期待したいものですね。また、アナウンスさせてくださいね。


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