恥を知れ

サディスティック・サディーの生かさず殺さず日記

8/21

2024-08-21 23:51:30 | art

初めて夏季休暇なるものを取得してみた
有休との違いがよくわかんないけど
代休もしぬほど余ってるけど

そんなことより芸森である
行ってきたよ水木しげるの妖怪百鬼夜行展
土日は絶対大混雑でやる気が出ないと判断したので
あと鳥獣戯画展の3期も考えると土日どっちも外出するのは嫌なので
抜け目なく平日に休みをとった私の慧眼よ()
出かける前に自分も衣類も洗って今日はスーパーえらかったな()

盛りだくさんで見応えのある展示だった
生原稿とか昔のマガジンとかも
でもあの原稿写植があったりなかったりしたけど本物なんだろうか
バチバチに描き込んで修正の跡もあって本物ぽいけど
それゆえ中途半端な写植の状態が気になった
もしかしてボツ原稿だったのかなあ
でもそうならそうと説明がありそうなもんだけど
昔の少年マガジン薄かったなあ
今の半分か1/3くらいじゃなかろうか
雑誌掲載時の様子も興味深かったが他の連載陣が豪華すぎてヒョエーとなった

私は鬼太郎と悪魔くんをアニメで見たことある程度のものだけど
ゲゲゲの女房は見といてよかった
なぜか録画までして欠かさず見た唯一の朝ドラ

荒俣宏や京極夏彦のインタビューVTRもよかった
一緒に神田の古本屋に行こうってなるんだけど
喫茶店に誘われて2~3軒連れて行かれて
クリームソーダ7杯くらい飲んでナポリタン食べて
結局古本屋は行かずに終わった荒俣宏先生のお話は笑った

妖怪研究家でもあり貴重な資料を収集していたこと
そういうのって運良く残っていても散逸しがちだから
誰かどえらいマニアが一箇所に集めてくれると助かるんだよね
博物館にしてくれたらなおよし
境港の記念館にあるのかなそういうのは

鳥山石燕って狩野派なのね
弟子に喜多川歌麿もいたというから
おそらく他のジャンルも描くちゃんとした絵師だったんだろうけど
3冊1組もの妖怪画をものすというのはやっぱり情熱がないとできないよね
好きだったんだろうなあ
水木先生が親友を見つけた気分になったというのもわかる気がする

鳥山石燕の百鬼夜行は絵のみで解説がなく
柳田國男の妖怪談義は文章しかない
このほか子供の頃に聞いた話や体験したこと
戦争で南方へ行った時に現地の人から聞いた話や体験したこと
日本の民俗学
世界中の民話や伝説や道具
そういった断片的な情報をまとめると1つの妖怪が浮かび上がる
口で言うのは簡単だけれども
これって実はとんでもなく重大な功績ではなかろうか
能が一種の整理文学と呼ばれていることを想起させられる
しかも採用基準が
 祖霊がいいと言うかどうか
っていうのがね
自分の体感で腹落ちするかどうかではあるんだけど
そこに祖霊を降ろしてたたんだなと
 キャラクターを作るんじゃない
 妖怪は見えないけど絶対にいるんだから
 いろんな人がいろんな情報を残してる
 そこから掴み出してくるだけ(だいぶ意訳)
というスタンスも合わせると
本当に妖怪へのまなざしが真摯で愛にあふれてる

ビジュアルに元ネタがあるものはびっくりするほど原画に忠実でびっくりした
ものすごいリスペクトだ
と同時に原画のユニークさエキセントリックさに改めてびっくりする
震々(ぶるぶる)なんて妖怪の輪郭自体が波打ってて髪の毛もソバージュみたいで
これの原画って……
と目を移したら石燕もすんごいぷるぷるした線で描いてて笑っちゃった
ただ忠実なだけだった
いやあ江戸時代にこんなぷるぷるした線描いてた人ほかにいたのかなあ
わかんないけどクッソ面白いなあ

古事記も日本書紀も読んだことない不勉強者ですけど
鬼の研究と蟲師を好きでよかった

たぶん自然現象なんだろうなとか
さすがに気のせいでしょとか
それはもうそういう人だったのでは……?とか
感じることはいっぱいあるんだけど
それに妖怪○○と名前をつけて畏れることは
ものごとの折り合いの付け方のひとつだったんだと思う
凄惨な事件を鬼と呼んで処理したように

たとえば山で転ばす系の妖怪いっぱいいるんだけど
山は道が悪いからしょっちゅう転ぶのは当たり前だったわけで
でもそれに名前を付けて妖怪にしちゃう
自然への畏怖でもあり
どこかユーモラスで人間味のある解決の仕方
やれやれしょうがないなって苦笑や諦念も含んでいる気がする

それはなんて豊かで愛おしい世界の見え方だろうか
私は鬼のいる世界は豊かだと信ずるものだから
妖怪のいる世界は豊かだという主張も完全に肯定するし首がもげるほど頷くよ

鬼好きとして一番アガったのは三吉鬼かな
酒屋の酒を盗み飲んで
代金を請求しようとすると仇をなしてくるが
黙って飲ませて返すと夜に酒代の10倍分くらいの薪を持ってきてくれる
秋田の人間臭い鬼神
ということだったんだけど
それはもうただの酒癖の悪いおっさんなのではなかろうか
ほんとに鬼なの……?ましてや神……?
って内心クッソ笑った
頑張って鬼っぽいところを探すとすれば蓑を着てたことかな
帰ってきた祖霊の雰囲気はちょっとある
あと善いことも悪いこともするあたりは少し昔の神様っぽさを感じる

アマメハギっていう年替わりの晩に出る能登の妖怪もいて
神の使いともいわれてるらしいが
これなんかまんま大晦日に帰ってきた祖霊だよね
各地に似たような伝承がありそう

一つ目の妖怪もちらほらいて
全部ではないにしろ
阿用の一つ目鬼のように片目を潰された人もいたんだろうなと

岩魚坊主は僧に化けて殺生しないよう諭してくる魚の妖怪
これなんかはめちゃめちゃ能を思い出す
殺生を咎めてくるのは善知鳥か
求塚もそうかな
狂言の魚説教てのもあったね
時々過剰なくらいものすごく殺生に厳しいんよね能って
仏教思想の普及にともなうものか
時代の根底に共通する罪の意識があったのかなとぼんやり思いを馳せたりして

砂かけ婆のビジュアルは地方のお祭りの鬼の面と装束を参考にしているとか
子泣き爺も郷土芸能の舞踊で使う仮面を参考にしているとかもワクワクしちゃう
あの野生の能面みたいなやつ好きなんよね
洗練された能面とはまた違うプリミティヴな魅力があって

河童にあんなに種類がいるなんて知らなかったし
山にいる小さきものの集団という概念も各地にありそう
もののけ姫のコダマみたいなやつ

久し振りの芸森
体力的にはめちゃくちゃ疲れたけど
天気も晴れたし気温もちょうどよくて南区の自然を満喫し申した
よき休日であった

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考えてみたらうちにも妖怪いるもんな
妖怪リモコン隠しっていうんだけど


 

コメント
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