業務&ITコンサルタントのひとり言

コンサルティング活動を通じて感じることを勝手気ままに記載

日本の農業の問題点は

2016年10月22日 07時37分12秒 | 日記
「日本の農作物は高い」と云う事については、ほぼ国民全員が感じている事だろう。一方、「日本の農産物は国際競争力がない」は、多少神話になりつつある。果物を中心に、最近は海外への販路を得ている作物・農家がかなり出て来たからだ。東南アジアの所得が上がってきた事もあり、多少高くても、美味しいモノは、現地では受入れられる様になってきた。

これは良い事ではあるが、手放して喜べる程ではない。なぜなら、「日本の農作物は高い」については改善の兆しが無いからだ。もし日本の農家全てが、高級路線に向かい、海外への販路を広げて所得を向上させたとしたら、我々庶民の普段の食卓には、海外からの安いが安心できない食物が並ぶ事になる。これは決して喜ばしい事ではない。国の方策として、儲かる農業の推進と、農産物の価格を下げる事はセットで行うべきである。

農作物の中で、穀物と、果物、そして野菜は別々に検討すべきであろう。なぜなら、保存できる期間や、鮮度の重要性が違うからである。長期保存が可能な穀物は国際競争にさらされるが、一部の野菜を除けば野菜は長期保存が穀物と比べると簡単では無く、鮮度が一番重要であり、地産地消が一番望ましい。最近は冷凍及び冷蔵技術がかなり進んできているので、野菜の長期保存も可能だろうが、まだまだ沢山流通しているとは言い難い。

日本の農家で元気なのは、果物と野菜を育てている農家であり、輸出が出来ているのは、ある程度の保存が利く果物が中心となっている。(お米の輸出もある程度あるが、全体からの割合は少ない)
野菜は、鮮度の問題等もあり、海外からの輸入品との競争は少なく、多少値段が高くても国産を買わざるを得ない。また、果物はある程度嗜好品でもあり、多少高くても安心できる国産を買う傾向があり、これも国内農家が元気に居られる理由でもあるのではないか。日本の農産物は多少(一部はかなり)高いが、美味しいし、また安心できるモノが多い。だから買うのだが、もう少し安くして欲しいと、多くの人が思っている。

もう一度言うが、元気な農家は野菜や果物を育てている農家が主であって、米農家の多くは苦しんでいるか、兼業農家として生計を立てている。これは米農家は、野菜や果物の農家に比べて、努力が不足しているのではないだろうか?お米については、確かに品種改良などの努力(改善)はしている。がしかし、ビジネスとしての努力は不足していないだろうか?日本人はもっと勤勉であり、知恵があるハズだ。敢えて厳しく言いたい。米農家は努力が足りないと...。

比較論として、一旦身近な仕事を考えて見よう。昔は、小さな食品店や雑貨屋、そして酒屋などの家族経営の商売が成り立っていたが、今はごく一部の商店街か、過疎地、そして一部の特色ある小売店にしかみられない。残念ながら、多くの小売店が規模を拡大してきた企業に負けてしまっている。ここから学べる事はなんだろう。

そして多角化。多くの米農家はお米のみを生産している。そして多くの兼業農家は週末や、たまに早朝を働く程度で、お米を栽培をしている。兼業農家の存在が意味している事は、手を抜こうと思えば、この程度の労働で必要十分のモノを作れるのがお米であり、穀物の栽培の特徴である。米農家が専業で生計を立てるには、ある程度の規模の追求と、多角化が必須なのだが、それを怠ってきたのが現状ではないだろうか。
(*注2:自分は家庭菜園で野菜を10種類育てているので、野菜を育てる事の難しさはある程度知っている積もりである。また、祖父の世代までは専業農家であり、親の世代は兼業農家である。)

野菜も高い。これは国際競争にあまりさらされていない為に、安住しているのだろう。但し、より美味しいモノを作ろうとする努力には敬意を表したい。

野菜農家も北海道を除くと、やはり家族的経営が多いのではないだろうか?これではやはり、安価で安心できる作物は作れない。多角化はある程度進んでいると思うが、価格を下げる為には、ある程度の大規模化が必要ではないだろうか?

果物は、安価な外国産ももっと簡単に輸入できるようにしてもらえれば十分。国内の果物農家は、自由化になっても、生き延びられるのではないかと思う。

日本人の長所でもあり欠点でもあるが、過剰品質の追及が、製造コストを高めている面もある。製造業と同じで、農業でも起こっている。大規模化する事で、多少手抜きをする事が必要になる場合もある。その結果、コストが半分になるのであれば、庶民にとっては喜ばしい事である。あまりに低い品質にならない範囲で...。お金と時間をかけて、美味しいモノを作れる能力と、多少の手抜きをする事で、国際競争力もあるモノを作れる能力も必要。これは工業製品とまたっく同じ課題だ。


最後に余談だが、農業が衰退している理由の一つは、戦後の農地改革にあると思う。ただ作る事しかしてこなかった小作に農地を分け与えたアメリカ主導の改革は、戦後の農業をダメにした元凶の一つであろう。
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