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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

CSN&Y

2008-10-27 00:43:03 | アメリカンロック
Déjà Vu Déjà Vu
価格:¥ 2,143(税込)
発売日:1994-09-27

Crosby, Stills, Nash & Young 「Deja Vu」1970年US
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング「デジャ・ヴ」
 
<A>
1.Carry On
2.Teach Your Children
3.Almost Cut My Hair
4.Helpless
5.Woodstock
 
<B>
6.Deja Vu
7.Our House
8.4+20
9.Country Girl
10.Everybody I Love You
 
デヴィッド・クロスビー(元バーズ)
スティーヴン・スティルス(元バッファロー・スプリングフィールド)
グラハム・ナッシュ(元ホリーズ)
ニール・ヤング(元バッファロー・スプリングフィールド)
 
 
時代の風化を受け付けない、永遠に新鮮で鮮烈な、名盤中の名盤、それがCSN&Yの「デジャ・ヴ」です。若いロックファンで、まだ聴いていないという方は、まずレコード屋へ。
 
いかに本作が巨大なアルバムであるか、は例えば歴史的なロック・イベント「ウッドストック」のドキュメント映画のテーマ曲が5曲目のWoodstockであったり、やはりその時代の気分を象徴するような名画「小さな恋のメロディ」のほぼ主題歌が2曲目Teach your childrenだったり。
ちなみにこの映画は、当時の「大人を信じるな」というフラワームーブメント、反戦運動、ヒッピーカルチャーの気分を象徴するような内容になっており、かつ全編CSN&Yのサントラみたいになっているので、先の「ウッドストック」「小さな恋のメロディ」と本アルバムは、3つ合わせて体験してもらいたい。少しでも、当時の世界が追体験できると、本作の聞こえ方も変わると思います。
 
 
当時の作品は永遠の命をもった作品もある一方で、爆発的な人気を博しながらも今聴くにはちとつらいものも結構あります。
そんな中で、この「Deja Vu」は全く古びない、どころか未だにこれほどみずみずしいロック、にはなかなか出会わない、聴くたびに新鮮なインパクトを与えてくれる傑作です。
  
 
本作に永遠の命を吹き込んだ理由はいくつもあるでしょうが、バーズに代表されるウェストコーストのロックグループが、ヒッピーカルチャーの集団的な共同幻想志向、アジテーション的、反体制的な活動の在り方に対し、そろそろ行き詰まりと窮屈さを感じ始めていたこと、に対し、このCSN&Yが、とりわけ主張の強い”個”を尊重したグループの在り方を提示して、あらたなスタイルで大成功を納めることで道をひらき、あらたな時代へシフトしてゆく先駆け、となったこともあったかと思います。実際、時代はこの後、さらに個の歌をクローズアップしたシンガーソングライターの時代へと移行してゆきました。
 
 
さて本作の主役達について触れましょう。
 
バーズをやめたスティルスとバッファロースプリングフィールドをやめたデヴィッド・クロスビーは2人で音楽活動を始めることにしましたが、2人よりも高い声の出るもう一人を加えることで、ハーモニーがより良くなる、と引き合わされたのがホリーズの活動に不満を持っていたグラハム・ナッシュでした。
 
イギリスのポップロックグループとして一時代を築き、ビートルズやストーンズに代表されるブリティッシュ・インベイジョンの一角としてアメリカでも人気のあったホリーズの一員としてEMIに契約があったグラハム・ナッシュはデヴィッド・ゲフィンの尽力により、リッチー・フューレイのポコとのトレードという形でアトランティックへの移籍が実現されました。
 
ナッシュのポップなメロディーのすばらしさ、がCSNそしてCSN&Yにみすみすしいメロディーとイギリスのミュージシャンらしい繊細さという大きなアクセントを与えることになりました。ちなみにそれ以降、デヴィッド・ゲフィンは、デヴィッド・クロスビーの彼女だったジョニ・ミッチェルのマネージャーのエリオット・ロバーツとCSNYのマネージャーとして共同事務所を開きます。
 
3人はCS&Nとして69年にアルバムを出しましたが、ツアーに出るにあたり、3人のコーラスだけだと、ちょうどその頃ブレイクしていたサイモン&ガーファンクルと似た感じになってしまうことへの懸念などから新たにベースとキーボードを加えたバンドサウンドにしようとキーボード奏者を探すことになります。しかし、候補に挙げられたスティーヴ・ウィンウッドにもポール・バターフィールド・ブルース・バンドのマーク・ナフタリンにも断られ、かわりに候補になったのが、ニール・ヤングでした。
 
スティーブン・スティルスとバッファロー・スプリング・フィールド時代に散々衝突してきたヤングを加えることには相当な抵抗があったはずですが、ツアーまで時間の猶予がなかったこと、ヤングの側もCS&Nの新たな音楽性に興味を持っていたこと、CN&Y側もソロになってからのヤングの音楽性に共感する部分があったこと、さらにはニール・ヤングとしてのソロ活動を保証すること、グループ名をCSN&Yとして一人一人を平等に扱うこと、などを条件に1969年7月新体制がスタートすることになりました。
 
 
彼らは翌月8月16日のシカゴでのデビューコンサートに続き、18日伝説のウッドストック・フェスティバルに出演しスーパーグループとして話題を集め、このアルバムは予約だけで200万枚以上、全米1位を獲得します。
 
 
曲を見ていきましょう。
 
みな揃って2曲ずつ納められています。
スティルス作品は1のCarry onと8の4+20。
後々まで良くも悪くもこのグループの主導権を握り続けたスティーブン・スティルスは、本作の冒頭で、らしい曲を提供しています。すばらしいハーモニーの切れがアルバムのひきしまった緊張感と繊細さを象徴しています。
 
4+20は当時24歳だった彼のアコースティックな一曲でクロスビー的な曲。
 
グラハム・ナッシュ作品は2のTeach your childrenとOur House。
Teach your childrenはこのアルバムのハイライトの一つだと個人的には思っています。グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアが参加しています。
本作がスティルスとヤングの緊張関係に収まらないバラエティを得た大きな要因が、ナッシュの存在であり、カントリーテイストとブリティッシュポップをブレンドし、彼の日だまりのような優しいパーソナリティを混ぜ込んだ永遠の名曲です。
 
Our Houseも同様に優しさと美しくもポップなメロディに溢れた一曲で、ジョニとの生活と世相を対比させるように歌っており、どこかビートルズを感じさせる部分もあります。
 
クロスビー作品は3のAlmost cut my hairと6のDeja Vu。
3はまるでヤング作品かと思うようなハードな曲で、クロスビーの気合いの入ったところを見せてくれる傑作。まるでそれを煽るかのようなヤングのギターがヘヴィなこと。やはり一人一人の個性が傑出していて、それぞれの持ち味を別々にかつ存分に出しきり合ったことが、本作を大傑作に押し上げた、そんなことを感じさせる傑作です。
  
6のタイトル曲もすばらしい。B面の冒頭をかざる一曲ですが、Aの冒頭のCarry onの再現かとおもわせる入りから、すぐに転調し、ロック的なミドルテンポのナンバーに表情を変えながらサイケデリックな色合いを醸し出してゆきます。印象的なハーモニカは、元ラヴィン・スプーンフルで、ナッシュをスティルスとクロスビーに引き合わせたジョン・セバスチャン。 
 
ヤング作品は4のHelplessと9のCountry Girl。
Helplessはヤングの代表曲といっても良い名曲。
こんな曲を惜しげもなくここで発表したことが、かえって彼の世間的な評価を高め、以降の彼のソロとしての大成功へと繋がっていきました。彼は本作の出た70年3月の半年後の70年9月、代表作となる3枚目のソロ「After the gold rush」を発表しスーパースターへの道を爆進します。
9のCountry Girlは、アルバムの終盤を飾るにふさわしい壮大なアレンジの一曲。
 
5.Woodstockは、クロスビーに発掘され元彼女でもあり、当時はナッシュの彼女だったジョニ・ミッチェル作品。ハーモニーの美しさとソリッドなギターの切れが中盤を引き締める本作のもうひとつハイライトの一つでしょう。
 
ラストの10はヤングとスティルスの共作。やはりソリッドなギターとコーラスが、高いテンションと緊張感を保って、するどく迫ってきます。そして転調、美しいです。
 
やはり前作のCS&Nと比べて、格段に曲の粒が揃っているし、ソリッドさがかなり増しています。ふたまわり以上は成長したかのように感じさせるのは、ニール・ヤングの加入の効果なのでしょうか。おそらくはそれが良い刺激となって、4人それぞれが全盛期といって良いくらい実力を発揮し、グループという妥協がそれを中和してしまうことがなかったこと、が成功した要因なのでしょう。 
 
アーシーでカントリーテイストを感じさせつつ、イギリス的で繊細かつポップな新味を混ぜ合わせた新たなアメリカンロックは、その後のウェストコーストロックだけでなく、ツェッペリンなど世界中のロックに影響を与えました。
 
 
3声コーラスの平等な均衡のハーモニー、ソリッドなギター、優しさに溢れたメロディ、それらは同時にウッドストックやヒッピーカルチャーや、そんなものをひっくるめた色々を映し出した時代の代表的なサウンドトラックのような作品なのでしょう。この作品がすばらしく、いつまでもフレッシュさを失わないこと、永遠の魂を吹き込まれたこと、それがあの時代の”肝”だった大切なことを伝えてくれているのでしょうし、それは多分普遍的なことである気がします。そんなことに感謝と感動をあたえてくれつつ、その後の4人の歩みについての歴史の味わいをも感じさせてくれる作品です。
 
ロック史上最高レベルの傑作です。

  

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by TREview


WILCO

2008-09-24 00:13:56 | アメリカンロック
Being There Being There
価格:¥ 1,697(税込)
発売日:1999-04-08

Wilco 「Being There」1996年US
ウィルコ「ビーイング・ゼア」
 
【Disc 1】
1. Misunderstood
2. Far,Far Away
3. Monday
4. Outtasite (Outta Mind)
5. Forget The Flowers
6. Red-Eyed And Blue
7. I Got You (At the End Of The Century)
8. What's the World Got In Store
9. Hotel Arizona
10. Say You Miss Me
 
【Disc 2】
1. Sunken Treasure
2. Someday Soon
3. Outta Mind (Outta Sight)
4. Someone Else's Song
5. Kingpin
6. (Was I) In Your Dreams
7. Why Would You Wanna Live
8. Lonely 1
9. Dreamer In My Dreams
 
 
Jeff Tweedy(Vo,G)
Ken Coomer (Dr)
Jay Bennett (G)
John Stirratt (bass)
Max Johnston (mandolin, banjo, fiddle, and lap steel)

僕がWilcoのことを知ったのは、この96年のセカンドアルバムからだった。
新譜紹介でいきなり2枚組、ジャケットの雰囲気にひかれて聴いたところからはまってしまった。
 
村上春樹氏がファンだという話も聞くが、不思議ではない。
それは、ルーツロックという、あくまでもゆったりとした時間の流れの中で、じっくりゆったりと歌われる。
 
 
このアルバムにおいて彼らは、彼ら自身の一つの個性を確立させた。
青年が、自分の内面を、彷徨い求める旅路のきれぎれが、様々な切り口で、とめどもなく描かれてゆく。探し求め続ける日々、が永遠の青年性を湛えている。詩が感じられるのだ。
 
そんな、とても不思議で、限りなく”今”のロックを歌える、数少ないオリジネイター、それがウィルコだ。どんな賛辞も過ぎることはない。現役最高峰級のロックバンドらしいロックバンドだ。 
 
”オルタナカントリー”という呼び方で、彼らの音楽性が表現されることが多い。この呼び方は、彼らの紹介としてはちょっと微妙だ。
 
なぜなら彼らの音楽性は、ゆったりしたルーツロックでありつつ、楽器からカントリーテイストは感じられるがストレートなものではなく、ビートルズからニールヤングまで、パワーポップ、ソウル、サイケ、轟音ギター、パンクテイスト、ホーン、オーケストレーション、まであらゆる音楽性が入りまじったものだからだ。
 
これだけのテイストが入り交じること自体が、90年代ならでは、ということだと思うし、ルーツロックといいつつも、”今”という時代でしか生まれ得ない音になっているのだ。
 
ジェフ・トゥイーディーの声がいい。
アメリカンらしい突き抜けていて乾いた声質で、青年らしい思慮深さと爽やかさを湛えている、と思う。前進のオルタナカントリー・ロックの始祖と言われるアンクル・テュペロでそれなりのキャリアを積んだ分、堂に入った大胆さ、腹の据わった独創性、も感じられる。
 
言い換えると、過去の大先輩の培ったルーツロックを受け継ぎながらも、自分たちの独創性で新しい今の音にしてゆくだけの、大胆さと実力を兼ね備えていながら、かつ爽やかだ、ということ。
 
 
彼らの功績として、カントリーロックのルーツ、グラム・パーソンズがもっていた暗さ、切なさ、内省性、を今の時代のロックに求められるものとして、時代を経て、新たな命としてよみがえらせていること、が挙げられるだろう。
 
オルタナカントリー、という呼び方が唯一意味があるとすれば、この意味、つまり、今の時代のオルタナティヴロック、グランジロックがもつ内省性、と同じものを湛えている、という精神性、同時代性においてだろう。
 
  
このアルバム以降、彼らはもっともっと、ジム・オルークという音の魔術師と共に音のつくりを突き詰めてゆく。
しかしどこまでもロックらしいロック、という音の中で、あくまでも今を生きる同時代人としての内省的な旅を続ける彼らの真摯な姿は、畏敬の念を抱かざるを得ない。
 
90年代を代表するアルバムの一枚、といってもいい傑作の一つです。

"I got you" 

<script type="text/javascript"></script>

"Someday soon" 

<script type="text/javascript"></script>

"Monday"

<script type="text/javascript"></script>

Extreme 新譜

2008-09-13 22:46:11 | アメリカンロック
サウダージ・デ・ロック サウダージ・デ・ロック
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-08-13

Extreme 「Saudade de Rock」2008US
エクストリーム「サウダージ・デ・ロック」
 
1 Star
2 Comfortably Dumb
3 Learn To Love
4 Take Us Alive
5 Run
6 Last Hour
7 Flower Man
8 King Of The Ladies
9 Ghost
10 Slide
11 Interface
12 Sunrise
13 Peace (Saudade)
 
 
Nuno Bettencourt (G)
Gary Cherone (Vo)
Pat Badger (b)
Kevin Figueiredo(ds)

 
早速買いましたエクストリーム、14年のブランクを経て、ついに復活です。
やっぱり最高です。
この時代に、生きたエクストリームを再び聞けるとは。。
 
 
内容も大変いいと思います。
全体的に勢いがあって、イキイキしています。
現役感バリバリです。
 
 
感じとしては、エッジの効いたストレートなロック、っぽい曲が多い。
かといって4th Waiting for the panchlineのダークなのとはテイストが違ってます。
 
どっちかというとツェッペリン的、曲によってはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン的なつんのめるようなギターリフの効いたロックです。全体的に中後期ツェッペリン的な緊張感がみなぎっています。とくに3曲目などはもろです。
 
それでいて、きめるところではしっかりエクストリーム的ハーモニーが効いていて、クイーンmeetsツェッペリン=エクストリーム感が出ています。
  
 
そして何よりたまらんのは、どの曲でも、しっかりとヌーノのギターワークががっつりと聴けるところです。
曲優先で、曲がしっかりしているのに、その上で超絶ギターもしっかり織り交ぜてくる辺り、ヌーノのプロデューサー能力の面目躍如といったところでしょうか。憎いです。
 
4曲目のお遊び的カントリーロックにしても、疾走感ドライブ感を損なわず、しかもここでもギターワークを入れてきます。
これでもくらえ、って感じです。
 
 
  
あいかわらずパッツパツのゲーリー・シェロンのヴォーカル、最高です。
やはりエクストリームはこれです。
 
バラード曲は6,9,11,13です。
6は壮大な3rd的ドラマティックなブルースバラードナンバーです。
9はピアノとゲイリーの裏声で始まり、途中からエクストリーム得意のクイーン的パワーバラードへと移っていきます。
11はアコースティックなナンバーで、More than wardsを思わせるナンバー。
13はゆったりとした成熟をかんじさせるナンバーです。 
 
このアルバムは、後半のバラードの合間のハードな曲でも全くクオリティとテンションが落ちません。
7曲目、8曲目、10曲目もしっかりタイトなロックがパンチを効かせています。
 
 
 
全体的に、ライブ感があり、タイトでエッジが効いててなんだかラジカルさも感じさせ、ツェッペリンやらクイーンやら素材感があり、ザクザクした作りが、しっかりと今の音になっていると思います。ギターワークも曲調の中で、溶け込む形の中で、しかしたっぷりと満足感のあるおかずになっています。
 
アルバムタイトルのSaudadeはポルトガル語で、過ぎ去ってもう戻らないものへの郷愁、の意。Rockに対するヌーノの想い、14年間の課外活動の間に貯まったエクストリームへの想いをぶちまけて、エクストリームでしかない音が詰め込まれていると思います。
 
いやあ、嬉しい。
 
 
"Learn to love"

<script type="text/javascript"></script>

"Interface"

<script type="text/javascript"></script>

ザ・ジェイホークス「トゥモロー・ザ・グリーン・グラス」 1995年US

2008-08-01 00:52:22 | アメリカンロック
Tomorrow the Green Grass Tomorrow the Green Grass
価格:¥ 1,567(税込)
発売日:2006-08-14

THE JAYHAWKS「TOMORROW THE GREEN GRASS」1995年US
ザ・ジェイホークス「トゥモロー・ザ・グリーン・グラス」
 
1: Blue
2: I'd run away
3: Miss Williams' guitar
4: Two Hearts
5: Real light
6: Over my shoulder
7: Bad time
8: See him on the street
9: Nothing left to borrow
10: Ann Jane
11: Pray for me
12: Red's song
13: Ten little kids
 
オルタナティブが好きで、カントリーロックが好きで、バーズも好きで、グラムパーソンズが好きで、ニールヤングも好きで、REMが好きで、トム・ペティが好きな方。これらのキーワードに引っかかった方、かならず聴いてください。間違いありません。WILCOは聴いてるが、これは聴いてない、という方も是非。
 
アーシー(土臭い感じ)でアメリカンでハーモニーとメロディが美しく、適度にギターが暴れてます。好きな人にはたまらない良質なアメリカンロックです。
 
しかしグループってのは切ないもんです。
彼らをみてるとそう感じます。
 
どんなに才能があって、今という時代に必要とされる音楽を生み出す力があっても、ともに道を歩けなくては、その運命も違ってしまう。
 
ジェイホークスの盟友、ゲイリー・ルーリスとマーク・オルソン。本作を最後にマーク・オルソンが脱退する形で袂をわかち、結局オリジナルアルバムとしては後3枚だして、解散。この3月にはゲイリー・ルーリスがブラッククロウズのクリスのプロデュースでソロアルバムを出していました。
 
そんな2人の最後のタッグであり、グループとしての最高傑作が95年の本3rdです。もしかして将来再結成がなければですが。
 
 
彼らの音はパンク、オルタナティブを通過した後のカントリーロック、”オルタナカントリー”と評され、90年代半ばには今をときめくウィルコとサン・ヴォルトとジェイホークスで三羽ガラスと呼ばれていました。ソロでブレイクしたライアン・アダムスのいたウィスキータウンも代表選手でした。
先の3バンドは伝説化しているオルタナ・カントリーの始祖アンクル・テュペロの時代に競演したり絡み合っているので、出もとは同じようなもの。
  
 
バーズのような印象的なストリングスアレンジにはエルトン・ジョン。
マシュー・スウィートやティンエイジファンクラブの面々、ブラッククロウズのクリス・ロビンソンを初め、彼らをフェイヴァリットに挙げるアーティストが多かったのもうなずける内容。グラムパーソンズやニールヤングやバーズの音楽を受け継ぎつつ、ブラック・フラッグらアメリカン・ガレージ・パンクを通過した現代のオルタナティヴ感覚を併せ持つ、充実した内容が、アーティストや通受けする理由でしょう。
 
そんな玄人受けしそうな内容でありながら、本アルバムでは一貫して爽やかでポップなナンバーが、これ以上ない緩いオルタナチックな手触りのバランスのコーラスハーモニーで彩られています。その辺がなんとも言えません。
 
そこかしこにバーズやディラン、トムペティ、ニールヤングを感じます。7曲目にはなんとグランド・ファンク・レイルロードの曲。
 
エコでロハスな雰囲気満載の本作、オルタナ・パンクとカントリーの配分が絶妙な現代のカントリーロック。ジェイコブ・ディランやフライング・ブリトーのバーニー・レドンやスティーブン・スティルスの息子をゲストに迎えた2003年の6th「Rainy Day Music」も良いアルバムだったけど、本作のようなバランス感覚は聴かれなかったと思います。
 
その後、もう一方の雄、ウィルコがジム・オルークと共により現代的なオルタナティヴ感覚を研ぎ澄ませて、一皮も二皮もむけていったのに対して、ここで聴かれるジェイホークスの世界は、あまりにも穏やかでエヴァーグリーンな輝きを湛え、ジャケットの森の中で今でも暮らしているかのような、そんなテイストをいつまでも聴かせてくれています。90年代オルタナカントリーを歴史に刻んだ代表的な名盤の一つです。
 

<script type="text/javascript"></script>

ザ・バンド「南十字星」

2008-07-13 13:35:47 | アメリカンロック
Northern Lights-Southern Cross Northern Lights-Southern Cross
価格:¥ 1,342(税込)
発売日:2001-05-08

「The Band」1975年US
ザ・バンド「南十字星」
 
1.Forbidden Fruit
2.Hobo Jungle
3.Ophelia
4.Acadian Driftwood
5.Ring Your Bell
6.Rags and Bones
7.It Makes No Difference
8.Jupiter Hollow
9. Twilight(アーリー別ヴァージョン)
10. Christmas Must Be Tonight(別ヴァージョン)
 
 
リヴォン・ヘルム - ds, madolin, vo
ロビー・ロバートソン - gt
リック・ダンコ - b, gt, vo.
リチャード・マニュエル - key, vo
ガース・ハドソン - key, sax
 
 
個人的に言えば、ザ・バンドの音楽に目覚めたのはこのアルバムだった。
初期の作品と比べて音質がクリアで、曲一つ一つのメロディーがわかりやすく、しみるメロディーがずらりと並んでいる。大人のしみじみとしたタフで切なくもキャッチーなナンバーのオンパレードだ。逆に言えば、渾然一体としたような初期のバンドとしてのライブ感のようなものが比較的薄いともいえる。しかし、逆にそれがこのアルバムの哀愁のような寂寥感のようなものを際だたせている、という気もする。
 
初期2作で神の啓示を受けたかのような魔法の音楽の語り部となり、時代の寵児となった彼ら。アンチ・フラワーだったはずが逆に忌むべき権威化してしまったことへの反発か、葛藤の数作品を経て、拠点ウッドストックも離れ、新設したカリフォルニアのシャングリラ・スタジオで作成された本作。全曲がライブよりもアルバム作成を重視し始めたR・ロバートソンの作。マジックが過ぎた後で、たどりついた先に何があったのか。R・ロバートソンが孤立する形で崩れたバンドのバランス。翌年の76年にはあのラスト・ワルツでバンドは一旦解散することになる。
 
まるで魔法から説かれて、呆然としながらも、あらためて自分自身のことについて、生身のひとりの人間として、歌い始めたような、クリアな音像がそんな手触り感を与えてくれる。初期のにぎやかで軽快な楽しいリズムとは違う、ひとりひとりの男の歌が直に伝わってくる。古きアメリカを歌ってきたカナダの男達が、ついに自分たち自身のことを歌い始めたことも曲の感触を変えているのだろうか。
 
リチャード・マニュエルのボーカルが染みる2曲目の「Hobo Jungle」。ホーンを取り入れグルーブ感がたまらない代表曲のひとつ3曲目の「オフィーリア」(下の映像)。カナダの内戦を絡めて歌った4曲目のこれも代表曲「アケイディアの流木」。何と言っても個人的には6曲目の「おなじことさ」(映像)。あまりにも渋すぎます。曲もタイトルも決まりすぎ。そして、まるでスティーリー・ダンみたいなスムーズなRags&Bonesもかっこいい。とどめはボーナスのTwilight。
 
 
こうして聴けば、彼らが伝統的なアメリカ音楽をロックに取り込んだだけのミュージシャンでは全くないことが良くわかる。見た目とは裏腹の、若くて繊細なメンバー一人一人の心象風景が色濃く反映された曲の数々。主にボーカルをとった3人のメンバーそれぞれの味わい。バンドを解散させてしまうR・ロバートソン、センチなR・マニュエルはバンドを失い酒と薬におぼれ自殺してしまう。絶妙なタイム感のドラムを聴かせた最年長で一人アメリカのリヴォン・ヘルムとリック・ダンコはいち早くソロ活動を本格化させ、再結成の中心となる。
 
ザ・バンドという名の5人がぎりぎりの絆で生み出した後期の傑作、南十字星。初期2名作とはひと味違う味わいをもった一枚。彼らの渋さがより際だつバラード調の曲が多いこのアルバムは、単純にわかりやすくて良い曲がそろっているので、ザ・バンドに入るには最適なアルバムなのかもしれない。
 
"同じことさ"

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"オフィーリア"、ラストワルツより(2分33秒くらいから曲が始まります)

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