goo blog サービス終了のお知らせ 

Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

フェイセズ 「Ooh, La, La」

2009-09-12 23:40:09 | UK 全般
Ooh La La Ooh La La
価格:¥ 816(税込)
発売日:1994-08-04

「Ooh La La」Faces 1973年UK
「ウー・ラ・ラ」フェイセズ

[A] 
1. Silicone Grown
2. Cindy Incidentally
3. Flags and Banners
4. My Fault
5. Borstal Boys
[B]
6. Fly in the Ointment
7. If I'm on the Late Side
8. Glad and Sorry
9. Just Another Honky
10. Ooh la La
 
Rod Stewart(Vocal)
Ronnie Wood(G,Vo)
Ronald Lane(B,Vo)
Ian Mclagan(Key,Piano)
Kenneth Jones(Dr)

ザ・フーと並んでモッズの代表としてシーンを席巻したスモール・フェイセズ。

人種差別にあっていた米国における黒人音楽、ブルースやR&Bは、HIPで謎めいた音楽として、既成の枠組みにはまらない抵抗の音楽として、英国のワーキングクラスの若者には最先端の音楽として取り入れられてゆきました。
 
若い頃からショービジネスの世界で生きてきたロニー・レインはピート・タウンゼントのザ・フーのように言葉や企画性でメッセージを伝えるというよりも、感覚的音楽的にHIPな音で頂点を極めました。
 
ボーカルのスティーブマリオットがピーター・フランプトンとハンブルパイを結成するべく去った後で、残されたロニー・レイン、ケニー・ジョーンズ、イアン・マクレガンが、ジェフベック・グループのロン・ウッドとロッド・スチュワートと合流してスモール・フェイセズ改め、新生フェイセズの歴史はスタートしました。
 
  
1970年のファースト・アルバム「ファースト・ステップ」は全英45位、71年に発売された「ロング・プレイヤー」は全英31位を獲得。 
同じ年、ロッドのソロ曲「マギー・メイ」が全英、全米で一位を獲得しブレイク、同年12月、勢いをかってフェイセズは最大のヒット曲「ステイ・ウィズ・ミー」を収録した「馬の耳に念仏」(全英2位)、ロッドも翌年に「ネバー・ア・ダル・モーメント」(全英1位)を出し、フェイセズの勢いは頂点を極めました。
 
 
この頃のロッドのソロ作品は、バンドとはアイリッシュ・トラッド色を感じさせ、ロッドの渋い歌をフィーチャーしたものになっていましたが、一方でフェイセズでは「酔いどれバンド」と異名をとるほどのライブバンドとして頂点を極めました。
 
そのライブバンドとしての楽しさ、ロックの醍醐味、という点では同じ時期のストーンズを上回っていた、といって過言ではないほどでした。
 
まさしく本領を発揮したライブを封印した前作「馬の耳に念仏」は、彼らの代表作となりました。
 
 
「ウー・ラ・ラ」は「馬の耳に念仏」の後に出された彼らのラストスタジオアルバムです。
 
 
イアン・マクレガンのピアノが走りまくる最高のナンバーで幕を開けます。
ヒット曲となった2曲目もピアノで始まります。
ロン・ウッドの乾いたスライド・ギターとロッドのカラッカラのハスキーボイスが、まるで土煙をあげるように駆け抜けてゆきます。
 
3曲目は少しセンチなミディアムナンバー。
こんなナンバーも歌いこなす懐の深さが魅力です。
 
米南部カントリーブルースタッチのスワンプ色、弾けるR&B、ブギー、トラッドフォークがモッズ、ビートバンドとは異なるスタイルを形成しています。
 
「ボースタル・ボーイズ」では、ロン・ウッドのギターカッティングと続くへヴィーなギター・サウンドがさえる疾走ナンバー。
 
  
B面冒頭はヘビーなギターとキーボードが絡む男っぽいインスト。
  
7曲目はインストの後だからか、人間臭いロッドのボーカルがしみるナンバー。
 
8曲目はロニー・レインが歌う「グラッド・アンド・ソーリー」。
ゆっくり優しくうたうロニー・レイン。
 
”ありがとう ごめんね 幸せ? それとも 不幸せ?” 
シンプルな歌詞にシンプルなピアノが淡々と歌います。 
  
 
9曲目もしっとりとしたロッドのボーカルとピアノが染み入るミディアムバラード。
  
   
ラストはロン・ウッドがはじめてボーカルを取った「ウーララ」。
 
今になって解ったことも もっと前に知りたかった もっと若かった時に
もっと前に知っておきたかった もっと血気盛んだった時に
 
 
ウラーラー、ってフレーズが彼らにぴったり。
切なさに胸が締め付けられるような名曲です。
 
 
彼らのロックンロールってお祭りのような人間臭さが感じられて他のバンドではなかなか感じられない味わいがあります。
  
A面の疾走間、B面のしっとり感、いい加減でにぎやかそうな人が時折見せるさびしそうな顔がぐっと来る、みたいなギャップにやられます。 
  
しわがれたロッドの歌とにぎやかなバンドサウンドには、ワーキングクラスの生活感、やさぐれ感、それらと表裏一体の馬鹿騒ぎ感、がある気がします。
 
彼ら自身の内面から自然に湧き出した感覚であり、よっぱらった彼らの演奏からは、心底から楽しそうなひと時のお祭り騒ぎと、その間に垣間見える寂しさや切なさがあります。
 
そんなもの全てが、彼らの身からでているところが肝だと思います。
 
R&Bやブルースは米国黒人からの借り物の音楽です。
 
しかし彼らは、それらを限りなく自分たちの音にすることができた、最高のバンドだったのでしょう。
 
 
そして、ロックバンドが最もロックンローラーらしくいられた時代、に彼らがめぐりあった。
 
   
彼らは世界的なスターダムを駆け上がり始めたロッドのバックバンド化した活動にロニーが反発し脱退、ロンもストーンズに参加することになり、75年12月解散します。
 
しかし彼らがバンドとして輝いた短い期間の作品はロックという音楽の金字塔として、永遠の命を得て、これから先もずっと、新しいロックのファンを増やし続ける役割を果たし続けるでしょう。


スウェード

2009-03-30 00:38:16 | UK 全般
Coming Up Coming Up
価格:¥ 1,338(税込)
発売日:1996-09-04

SUEDE「Coming Up」1996年UK
スウェード「カミング・アップ」
 
1 Trash (04:06)
2 Filmstar (03:25)
3 Lazy (03:19)
4 By The Sea (04:15)
5 She (03:38)
6 Beautiful Ones (03:50)
7 Starcrazy (03:33)
8 Picnic By The Motorway (04:45)
9 Chemistry Between Us, The (07:04)
10 Saturday Night (07:05)

Brett Anderson ( Vocals )
Neil Codling ( Keyboards )
Richard Oakes ( Guitar )
Simon Gilbert ( Drums )
Mat Osman ( Bass (Electric) )
 
 
1989年のストーンローゼスのデビューアルバム「石と薔薇」に連なるマンチェスタームーブメント、ドラッグカルチャーと結びついたダンス、レイヴの盛り上がりはセカンド・サマー・オブ・ラブと呼ばれました。
 
80年代のイギリスロックは長い不毛の時代を過ごしていました。
スミスのモリッシー、ジョニー・マーのコンビ以外、アメリカ勢に押されっぱなしの時期が続きました。
 
ちょうどそれはサッチャー保守政権下の抑圧感と重なり合うものでもありました。
 
久々に現れたストーンローゼスは、そんな過剰なカリスマ待望感の中で祭り上げられ、異様な存在となり、しかしながら、彼らはそんなイギリス中の想いを全て受け止めきる間もなく、やがて姿を消してしまいました。
 
ふたたびアメリカの今度はニルヴァーナをはじめとするグランジロック勢はイギリスのマーケットをも席巻してしまいました。 
しかし時代は90年代に突入し、あきらかに変わり始めていました。
 
 
そんなタイミングで絵に描いたように登場したのが、彼らスウェードでした。
あまりにも出来すぎたドラマのキャラクターのような登場でした。 
 
ヴォーカルのブレット・アンダーソンとギターのバーナード・バトラーはルックスも中性的で美しい上にナルシスティック、歌詞やジャケットのイラストも性のモラルやタブーを犯すような禍々しいものでした。
 
カリスマを待望する世間、何か鬱憤のたまった社会への起爆剤的なショッキングなテーマへのチャレンジ、確信犯的なグラムロックスターでいながら、それらを受け入れる世の中の受け皿があまりにも揃っていた為に、彼らがスターになることに障壁はありませんでした。
 
裏声というかファルセットボイスを多用したボーカルスタイルはいかにもグラムロック的でいつつ、耽美的で美しいメロディーに、歌うようなギターが絡み合うスタイルは、1stアルバムにしてかなりの完成度でした。
 
92年の「ザ・ドラウナーズ」に始まり、「メタル・ミッキー」「アニマル・ナイトレイト」といったシングルヒットを連発。1stアルバム「スウェード」もヒットし一躍時代の寵児になりました。
  
 
しかし、個人的な好みを言えば、ブレット・アンダーソンの裏声多用のボーカルが、どうも生理的にNGでした。なので、当時はそんなに聞き込んだというわけではありませんでした。
 
やがてオアシスとブラーが登場し、ブリットポップという言葉が一般化しました。
94年には両者がそれぞれ「Park life」、「Morning Glory」というHitアルバムを出した同じ年、ギターのバーナード・バトラーがバンドと決裂し、脱退してしまいました。
 
正直このあたりになると当初のゴシップ的な扱われ方も少なくなり、もう時代は去った感は否めなかったと思います。
 
そんな96年に出されたのが、この3rd「Coming Up」でした。
 
ロックのファンって、ブームと呼ばれるような扱いを受けているうちは、あまり聴く気がしないけど、みんなが聴かなくなったり、色々経てからは聴く気になったりすることってあると思います。  
 
この時も正直まさにそんな感じでした。
今なら少し聴いてみようかな、くらいの感じで買ってみたら、驚きでした。
 
昔は生理的にだめだったあの声が、なんだか大人の声になって、しっかり本物のグラムの深みのある声になっている、と感じられました。
 
メロディ自体も、以前よりもメリハリが効いています。
バーナード・バトラーという曲作りにおける絶対的な存在が居なくなることによって、逆に客観的にスウェードというバンドに求められている音、というものを見つめなおすことができた、ということがあったんじゃないでしょうか。
 
ほとんどの曲がシングルカットできそうなほどです。
アップテンポな曲だけでなく、バラードナンバーも幻想的でアルバム全体に耽美的な雰囲気とテンションが保たれています。
 
このアルバムを聴いた後では1stアルバムの有名なシングル達でさえも若さを感じるほどです。むしろ今になってみれば、1stの若さも未完成な部分もあざとさ自体もひっくるめて、それ自体がロック的な初期衝動だとも受け止めることができるので、今ならかえって1stを聴くこともできたりします。
 
この3rdアルバムは、そんな彼らがロックにぶつけた初期衝動と、バーナードが抜けた後の客観的な、ある意味ではプロフェッショナルになった部分が、ギリギリの配分で成立した彼らの最後の花火だった、といえるのかもしれません。
 
本作はくしくも彼らの最大のヒット作となりました。
1st、2ndはゴールド(10万枚以上)、3rdはプラチナ(30万枚以上)、Trashの3位をはじめとしてシングル5曲が全て全英10位以内に入りました。
 
スウェード、といえば時代へ与えた衝撃とロック史上の意味としては1stアルバム、ということになるでしょうが、世の中が彼らに求めた音は、ようやくこの3rdで実現された、といってもいいのではないでしょうか。
 
あまり名盤として扱われることが少ない気がしますが、まぎれもなく名作だと思います。
 

<script type="text/javascript"></script>

ヴァインズ VINES

2009-03-15 16:02:43 | UK 全般
Highly Evolved Highly Evolved
価格:¥ 1,853(税込)
発売日:2002-05-09

VINES「Highly Evolved」2002年UK
ヴァインズ「ハイリー・イヴォルヴド」
 
1 Highly Evolved
2 Autumn Shade
3 Outtathaway
4 Sunshinin'
5 Homesick
6 Get Free
7 Country Yard
8 Factory
9 In The Jungle
10 Mary Jane
11 Ain't No Room
12 1969
 
Craig Nicholls (vocals/guitar), Patrick Matthews (bass/vocals), Ryan Griffiths (guitar), Hamish Rosser (drums)

 
ニルヴァーナをはじめとする90年代のグランジ・ロックは、イギリスのロック界をもすごいパワーで席巻しました。
 
ハードロックをベースにしたグランジ・ロックのムーブメントが慢性化した90年代末から2000年にかけての状況を打破したのが、同じアメリカ出身のストロークス、続いてイギリスのリバティーンズへと続いたガレージ・パンク・ロック勢でした。 
 
彼らはイギリスのNMEなどの英国メディアに持ち上げられ、初心にもどったような、ロックンロール感、ラフで粗いガレージ感のあるテイスト、既成のロックビジネスをぶち破るパンク感、でロックの復活、ロック・リバイバルと位置づけられちょっとしたブームになりました。
 
2002年に登場したオーストラリア出身のヴァインズも、その文脈の中で、イギリスから出てきました。
 
しかし一口にロック・リバイバルのくくりでは収まらない、グッとくる個性と実力をもったバンドで、インパクトありました。
 
何がいいって、曲、メロディがいいんです。
 
ガレージテイストで小気味いいグランジ+パンク+シンプルなロック、なんですがストレートな感じがいい。
 
しかも彼らのポテンシャルはそれだけじゃない。
 
1曲目でバリバリのパンク・ロックンロールをガツンとかました後で、2曲目にいきなりビートルズばりのハーモニー全開のバラードというかアコースティックナンバー。
この完成度が高い。
 
ビートルズのナンバーでいえば、たとえばエリナ・リグビーとかペニー・レインとかそんな感じで、ちょっとサイケ感もあり。
 
ヴォーカルのクレイグ・ニコルズの作曲能力はかなりのものです。
 
グランジっぽいガレージテイストあり、切れのいいパンクテイストあり、さらにハーモニーあり、全体通じて曲がいい、と。
 
 
このアルバムの魅力を増すことに貢献しているのは、まぎれもなくパンクのテイスト。
曲の短さが潔い。
その短さの中にメロディのよさとヴォーカルのよさが詰まってるところが、ポテンシャルの高さを感じさせていい。

そしてまた曲の並びがいい。
アコースティックナンバーとアップなナンバーの配置がアルバム全体に引き締まった統一感と緊張感をだしてます。
 
 
かれらはこのあと2枚目3枚目と出すんですが、多分、脱ロック・リバイバルを意識しすぎたんじゃないの、とおもっちゃうんですが、パンクテイストを消してしまいます。
 
僕はこれが間違いだと思います。
 
あいかわらず曲はいいんです。
 
 
昨年出した4枚目の復活作その名も「メロディア」。
 
これはクレイグが病気から復活しての意欲作、って感じは伝わってくるイキのいいアルバムで、いいんですが、やっぱりパンク色はない。むしろ2nd以降のハードロック色に偏ってるかな感の延長です。
 
ハーモニー全開のナンバーは、あいかわらず最高です。
天才ですね。
 
しかしそれ以外が、曲は多分いいんですが、なんかキレとか締まりがない。
アルバム的にもダレがきます。
それが今一低迷してる理由でしょう。
 
無理にパンク色を消すことはないと思うんですが。
 
1stの成功は、もともとある曲のよさと、グランジ的なハードロック感を、切れときっぷのいいパンク感で潔くミニマムにまとめたシンプルなのに分厚い感じがよかったわけです。
 
パンク感というしばりをといてしまって、しまりがない感じになっちゃってると個人的にはおもうんです。
 
ロック・リバイバルの中から出てきたようで、その後自分たちの個性を見失わないで、ブーム関係なく生き残ったバンドをみてると、その辺のよさをちゃんと貫いてる、ブームを意識することはないんだ、と思ったりします。たとえばホワイト・ストライプスとかキングス・オブ・レオンとか。
 
是非次回作では、この名盤1stのパンクテイストをとりもどしてもらいたい、と思います。
 
"Highly evolved"

<script type="text/javascript"></script>

"Autumn Shade"

<script type="text/javascript"></script>

ユーリズミックス

2009-02-11 15:51:51 | UK 全般
グレイテスト・ヒッツ グレイテスト・ヒッツ
価格:¥ 2,548(税込)
発売日:1991-03-21

Eurythmics 「Greatest Hits」1991年UK
ユーリズミックス「グレイテストヒッツ」
 
1. Love is A Stranger (3:40) 1982
2. Sweet Dreams (Are Made of This) [12" Version] (4:50) 1982
3. Who's That Girl? (3:44)
4. Right by Your Side (3:49) 1983
5. Here Comes The Rain Again (4:54) 1983
6. There Must be An Angel (Playing with My Heart) (4:41) 1985
harmonica by Stevie Wonder
7. Sisters Are Doin' it for Themselves (5:51) 1985
duet with Aretha Franklin
8. It's Alright (Baby's Coming Back) (3:43) 1985
9. When Tomorrow Comes (4:15) 1986
10. You Have Placed A Chill in My Heart (3:46) 1987
11. Miracle of Love (4:35) 1986
12. Sexcrime (Nineteen Eighty Four) (3:52) 1984
13. Thorn in My Side (4:11) 1985
14. Don't Ask Me Why (4:13) 1987
15. Angel (4:47) 1990
16. Would I Lie to You? (4:22)
17. Missionary Man (3:45) 1986
18. I Need A Man (4:21)
 
Annie Lennox / David A. Stewart
 
 
先日のアメリカンミュージックアウォードで、久々にアニー・レノックスを拝見しました

さすがに歳を食っていました。しかしまあ格の違いを見せ付けていましたね。
 
ソロになってからの作品の風格さえ漂うアニーの作品で相当アーティストとしての格もあがった気もしますが、やっぱり初期のユーリズミックスが最高です。
 
1983年の2nd「Sweet Dreams」、3rd「Touch」が好きですが、やっぱりいい曲が多いのでベストがいいですね。実際本作は1000万枚近く売れました。
  
優れたポップスって、メロディの良さに加えて、「切ない感じ」、と「衝動感」あと「ドラマ性」が条件だと思うんですが、どうでしょう。
 
ユーリズミックスの初期のヒット曲には、そんな青春の恋の切なさや衝動感が詰まっている感じがします。自分にもほとんどリアルタイムだったので、自分の青春時期と重なっていることだけではないと思いますが、やっぱりあの頃の空気を思い出させられることは否定できませんね。
 
Who's that girlにLove is a stranger、Sweet dreams、Here comes the rain again、そしてThere must be an Angel。どれも切ないドラマ性の詰まった珠玉の、普遍性をもったポップスだと思います。
 
 
歴史的に言うと、70年代後半に肥大化し停滞感のあったロックシーンをセックスピストルズら英国パンクのムーブメントが一旦破壊しつくし、更地にしてしまいました。すぐにパンクブームが去った後の焼け野原に、無数の新しいアイデアにあふれた音楽が生まれました。それらは主に政治性や社会性よりもシンセサイザーやリズムマシンでエレクトリック・ポップと呼ばれた新鮮なサウンドとポップさが特徴でした。
 
おりしも米国を中心に80年代の好景気とMTVの開局の波を受けて、イギリス発のポップスグループが大挙してアメリカのチャートを席巻し、第二次ブリティッシュ・インベイジョンと呼ばれるまでになりました。もちろん第一次は60年代のビートルズやストーンズらの攻勢です。
 
このムーブメントの代表選手は、デュラン・デュラン、カルチャークラブ、ほかにもヤズーやデペッシュモード、ワムもこの中に入るでしょう。もちろんユーリズミックスも。彼らは皆ミュージックビデオ黎明期に乗って、ビジュアル上のインパクトがある人たちばかりでした。ぜんぜん生活感がないのが特徴でしたね。70年代の苦しい時代を抜け出して、新しい時代と生活を謳歌したい、いわゆるバブル的なものを求める80年代の初中期の社会的な気分があったと思います。
 
伝統的なものからはかけ離れて、というか過去とはきりはなれ、まったく新種の生き物のような人たちでした。
 
一部の優れたグループを除くと、やっぱりロックとはいえないポップスも多かったし、ビジュアル重視のアイドルもいたし、ライブとかの実力はなくてもビデオで売れてしまうし、どうなの、って一発屋も多かったけど、それはそれで時代の味がありました。今思えば。
 
ですが、ユーリズミックスはやっぱ一味ちがってました。
 
デイヴ・スチュワートの作る音楽は、先に述べたような切なさと衝動感とドラマ性を持った優れたポップスでした。エレクトリックポップと呼ばれた奇妙でクールなサウンドは、とってもセンスがありました。
 
しかし、このグループを普遍的な領域に押し上げたのは、やっぱりアニー・レノックスのボーカルです。
 
力強く低い音域から高い音域まで歌いこなしつつ、ブラックなフィーリングをたたえています。それでいて伸びのある歌声がデイヴの作るドラマ性ある曲世界を盛り上げるのに十分でした。 
 
6曲目と7曲目ではそれぞれスティーヴィー・ワンダーとアレサ・フランクリンという米ブラックミュージック史上の最高の男女のアーティストが競演しています。イギリスのアーティストとしては最高級の扱いですかね。
 
 
この伸びのあるパワフルな歌声が、特に後期のユーリズミックスではクイーン的な楽曲群で存分に活かされました。フレディの追悼コンサートでもアニーは歌ってましたよね。Under pressureだったか。
 
こうしてベストで年代順に聞いていくと良くわかりますが、やっぱりある年齢の時期にしか作れない音楽ってあるんでしょうね。やっぱり初期のテイストはいいです。でも無理しないで年相応に音楽性を変えてゆくことも理解できます。
 
後期ならアニーのソロを是非聞いてほしいですね。
いずれも素晴らしいです。ちょっと見方が変わるくらいでした。
 
いまでもたまに引っ張り出して聴きたくなる不朽の名曲群のつまった本作、まだ彼らの世界に触れたことの無い方は是非。映像でアニーさんのインパクトのあるお姿も。
 
"Sweet Dreams"

<script type="text/javascript"></script>

 
"There must be an angel"

<script type="text/javascript"></script>

"Here comes the rain again"

<script type="text/javascript"></script>

マッシヴ・アタック

2008-10-13 22:51:11 | UK 全般
Blue Lines Blue Lines
価格:¥ 1,917(税込)
発売日:1993-04-07

Massive Attack「Blue Lines」1991年UK
マッシヴ・アタック「ブルー・ラインズ」

1.SAFE FROM HARM                  
2.ONE LOVE                       
3.BLUE LINES                         
4.BE THANKFUL FOR WAHT YOU'VE GOT     
5.FIVE MAN ARMY
6.UNFINISHED SYMPATHY
7.DAYDREAMING
8.LATELY
9.HYMN OF THE BIG WHEEL
 
 
Andrew "Mushroom" Vowles
Grant "Daddy G" Marshall
Robert "3D" del Naja
 
Shara Nelson (Vo/M1,6,7,8)
Horace Andy (Vo/M2,5,9)
Tony Bryan (Vo/M4)
Neneh Cherry (Arranger)
Tricky Kid(Rap)

 
リズムが鼓動を刻む。
ドライヴ感たっぷりのベース音がエンジンを起動する。
シンセが不穏な空気と冷たさを醸し出す。
エコーがかったヴォーカルがエキゾチシズムをかき立てる。
 
私の夜のドライヴの定番テーマソングスがこのマッシヴ・アタックの1stアルバム、ブルー・ラインズです。
 
 
しかし91年という年は本当に振り返ると凄い年でした。
ネヴァーマインドにユーズ・ユア・イリュージョン、ラヴレス、スクリーマデリカ、ブラッド・シュガー・セックス・マジック、グリーンマインド、パールジャムの1st、バンドワゴネスク、バッドモーターフィンガーにアクトンベイビー。そしてこのブルーラインズ。
 
 
イギリスでは黒人音楽と白人音楽が洗練された形でMixされることが様々なジャンルの音楽を生み出し、進化させてきましたが、特に90年の初めにイギリスの港町ブリストルから発信されたサウンドは世界を席巻しました。
 
ニューヨークのHIPHOP、昔のR&Bのレアものを発掘してはサンプリングネタにするというレア・グルーヴ手法、カリブ系移民の多いことから常にベースにあったレゲエ、テクノ・ダヴ、あるいはマーク・スチュワートのザ・ポップ・グループという先達、それらがイギリスらしい形で結実したのが、マッシヴ・アタックです。
 
レゲエからくるゆったりしたリズムのうえで、都会的なテクノ、イギリス的ニューウェーヴ感、パンク的な味付けのバランス感が混じるクラブ的加工サウンドとRap、唯一人間的でウェットなヴォーカルですらも得体の知れない神秘的な雰囲気に包まれた世界の向こう側から、そこしれない闇夜に黒くてエキゾチックな不思議な雰囲気を醸し出す。ドライヴ感とテクニカルなサウンドが、一般的なレゲエの明るい楽観的なイメージとは正反対です。
 
この冷たさ、と洗練、とどこか民族的なプリミティヴ(原始的)な部分が、闇夜よりも黒光りし、沈鬱な時代に沈み込むような気分の僕たちの心を、心地よく冷たく突き放す。
ダウナーで暗い時代にぴったり来るようで、闇夜の中で救いの肉声を聴かせてくれそうでいながら、すっと突き放し、未知の世界への入り口を感じさせて、容易に寄せ付けない。
 
   
不思議な、深さを感じさせる。
調号配合の妙だろう。
ゆったりした音の隙間に、果てしない闇の穴が開いている。
そして全てを運んでゆくドライヴィングでファンキーなベースライン。
 
しつこいくらいに黒いヴォーカルに匹敵し、それを打ち消すほどの冷徹な電子的HIPHOPいわゆるトリップホップ・サウンド。
 
グループの前進のワイルド・バンチ時代の盟友ネリー・フーパー、DJマイロ、ネリー・フーパー、トリッキーらと共にここから発信された音に、世界が影響をうけました。
ネリー・フーパーはジャジーBとのソウルⅡソウルで一躍名を挙げ、マドンナからジャネット・ジャクソンからビョークまで手がける時代の寵児になりました。
 
独立したトリッキーや後に続いたポーティスヘッドらの活躍もあり、彼らのサウンドはブリストル・サウンドと呼ばれるまでになります。
 
彼らのこの後4thまでアルバムを出し、いずれもすばらしいものですが、プリミティヴな黒さとエスニックとトリップホップ加減が最高な1stアルバム、踊れないダンスサウンドが第二次フラワームーヴメントに染まっていた英国に衝撃を与えた一枚、全く古びない名盤です。
 
 
"Safe From Harm" 

<script type="text/javascript"></script>

"Blue lines"(Remix)

<script type="text/javascript"></script>

"Unfinished Sympathy"

<script type="text/javascript"></script>