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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

Tool 「ラタララス」

2009-03-15 16:05:50 | '00ヘヴィロック
Lateralus Lateralus
価格:¥ 1,955(税込)
発売日:2001-04-18

Tool「Lateralus」2001年US
トゥール「ラタララス」
 
1.Grudge
2.Eon Blue Apocalypse
3.Patient
4.Mantra
5.Schism
6.Parabol
7.Parabola
8.Ticks & Leeches
9.Lateralis
10.Disposition
11.Reflection
12.Triad
13.Faaip De Oiad

Justin Chancellor(b)
Adam Jones(g)
Maynard James Keenan (vo)
Danny Carey(drs)
 
 
トゥールはいいですね。
 
ロス出身のへヴィロックなんだけど、普通のへヴィロックじゃない。
まず、現代のキング・クリムゾンって呼ばれるほどのバカテクがあること。
複雑怪奇で精巧な音が築き上げられる様は圧巻。
 
次にそのテクはあくまでも手段として、やはり暗黒な世界観、ブラックサバス的アリスインチェインズ的な呪術系ボーカル、しかしとてつもなく上手い叙情的ボーカルの生み出す独特の余韻。
 
この両者があいまって、Toolにしかない雰囲気、が生み出されます。
ちょっとクールで、ちょっと叙情的で、とてつもなく重く暗く、激しく、深く、闇のように静かで、無限にラウド。
 
陰影が生み出す深みが、クールな演奏と絶妙なバランスで、まさに「音をして語らしむ」といった感じです。そう、のたうつ音がグネグネと、まるで生き物のように、激しく語りかけてきます。楽器の演奏が主役、メイナードの乗り移ったようなボーカルが、それを煽り立てる、という感じです。ボーカルだけとっても超上手いんですが。
 
  
ブレイクした2nd「アニマ」よりも私はこの3rd「ラタララス」の方が好みです。
 
「アニマ」は叙情的な面が3rdよりも強くて、ちょっとDeftonesっぽい。
DeftonesのアルバムにもToolのメンバーは参加しているので似るのも不思議じゃないけど。
 
Toolには、あくまでもクールで、ハードで、インテレクチュアルで、ダークな、硬質なものをもとめたい。叙情性はほどほどにセーブしてもらいたい、なのでこの3rdがちょうどいいんです。
 
4th「10,000Days」もこの路線ですが、個人的には3rdに軍配を上げます。
 
これらのアルバムの発表周期はほとんど5年に一度。
超寡作ですね。
 
それなのに計2000万枚売ってると。
それだけ固定ファンをつかんでるって事ですね。
 
2ndは全米2位登場、3rdと4thは初登場1位です。
KornやRATMと並ぶかしのぐほど向こうではメジャーってことですか。
 
彼らの人気の要因はいくつもあると思いますが、ひとつは複雑な音世界の中にも、なにか立体的な構成空間が感じられ、マニアックなのにどこか聴き続けさせてしまうものがあります。ひとつにはGuitarのアダム氏が映画関係の製作にかかわっていたあたりの映像感覚が影響しているということがありそうです。
 
また演奏技術の高さ、がオリジナリティのある多彩なフレーズを生み出すことにつながり、次から次に繰り出される暗いフレーズの数々が、知性と深みと叙情性を感じさせます。
 それが、たぶんグランジ世代、へヴィロックを求める世代に指示され続ける理由じゃないでしょうか。NINとか今聴くとちょっと単純というか、人生のある特定の時期に限定して響く音というか、時代性を感じてしますところもありますが、Toolのちょっとわかりにくい複雑で難解な感じも、時代の波を乗り越える上で、功を奏しているという気がします。

言い方を変えると、大人も聞けるへヴィロック。その点、ファンのあり方が、キング・クリムゾンっぽい気もします。クリムゾンも1stの叙情性から徐々に離れていきましたし。
両者は一緒にツアーもしてますね。 
  
21世紀の名盤のひとつ、プログレとかDeftonesとかサウンドガーデンとかアリス・イン・チェインズとかへヴィロック全般好きな方にもおすすめです。
 
1stの1993年、すでに神がかったパフォーマンスが観客をのみこんでます。

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Schism

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メタリカ「デス・マグネティック」

2008-12-14 13:24:57 | '00ヘヴィロック
Death Magnetic Death Magnetic
価格:¥ 1,863(税込)
発売日:2008-09-12

Metallica「Death Magnetic」2008年US
メタリカ「デス・マグネティック」
 
1. That Was Just Your Life
2. The End Of The Line
3. Broken, Beat & Scarred
4. The Day That Never Comes
5. All Nightmare Long
6. Cyanide
7. The Unforgiven III
8. The Judas Kiss
9. Suicide & Redemption
10. My Apocalypse
  

 
James Hetfield (Vo/G)
Lars Ulrich (Dr)
Kirk Hammett (G)
Robert Trujillo (B)
 
 
メタリカの夏に出た新譜。
 
まず結論から言って、非常に嬉しい、喜ばしい方向にメタリカが向かっているな、といううれしさを感じます。
  
 
聴いている内に、にやっ、としてしまいます。
2つの相反する意味で。
 
 
濃密なエネルギー、音の勢い、押し迫ってくるような音圧、つんのめるようなドラミングが生み出す緊張感、やっぱり破格です。
 
スラッシュに返ってきた、上に挙げたようなかつてのメタリカに見られた方向性が戻ってきたことに、うれしさを感じます。それがまず一つ。
 
 
ブラックアルバム以降のメタリカには、それが失われていました。
音楽性のキャパの広さ、無類の歌心が、頂点を極めた彼らを迷走させました。
 
 
からいことを言うなら、本作への注文は、いくつかあります。
 
 
まずジェイムス・ヘットフィールドのヴォーカルが、ちょっと弱い。
もちろん凄いんですが、絶頂期と比べると、すっきりしちゃってる。
 
かつての神が降りたような、鬼のような、人間離れした咆哮を知っているだけに、ちっとさみしいかな。
 
 
あとカーク・ハメットのギター。
ギターソロが戻っていること自体は嬉しいんですが、酔いしれるようなほれぼれするような域には達していないです。 
 
 
全体のトーンとしては、もろ本作をプロデュースしたリック・ルービンのテイストになってます。もっといえば、かなり最近のスレイヤーっぽいです。具体的に言うと、ギターやドラムやボーカルの音が、同じ扱いで音像化されていて、おなじ厚さで、同時に聞こえてきます。
 
このせいで、かなりライブ感のある生々しい音になってます。
その反面、あえてラフな、粗いテイスト、が感じられます。
 
さらに3rdの頃にみられた80年代的メタルの名残り的ハーモニーがなかったり、ブラックアルバム以前の曲にみられた緻密な計算された構成の作り込み方を廃した、ラフなテイストが、ブラックアルバム以降のグランジ的路線を踏襲しているところでしょうか。そのあたりがいわゆる全盛期のメタリカの音とは全く違うところです。
 
 
かつてのメタリカは、完璧な曲構成、その中でのドラムやベース、ボーカルのバランス、構成の妙ゆえにまるで音が塊のように一体になって転がり爆進してゆくような感覚があり、その完璧さ故に対照的に叙情的なギターソロが映えたわけです。
 
  
彼ら自身、ブラックアルバム以降はそのような音で頂点を極めた後で、それ以上できない、と薄々悟った中で、あえて違う路線に踏み出してゆかざるを得なかった、とも言えます。実際、ラーズもそのような発言をしていますし。
 
  
本作では、音自体に込めた”圧力”自体は、復活されたのだと思います。
曲のフレーズや、リフもスラッシーなものに回帰しました。
まあ初期のアルバムで聴いたことがあるようなフレーズやメロディの端々を、随所に感じることも事実です。聴いていて、にやっとしてしまうもうひとつの理由は、その辺です。
 
 
しかし、ブラックアルバム以降の90年代以降の音の作りは、捨てていないわけです。
  
 
この路線を全く否定するわけではありません。
彼らにしか出せない圧力のスラッシュメタル・サウンドの方向性を取り戻したことは事実です。
 
しかし初期に見られた、美学とその完璧さの域にはまだまだ達していません。
 
 
おそらく彼らは3rdアルバムのコピーを再び作る、ということは今後もしないのではないでしょうか。
 
 
ベースとして加入したトゥルージロのいたスイサイダル・テンデンシーズはとても好きなハードコアバンドでしたが、いわゆるメタルとは異なる、どっちかというとグランジ世代のHIPHOPテイストも含んだ現代的なバンドでした。
 
彼を入れている時点で、ラーズには80年代に完全に回帰する期はないのかもしれません。
 
 
しかし、現代的な、ダークでライブ感のある音で、かつての彼らの良さである構成美と叙情性を融合させることが出来れば。
 
 
その為には、4人全員が、過去の自身を超えて、我々を驚かせてくれるくらいの、あらたな領域に到達してくれることが必要になるのでしょう。
 
  
彼らの実績と歴史から言えば、はっきり言ってもう隠居して余生を送ってもらってもおつりが来るくらい十分なんでしょうが、もしも、我々が期待する、そんな領域に、今後到達することがあれば、その時は、、、彼らが、未だかつて無いほど偉大な存在になるときでしょうか。いまでも十分ですけど。

 
でも、いってみれば、ブラックアルバムは、そんなアルバムでした。
3rdや”One”で頂点を極めたかに思えたにもかかわらず、想像を遙かに超えた領域に到達し、あらたな世界をひらき、そして80年代的なメタルに、完全に引導を渡すことになりました。
 
 
まさに神の領域に達し、ロック界の景色を、時代を一変させてしまったアルバムでした。90年のあのアルバム以降、いまだにロック界は、それ以上の新しい価値観を手にしたとは言えないのではないでしょうか。 
 
いってみれば、世界はまだメタリカのブラックアルバムの影響下から脱しているとは言い切れないのかもしれません。
 
 
彼らが新しい領域に挑む時には、ロック界を変える力をもってきただけに、彼らが再び息を吹き返したことは、非常に注目に値することでしょう。 
 
  
なんてことも想像し、期待してしまうようなある意味での原点回帰的な作品である、ということは言えるんじゃないでしょうか。


デフトーンズ / サタデイ・ナイト・リスト

2007-10-06 10:24:11 | '00ヘヴィロック

サタデイ・ナイト・リスト サタデイ・ナイト・リスト
価格:¥ 2,580(税込)
発売日:2006-11-08
Deftones / デフトーンズ
「SATURDAY NIGHT WRIST / サタデイ・ナイト・リスト」2006年11月US

01. ホール・イン・ジ・アース
02. ラプチュア
03. ビウェア
04. チェリー・ウェイヴス
05. メイン
06. u,u,d,d,l,r,l,r,a,b,select,start
07. XERCES
08. ラッツ!ラッツ!ラッツ!
09. ピンク・セルフォン
10. コンバット
11. KIMDRACULA
12. RIVIERE

   

チノ・モレノ(ヴォーカル)
ステファン・カーペンター(ギター)
チ・チェン(ベース)
エイブ・カニンガム(ドラムス)
フランク・デルガド(ターンテイブル)

  

久々に最近のヘヴィロックバンドを紹介。
デフトーンズはカリフォルニア、サクラメント出身のヘヴィ・ロック・バンド。
本作は5枚目で、すでに中堅からベテラン?の域だ。

  

グランジ全盛の90年代以降、HM/HR界も大きく変わった。パンテラ、メタリカのブラックアルバム、グランジ勢とよばれたニルヴァーナやアリスインチェインズやサウンドガーデンらのハードロック的側面がHR/HMに与えた影響力は大きく、音はよりダークに重くブラックサバスの影響を進化させたものが大勢を占めるようになりヘヴィロックという大きなくくりが大勢を占めるようになり、単純なヘヴィメタルという言葉自体を一気に死滅させてしまった。なにより時代の空気が、より重く、より激しくダークなものをリアルだと感じ、それを求めていたのだと言えるだろう。

  

また一方で、80年代からのレッチリやフィッシュボーンらのミクスチャーロックの流れがレイジアゲインストザマシーンの登場により、シリアスなハードロックへ高次元で持ち込まれ革命が起こった。この両方の要素を取り入れたKorn、さらにヒップホップとのミクスチャーの要素を強めたSlipnotやLINKIN PARK、LimpBizkitなどの登場と商業的なブレイク、それも主にHIPHOPが日常に浸透している白人のティーンズ・低年齢層をねらったとおぼしき音楽性とファッションで、中身はといえばスラッシュよりのヘヴィロック・メタルとHIPHOPを混合させ、速くてダークでなかなか過激でかつターンテーブルが演奏陣に取り込まれていたり、ラップのMCがはいっていたりという形態をとったものなどがチャートを席巻するようになった。もともと速射砲のように怒号のようなフレーズを断続的にはき出すようなスラッシュ系のザクザクしたリズム形態はそのままHIPHOPのラッピングと融合しやすいものだったのかもしれないが。

  

こうしてメタル・スラッシュ勢もヘヴィロック系とHIPHOPメタル的なものというおおきな潮流の中でシーンはニルヴァーナを進化させたようなAt The Drive Inあたりを契機としたFinchやUsedらスクリーモ勢などを加え、さらに多種多様に細分化され、様変わりしてきた。90年代半ば以降のHR/HM界の変容のスピードは、それ以前とは比べものにならない。まるで低年齢化がすすむ日本の女子プロゴルフ界のようだ。それ以前のベテランの姿が急に見えなくなった。

  

 新しい勢力はそのHIPHOPの配分具合と、商業的な面の比重具合が賛否両論のバンドが多く、硬派なファンの耳に耐えうるバンドは限られ、昔からのHR/HMfanとしては「嘆かわしい」「聞く気がしない」「KIDS化してしまった」という声もよく聞くようになった気がする。
   

しかし、レイジやパンテラやAICなど傑出したバンドが出てくれば、その後にタケノコのように玉石混淆のフォロワーが続くことは世の習いというかレコード会社の習いで、その中からまた玉が出てくることによってさらに一歩ずつシーンは動いてゆくものなのだろう。できればその時には、きちんと過去の財産を引き継ぎ、自然にそれらを消化したしっかりしたベースの上に立って、その上で新しいものをミックスさせるなり、新しい個性を出していってもらう、という地に足をつけたバンドに時代を動かしてもらいたいものだし、我々もそんなバンドを聞き分ける耳をもちたいものである。

  

随分前置きが長くなってしまったが、まさしくこのデフトーンズはそのような実力とオリジナリティを備えたバンドのひとつ、といってもいいのではないかと思っている。

  

登場したての頃は、HIPHOPメタル系か、と見なされる向きもあり、敬遠される人からは敬遠されていたかもしれない。が、そういう出自のきっかけが良くも悪くもデビューからずっとアメリカでは一定以上のセールスをあげ続け、毎回ビルボードチャートにはトップ10以内に初登場を果たしてきているのも事実である。

  

彼らのターニングポイントとなったのは傑作3rdアルバム「White Pony」だ。
ボーカルのチノ・モレノの声質は、ザクザクしたラップメタルのフレーズも歌いこなすものではあるが、それ以上にミドルテンポの曲における色気のある声質、天に昇ってゆくような伸びのある声質が誰にも真似できない得難い個性であり、この3rdアルバムでは、バンドのザクザクした演奏隊と耽美的なボーカルが半々くらいに中和されていて1曲の中でも両方の面が顔をだす、という聞きごたえのある曲が揃った傑作となった。

   

特に「Digital Bath」「Passenger」といった超のつく名曲は、歴史的普遍的な名曲の水準に達していると行っても良いだろう。このよな彼らの取り組みは先ほど挙げたスクリーモ系とも饗応し影響を与える存在ともなった。さらにかれらのそのような耽美的なバックグラウンドが暴露されたのが「B-side&Rarities」で同郷の先輩HELMETに納得しつつ、SADEの「No Ordinary Love」やレイナードスキナードの名曲「Simple man」などには驚きつつも出来映えに納得、という感じがした。

   

そして今回の5thアルバムだが、好き嫌いもあろうが私的にはまずジャケットが良い。中身も、ジャケット同様さらに耽美的な面が拡大され、サイケな浮遊感すらただよっている。1曲1曲が丁寧に作り込まれ、水準が上がっている、とも言える。さらにはただ耽美的になったのではなく、深遠で深く暗い世界を、ハード&ヘヴィとは違う方法論で表現しようとしたときに、プログレ的な、静けさと間合いの方向にそれを求めて行っている、という言い方も出来るかもしれない。逆に速く叫ぶような曲は1,2曲に抑えられている。よりチノ・モレノの個性をバンドとして活かす方向になっているし、もはやここまでくると、ジャンルの域を超えてしまっている。むしろ80年代ニューウェーブ系の影響、たとえばDepech ModeやU2、本人達も公言しているCure、最近で言えばCOLD PLAYからMUSEあたりに通じるものがある。

  

メタル界からのレディオヘッドへの回答、といわれるのもうなずける。しかしインテレクチュアルになることなく、あくまで耽美的で官能的でありながらチープにならないのは、かれらの根っこに過去から引き継いだ遺産が自然な歌心として発揮されているからではないだろうか。プロデューサーにフロイドの『ザ・ウォール』や『鬱』などを手掛けた名手、ボブ・エズリンが迎えられていることもあり、盟友TOOLが現代のキングクリムゾンというならDeftonesは現在のPinkFloid(後期の)と言ったら言い過ぎだろうか。

  

この5thアルバムで唯一気になるとすればラウドな荒くれた曲が極端に減っていることだ。3rdはその加減がちょうど良かった気がするし、ラウドな曲の出来も、耽美的な曲の中での活かされ方もよかったが、本作の2曲目や8曲目のパンク的な曲におけるチノ・モレノの出来は良いとは言い難い。4thアルバムではそのようなトライがなされた、と言えるかもしれないが、より進化したこの5thアルバムの後で、よりスケールアップしたWhite Ponyを聞いてみたい気がする。

  

ここで思い出してしまうのはメタリカのことだ。かつてスラッシュ四天王といわれた時代から、ブラックアルバム以後ジャンルを超えた実力と歌心ゆえにドメインを見失ってしまった御大のことだ。Deftonesにはあくまでヘヴィでラウドな持ち味と本作での耽美的な路線を融合させた孤高の領域まで達してもらいたい、と期待してしまうのだ。