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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

Metallica

2008-09-28 22:27:12 | 80's HR/HM

メタル・マスター メタル・マスター
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2008-09-12
Metallica「Master Of Puppets」1986年US
メタリカ「メタル・マスター」
 
1.Battery
2.Master Of Puppets
3.The Thing That Should Not Be
4.Welcome Home (Sanitarium)
5.Disposable Heroes
6.Leper Messiah
7.Orion
8.Damage, Inc.
 
Cliff Burton(b)
Kirk Hammett(G)
Lars Ulrich(D)
James Hetfield(Vo)

 
メタリカの最新作がでたので、おさらいで彼らの3rdを。
 
なかなか彼らのことを客観的に伝えることは難しい。
リアルタイムで彼らと共に精神形成をしてきた者にとって、彼らの存在は、単なる音楽ではない。
 
スラッシュメタル、いや”メタリカ”でいる、ということ自体がひとつのアティチュード、生き方、だ。
 
  
全身全霊をかけて、怒り、叫び、戦い、疾走する。
 
腹の据わった、鈍色の、音の塊。
  
うまくいかない事、矛盾、自分へのいらだち、を抱え込んで、強大になったどす黒い負のエネルギーを、どれだけの夜に、彼らと共に夜の闇に葬ってきたか。
 
何もかも叫び吹き飛ばしてしまいたいどれだけの夜に、彼らの音と共にいたことだろう。想いをはき出しただろう。
 
絶望と怒りの暗黒の中で、いつも両足を踏みしめ、向かい風にたちむかっているかのようなジェイムス・ハットフィールドと、渾身の力でドラムをたたきのめすラーズ・ウルリッヒ。
怒りと叫びとパワーに充ち満ちている。
そして叫ぶだけ叫んだ後に、じわじわと問いかけてくる。お前は本気で怒っているのか、戦っているのか。
 
粗野で野蛮で単純で、と切り捨てられるほど簡単な話だろうか。
 
男としての、いや人間としての、全てをそぎ落とした後の、一つの究極の姿を、そこに見る気がしている。
すくなくともそう思っている私のような人間が数知れずいることが、彼らをメタルの皇帝、にふさわしい頂点の座に押し上げている。
そして、その熱すぎる想い、メンバーとファンとを繋ぐ想いの力、が本作の音を、怪物のような塊にしている正体、である気がする。
 
”メタリカ”が頂点を極めた理由は、かれらが、そんな完璧な理想の形を、”音”に変えてしまえる実力をもっている、ということに他ならない。 
 
これ以上ないほどの全力の咆哮Vocalでいながら歌っているジェームス・ハットフィールド、ラーズのタメをいかした歌心のあるDram、クリフ・バートンのブンブン唸るフリーキーなBass、カーク・ハメットの流麗で叙情を煽るギターソロ。それぞれが、ロック界最高級の圧倒的な実力を持っているが故に、完璧な精神性の音としての表現を達しきっている、のである。
 
そこまでの表現力を手にしたRockがどれほどあっただろうか。
 
 
そして、4人のとても堅い結束、それがそのまま音になったのが、この時期のこの傑作である。本3rdまでを総括する、彼らの個性を確立させた傑作であり、ヘヴィ・メタル史、いやロック史に残る名盤であり、名ベーシストのクリフ・バートンが在籍した最後のアルバムなのだ。
   
 
少し時代背景も振り返っておこう。
 
80年代も後半に入り始めると、LAメタルに代表される80'sメタルも、ハードでアグレッシヴに傾斜を始めてきてはいた。モトリークルーもDr.feelgoodを出し、メタル世代のアイドルともいうべきSKID ROWがハードな音と共に登場した。
派手で享楽的でポップなメタルに対する揺り戻しとしての原点回帰的なサウンド、ボン・ジョヴィやホワイトスネイクが浮上したり、カウンターカルチャーとしてのRAP/HIPHOPやそれらとのミクスチャーもの、レッチリやフィッシュボーンなどが現れ、エアロとRUN DMCのWalk this wayがヒットしたりした。
 
そんな多様化の受け皿として、まだまだ”アンダーグラウンドの帝王”という呼ばれ方が主流だったスラッシュメタル界の筆頭として、俄然浮上してきたのがメタリカだった。
  
スラッシュメタル、というとマニア的とみられる向きもあったが、メタリカのレベルはそんな見方を遙かに超えていたのだ。
 
本作には彼らの代表曲が詰まっている。
 
いきなり代表曲であり、彼らの代名詞とも言うべき”バッテリー”。
合唱必死。ファンとバンドの結束が示される。
これもメタルを代表する名曲の2。極端な転調がドラマティックで荘厳なサウンドを形成している。
すでに5thブラックアルバムの名曲群の予兆を感じさせる3。
叙情と疾走の4、5。ヘヴィなリフに打ちのめされる6、8。ベースが強烈なインスト7。
 
一曲が5分から8分。スラッシュ4天王と言われたスレイヤー、メガデス、アンスラックスと比べても長い曲が多い。この4者の中では、メタリカはヘヴィネスを特徴としたと言えるかもしれない。そして有り余る才能と、音楽的好奇心、探求心が彼らを速く短いだけのスラッシュメタルに、彼らを押しとどめなかった。次の4th、ブラックアルバムの5thと彼らはヘヴィネスを突き詰めてゆく。
 
ますます個々の力量は進化してゆくことになる。
しかしこの3rdには、音が塊となって坂を転がり落ちてゆくような、鉛の塊のような勢いがある。プロデューサーがレインボーのDifficult to cureのフレミング・ラスムッセンの功績か、ミックスのマイケル・ワグナーか。5thからのボブ・ロックとも最新作のリック・ルービンとも違うメタリカが我々の前に始めて圧倒的な姿をみせた、その時の"メタリカ”がここにいる。
 
2006年のサマーソニックで、20周年を記念して、故クリフ・バートンの遺影をバックに、本作を全曲演奏し、改めて本作の大きさを感じさせた。
 
鉄壁の鉄則を持った4人をクリフ・バートンのツアーバス事故死が分かつ前の、グループとファンとのBattery(絆)を刻み込んだ、ヘヴィメタル、スラッシュメタルを代表する名盤、圧倒的です。
 

"Master of Puppets" 

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ブルー・マーダー「ブルー・マーダー」 

2008-03-02 23:34:39 | 80's HR/HM

Blue Murder Blue Murder
価格:¥ 1,130(税込)
発売日:1990-10-25
ブルー・マーダー「ブルー・マーダー」 
Blue Murder 「Blue Murder」1989年US
 
1. Riot
2. Sex Child
3. Valley of the Kings
4. Jelly Roll
5. Blue Murder
6. Out of Love
7. Billy
8. Ptolemy
9. Black-Hearted Woman
 
 
ジョン・サイクス(Vo,G)、カーマイン・アピス(dr)、トニー・フランクリン(b)
  
最後の正統派ブリティッシュハードロックの継承者、ジョン・サイクス様。
アイリッシュ・ハードロックの雄シン・リジィの薫陶を受け、その人間くさい叙情派ハードロックの世界の普及に、再評価に一役買いつつ、しっかりその後継者としての存在感を発揮されてます。
  
ゲイリー・ムーアの後継者として、というよりフィル・ライノットの気まぐれでシン・リジィに加入した後は、言わずとしれた白蛇ホワイト・スネイクのギタリストに迎えられ、LAメタルが斜陽期にさしかかった1987年、ハードロックの原点回帰のようなLAメタルとは一線を画す本格派ハードロックで世界を席巻し800万枚以上売りまくったのが、ホワイトスネイクの「(邦題:サーペンス・アルバス)White Snake」だった。このアルバムで白蛇に大ブレイクの機会を与え、アルバムの出来に多大なる貢献をしたのがジョン・サイクスだということは今となっては明らかといっていい。
 
シン・リジィ譲りの泣きのメロディとHR期のゲイリー・ムーアとジミヘンからの影響もうかがえるワイルドで腰の据わった縦横無尽の魂の節回し、超キャッチーなフックのあるメロディを書けるサイクスの才能が、パンチのあるカヴァーデイルのこれ以上ないほどの正統派ボーカルと交わることで生まれた大傑作だった。
 
プライドの高い2人が当然のように決裂した後、相当な決意と自負を共に結成したのがブルー・マーダーだ。ベースにザ・ファームにいたトニー・フランクリン、ドラムには初めコージー・パウエルが入ったが、なかなか進まないアルバム制作とボーカル選びに脱退してしまい、後釜にコージーとは因縁のある、ハードロック界のパイオニア・ドラマー、カーマイン・アピスが入った。ハードロックが難しい時期に入った来た時代に、シン・リジィへの愛情とプライド、白蛇への恩讐、という熱いモチベーションがサイクスを突き動かして作らせた、といった感じのブルー・マーダーだった。
 
ドラムのカーマイン・アピスはヴァニラ・ファッジに始まり、カクタス、ベック・ボガート&アピス、ロッド・スチュワートらとの歴史的な仕事に関わってきたハードロックドラマーのパイオニアであり、ツェッペリンのジョン・ボーナムやコージー・パウエルにも影響を与えたといわれ、このアルバム時点では42歳、現在も還暦を過ぎて現役の生き仙人だ。
 
しかしこのアルバムではベースのトニー・フランクリンが大きな働きを見せてくれている。トニーはフレットレスベース(フレットのないベース)使いとして有名だが、このアルバム全体を幻想的な雰囲気で包み込むのに大きな貢献を果たしている。ディストーションなどSEを駆使してサイクスのメロディアスな楽曲群を、よき時代のブリティッシュロックの模糊とした印象に作り上げている。
  
 
自分的には1曲目のRiotが一番好きだ。幻想的な雰囲気で始まり、エッジの効いたギターと腹からしっかり出された良く通るサイクスのボーカルが一気に曲を加速させながら、ギターと絡み合う。そして徐々に曲は幻想的な雰囲気の中にわけいってゆく。霧の立ちこめたジャングルの中に迷い込んでゆくようなメロディの中で、印象的なドラムが緊張感をたたき出し、蛇のようなベースが歩を共にする。まさに本作を象徴するような名曲だ。
 
続く「Sex child」もサイクスの血気が見え隠れする未完成な感じが逆に味になっていて悪くないし、名バラード「Out of love」、冒頭のドラムが印象的な「Blue Murder」、「Billy」などの粒ぞろいの曲が揃っている。
 
本作に続く2ndも大好きなアルバムだが、その後トニーもアピスも抜けて、アルバムは音像のくっきりしたものになり、ポップよりになる。
 
そうしてみると、この1stアルバムは、自分を首にしたカヴァーデイルへの恩讐とサーペンス・アルバスを作ったのは俺だ、ということを音そのもので証明してやる、ということだけで作ったものではないのだ、と思う。
 
ここで聴かれるブリティッシュな音へのこだわりは、正統な継承者としての高すぎるプライドが、白蛇アルバムを遙かに超えてゆこうとする強烈な意志だろうし、メンバー選びにもそれは見て取れるだろう。そして自分を見いだしてくれたフィル・ライノットの世界への愛情と、それを知るものとしての誇り、サイクスのメロディーメイカーとしての天賦の才能をもってしても、そのシン・リジィの世界には頭を垂れ、愛情と憧憬を持って、あのDancing in the darkの世界をどうにか自分の中に、という亡き親に対する想いのような節回し。2ndの後に出されたフィル・ライノットに捧げたLiveアルバムも泣きまくっていて最高だが、そこでのハイライトの一つがこの1stの冒頭をかざる「Riot」であることを考えても、自分が何者であり、どこへ行きたいのか、目指す高みとおのれをはっきりと自覚した男の決意のアルバム、それがこの1stの緊張感を生み出しているのだと思う。名手2人と白蛇脱退直後、という要素があってこそ生まれた名盤だった、ということは否定はできないだろうし、こういうアルバムが出たのも、「サーペンスアルバス」の直後、がギリギリ最後の時代だった、と言えなくはないかもしれない。
 
しかし、このアルバムからはや20年近く、再びこの3人がBlue Murder名義のアルバムを出してくれたら、と思わずにはいられません。他に誰がブリティッシュHR/HMの普遍性を謳って回れる生き証人がいるでしょう。サイクスは今49歳。まだまだ良いアルバムを出してもらいたいところです。

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