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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

フォリナー「フォリナー」 1977年US

2010-11-03 18:27:52 | 70's ハードロック
Foreigner

Foreigner
価格:¥ 704(税込)
発売日:2002-04-01

Foreigner「Foreigner」1977年US
フォリナー「フォリナー」
 
[A side]
1. "Feels Like the First Time" (Jones) - 3:49
2. "Cold as Ice" (Jones, Gramm) - 3:19
3. "Starrider" (Greenwood, Jones) - 4:01
4. "Headknocker" (Gramm, Jones) - 2:58
5. "The Damage Is Done" (Jones, Gramm) - 4:15
 
[B side]
6. "Long, Long Way from Home" (Jones, Gramm, McDonald) - 2:53
7. "Woman Oh Woman" (Jones) - 3:49
8. "At War with the World" (Jones) - 4:18
9. "Fool for You Anyway" (Jones) - 4:15
10. "I Need You" (Gramm, Jones) - 5:09
 
   
ミック・ジョーンズ/ Guitar, Piano, Keyboard & Backing Vocal(英国出身)
エド・ガリアルディ/ Bass & Backing Vocal(米国出身)
イアン・マクドナルド/ Guitar, Keyboard, Saxophone, Flute & Backing Vocal(英国出身)
アル・グリーンウッド/ Keyboard(米国出身)
ルー・グラム/ Vocal & Percussion(米国出身)
デニス・エリオット/ Drums (英国出身)
   
 
久々のレビューは今の季節にしっくりくるフォリナーで。  
 
フォリナーといえばJuke Box Heroのタイトルそのままにヒットの多いバンドだが、私的にはこの1stアルバムが一番好みだ。
曲でいえばやっぱり4収録のWaiting For A Girl Like Youがいちばんですけどね。
 
フォリナーといえば産業ロックと言われた80年代の象徴的な一連のヒットメーカーバンドの一つ、という感じでしょうが、この1stではまだ70年代の雰囲気を多分に残した憂いを含んだとても素敵なアルバムになっています。
 
産業ロックといえば、悪い意味でいうと、ロックの本質的な気骨やポリシーをなくして、売れ線に走った中身のないロックに興味のない層にも売れればいい耳触りだけがいい方程式にのっとった作り物の音(いいすぎ?)、ということでしょうが、すくなくとも彼らのこの1stアルバムからは、そのようなものは感じません。
 
たしかにやがて4枚目5枚目になった頃には売れた曲をなぞるような作風についてバンドが分裂し、当のルー・グラム自身が売れ線バラードを嫌って脱退にまで至るわけですが。
 
むしろ、それだけ普遍的な魅力を持った曲がかけて、普遍的に訴える力量をもったバランスのとれたバンドだった、ということです。
 
 
彼らは英国出身の3人と米国人3人を入れたバンドで、中心は歯切れの良いギターのミック・ジョーンズ。
のちのヴァン・ヘイレンの5150やビリー・ジョエルのストーム・フロント、エリック・クラプトンなどの仕事をみても、このフォリナーで果たした音楽のセンスはこの人によるところが多大です。
  
イアン・マクドナルドはキング・クリムゾンのオリジナルメンバーにして、フォリナーが当初からスーパーバンドと呼ばれた所以。
本作では3.Starriderやシングルカットされた6.Long, Long way from home などでいい味をだしています。
 
しかし何と言ってもこのバンドはルー・グラムでしょう。
この人のヴォーカルなしにこのバンドの良さは語れない。
 
おなじ産業ロック、あるいはアメリカン・プログレ・ハードにくくられたジャーニーやボストンなんかと比べても随分と声質が違います。
プログレッシヴロックやハードロックの発展形として、また技術の向上などもあって、スケールの大きな音のロックへと発展していたこの頃のロックに対抗するべくヴォーカルも甲高く伸びのある声のヴォーカルが多い中で、どちらかというとブルージーな憂いを含んだルー・グラムの声質は、どこかブリティッシュロックの香りを残していた、タイプとしてはポール・ロジャース的といえなくもない。それでいてアメリカでも受けるワイルドさもあり。
 
最高のボーカリストの一人ですね。
 
私はWaiting For A Girl Like Youに象徴されるような女々しく、抒情的で、引きずる男の嘆き歌、みたいなところがワイルドさの裏にあるところが琴線に触れまくりで、とてもこのバンドが好きですが、この1stあるいは2ndにはアルバムを通して、そのような雰囲気が漂いまくっています。
 
本作は当時は300万枚、現在まで500万枚以上を売り上げました。
のちのアルバムでは売れたことによる余裕が収録曲のからも感じられるようになりますが、この1stは全編気がみなぎっていて、このアルバムが勝負だったし、それに彼らは成功し、その後の4thの1500万枚などの栄光へ続いたわけで、実質的にはこれが出世作、と言えるでしょう。
 
また彼らはヒット曲の多いバンドですからベスト盤に近いライブアルバムも超お勧めです。
特に「The Best of Foreigner Live」1982年もお勧めですし、私の愛聴盤です。
 
飽きることなく長く長く付き合える名盤です。

"Waiting For A Girl Like You"

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"Fleels like a first time" 

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スコーピオンズ 「ヴァージンキラー」

2010-01-03 01:29:39 | 70's ハードロック
狂熱の蠍団~ヴァージン・キラー 狂熱の蠍団~ヴァージン・キラー
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2008-07-23

Scorpions「Virgin Killer 1976年独
 
スコーピオンズ「狂熱の蠍団~ヴァージン・キラー」
 
[A]
1. Pictured Life 03:21
2. Catch Your Train 03:32
3. In Your Park 03:39
4. Backstage Queen 03:10
5. Virgin Killer 03:41
[B]
6. Hell Cat 02:54
7. Crying Days 04:36
8. Polar Nights 05:04
9. Yellow Raven 04:58
 
クラウス・マイネ(vo.)
ルドルフ・シェンカー(vo.g.)
ウルリッヒ・ロート(g.)
フランシス・ブッホルツ(b.)
ルディ・レナーズ(ds.)
 

ドイツから現れたスコーピオンズが70年代に残した3枚の名作、In Trance、Virgin Killer、Taken by force。
 
中でもこの4枚目「ヴァージン・キラー」は、全編にみなぎるテンション、曲のクオリティ、オリジナリティ、哀愁を帯びたメロディ、ギタープレイ、いずれを取っても充実、傑作中の傑作だ。
 
  
70年代のスコーピオンズは最高だった。
 
スカイギターの考案者であり、ジミ・ヘンドリックスから多大な影響を受けたジョン・ウリ・ロートの在籍期間とそれは重なる。
 
哀愁を帯びたメロディー、それでいてハードでアグレッシブなハード・ロックはすばらしい。
 
ルドルフ・シェンカーは、かのマイケル・神・シェンカーの実兄であり、マイケルのUFOとMSGとこのスコーピオンズで、まったくのロック不毛国だったドイツのロックシーンを世界レベルに押し上げたと言って過言ではないだろう。凄い兄弟だ。
 
とりわけ日本での人気は、3大HRバンド(ツェッペリン、パープル、サバス)に比肩するほどだろう。それだけドイツ人と日本人の感性は近いんだな、と認識させてくれたはしりではないか。
 
 
時に、先のHR御三家によって隆盛を迎えたブリティッシュ・ハードロックは、ピンクフロイド、キングクリムゾン、EL&P、イエスらプログレ四天王なども絡めつつ全盛期を迎えたが、70年代も半ばになると、ほとんどのアプローチが出尽くした感があり、シーンはベテラン勢がしめるようになった。
 
かわりに登場してきたのが、アメリカからの英国ハードロックへの回答、エアロスミスとキッスであり、英国においては最後のアイドル、クイーンらだった。
 
そして同じ頃に、良きブリティッシュ・ハードロックへの想いを胸にスコーピオンズが登場したという訳だ。
 
スコーピオンズはキッスの欧州ツアーの前座を努めたりして徐々に知名度を上げてゆく。
70年代に上記の名作を残し、徐々に商業的な方向にシフトし、反発したウリ・ロートを失う代わりに、82年の「ブラック・アウト」で世界的なブレイクを果たすに到る。
 
しかし真にオリジナリティにあふれ、想いにあふれた音を鳴らしていたのは、まぎれもなく70年代の彼らであろう。
 
このアルバムにかぎらず、「ダーク・レディ」「ロボット・マン」「スティーム・ロック・フィーバー」など印象に残る名曲が多く、シングルヒットを生み出せるバンドでもあった。 
 
メロディー・メーカーであり、正確無比かつジミヘンばりに魂と勢いのある名手ウリ・ロート、本作の特にA面にみなぎる暗さは神の兄ルドルフ・シェンカーに拠るところも大きく、そこへクラウス・マイネが粘っこく伸びやかに絡み合う名曲群とパフォーマンス。
 
ウリ・ロートのプレイは後のイングウェイ・マルムスティーンらに多大な影響を与えました。
 
やがてロックはパンクの洗礼を受けることになり、先鋭的なロックは新たなへヴィメタルという勢力に取って代わられ、メインストリームのロックは80年代と共に巨大化、商業化、産業化してゆくことになります。 
 
その意味では、良きブリティッシュ・ハードロックの末路を飾ったのが、ドイツ勢でありアメリカ勢であったことは興味深い。そしてそれらを熱狂的に支持したのが日本のファンであったことも。
 
ハードロック産業化前夜、70年代の良きハードロックのオリジナリティ、奔放なロック本来の熱のようなものが込められた、問答無用の傑作です。


Black Sabbath ブラックサバス

2009-11-30 19:20:21 | 70's ハードロック
Black Sabbath, Vol. 4 Black Sabbath, Vol. 4
価格:¥ 1,123(税込)
発売日:2007-01-22

Black Sabbath 「Black Sabbath Vol.4」1972年UK
ブラックサバス「ブラックサバス4」
 
[A]
1.Wheels of Confusion/The Straightener
2.Tomorrow's Dream
3.Changes
4.FX
5.Supernaut
[B]
6.Snowblind
7.Cornucopia
8.Laguna Sunrise
9.St. Vitus Dance
10.Under the Sun/Every Day Comes and Goes
 
Ozzy Osbourne ? vocals
Tony Iommi ? guitars, piano, mellotron
Geezer Butler ? bass guitar
Bill Ward ? drums, percussion
Colin Caldwell, Vic Smith ? engineering
Patrick Meehan ? production
 
あまりサバスの音楽に縁のなかった方のためにおさらいをしておくと、1970年に生まれたブラックサバスは、レッドツェッペリン、ディープパープルと並んで英国ハードロックの3大バンド、ハードロックの始祖と呼ばれています。
 
特にブラックサバスの場合は、”へヴィーメタル”の元祖、という位置づけでも語られます。 
 
英国バーミンガムの鉄鋼工場で働いていたトニー・アイオミが、鉄鋼をプレスする機械の耳が割れるほどの音の繰り返しから、巨大な音でリフを繰り返す破壊的なへヴィーメタルのサウンドイメージを連想していったともいいます。
 
また工場のプレス機で失った右手の薬指と中指の先をプラスチックのキャップをはめて補ったことが逆に個性的な音を生み出す原点となっていきました。
 
 
メタルの始祖サバスの音を語るとき、先のあげた3大バンドの特色を見ても、ゼップのブルース系ハードロック、パープルのクラシカルな様式美ハードロック、という側面が担わなかったハードロック・へヴィメタルの暗く重くダークな部分をサバスがほとんど受け持った、という言い方もできるでしょう。
 
つまり今日のへヴィーロックからメタル系からスラッシュ系、グランジロックやダークな色を持ったハードロック系のロックのはほとんど全て、ブラックサバスの生み出した音の傘下にあるといっていい。
 
  
そしてゼップやパープルがそうであるように、サバスの音楽の凄さは、今でも、いつ聴いても、新鮮さを失わない普遍性をもっていることです。
 
当時の世の中はヒッピー、フラワームーブメントの最中でした。
英国の貧乏な労働者階級だった彼らは、そんな風潮に思いっきり違和感をぶっつけた。
世の中暗黒だ、そんなにいいことなんてありゃしない、浮かれた幻想なんて糞食らえ。
みんな地獄に落ちろ、悪魔がお待ちかねだ。 
 
誰しもが抱える負のパワー全開のメタルサウンドが圧倒的な支持を得て、時代を超えて人気を失わず、フォロワーを生み続けます。
 
それは暗い顔をしたトニー・アイオミという人が、さえない機械工で指まで失ったころから心に溜めてきた暗く鬱積した気持ち、それを打ち破って世界を驚かせたいという気持ち、が時代を超えて若者の気持ちの代弁として普遍性をもっていたから、でしょう。
 
内面的にかかえた負の気持ちを、正反対のとてつもなく大きな音で表舞台でぶちまける。
溜め込むしかなかった我慢やぶつけどころのない鬱憤、やりばのない怒り、それらはどうしようもないほどのパワーとして溜め込まれ、行き場を探して、へヴィーメタルというひとつの出口をみつける。共感する。
  
既成の音楽にはなかった重く暗く破壊的なサウンドとシンプルで印象的なリフを発明し、なによりオジー・オズボーンというパートナーを得て圧倒的な支持を得てしまうという痛快さ、それがブラックサバス栄光の70年代、オジーのいたサバス時代なのです。
 
 
あまりにも有名な1st、2ndアルバムはブラックサバスの代名詞ともいえる有名曲を抱え、イメージを形成しました。3rdアルバムから更に彼らの音は進化しました。この4thアルバムからはプロデューサーも全3作から変わり、3rdアルバムの路線をさらに進めた傑作となりました。
 
私にとっては3rdと、この4thが優劣つけがたい愛聴盤です。
この4thでは、やはりギターアルバム、という側面は変わっていない、と思っています。
 
それでいて、オーケストラ演奏などスケール感が増している、音のスケール感も宇宙的な広がりを感じさせるものになっています。
 
1曲目から、最高のギターリフと、威風堂々としたオジーのボーカルが、やみつきになる味わいで攻めかかって来ます。
 
3rdアルバムの冒頭の咳き込みに負けないスローでブルージーなスタートでアルバムは幕を開けます。 
 
音域が限られているオジーですが、哀調を帯びたボーカルは他の誰にも真似のできないものです。それを最高に活かした曲が並びます。
 
それでいてボーカルの比重を最小限に絞り、ギターを中心とした渋い曲構成が泣かせます。ニヒルなトニー・アイオミの顔が浮かびます。 
 
全体を通じて感じられる負で暗な感情と、リフやボーカルのすばらしい魅力が、常に同居し両立していることが、サバスを歴史上の高みに押し上げ続けている理由でしょう。
 
3曲目「Changes」ではメロトロンのバラードで印象的でスペーシーな広がりを持つ曲、歌詞も印象的です。まるでセピア色の写真のような名曲です。 
 
5曲目「Supernaut」ではビル・ワードのドラムが大活躍し、ギターが絡む展開がダイナミックです。ブルースジャズバンドをやっていたオジー以外の3人のテクニックもしっかりしています。
 
B面の冒頭を飾る名曲「Snow Blind」。印象的でいかにもなリフとボーカルの応酬、練られた構成、転調、と内容盛りだくさんの大曲になっています。後半にかけての畳み掛けるような重層的な構成がサイケデリックです。
 
7曲目「コニューコピア」はまるで1,2枚目の頃の典型的なナンバーの要素が感じられます。粘りつくような重い音から後半の転調。
 
9曲目はわりと軽快なロックンロールナンバーだがしっかりリフも。
 
最終曲もサバス的なゆったりとした重いオープニングから疾走間ある中盤へ転調、オジーのボーカル、ギーザーバトラーのベース、ビル・ワードのパーカッションそれぞれがフィーチャーされつつ、ギターが全体を貫きます。
 
3rdアルバムと比べると、それほど重くなく、ギーザーバトラーの唸るようなベースが目立たないかもしれませんが、リフの素晴らしさ、曲の完成度、スペイシーな広がり、全体を覆う大人な哀調感、渋さ、そんな個性をもったアルバムです。
 
ブルースロック的な要素が減り、後の様式美路線への気配が少し感じられるのかもしれませんが、ちょうど良い配合で、洗練された音作りになっています。サバスの中でも最高傑作、という見方もうなずける不朽の名盤です。


リッチー・ブラックモアズ・レインボー

2009-04-19 15:37:56 | 70's ハードロック
Ritchie Blackmore's Rainbow [ORIGINAL RECORDING REMASTERED] Ritchie Blackmore's Rainbow [ORIGINAL RECORDING REMASTERED]
価格:¥ 1,052(税込)
発売日:1999-04-27

Ritchie Blackmore's Rainbow「Ritchie Blackmore's Rainbow」1975年UK
リッチー・ブラックモアズ・レインボー「銀嶺の覇者」 

1. Man On The Silver Mountain 
2. Self Portrait 
3. Black Sheep Of The Family
4. Catch The Rainbow
5. Snake Charmer 
6. The Temple Of The King
7. If You Don`t Like Rock`n Roll 
8. Sixteen Century Gleensleeves 
9. Still I`m Sad  
 
RITCHIE BLACKMORE (Guitar)
RONNIE JAMES DIO (Vocal)
GARY DRISCOLL (Dr)
CRAIG GRUBER (Bass, vocal)
MICKEY LEE SOULE (Keyboads)
  
 
レインボウといえば2ndアルバム「Raising」でしょ、という声は承知の上で、この1stを振り返らせてもらいます。
 
 
リッチー・ブラックモアは、ディープパープルの2ndアルバムから実質的な舵取りになり、クラシカルな要素をハードロックに導入して大成功しました。
 
レッド・ツェッペリンと並びハードロックの創始者の一人にも上げられつつ、グループとしてバンドサウンドとしても頂点を極め、ジャンルの域を超えた爆発的な世界を築き上げたディープパープルの要でした。
 
 
日本人ロックファンなら一定年齢以上の方は、かならずディープパープルを中心とする欧州ハードロックは通過するものですが、今は多分そうではないんでしょうね。
ハードロックという言葉とディープパープルが同義語に近い、と思っているファンの数は、ひょっとすると日本人が一番多いかもしれない。。というと言い過ぎですか。
 
あの叙情的なメロディと唸り節は本来日本人の感性にビタビタくるはずなので、若い洋楽ファンも是非聴いてもらいたい、またレビューしたいと思います。 
  
 
そんなパープルが黄金期を過ぎて迷走を初め、グレン・ヒューズの加入を期にファンクにアメリカンにシフトしようとする中で、もう一度、ディープパープルでやりたかったことをやり直そう、とパープルを脱退して結成したのが、このレインボウです。
 
今のハードロックの様式の基礎を作った歴史的な人物、リッチー・ブラックモアが、その消え残る想いを遂げたのが、このレインボウであり、やがて世界を制し、ディープパープル時代に劣らぬ70年代をする名グループとなる訳です。
 
ブラックモアはパープルで築いたものの上に、さらにクラシカルな様式美を追求し、あまたのフォロワーを生み出し、HR/HM界におおいなる影響を与え続けました。
 
そしてもうひとつのレインボウというグループの、そしてこの1stアルバムの最大の功績は、メタル界最高のボーカリスト、ロニー・ジェイムス・ディオを世に送り出したことです。
 
アメリカ出身のこの方、レインボウの前はエルフというグループにいたので、その後ブラックサバスなどを渡り歩くHM界の最大のカリスマボーカリストとなるわけですが、実質的な世界デビューはこのアルバム、ということになります。
 
  
ロニーさんのボーカルはとにかく凄まじい。
ハスキーなので、まるで中低音のようでいて超高音ラインを鉄人のように歌いこなし続けます。続けるというところでミソで、高音域を唸るように朗々と歌い上げるボーカルラインは圧巻としかいいようがありません。キンキンした高音で、サビの一部だけを突き上げるボーカルはいても、彼のように太く長くド迫力をこめてぶちかますほどの人はほとんどいない。彼の後任ではいるボーカリストは誰もロニーのレパートリーを全て歌いこなすことは不可能なほどです。そして又彼のこぶしの効いた節回しは日本人好みだといえるでしょう。
 
 
というわけで、この1stアルバムは、バンドサウンドとしては遥かに2ndアルバム「Rainbow Raising」には劣ります。バックメンバーは皆アルバム収録後にすげ替えられるほど、ブラックモアとロニーの実力とは釣り合っていない平凡で弱いものだが、それでかえってロニーのボーカルの多様性とブラックモアの曲のよさを味わえるアルバムなのです。
 
このアルバムでは、リッチー・ブラックモアっぽくない曲も何曲か見られますし、3曲目には唯一のカバー曲が入っています。これは最後にパープルのアルバムに入れようとして拒否された曲でした。
 
1曲目の「Man On The Silver Mountain(銀嶺の覇者)」で、好きな人はすぐにハートをわしづかみにされるでしょう。唸るようで哀感のこもった渋いナンバーは、ブラックモアが築いてきたブリティッシュ・ハードロックの真骨頂です。ロニーのボーカルは後年に比べてブルージーでルーズで、荒削りな感じが新鮮です。欧州でもヒットし、新グループとしての挨拶代わり、彼らの名曲のひとつです。
 
2曲目も1曲目の流れを汲んだブルージーで重いナンバーで、冒頭ちょっとクリームっぽい。後半のフランジャーがかったギターが印象的。
 
3曲目は一転、勢いのあるカバー曲も歌いこなすロニー、中間のスライドギターもかっこいい。
 
4曲目はこれぞ1stアルバム、という名曲。静かでブルーなナンバー。余韻の残る名唱です。
  
5曲目はパープル色も感じる疾走感のあるナンバー、ロニーのボーカルの力でドラマティックな曲に引き上げられている、という感じです。
 
 
6曲目は4曲目に並ぶバラードナンバーの名曲。
ミステリアスでエキゾチック、哀感溢れる雰囲気。 
 
7曲目はまたまた一転してピアノも入った明るいR&Rナンバーで、本作の多様性を象徴していて飽きさせません。
 
8曲目は重量感のあるリフで始まるギター、Smoke on the waterタイプの曲で、中間奏も歌い上げるギターが素敵。唸りあげるボーカルも最高。彼が歌えば駄曲がない、と思わせられる迫力と実力です。
 
ラストはヤードバーズのカバーです。
ブラックモアはどちらかといえばジミー・ペイジ型のプロデュース性の高いギタリストでしょうが、やはり同時代を生きたジミヘンやジェフ・ベックには影響される部分もあったでしょう。彼のテクニックも超一流ですが、ここでもブラックモアの哀感溢れる個性もしっかり畳み込んだ名演が聴かれます。 
 
 
 
この多様な曲群、3曲目に入れたカバー曲、パープルなジャケットの色、クラシカルな哀感に満ちたナンバー、とリッチー・ブラックモアがこの1stにこめたものは、やはりディープパープルに残してきた想い、だった気がします。
 
次のアルバムで、名ドラマー コージー・パウエルを迎え、本気モードでパープル時代に匹敵する傑作を作ってしまう彼にとって、まずは、パープルを抜けた後のリハビリとしてのアルバムを一枚作ることは必要だったんではないでしょうか。
 
それにしても、1/4/6/8曲目と本作には名曲が揃っています。
陰影をもったそれらは、バンドサウンドの出来の悪さを差し引いても、後に余韻を残す名作群です。
 
ひょっとしてまだレインボウを聴いたことのないロックファンの方は、是非2ndだけでなく、この1stも聴いてもらいたい。
 
ジャンルと時代を越えて胸に響く名盤です。 
 
"Man on the silver mountain(銀嶺の覇者)"
これを見るとこの曲がSmoke on the waterに似てることに気づきます。ドラムはすでにコージーです。

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"Temple of the king"

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