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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

アン・ヴォーグ

2008-10-06 16:23:46 | R&B・ソウル
Funky Divas Funky Divas
価格:¥ 1,127(税込)
発売日:1992-03-23

En Vogue「Funky Divas」1992年US
アン・ヴォーグ「ファンキー・ディーバス」

 
1 This Is Your Life (05:05)
2 My Lovin' (You're Never Gonna Get It) (04:42)
3 Hip Hop Lover (05:13)
4 Free Your Mind (04:52)
5 Desire (04:01)
6 Giving Him Something He Can Feel (03:56)
7 It Ain't over Till the Fat Lady Sings (04:13)
8 Give It up, Turn It Loose (05:13)
9 Yesterday (02:30)
10 Hooked on Your Love (03:35)
11 Love Don't Love You (03:56)
12 What Is Love (04:19)
13 Thanks/Prayer

 

Dawn Robinson(Vo)
Terry Ellis(Vo)
Maxine Jones(Vo)
Cindy Herron(Vo)
 
 
70年代のシュープリームスらが第一次ガールズ・グループブームだったとすると、SWV、TLC、デスティニーズチャイルドに繋がる第二次ガールズ・グループの流れは1990年アン・ヴォーグの1st「Born to sing」から始まりました。
 
 
80年代後半を席巻したGuyのテディ・ライリーによる”ニュー・ジャック・スウィング”の切れが良くてバウンシーで刺激的なダンスビートは、90年代に入ってもまだまだシーンを一色に染めていました。
しかし徐々に、NJS(New Jack Swing)の中心だったニューエディションの内の3人が結成したベル・ビブ・デヴォーの「Poison」(90年)などを契機に、イギリスから流入してきた”グラインド・ビート”のゆったりとした重心の低いダンス・ナンバーへと、シーン全体はシフトし始めてゆきました。いわゆる”Low beat化”現象です。
 
一方HIPHOPサイドでも洗練されたニュー・スクール勢の登場が一般のファン層を拡大し、ゆったりとしたR&Bのダンスビートは、HIPHOPとの相性がよい、ということが徐々に明らかになってゆきます。
 
やがてそれはヒップホップ+ソウルの融合、ということでメアリー・J・ブライジの登場に繋がってゆくことになります。
 
そんな過渡期に西海岸から登場したのが、ルックスと実力を兼ね備えたスーパーグループ、アン・ヴォーグでした。
   
初めは雑誌から取った「ヴォーグ」という名前で活動していたくらいの迫力の容姿でいながら、実力は十分でした。
なかなか腰の据わった、というかドスのきいた節回し、スローなナンバーからアップビートな曲まで歌いこなす歌唱力を備えていました。
 
本作では、かなり1曲1曲が粒だっており、クオリティとバラエティはかなり充実しています。分厚いコーラスと洗練されたビートの2曲目はR&B1位、真逆のアレサ・フランクリンのスローナンバー6曲目もR&B1位を獲得しました。
 
圧巻のブラック・ロックの4曲めも最高です。
一転して5曲目はシルキーなヴォーカルが最高なレゲエ調ナンバー、7曲目などの流れるようなラップの挿入は、NJSとは異なる角度でHIPHOP感の導入にとりくんだ仕掛け人フォスター&マッケルロイの成果でしょう。
 
ハイライトのミディアムナンバー8曲目、ピアノとギターがジャジーな再びアレサのカバー10曲目、アン・ヴォーグ流どポップナンバーの11曲目、12曲目と最後まで全くだれない捨て曲なしの充実ぶりです。大ヒットしないわけがありません。
 
 
しかし、すこしずつ時代は移り変わってゆきます。
タイトなNJSに対し、ルースな(ゆるい)ロウ・ビートの流れは、HIPHOPのストリートでダークなテイストとも共振するところで、次代の気分だったのだと思います。その辺りは、90年代に入るところで、ロックの精神性の流れとも一致するところでしょう。
 
アン・ヴァーグは、その真ん中で、その実力ゆえに、時代を超えた、特に70年代的なテイストを引っ張ってこれるほどの歌唱力をもって、あたらしい次代の音のヴァリエーションを歌いこなしてくれました。
 
しかし、美しくて洗練された非日常的な歌唱の実力を持つ彼女らに対し、よりストリート的で、生まれつきのHIPHOP感覚をもった次の世代、への移行は一気に進みました。
ある意味では80年代的な気分の最後の花、だったのかもしれません。
 
しかし、彼女らに続いたガールズ・グループがその後のシーンを引っ張ったこと、脱退したドーン・ロビンソンが、やはりNJSからスタートし、そのセンスで超然としたポジションを獲得したトニ・トニ・トニのラファエル・サディーク、やはり芸術的なセンスでHIPHOP界を牽引したATCQのアリ・シャヒードという豪華な3人でつるんだLucy Pearlで、2000年に最高の傑作を出し、存在感をしめしたこと、などやはり、その功績は大きいものがありました。
 
90年代初めの忘れられないスーパーグループ、アン・ヴォーグの傑作です。 
  
 
"Free your mind"

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"My Lovin' (You're Never Gonna Get It) "

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サム・クック

2008-09-09 17:55:07 | R&B・ソウル
Live at the Harlem Square Club, 1963 Live at the Harlem Square Club, 1963
価格:¥ 2,072(税込)
発売日:1990-10-25

Sam Cooke 「Live at the Harlem Square Club, 1963」1985年US
サム・クック「ライブ・アット・ザ・ハーレム・スクエア」
  
1. Feel It
2. Chain Gang
3. Cupid
4. Medley: It's All Right/For Sentimental Reasons
5. Twistin' the Night Away
6. Somebody Have Mercy
7. Bring It on Home to Me
8. Nothing Can Change This Love
9. Having a Party
 
 
とにかくR&Bを聴かない人でも、このアルバムのパンチには、まちがいなくやられるはずです。
かくいう私が、ロックしか聴いていなかった時代にコレを聴いて衝撃を受け、以来R&Bやブラックミュージックなどにも手を伸ばすようになるきっかけにもなりました。
 
 
なにが、そんなにインパクトがあるんでしょう。
グイグイつかまれて、一気に引き込まれていきます。
 
  
レイ・チャールズと列んでR&Bの父である偉大なサム・クック。
オーティス・レディングが、アレサ・フランクリンが、マーヴィン・ゲイが、サム・クックをアイドルとして後に続きました。
  
黒人アーティストの、という枠を超えて、ライブアルバムとしての熱狂、グルーヴ、タイトさ、切れ、あらゆる面で、このレベルのアルバムは、多分数えるくらいしかないでしょう。
 
 
また黒人アーティスト、ゴスペル出身のアーティストのライブ、観客も黒人、という状態の60年代前半のハーレム。サム・クックという人の活動背景、特性も、かれの音楽性、本作の異様な熱狂の背景にある、といえるでしょう。
 
 
なぜサム・クックが偉大なのか、黒人として生まれ、33歳で射殺死するまで、そのあまりにも苛烈な人生で、何を思い、歌ったのか、そのあまりにも熱い想いが爆発しているかのようなライブアルバムが本作です。
 
 
  
サム・クックは1931年アメリカ南部はミシシッピーはクラークスデイルで生まました。
クラークスデイルは、シカゴからミシシッピー下ったいわゆるブルースのメッカであり、ロバート・ジョンソン、サンハウスやマディ・ウォータースを生んだ地でもあります。

父親が牧師だった関係で聖歌隊、移住先のシカゴでゴスペルグループで頭角をあらわしました。若くして人気ゴスペル・グループのボーカルに抜擢された彼は、徐々にポップス界R&B界への進出も始めました。
 
黒人のための聖なる世界だったゴスペル界のアイドルとなっていた彼は、同時に俗世の歌であるブルーズのメッカに生まれた人でもありました。
 
奴隷だった黒人の心のよるべだった聖歌、ゴスペル。
そのアイドルとなった者が、主には白人マーケットも含むポップス界に進出することは、大変なリスクであり、冒険だったはずです。 
なぜ彼はポップス界に進出したのでしょうか。
 
 
またこの時代は、アメリカにおける黒人に対する人種差別がひどく、南部では白人による黒人リンチ殺人が頻発していたような時代です。
南部で一番はやっているスポーツは黒人リンチだ、と言われたほどです。
 
それでも親の世代と比べて、少しずつ生活が向上し、若い世代の人口が増加してきた黒人達に、こんな差別はおかしい、社会を変えよう、という機運が、30年代から少しずつ少しずつ高まり、そして1960年、有名なグリーンズボロの”シットイン”白人専用コーヒーショップでの黒人学生4人の座り込み、から始まった反人種差別運動、公民権運動が燃え上がり始めた時代です。
  
ほんの40年とちょっと前の話です。
  
そんな時代に、彼は甘いマスクとなめらかでソフトな歌声で、ポップス界のメインストリームへ打って出ました。1957年、エルビスのジェイルハウスロックを、彼のYou send me が追い落とし、成功街道が始まりました。黒人アーティストが出ることはほとんどありえないニューヨークの高級クラブ、コパカバーナでのショーまで実現させました。
 
かれの偉大さの一つは、それまで搾取されるだけだった黒人エンターテイナーと異なり、マネージャーのJ.W.アレクサンダーと自らの音楽出版社を設立し、はじめて黒人として著作権を管理したビジネスマンとしての姿です。
 
  
「歴史はあんまり知らない、
 生物学のことも、
 科学の本も読んだことないし、
 フランス語もよくわからない。
 
 でも、ボクが間違いなく知っているのは、
 ボクが君を愛しているということ。
 
 そして、もし君もボクを愛してくれていたなら、
 なんて世界がすばらしいか、ってこと」
 
 これは、彼の代表曲の一つ「What a Wonderful World」の抜粋だが、これだけを見ると屈託のないラブソングのように思えるでしょう。
 
しかし、かれの恐ろしさは、ここからです。
 
なぜ、あえて”歴史のことはあまり知らない”なのか。
なぜフランス語なのか。なぜ歴史・生物・科学・フランス語なのか。
すべてが、人種差別を意識している、と考えるのは、それほどうがった見方ではないでしょう。
歴史は、黒人の奴隷としての歴史だし、生物も化学も肉体的な違いに繋がるし、フランスといえばアメリカに比べてはるかに人種差別がなく、当時から黒人のアーティストの権利が認められている多人種国家としての代表として、引用されている、とみることもできるでしょう。
 
それをあえて、”知らない”、と言ってしまう歌詞の中の主人公の姿。
ルイ・アームストロングを彷彿とさせる逆説的な道化でありつつ、アメージング・グレースに代表されるような黒人霊歌で用いられた”ダブル・ミーミング”、屈託ない歌詞の裏に隠された二重の意味、だとみることもできるでしょう。
 
音楽界を生きていく中で、彼はしかし、意味を隠さなければならない、妥協しなければならないたくさんの場面を幾つも乗り越えなければならなかったことは事実でしょう。そんな時こそ、より強く強く、人種差別に対する思いを、悔しさを噛みしめたことでしょう。
 
 
圧倒的な歌唱力とルックスをもって、白人エンターテイナー界のフトコロに飛び込み、馬鹿で滑稽な黒人としての屈託のないラブソングを次々と送り込み、すっかりゴスペルに裏打ちされた黒人R&Bの魅力を、すべてのアメリカ国民から世界中の音楽ファンにアピールし、ハートをつかんでしまったサム・クック。
 
よく言われることは、白人向けに歌うソフィスティケイトされた歌唱と、ワイルドで激しい黒人向けのバリバリの絶叫的歌唱の2つの側面を彼が持っていた、使い分けていたということ。かれの代表作としてコパでのライブ盤があるが、あちらは観客が白人です。
 
さらには、彼はかの過激な公民権運動家、マルコムXやモハメド・アリと深い親交があったという事実。彼らとのつきあいの中で、何をおもったでしょうか。
 
 
危険を賭して、やはり非難を浴びながらも、彼がポップス界に飛びこんで、成し遂げたかった野望は、なんだったろう。
 
黒人アーティストの権利とビジネスの道を確立し、白人中心のエンターテイメント界に真っ正面から入り込んで、内側からブラックR&Bの実力と魅力で、人種の壁を突き破り音楽界を席巻した男。人種を超えた彼の人気、それこそが、彼なりの戦いの、尊い成果なのではないでしょうか。 
  
本作は、黒人だけを前にした1963年のハーレムでのライブです。
かれの熱い想い、志が、歌声に込められている。
仲間を前に、怒濤のような掛け合いが、繰り広げられる。
 
 
1964年、彼は始めてそのメッセージを表に出した「Change is gonna come」を発表しました。
その年の12月に33歳で謎の射殺死を遂げます。
マルコムXもその2ヶ月後に、射殺死した。
 
本作は1985年まで発表されませんでした。 
 
つい40年ちょっと前の話です。
  
ジャンルを、人種を、そして時間を超えた衝撃の名作、全音楽ファン必聴です。


ケリー・プライス「ミラー・ミラー」

2008-04-07 15:09:48 | R&B・ソウル
Mirror Mirror Mirror Mirror
価格:¥ 1,578(税込)
発売日:2000-06-27
Kelly Price「Mirorr, Mirorr」
ケリー・プライス「ミラー・ミラー」2000年US
 
01. Mirror Mirror (Interlude)
02. Good Love
03. You Should've Told Me
04. At Least (The Little Things)
05. National Anthem (Interlude)
06. She Wants You
07. 3 Strikes
08. Mirror Mirror
09. Can't Run Away
10. The Lullaby
11. Married Man
12. Like You Do
13. All I Want Is You
14. As We Lay
15. I Know Who Holds Tomorrow
16. Love Sets You Free
 
 
(Producers)
Warryn "Baby Dub" Campbell, PAJAM Prduction, R. Kelly, Shep Crawford, Kelly Price, Peter Mokran, Benny Tillman, Carlos Tornton, Teddy Riley
(Musicians)
R. Kelly, Jeffery Jr. & Jonia, Method Man, K-Ci, Gerald Levert, Dru Hill , Playa, Montell Jordan, Case, Kandice Love, LovHer, Teddy Riley
 
  

 
自分の好みは結果的にゴスペル出身の歌える人らしく、その意味でこのケリー・プライスはど真ん中。ど迫力の声量をあえてセーブして、あくまでも気持ちよく歌う余裕っぷりが最高に気持ちいいです。
 

 
マライヤ・キャリー、フェイス・エヴァンス、アレサ・フランクリン、ブランディ、メアリー・J・ブライジ、ノトーリアスB.I.G.、ホイットニー・ヒューストンらの作品で競演もしくはソングライティング参加し、100年に一度の逸材といわれ98年に満を持してデビューし、本作は2nd。歌えるだけじゃなく曲が書ける所が又すごい。
 

 
テディ・ライリーから競演を自ら希望したメソッドマン、R・ケリーに加え、13ではジョディシのK-Ciとジェラルド・レヴァートと現代最高の濃いバラードシンガー競演でまったく引けを取っていない。
 
 バッドボーイ系のトッププロデューサーと絡むR&B Soulの世界にいて、超本格的ボーカリストとしては、フェイス・エヴァンスと列んでDef soulレーベルの看板をしょってたつ現代最高のR&B女性ボーカリストとして名を馳せました。
 
 
圧倒的な声量を後ろ盾にしているだけに、曲が良く抑え気味に気持ちよく歌いつつ、曲の構成重視で、必要に応じて、度迫力のパワフル・ボーカルが織り交ぜられるので、アルバム通して聞けます。
 

 
 その辺りがトータルアーティスト、歌える人にありがちな自己満足、うるさくキンキンした疲れさせる内容には決してならないところがすばらしい。それでいて十分にボーカルのすばらしさを堪能させてくれます。
 
 
日本では知名度がかなり低いような気がするのが不思議です。見た目の問題でしょうか?
とにかく聴かないと損でしょう。万人受けする内容でありながら、内容の濃い超傑作だと思います。
 
R&B、ソウル、ゴスペルファン以外の人にも是非聴いてもらいたいと思います。
 
 

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Roger 「Unlimited」

2007-11-18 14:53:17 | R&B・ソウル

Unlimited! Unlimited!
価格:¥ 1,118(税込)
発売日:1987-12-26

ロジャー「アンリミテッド」1987年US

   

1. I Want to Be Your Man   
2. Night and Day   
3. Been This Way Before [Rap]   
4. Composition to Commorate (May 30, 1918)   
5. Papa's Got a Brand New Bag   
6. Thrill Seekers   
7. Tender Moments   
8. If You're Serious   
9. Private Lover   
10. I Really Want to Be Your Man   
11. Bedistgutarist-A-Rown 

          

「I Want to Be Your Man」
http://<wbr></wbr>www.yo<wbr></wbr>utube.<wbr></wbr>com/wa<wbr></wbr>tch?v=<wbr></wbr>lPl48g<wbr></wbr>lFSPE

     

自分がブラックミュージックに入ったのがロジャーの本作「アンリミテッド」だった。
実際は他に先に聞いていたものもあったかもしれないが、はじめて引っかかった、本当に気にいって一番良く聞いていたのはこれだったと思う。

    

流れで言えばジェームス・ブラウン、スライストーン、パーラメント・ファンカデリックに続くファンクを次の流れに押し上げ、Dr.Dreやスヌープドギードッグやガイのテディ・ライリー、2Pac、Ice CubeなどをはじめとするHIPHOP、R&Bの流れに大いなる影響を与え、サンプリングネタの宝庫であり、80'sテイストが新鮮な今こそ改めて見直されるとき、という感じだろうか。

    

そういうことを抜きにしても、ロジャー/ザップの良さは、わかりやすさ、だろうか。
とにかくエンターテイメントだ。
何と言っても特徴はトーク・ボックス(シンセサイザーなどの楽器の音をアンプを通してスピーカーの入ったトークボックスに入れ、さらにホースで人の口に入れ、口の動きで音に変えマイクで拾うもの。)で絶妙にエフェクトされた人工音。
セサミストリートでスティービーワンダーが操る出始めのトーク・ボックスがそのきっかけだったという。

    

エンターテイメントでいながら偉大なのは、80'sならでのは洗練、超絶テク・ギター、
ソウル/R&Bのカヴァーで見せるアレンジャーとしての斬新な解釈とそのセンス、ともすればマンネリ化し新鮮みを失いかけたファンクサウンドに、80年代のテクノロジーと独特のセンスを持ち込んで時代を切り開いた偉大なイノヴェイターでありながら、そのベースには彼を見いだしたブーツィー・コリンズ、ジョージクリントン仕込みのファンクネスがしっかりとあったためだろう。

    

つまりテクありきではなく、汗くさいファンクにテクノサウンドを持ち込むことで一層の切れ味、エッジの効いたファンクならではバネというか瞬発力のようなものを取り戻すことに成功した、ということだろう。多分もう少し彼が早く生まれていたら、そんなテクノロジーは無くてもスターになっていたのかもしれない。それだけ曲自体の魅力があるし、テクノロジーがそれに追い打ちをかけているだけなのだろうと思う。

    

ザップは1978年、ロジャー・トラウトマンを中心に、トラウトマン兄弟4人を中心にしたグループでオハイオ州デイトンを中心に活動、Pファンクの前座をつとめた後、80年にメジャーと契約、80年代を通じてヒットを連発、プリンスと並んでPファンクの後継者と目される。90年代に時代の移り変わりと共にメジャーとの契約が切られると、今度はサンプラーの普及によりサンプリングネタとして特に西海岸のHIPHOP勢にもてはやされ再浮上する。

   

本作はソロ3作め。1曲目はザップを通じても代表曲の一つで、最大のヒット曲、色々なアーティストにカバーされている。
5曲めはジェームス・ブラウンのカバーでこれも代表曲のひとつ。
全曲捨て曲なしの名盤。

   

そしてロジャーでもうひとつ触れておかなければいけないのは、黒人グループ特有のファミリー主義の功罪についてだ。Pファンクにしてもスライにしても最近のウータン・クランなどにしてもみられるある種のコミュニティ主義がみられる。どちらかというと個人の才能至上主義ともいえる白人のミュージシャンに対して、ザップにも見られるこのファミリー主義は成功した彼らをして、同じ黒人向けにデイトンの空き地や空き家を改修し格安で販売するという事業を始めさせる。そして、その事業の破産が元で1999年実の兄に銃殺され、兄も自殺してしまうという最期を遂げる。

   

70年代のファンクと80年代以降のHIPHOP、R&Bの間をつなぐ偉大な功績とわかりやすい音楽性とその裏にある超絶テクとセンスとファンクネス、ロジャー/ザップはもっともっと一般的な評価が高まってもいいんだろうとおもう。


JODECI

2007-07-29 17:30:46 | R&B・ソウル

Diary of a Mad Band Diary of a Mad Band
価格:¥ 1,118(税込)
発売日:1993-12-21
JODECI「Diary of a mad band」
1994年US

01. My Heart Belongs To U
02. Cry For You
03. Feenin'
04. What About Us
05. Ride and Slide
06. Alone
07. Lately
08. You Got It
09. Won't Waste You
10. In The Meanwhile
11. Gimme All You Got
12. Sweaty
13. Let's go through the motions
14. Jodecidal Hotline
15. Success

ブラックものの中で一番好きで思い入れがあるのはこのJODECIだ。デビューの91年の1stが愛聴盤になってからあれよあれよという間に大物になってしまった。
91年当時はまだ80年代後半のニュージャックスウィングの影響は大きく、創始者であるガイのテディ・ライリーはこの91年についにマイケルジャクソンと「Dangerous」アルバムでガッツリと成功を収め世界制覇状態であった。
しかし90年代初めという時期は過渡期であり、折からのHIPHOPブーム、UK発のグラウンドビートの影響でNJSのタイトな感覚からすこしずつゆったりと重いルーズなビートに移行しはじめていた。
当時ダントツの存在になりつつあった女性4人組アン・ヴォーグの92年の「Funky Divas」などは時代を反映した象徴的な作品だった。ここからTLCやSWVらへの流れが始まる。またR&BとHIPHOPが互いに近づいてゆく流れの中で、新しい90年代のプロデューサー達が頭角を現し始める。「ヒップホップソウル」という造語でメアリー・J・ブライジを売り出すショーン・パフィ・コムズやR・ケリー、ダラス・オースティン、ジャーメイン・デュプリらがそれだ。ブラックミュージックはなんと言ってもプロデューサーの影響力が絶大だ。

そんな状況の中で、NJSの申し子アル・B・シュアとの共同プロデュースで出された1stはアーロンホール的なゴスペル感覚をNJSのビートで新鮮に聴かせるハーモニーが先駆者ガイを模倣する部分もありつつ、圧倒的な歌の力と、同じ時期に出たボーイズⅡメンとは全く正反対のダーティーでダスティなグルーブが、凡百のレベルを超えていた。ボーイズⅡメンが優等生ならJODECIは不良、またはビートルズとストーンズ、という感じだったが、僕的には圧倒的にJODECIの実力にはまってしまった。ボーイズⅡメンのトラディショナルハーモニー路線よりもJODECIのHIPHOPとの融合、ストリート路線の方がまったくもって時代の要請だったし。

そして出された94年の2ndで彼らは飛躍的な成長を遂げて一気にカリスマのレベルに突き抜けてくれた。
JODECIはジョジョこと:Joel 'JoJo' Hailey、ケイシー:Gedric 'K-Ci' Haileyのヘイリー兄弟とミスターダルビン:Mr Dalvin、ディバンテ・スイング:Donald 'DeVante Swing' DeGrate Jnrの兄弟の2組の兄弟より編成される4人組だ。ヘイリー兄弟がボーカルを担当し,ミスターダルビンとディバンテ・スイングがサウンド・プロデュース面とラップを担当する。
JODECI時代の彼らの良さは、ヘイリー兄弟の圧倒的なボーカル力にダルビン・デヴァンテのサウンドが融合したトータルな時代感覚、バランス感覚のあるサウンドにあった。
1stもそうだが、前半にバラード系をまとめ、後半にアップテンポなダンスビートをまとめた構成も締まりがあるし、この2ndの特にスティービーワンダーのカバーで、大ヒットしたLately以降の流れは最高だ。濃厚すぎるほど濃厚なのに聞き飽きることがない。

彼らはこの2ndの成功で大物になり、特にディバンテはサウンドメイカーとしてミッシーエリオットやティンバランドを見いだしたり、メアリー・j・ブライジの曲のプロデュースなどを手がけている。彼らはこの次の95年の3rdで、これ以上無いほどの濃厚なサウンドを生み出し、もはやプリンス並みかそれ以上という領域の高みに達した。この時点ではボーイズⅡメンの姿の気配も感じられないほどどっぷりとダーティでストリートなグルーブに突っ込んでおり、1ジャンルを超えた領域に達してしまった。
行き着くところまで行ってしまった彼らは、これを最後にK-Ci&JoJoとソロ活動に道を分かってゆく。

彼らの功績は、NJS系のグループを卒業したソロ系アーティストが生み出せなかった躍動感やみずみずしさといったものをグループという形態で表現することに成功したこと、HIPHOPをR&Bの中に自然な形で取り込むことに成功してみせたこと、そして自らの手でサウンドをクリエイトしてゆくグループとして後続に多大な影響をもたらしたこと、などがあげられるだろう。プロデューサーの力が絶大なこの世界になっては実力と個性が
無ければなかなか難しいことである。

K-Ci&JoJoになってからの彼らのAlbumも当然全てフォローしている。2人のボーカルはJODECI時代からさらに次の領域に達し、生ける伝説状態だ。超名曲Tell Me It's Real、All My Lifeのようなヒット性のあるスムーズでコンテンポラリーな大人曲が増えた一方で、これ以上ないほどのファンクでブルージーでソウルフルな魂のこもった絶唱の連発は50年代や60年代のクラシックソウルの先人の域に達していると思われる瞬間がいくつも炸裂させてくれるわけだが、彼らが大きく成長すればするほど、グループ時代に見せてくれていたグループとしてのまとまったサウンドとボーカルが融合するのを改めて聴いてみたいと思っているファンがたくさんいることも、このグループのサウンドがいまだに衰えない普遍的な魅力を湛えていたという証拠だろう。
再結成が最も待たれるグループだし、2005年にベストアルバムが出されたことが再結成の兆しでは、と勘ぐるファンもおおいのだ。

すっかりシーンが変わってしまった今のBlack Music界に、もし彼らが再登場したなら、どんな音でどんなインパクトをあたえてくれるのか、そんな妄想をしつつロックで尖った彼らの規格外のアルバムを繰り返し聞いている。