goo blog サービス終了のお知らせ 

Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

ストーンローゼス「石と薔薇」 

2008-03-30 03:10:26 | ブリティッシュロック
The Stone Roses The Stone Roses
価格:¥ 1,567(税込)
発売日:1990-10-25
The Stone Roses「The Stone Roses」1989UK
ストーンローゼス「石と薔薇」 
 
(US盤)
1 I Wanna Be Adored (04:52)
2 She Bangs The Drums (03:42)
3 Elephant Stone (03:01)
4 Waterfall (04:37)
5 Don't Stop (05:17)
6 Bye Bye Badman (04:00)
7 Elizabeth My Dear
8 (Song For My) Sugar Spun Sister (03:25)
9 Made Of Stone (04:10)
10 Shoot You Down (04:10)
11 This Is The One (04:58)
12 I Am The Ressurection (08:12)
13 Fool's Gold (09:53)

Ian Brown ( Vocals )
John Squire ( Guitar )
Mani ( Bass )
Reni ( Drums )
 
 
ロックの歌詞に力を吹き込んだボブ・ディラン以来、ロックが社会を映し出す鏡となり、我々の心の代弁者であり続けて来る過程で、ロックと歌詞は分かちがたく絡み合い、結びついてきた。ニール・ヤングの、ジョン・レノンの、ピストルズの、ピンクフロイドの、デヴィッド・ボウイの、スプリングスティーンの歌詞は、ロックをロックたらしめてきた。
 
歌詞という”言葉”は、反社会的な訴え、という図式の中で圧倒的な力をもち、やがて、社会の成熟化によりその単純な図式が崩れてゆく中で、80年代の後半にかけて、言葉に縛られ、しなやかさを失っていった。
 
特に、意識的観念的なロックファンの土壌であるイギリスにおいては、レーガンのアメリカに対して長年にわたるサッチャー保守政権下で高い失業率と閉塞する社会状況の中で、鬱積する思いをうけとめるだけの力を、ロックは十分に満たしてはいなかった。
細分化されたカテゴリの中で、それぞれのニーズに応えるアーティストがチャートをそれなりにうめてはいたものの、不毛感は漂っていた。特にスミスなき後のカリスマ不在感がその感じを増長していた。
 
 
 
一方で、イギリスは、常に異文化と異人種が狭い国土で混じり合い、異種交配と異文化の英国流の取り込み、知能的で観念的で洗練された音楽を生み出してきたのだけど、80年代の後半にかけて、力を失いかけていた言葉に代えて、黒人音楽、HIPHOP、サンプリング、レゲエの取り込み、といった新たなミクスチャーの動きが見られるようになってゆきました。
 
そして、シカゴ発イビサ島経由クラブ・ハシエンダ行きのアシッドハウスが、英国の若者の虚しいハートをつかむことになりました。それは、70年代以前の米国のスティービーワンダーに代表されるブラックミュージック、ファンクミュージックをベースとし、80年代から世界の音楽地図を代えてゆくサンプリング、とアシッド(薬物によるトリップ感)を想起させるDJによるハウスミュージック。レイブとよばれる新しいDIY感覚のクラブパーティーが、熱狂的なブームとなっていきました。言葉とカリスマを失った保守王国イギリスにおいて、こうした流れは必然的なものだったのでしょう。
  
そこから派生したアシッドジャズも相当はやりました。どっちかというと日本では洗練されたアシッドジャズがお洒落なポップス感覚ではやりましたね。一番売れてたのはブランニューヘヴィーズとか、ジャミロクワイ。僕はインコグニートが好きでした。
 
  
 
究極に自己の中にこもり込み、何も語らず、ドラッグと音楽とダンスに酩酊し、同じような目的で集う者同士が、集まり、熱い集団意識を共有する。ダンスミュージックという、”言葉”による意味、の無い浮遊空間の中で、それ自体が新たな意味として生まれてゆく。 
 
社会や体制に対して、意味を歌い、若者をあおり、社会を変えようと訴えたロック。やがて社会はうつりかわり、現代社会において、我々は10年20年前と比べても、我々のロックは戦うべき相手を見失っていきました。成熟し停滞した社会で手に入れられた個人の自由と尊重。その結果、諸問題はある意味個人へ転嫁され、ロックが社会に対して訴えた意味や意義は、我々自身に降りかかってきた。我々自身に、戦いも意味も内在することになりました。
  
そして我々は、重く内なる意味との戦い、を誰しも自己の中にかかえることになり、同時に、そこからの逃避をも、自己の中の救済をも自己の中に求めざるを得えなかった。そして、それを、意味のない、言葉のない空間、ダンス音楽とレイヴに、人は求め、そこに意味が生まれたのではないだろうか。社会全体で見たときに、そんな流れがでてくるのも、時代の必然で、最近のオタク文化も、同じ構造なのかもしれないと思う。そしてその孤独な道ゆきを共に共感できる仲間を人は求め、ちょうど60年代後半のヒッピーが、どこかにあるあもしれない自由の国を求めて集ったように。イギリス人がそれを音楽、ダンスに求め、日本はアニメやゲームにもとめたのは、面白いと言えば面白い。
 
   
かつてヒッピーだったスティーブ・ジョブスのAppleは創設し、ipodは音楽の聴き方を変えた。インターネットは我々の生活基盤となり、個人同士をつなぐ共同社会となりました。かつてのヒッピーが、社会から逸脱して共同生活を試み、追い求めたのに対して、我々は今やインターネットという共同社会を手にしている。何でも自由に、自分たちで、自分たちの力で、Do It Yourselfで。サンプリングを駆使したDJ。
 
60年代とは違う社会の中で、内なる戦いを強いられることになった我々の悲鳴、手にしたDIYの自由で、個人同士が繋がり、共に歩んでゆこう、という流れ。一つ一つのキーワードをみると60年代のフラワームーブメントと共通するキーワード。しかし似て非なる我々と社会のバックグラウンド。
 
 
そして
  
スミスと同じ不況で停滞する地方工業都市マンチェスターから、ストーンローゼスはおずおずと、言葉という意味性をもたないダンスミュージックに、弱々しいボーカルをのせて、新しいロックを奏で始めた。
そこでは、あまりにも弱々しいボーカルこそが、必要だったはずです。際だった実力を持たない、我々一人一人と何も変わらない、等身大の、労働者階級の、新しいカリスマが必要だった。ジョン・スクワイヤの言葉を借りれば「90年代はオーディエンスが主役となる時代」だったのです。そして神がかり的なジョン・スクワイヤのギターとレニとマニの生み出すグルーブ、イアン・ブラウンのブラックミュージックのリズムが、何よりも陶酔感と高揚感をうみだし、ローゼスは、レイブ世代のロックの旗印としての、期待を背負うことになりました。
  
ビートルズばりのメロディーセンス、バーズからの影響を感じさせるサウンド、様々なロックの宝が散りばめられたような、それでいてバランスのとれたジョン・スクワイヤのギター。そして何よりも、ロックにブラックミュージックのダンスのリズムを持ち込んだことによって、ロックに再びダイナミズムを取り戻し、言葉とは違う角度からアプローチしつつも、本来的にロックというものが持っていたはずの説得力を獲得し、我々の思いの代弁者たり得、革命的存在となった。ダンスのリズムと、バンドのグルーブが折り重なるように陶酔感と高揚感を生み出した。
 
歌詞についても、不毛感から抜け出して、自分たちの力で新しい世界を手に入れよう、というポジティブでいながら、ダルでいながら、ドラッグによる高揚感を連想させるふわふわしたサイケデリア、どこか一緒に行こうぜ的な煽る感じ、新しい時代の到来を感じさせるものだった。それだけの思いを包み込んで共に行こう、というある種荘厳なまでの器のようなものを、彼らは感じさせてくれた気がします。
 
客観的に見れば、メロディーがかけたことと、彼ら、特にジョン・スクワイヤがプロデューサー的なバランス感覚をおそらく持っていたこと、ダンスとロックそれぞれのファンをとりこんだこと、それぞれに退屈していたファンを、再び振り向かせたこと、が大きかったのでしょう。あと2ndのようにエッジの効いたツェッペリン的ではなく、バーズ的であったことが、大きかったかもしれない。
 
 
いずれにしても、ローゼスはイギリスの新たなカリスマとして祭り上げられた。
フォロワーを含めたシーンは、拠点のマンチェスターをもじって、”マッドチェスター”と呼ばれた。 
1990年5月のスパイクアイランドでの野外コンサートは3万人をあつめた。
「Live Forever」などの映像でみるこのコンサートは、まさに60年代と見間違うものだった。
わかりにくい時代に、若者のハートをつかみ、心の在りかがそこにあることを示し、これだけのムーブメントを今の時代に見せてくれた彼らの奇跡。 
 
 
そして、くしくも67年のサマー・オブ・ラブと同じように、このセカンド・サマー・オブ・ラブも短い命だった。
ドラッグ問題でクラブ・ハシエンダが営業停止処分になったり、レイブが取り締まられて、商業化し、なによりもストーン・ローゼスが1st以降、5年という長い不在の後に崩壊してしまった。
 
 
しかし、ローゼスが持ち込んだダンスとブラックミュージックによって、ロックはダイナミズムを取り戻し、今という時代に必要な音としての力を取り戻した。その影響力は、ローゼス以後と以前に分けて考えることすら出来るほどだ。プライマルスクリームもオアシスも、ローゼスがいなければ、あのような形で存在したかわからないだろうと考えると、その後のブリットロックの下地は、やはりローゼスの影響が大きいと思わざるをえない。


正直、今でも聴く回数が多いのは2ndの方だし、音としてのアルバムの完成度は上のような気がする。しかし彼らはそういうことではない。

ロックのカリスマ像が、われわれを写しだす時代の鏡とするならば、やはり1stアルバムが我々に抱かせた気持ち、その気持ちを皆が持ったこと、その社会的、歴史的な意味性は、あまりにも大きく、われわれの前に現れたカリスマは彗星のように現れ、消えてしまった。その瞬間とも言える短い記憶は、ローゼスというバンドに、作為性やしたたかさがない分、歌詞以上に雄弁なそのメロディーと陶酔感とグルーブと、何かを変えてゆこう、抜けだそう、変われるんだ、という高揚感は、余計に我々の中で尾を引いて、記憶から離れない。

クリーム「フレッシュ・クリーム」「ライブ・クリーム vol.2」

2008-03-20 21:58:17 | ブリティッシュロック
Live Cream, Vol. 2 Live Cream, Vol. 2
価格:¥ 1,118(税込)
発売日:1998-04-07
フレッシュ・クリーム フレッシュ・クリーム
価格:¥ 2,800(税込)
発売日:2008-01-23

Cream「Flesh Cream」1966年12月UK
クリーム「フレッシュ・クリーム」
 
 
A)
1.I Feel Free/アイ・フィール・フリー
2.N.S.U/エヌ・エス・ユー
3.Sleepy Time Time/スリーピー・タイム
4.Dreaming/ドリーミング
5.Sweet Wine/スウィート・ワイン
6.Spoonful/スプーンフル
---
B)
7.Cat's Squirrel/猫とリス
8.Four Until Late/フォー・アンティル・レイト
9.Rollin' And Tumblin'/ローリン・アンド・タンブリン
10.I'm So Glad/アイム・ソー・グラッド
11.Toad/いやな奴
12.The Coffee Song/コーヒー・ソング
13.Whapping Paper/包装紙
 
==============================
 
Cream「Live Cream, Vol. 2 [Live]」1972年3月UK
クリーム「ライブ クリーム Vol.2」
 
A)
1. Deserted Cities of the Heart
2. White Room
3. Politician
4. Tales of Brave Ulysses
---
B)
5. Sunshine of Your Love
6. Steppin' Out
  
 
ERIC CLAPTON エリック・クラプトン(ギター、ヴォーカル)
JACK BRUCE ジャック・ブルース(ベース・ギター、ヴォーカル)
GINGER BAKER ジンジャー・ベイカー(ドラムス)
  
 
クリームというバンドが伝説的な存在になっている要素は、具体的に考えてみるといくつかの理由に分けられると思われます。
 
・メンバーの豪華さ
・デビューの仕方の演出
・ブルースロックを脱皮させ、白人独自のロックへの第一歩を踏み出したこと
・世相を反映したサイケデリックロック、フリージャズ的ロック
・ライブとインプロヴィゼーション
 
簡単に言えば、こんな感じでしょうか。
 
ジンジャー・ベイカーはクリームの前のグレアム・ボンド・オーガニゼーションを結成する前はジャズバンドを渡り歩いていました。
 
ジャック・ブルースは、前にレビューしたブルースブレイカーズでクラプトンと出会う前はスコットランドでクラシックを学んでいましたが、60年代半ばの世の流れに感化されたのか、ロンドンへ出てブルース・コーポレイテッドに加入、そこでチャーリー・ワッツの後釜としてきたジンジャー・ベイカーと出会いました。
 
クリームの独自の音楽性は、これら多様なバックボーンを基礎にして、サイケデリックな方向性とブルースの延長とインプロヴィゼーションで作り上げられていった訳です。
 
 
グレアム・ボンド時代からジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーは犬猿の仲で、クリーム結成をジンジャー・ベイカーがクラプトンに持ちかけた時、クラプトンから出されたジャック・ブルースが一緒なら、という条件に頭を抱えた、という話は有名で、始めから超絶テクの3人によるなれ合いのない緊張感は、お互いをライバルととらえて競い合うことにつながり、そこから生まれる大音量化と超絶プレイの応酬から歴史的な演奏が生まれていったのですから面白い所です。
 
  
1967月3日にウィンザーで行われたナショナルジャズ&ブルースフェスティバルで、後に「ジーザス・クライスト・スーパースター」、「トミー」、「サタデーナイト・フィーバー」、「グリース」などの制作で名をなすマネージャーのロバート・スティグウッドのリードで、3ヶ月のリハーサルと曲制作を経て、完成されたバンドとして登場。

おりしもブルースブレイカーズのアルバムがチャートで一位を獲得しており、スーパーバンドの初陣を期待する聴衆の想像を超える登場を果たしました。マーシャルのアンプをステージに山のように積み上げて、壮絶な大音量で。
ジャズのセッション・サウンドのようにフリーなインプロヴィゼーションで、実験的でサイケで、ブルースロックから一歩も二歩も踏み出そうという精神が又、60年代末の社会的精神にも沿っていたのだと言えるのでしょう。またそれを為し得たのは、ブルースのこの上ない名手であるクラプトンとこの2人でなければならなかったのかもしれません。
 
ウィンザーで大音響が鳴り響いたとき、ブルースと新しいロックが電気とテクニックで合体し、それを世相が後押しする、ツェッペリンへと繋がるハードロックが生まれていった瞬間でした。
 
  
時代の精神とブルースロックを追求する彼らの先には、ヤードバードと呼ばれたチャーリー・パーカーやフリージャズの道を開拓したジョン・コルトレーンらの取り組んだセッション・サウンドがありました。スタジオでの曲作りとしての試み、とライブのセッションで行われる試み、前者の中心になったのはジャック・ブルースと2ndからプロデュースに加わり後にマウンテンを結成する故フェリックス・パッパラルディで、後者はクラプトンを中心とした3人の応酬でした。かれらはそれほど器用ではなかったのか、スタジオワークとライブの音楽的な方向性は、どんどんかけ離れていったように見えます。まあビートルズはライブをしなくなったのだし、そのへんは何とも言えないところですが。
  
 
  
私的には、ブルースロックとサイケな試みの配分が、まだブルースロックよりで好きなのが、この1st「フレッシュ・クリーム」です。4枚のスタジオアルバムの中では一番好きです。2nd以降のちょっと重たい感じが無く、まさにフレッシュな感じで、黒人音楽的な雰囲気がまだ強い感じです。
 
一曲目はアナログ盤にはないシングルI Feel Free、デビューシングル「包装紙」が入り、その他ウィリー・ディクソン、ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズのブルース曲のカヴァー、当初オランダ盤のみに収録されていた「コーヒー・ソング」、3rdのC面D面でライブ演奏が収録される「Spoonful」と「Toad」までが入っている充実ぶり?です。
 
 
クリームに関しては、いきなり一般的に代表作とされる2ndや3rdを聴いてしまうと、ポップなシングル曲のSunshine Of Your LoveやWhite Roomばかりに耳がいってしまい、その他の曲の良さが分かりづらいのでは、と思ってしまいます。やはり1stから聴き、次にはLive Cream vol.2か、3rdのC面の”Cross Road”を聴くのが、かれらの魅力を理解するのによいのではないかと勝手に思ったりします。
  
3rdの”Cross Road”は録音にのこるクラプトンの演奏の最高峰の一つでしょう。いうことはありません。が、ロバート・ジョンソンのカバーをハードに演奏し直しているとはいえ、オリジナルではないので、アルバムとしてはここでは1stを挙げました。
 
 
Live Cream 2に関しては、これはバランスがとれた収録になってます。
ここで1stを挙げてしまったので、代表的なヒット曲も入っているこれも挙げておかないとということで。一曲目の「荒れ果てた街」から最高です。3人のプレイがとにかく圧巻。2曲目の「White room」もいいですが、とくに一旦ボーカルパートが終わって、1秒程度のためと聴衆の歓声があがった後で、「まだまだここから!」とでも言わんばかりにインストの演奏が入る箇所など最高です。最終曲のStepping outでもインストバトルが壮絶で、クリームのライブの魅力が全開です。
 
クリームのライブということでは、先ほども挙げた3rdアルバム「クリームの素晴らしき世界/Wheels of fire」のライブ面が緊張感がみなぎっていて、さすがオフィシャルなアルバムに収録されるだけはあり最高です。
 
渋くてストイックな男のロック、ブルースロックがハードロックに飛翔する境目にその役割を担い、ヴェトナム戦争反戦運動とフラワームーブメントの長く熱い夏に背中を押され、全てが必然のように噛み合った伝説のバンドにしてホワイトブルースの最高峰、クリーム、やはり最高です。
 
 

<script type="text/javascript"></script>

トラフィック「ミスターファンタジー」

2008-02-16 16:54:08 | ブリティッシュロック

Mr. Fantasy Mr. Fantasy
価格:¥ 1,567(税込)
発売日:2000-08-29
Traffic「MR. FANTASY」
トラフィック「ミスターファンタジー」

Original Release: Dec.1967/UK
(Remaster CD)UK Edition Oct.1999/UK
 
UK Original Tracks [Stereo]
Side A
01. Heaven Is In Your Mind
02. Berkshire Poppies
03. House For Everyone
04. No Face No Name No Number
05. Dear Mr.Fantasy

Side B
06. Dealer
07. Utterly Simple
08. Coloured Rain
09. Hope I Never Find Me There
10. Giving To You

US Original Tracks [Mono]
Side A
01. Paper Sun
02. Dealer
03. Coloured Rain
04. Hole In My Shoe
05. No Face No Name No Number
06. Heaven Is In Your Mind

Side B
07. House for Everyone
08. Berkshire Poppies
09. Giving To You
10. Smiling Phases
11. Dear Mr. Fantasy
12. We're A Fade, You Missed This

Steve Winwood (vo,g,org,p,b), Jim Capaldi (dr,perc,vo), Chris Wood (fl,sax,vo), Dave Mason (vo,g,b,sitar,perc)
 
  
スティーブ・ウィンウッドのボーカルに出会ってから今まで好きなボーカリストの3本の指から彼がはずれたことがないのだが、入ったのがソロになってからの「Arc of a diver」だったので本当はどちらかというと後期のトラフィックの方が好みなのだが、それでもいくつかのすばらしいシングルとアルバムははずせない。特にこのトラフィックとしてのファーストアルバムはずっしりと中身の充実した名盤だ。
 
トラフィック以前のウィンウッドについては、スペンサー・デイビス・グループでの16歳の早熟な天才ぶりが有名だが、グループ自体の音として、スモールフェイセズや初期のストーンズと同様にかなりストレートで屈託のないR&Bの白人版コピー的な部分が、それほど自分の好みではないのだが、それでも「Keep on running」は好きなシングルだ。
 
 
時は折しもフラワームーブメントまっただ中、サイケの嵐の中、ビートルズがラバー・ソウルやサージェント・ペパーズを出した頃だ。早熟の天才ともてはやされながらの、商業的なシングル中心の雇われボーカリストとしての立場から抜けだし、ウィンウッドがトラフィックを結成するメンバーとバークシャー郊外のコテージでの田舎の共同生活野中で、自由に純粋に良い音楽を追究しよう、という試みから生まれたのが本アルバムだ。
 
 
そんな訳で、ウィンウッドのR&B路線、ブルーアイドソウル的な部分、を前面に出すわけではなく、R&Bやブルーズは下地としつつも、ジャズ、トラッドフォーク調、トラディショナルなヨーロッパ民謡調の旋律、どこか田舎の生活を反映した牧歌的な雰囲気、さらにはバロック的なクラシックの雰囲気を加えた実験的な音を模索しており、アルバム全体としてこのファーストでは、デイブ・メイスンによるラーガ・ロック的な面やサイケな趣向が凝らされたトータルコンセプト的なアルバムになっている。
 
 
このアルバムがそれだけではないすばらしさを湛えているゆえんは、曲の良さにあるだろう。代表曲は「Mr.fantasy」だ。ゆったりとしたイントロからの冒頭は堂々とした入りだし、曲の中盤からはウィンウッドとメイソンのギターの掛け合いが曲を高揚させてゆく。
 
気負わないが丁寧なウィンウッドのボーカルが、自然なままでブルーアイドソウルになっている。ウィンウッドはR&B的な曲を頑張って歌わなくてもそのままの方がいいし、かえって黒さが引き立つのだと思う。
 
ユーモアさえ感じる3曲で始まるA面(UK版)と比べてしっとりと入るB面では3曲目のColoured Rainが良い。
 
US版では全く曲順が異なる上に、ステレオ版とモノラル版で随分雰囲気も違う。さらに"Heavan Is In Your Mind" 、"Giving To You"などでは結構ギターなども違っている。
 
US版にはシングルが入っているのはお得だ。Paper SunにHole In My Shoe、Smiling PhasesなどはUK版のアルバムとは又違った雰囲気をもっている。コンセプトアルバム的なまとまりをもっている点はUKオリジナル版だが、USモノラル版も雰囲気が違って結構楽しめる。曲間に「Here We Go Round The Mulberry Bush」からの音が小さく入っていたり、Paper Sunの後半45秒を編集した"We're A Fade, You Missed This"という曲が最後に入っていたり、USのレコード会社の編集が結構入っている。それもこれも粒よりの曲がそろっていて、それぞれ色々な音楽の要素が奥深さを持ち、それがサイケという色で統一感をもっている、という多面性が、多面的な鑑賞に耐えうる内容になり得ている理由だろうか。
 
 
トラフィックとしてはこういう雰囲気のアルバムはこれ以降作らなかったので、メンバーの経歴的なタイミングと時代が生み出した名盤、ということになるのでしょう。
 

<script type="text/javascript"></script>

ヤードバーズ「ロジャー・ジ・エンジニア」

2008-01-02 22:51:57 | ブリティッシュロック

Roger the Engineer Roger the Engineer
価格:¥ 1,880(税込)
発売日:1999-02-12
ヤードバーズ「ロジャー・ジ・エンジニア」
Yardbirds「Roger The Engineer」1966UK

[1] Lost Woman
[2] Over, Under, Sideways, Down
[3] The Nazz Are Blue
[4] I Can't Make Your Way
[5] Rack My Mind
[6] Farewell
[7] Hot House Of Omagarashid
[8] Jeff's Boogie
[9] He's Always There
[10] Turn Into Earth
[11] What Do You Want
[12] Ever Since The World Began
[13] Happenings 10 Years Time Ago
[14] Psycho Daisies

キース・レルフ(ボーカル、ハープ)
ジム・マッカーティ(ドラムス)
ポール・サミュエル=スミス(ベース)
クリス・ドレヤ(リズムギター)
ジェフ・ベック(ギター)

あめましておめでとうございます。
平成20年、第一弾はヤードバーズ。
  
ヤードバーズは1962年にロンドンでストーンズの後釜としてライブハウス「クロウダディ」に立つ。63年~65年のクラプトン期、65年~66年の短い期間、本アルバムでリードギターを努めたジェフ・ベックの時代を経て、66年~最後のジミー・ペイジ期といわゆる3大ギタリストが代々リードギターを努めたことで伝説となったグループ。
  
ヤードバーズとしてはジェフ・ベック期が最も充実していたというのが定説で、異存なし。本アルバムは5日間で制作されたにもかかわらず、とても色々な顔を見せてくれる飽きのこない傑作でしょう。
   
クラプトン期がライブ映えはするものの売れずに、ポップなシングル「For your love」の路線に不満でクラプトンが脱退してしまうわけですが、ベックは逆に何でもありで、ヤードバーズにはあっていたのでしょう。
  
ジェフ・ベックのギターは黒人音楽からの影響が強いわけですが、それはブルース一辺倒ではなく自由な感性で、キャリアを通じて広く黒人音楽を取り込んでゆくことになる。そのキャリアの初期であるヤードバーズではR&B、ブルース、そしてロカビリーを大いに取り入れたロックを鳴らしている。
ロカビリーというある意味勢いのあるポップな路線が、ヤードバーズに求められていたものと合っていたのだろう。
  
ジェフベックが名を馳せた理由の一つはその多彩な奏法だ。
1曲目から聞かれるフィードバック奏法もそうだし、ファズ、アーミングの多用もそう。逆に言うと、単なるビートロック、ロカビリーテイスト、R&Bテイストのロックがこれほどの一体感とテンションを持っているのはベックのギターの独創性あってこそだろう。
ヤードバーズという枠におさまりきらないはずのベックが、ヤードバーズの一ギタリストという立場で、作ったこのアルバムで、わかりやすくベックの魅力とヤードバーズというバンドの魅力が引き出されている。
  
ジェフ・ベックの場合、様々なテクニックを駆使するために、その技術の高さと新しさに感嘆させられるが、それ以上に、一聴すると違和感すら感じる独創的な音、にその個性が発揮される。クラプトンなどのブルース系ギタリストと比べれば
、その音の違いは瞭然だが、まずは音自体に金管音のような無機質な響きがある。
  
彼の中にある感性で、奏法と音をチョイスして曲の中に織り込んでくるのだが、高い技術に裏打ちされているために独りよがりにはならない。なおかつベックの中での感性、というか音への思い入れ、世界観の強さ、言い換えれば偏執的ともいえる音への気持ち、が感じられるために、その独自の世界観を理解したものは確実な固定ファン層になるのだと思う。
特にこのアルバムでは後年のベックのキャリアの中でも最も普通のロックよりであるために、逆にベックの特異性がわかりやすく浮き彫りになっているとも言えるかもしれない。
  
  
たとえば3曲目の「Nazz are blue」の間奏などは典型的で、ベック以外の誰がこんなふに弾くのか、という感じ。はじめはなんだこりゃ、という違和感が、その内にははーん、と唸らされ、しばらくするとそれが必然的な音に聞こえ始め、やがては、まさに「世の中には2種類のギタリストがいる。ジェフ・ベックとそれ以外だ」という言葉通り、その唯一無二な異形の音にはまってしまうことになる。
  
1,2,3,5曲目と前半は勢いのある良い曲の連発。
11曲目の良くて、最後の2曲はジミー・ペイジとジェフ・ベックの競演。心なしかジミー・ペイジのテイストがツェッペリンを思わせるものがあり、この2人が相まみえているというだけで失神もの。そしてさすがの音圧。
  
キース・レルフのボーカルはうまくはないのかもしれないが、後のベックのパートナーとなるロッド・スチュワートなど巧いボーカリストとは相容れなかった強すぎるベックの個性とは上手く折り合っていたのかもしれない。またこのバンドではジム・マッカーティとポール・サミュエル・スミスの絶妙のリズムも見逃せない。
  
これだけの内容の重さを持ったアルバムは今の時代では生まれなくなっていることをつくづく感じざるを得ない。
ビートロックとしてのポップな側面、ベックのオリジナリティ溢れる凄まじいギターワーク、それまでのロックの枠からはみ出したサイケデリックテイスト、ペイジとベックの競演、と聴くたびに色々な楽しみ方ができる、奥深い名盤です。


ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン

2007-12-08 18:07:59 | ブリティッシュロック

ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-06-21
ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン
John Mayall & Blues Breakers with Eric Clapton (1966年UK)
  
1.All Your Love/オール・ユア・ラヴ
2.Hideaway/ハイダウェイ
3.Little Girl/リトル・ガール
4.Another Man/アナザー・マン
5.Double Crossing Time/ダブル・クロッシング・タイム
6.What'd I Say/ホワッド・アイ・セイ
7.Key To Love/愛の鍵
8.Parchman Farm/パーチマン・ファーム
9.Have You Heard/ハヴ・ユー・ハード
10.Rambling On My Mind/さすらいの心
11.Steppin' Out/ステッピン・アウト
12.It Ain't Right/イット・エイント・ライト
  
JOHN MAYALL ジョン・メイオール(vo,kb)
ERIC CLAPTONエリック・クラプトン(g)
JOHN McVIE ジョン・マクヴィー(b)
KEITH ROBERTSON キース・ロバートソン(ds)
  
  
イギリスにおいてブルースロックを最も早く本格的にブルースやR&Bを紹介したのはアレクシスコーナーだが、65年にデビューしたジョン・メイオール率いるブルース・ブレイカーズとグラハム・ボンドをあわせて草創期の3大バンドということも出来るだろう。そしてアレクシスコーナーがチャーリーワッツらを輩出したのと同様にブルース・ブレーカーズもブリティッシュ・ロックを形成してゆくスターを多く輩出したことで知られ、「ジョン・メイオール・スクール」と呼ばれるほどである。輩出した人材は、フリートウッドマックを結成するピーター・グリーン、ミック・フリートウッド、ジョン・マクヴィー、後にストーンズに加入するミック・テイラー、フリーのアンディ・フレイザー、など枚挙にいとまが無く、極めつけは、ここからクリームを結成することになるジャック・ブルースとエリック・クラプトンである。本作は1966年発表の2ndアルバムであり、クラプトン在籍時の傑作である。
   
もちろんブルース・ブレイカーズとしてはブルースを本格的にやるグループであり、クラプトンも在籍していたヤードバーズがローリング・ストーンズに続けとばかりにシングルヒットを狙うようなポップ路線を取り始めたことにたいする反発と本格的にブルースをやりたい、という欲求があって、すでに相当の名声を得ていたにもかかわらず、まだそれほどメジャーでもなかったブルース・ブレイカーズに加入することになったわけだが、そういった硬派な音楽至上主義的な志向は、時代的にも反体制的な態度であり、反メジャー的、であり、ロック的であり、多くの優秀なミュージシャンがそのような志向のもとにブルースロックというものを探求する中で、ブリティッシュロック黄金の時代を形成してゆくことになるのである。
   
そこで本作だが、まずジョン・メイオールという人のブルースに対するフィーリングというかブルースがもつ本質的なグルーブというものをしっかりととらえていることから来るノリ、が全体を支配している。クラプトンよりもスキルの落ちるメンバーであってもその辺りに対する信頼があったからこそクラプトンもこのグループに在籍したのではないか、という気もする。ジョン・メイオールのボーカルはちょっとつたないし、うわずっているが、それがかえってブルース特有の重さや暗さを払拭しており、白人的な?明るく軽いブルースロックになっているのである。
   
そして何よりもこのアルバムを名盤たらしめているのはやはりクラプトンのギターワークだ。はっきりいってこれはギターアルバムである。クラプトン史上最高水準の演奏を聴かせてくれているだけではない。ハードロックを誕生させたルーツとなる一枚だと言っても言い過ぎではない、それほど画期的なアルバムでもある。
   
当時全盛だったサーフ・ミュージックやビート・ロックなどで全盛だったのはフェンダーギターのジャカジャカした音かテケテケした音であり、メロディーラインをなぞる音が主流だった。ギターが、というよりも求められていた曲自体がそのようなギターを主流にさせていたとも言えるかもしれない。しかしブルースを志向したクラプトンは、フレディ・キングも使用していたギブソン・レスポールを持ち出し、イギリスの国産アンプ、マーシャルのそれも小型の50W タイプにつなぐことにより、アンプの出力のめいっぱいのところで出される音の伸びとひずみ、を引き出し、自在に操ったのだ。クラプトン自身はこの時、好きなブルースマンと同じギターを使って、めいっぱい演奏しようという位の意識しかなかった可能性もある。しかしこの組み合わせにより生み出されるファズを主体にした演奏こそが、これをベースに3代ギタリストの後の2人ジェフ・ベック、ジミー・ペイジやポール・コゾフらによって追従され、ブリティッシュハードロックの方程式として確立されてゆくことになるのである。その意味ではブリティッシュ・ハードロックはここから口火を切った、といってもいいのかもしれない。
   
そういうロック史上の意味合いとは別の次元で、ここで聞かれるクラプトンの演奏はすばらしい。何のてらいもなく、惜しげなど全くなしで、これでもかというほどガンガンにひきまくっているのだ。そしてそのチョーキング、ヴィブラートも青リンゴのように青く硬質で若々しく伸びやかだ。後年の渋い枯れたイメージとは違う、若さで攻めてる感じのクラプトンを聞くことが出来る。
    
1.オール・ユア・ラヴ、はオーティス・ラッシュのカヴァー、2.ハイダウェイはフレディ・キングのインスト・ブルースナンバー、6.ホワッド・アイ・セイはレイ・チャールズ、11.ステッピン・アウトはメンフィス・スリムのインスト・ブルースナンバーで2と共にクラプトンは後々までライブで演奏し、ある意味彼の印象を形成したナンバーとも言える。
    
ジョン・メイオールも4,8,11あたりでブルース・ハープ(ブルースハーモニカ)の名手としても名演を聞かせてくれている。
   
この一枚を残してクラプトンはグループを一旦抜け、後にクリームを結成し、ブリティッシュロックの形成に又一役買うことになるのである。