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Rock Climber 洋楽レビュー

Rock、HM/HR、Alternative、Jazz、ラーメン

Free

2008-08-30 22:02:18 | ブリティッシュロック
Highway Highway
価格:¥ 1,640(税込)
発売日:2002-03-12

Free 「Highway」1970年UK
フリー「ハイウェイ」
 
1. Highway Song
2. Stealer
3. On My Way
4. Be My Friend
5. Sunny Day
6. Ride on a Pony
7. Love You So
8. Bodie
9. Soon I Will Be Gone
10. My Brother Jake [Single][*]
11. Only My Soul [Single 'B' Side][*]
12. Ride on a Pony [BBC Session][*]
13. Be My Friend [BBC Session][*]
14. Rain [Alternative Version][Alternate Take][#][*]
15. Stealer [Single Version][*]

2002年UK Remaster

Andy Fraser ( Bass )
Paul Kossoff ( Guitar )
Paul Rodgers ( Vocals )
Simon Kirke ( Drums )
 

ロックにはまっていく初期の過程で、ロックっていいなあ、と思わせてくれたいくつかのアルバムにはとても思い入れがあるものだと思いますが、フリーの、特にこのアルバムは、僕にとってそういうアルバムの一つです。
 
一般的に彼らの代表作は3枚目の「Fire and Water」でしょうが、個人的にはこの4枚目の「Highway」の方が断然好みです。
 
同じ時期にアメリカで発表されたThe Bandの「Music from the big pink」、Bob Dylanの「Basement Tapes」によるR&B、ブルースの南部的解釈は、行き詰まっていた英国のブルースロック勢、ブルースから離れてゆこうともがく彼らにとって大きなインパクトを与えました。彼らにとっての4枚目の本作では、今までの彼らの独特の白人ブルース、R&Bフィーリングに加え、The Band的な米南部的なアーシーな曲の魅力が加わり、フリーの一つの絶頂期を現出していると思います。
 
英国ブルースロックの草分けアレクシスコーナーに見いだされたフリーは、ブラインドフェイスの前座、3枚目の「All Right Now」の大ヒットでブレイクした思いっきりブリティッシュ・ブルース・ロックのど真ん中からスタートしたグループだったが、進化の過程で、いかに白人としてのオリジナルなブルース、R&Bのフィーリングを手に入れられるか、ということと格闘したグループといえるでしょう。
 
グループの代名詞の一つは、なんといってもロック界史上に名を残す名ボーカリスト、ポール・ロジャースの存在だ。個人的に言わせてもらえば、3大フェイバリット・ボーカリストはピーター・ガブリエル、スティーヴ・ウィンウッド、とこのポール・ロジャース、おもいっきり黒い系に偏ってますが(笑)。。
 
かれの魅力はR&B的黒さであることはもちろんですが、それほど張り上げないスタイルの中での音域の広さと、おちついた丁寧な歌い回し、一言一言をまるで将棋の駒のように配置してゆくかのような、絶妙な音の配置バランス、緩急自在、そんな感じ。それゆえに、とってもスローに、ゆったりして聞こえるんだと思う。
 
あるいは唐突ですがイチローのバッティング、を連想することもあります。
絶妙なバットコントロールで、外角の球でも低めのボールでも、まるで球がとまったようにはじき返し、バットの軌道も球の行方もふくめて、独自の時間が流れているような一つの芸術。ポール・ロジャースの丁寧なボーカルを聴いていると、そんなことをイメージします。
 
あとフリーの独特の魅力の要素として大きいのは、リズム隊。
アンディ・フレイザーのベースとサーモン・カークのドラムによるなんともいえない非・黒人的なリズム。ベッタンバッタンというか、どこか平面的でいながら、強烈な存在感で迫るような重さ、黒人のバネのある弾むようなリズムとは違う独特のリズム、それはブルースから離れていく過程で彼らが自然にたどり着いた一つの形であり、まさにそこが他の英国ブルースロック勢とは異なる次元での彼らの人気の秘密だろうと思う。
 
特に日本人には、その平面的な上に乗っかるリズム感が受け入れやすかったんだと思う。

なんだか手もみの手拍子が合いそうな気がしてくると言ったらいい過ぎでしょうね。
ともかく彼らが生み出したタイトな白人R&B、ブルースロックはこの時代にして”ヘヴィ・ロック”と形容され、その後のロックに大きなそして渋い影響を与える一枚になったんだと思います。
 
ハード・バイルドみたいなロジャースのボーカル、タイトで独特のリズム、そこにポール・コゾフの太くて荒々しいギターが縦横にからんで、渋さの極みみたいなことになるんだが、それぞれがそのスタイルの中で淡々と演っているために、どこか仕事師が仕事を終えた後の歯切れの良さ、清々しさのような印象がのこる。男性のファンが多いのは、その辺に鍵があるんでしょうね。
 
 
曲で見ると、もう全てが名曲で、捨て曲がありません。
しかし、名曲中の名曲といえば、4曲目Be my friendでしょう。
しかしそれを引き立て、又引立てられる前後の曲などもまたすばらしい訳で。
8曲目Bodieなどもそうですが、やはりロジャースのボーカルの魅力がフル全開になるのはバラード系の曲です。このアルバム時にロジャースは21歳前、信じられない若さと渋さ。
 
後のバッド・カンパニーは完全にアメリカ史上向けの音に方向性が変わり、それはそれでいいし、近年のソロもいいのだけど、やはりポール・ロジャースは、フリーのこのアルバムが、私にとっては最高の名盤です。
 
あと何故かフレディの後釜に座ったクイーンでアルバムが出るようですね。ロジャース色のR&B路線で、かつてのクイーンとは違うものになるようですが、どうなるんでしょう。
 
"Be my friend" 

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"Stealer"

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フリートウッドマック「英吉利の薔薇」 1969UK

2008-08-16 18:09:06 | ブリティッシュロック
English Rose English Rose
価格:¥ 2,117(税込)
発売日:2007-09-10

Fleetwood Mac「English Rose」1969年UK
フリートウッドマック「英吉利の薔薇」
   

[A]
1 Stop Messin' Round モタモタするな P.A.Green/C.G.Adams
2 Jigsaw Puzzle Blues ジグソウ・パズル・ブルース D. Kirwan
3 Doctor Brown ドクター・ブラウン B.Brown
4 Something Inside Of Me 恋のモヤモヤ D. Kirwan
5 Evenin' Boogie 夕暮れブギー J. Spencer
6 Love That Burns 燃える恋 P.A.Green/C.G.Adams

[B]
7 Black Magic Woman ブラック・マジック・ウーマン P.A.Green
8 I've Lost My Baby 君をなくして J. Spencer
9 One Sunny Day ワン・サニー・デイ D. Kirwan
10 Without You ウィズアウト・ユー D. Kirwan
11 Coming Home カミング・ホーム E. James
12 Albatross アルバトロス P.A.Green

Peter Green- - -vocal,guitar
Jeremy Spencer- - -vocal,guitar
Danny Kirwan- - -vocal,guitar
John McVie- - -bass
Mick Fleetwood- - -drums

   

いわずとしれた名盤中の名盤、ピーター・グリーン時代の初期フリートウッドマックのブリティッシュ・ブルースロックの名作です。サンタナのカバーで有名になった「Black Magic Woman」、全英No.1になったインスト曲「Albatross」を納め、主にアルバム「ミスター・ワンダフル」と「聖なる鳥」から選曲された米国編集盤。ワン・サニー・デイ」、「恋のモヤモヤ」、「ウィズアウト・ユー」はこのアルバムのみの収録。11.Coming homeはエルモア・ジェイムス。
 
 
強烈なジャケットはミック氏。
ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズを離れたミックとマクヴィーの2人を核にして、後の「噂」などの大ヒット時代まで、多くのメンバーチェンジと音楽性の変遷を経てゆくわけですが、本作はピーター・グリーン在籍時代のブルースロックグループとして世に出た頃の彼らの代表作の一つです。

 
何度聞いても思うのは、曲ごとのメリハリというか、粒の揃った楽曲群。
1曲ごとにアップな曲とダウンな曲、インストな曲が交互に配置されているのだが、ことごとく名曲といっていい出来映え。
 
同じジョン・メイオールのブルースブレイカーズから分かれたクラプトンが取った方向性よりも、ど真ん中のブルースロック路線をとっているように感じる。
 
どちらかというと、独自色を出すためにブルースから離れよう、ギタリストとしての側面をのばしてゆこう、という他のグループやミュージシャンとは違って、ブルースの中にどっぷりと入り込みながら、じわじわと白人である自分たちの中からにじみ出してくるものは何なのか、を求めるという方向性を取ったバンドだったんじゃないか、と思ったりします。
 
それゆえに、明るくアップなブルースナンバーは、文句なしに楽しめます。
アメリカのブルースロック・グループと比べるとやや非力な感じのボーカルが英国っぽいですが、それも彼らの味の内。
 
エルモア・ジェイムス的スライド・ギターを聴かせるジェレミー・スペンサー、BBキング的なスロー・ブルースで味を出しつつそれにとまらない多彩な才能を見せつけるピーター・グリーン、この静と動の2枚看板に加え、18歳でグループに参加したポップでアコースティックなダニー・カーワンと異なる個性を持つ3人が揃っていたことも、この時期の彼らの曲のバリエーションの多彩さを支えていた理由でしょう。
 
 
後の「Fleetwood Mac」や「噂」と、この初期とは全く違うグループだ、という言われ方をよくすると思う。しかし特に75年の「ファンタスティック・マック(Fleetwood Mac)」アルバムと本作を続けて聴いてみると、共通点というかテイストの非常に似通った曲がいくつもある気がしてくる。
 
特に本作のスローなナンバー、Albatrossに代表されるまったりとしたピーター・グリーンによるナンバーは、彼なき後ブレイクしたグループで、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガム、クリスティン・パーフェクトのヴァーカルの後ろで流れる音は、初期の彼らの音と繋がっている気がして仕方がない。「噂」まで行くと、わかりにくくなるが、まだファンタスティック・マックまでは、過去と繋がっている気がします。
 
そう思うと、ずっとグループを支えてきたミックとジョンの2人のタイトなリズム隊は、変わっていったグループをどういう思いで続けさせていたのでしょう。
 
本作の後で米国に渡り、ブルースジャイアンツとの競演を果たした根っからのブルースマンだった先の3人のギタリストは、3人とも破滅的な人生をたどりました。
 
クリントンの大統領選挙でPOPになった彼らの曲がキャンペーンテーマソングとして使われていました。メジャーなPOPSグループになった彼らの歴史に刻まれたブルースロックという不滅の過去の記録、ブリティッシュ・ブルース・ロックの金字塔、名盤です。
 
 
アルバトロス

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Like it this way 

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Rod Stewart「NEVER A DULL MOMENT」1972年UK

2008-08-03 22:00:53 | ブリティッシュロック
Never a Dull Moment [12 inch Analog] Never a Dull Moment [12 inch Analog]
価格:¥ 2,959(税込)
発売日:2008-04-01

Rod Stewart「NEVER A DULL MOMENT」1972年UK
ロッド・スチュワート「ネヴァー・ア・ダル・モーメント」
 
1.True Blue
2.Lost Paraguayos
3.Mama, You Been on My Mind
4.Italian Girls
5.Angel
6.Interludings
7.You Wear It Well
8.I'd Rather Go Blind
9.Twistin' the Night Away
 
Rod Stewart(Vo), Ron Wood(G), Pete Sears(B), Mickey Waller/Kenny Jones(Dr), Ian MacLagan(Or),etc

イギリス時代のロッド・スチュワートには、”青春時代”なイメージがあって、どの作品も雰囲気からして、とても好きです。特にソロ2作目の「ガソリン・アレイ」のジャケットなどはイメージにぴったりで、秀逸です。スタローンの映画でパラダイス・アレイっていう貧乏青春映画がありましたが、アレイつながりもあって私の中ではイメージがかぶってしまいます。
 
 
ジェフ・ベック・グループで世に出て、かのスティーブ・マリオットの後釜としてロン・ウッドと共にスモール・フェイセズに加入。ロニー・レイン、ロン、ロッドのいたフェイセズは、ロックファンで嫌いな人はいないでしょう、というほど最高のロックンロールを聴かせてくれます。
 
そしてフェイセズの傑作と平行して、彼はソロ作を発表。
70年ガソリン・アレイ、71年フェイセズのLong Player、同年Every Picture Tells a Story、同年フェイセズの馬の耳に念仏、そして72年本作、73年ウー・ラ・ラ、74年スマイラーと怒濤の日々。
 
 
フェイセズの2大傑作の間に作られた本作が悪かろう筈がありません。
ガソリンアレイよりも落ち着いた雰囲気を醸し出しています。ゆったりしたナンバーが多いせいかもしれません。
  
またフェイセズと比べると、英国トラディショナル・フォーク、スコティッシュ・トラッドな雰囲気が強く、そのためよりロッドのヴォーカルをしっかり聴かせます。
この頃のロン・ウッドもストーンズとは違う味を出しています。
 
1曲目は冒頭から勢いの良いミドルテンポのロックンロール。3曲目はボブ・ディラン。5曲目はジミヘン。最後はサム・クック。 
 
サッカーで大成せず、放浪と酒の日々、まだあか抜けきらない、内気で、しかししっかり自分の世界を持って、上を目指そう、はい上がろう、というパワーと、若さと混乱のなかで、まあとにかく楽しく無茶もやろうぜ的なノリが混じり合って、なんとも言えないロックな青春テイストを醸し出している、っていう感じがします。 
  
本作はUK1位、US2位を獲得しています。
ロッドの英国時代独特の青春テイストとアルバムとしての出来が一番良いソロアルバムはこれじゃないかなと個人的には思います。フェイセズ作品に劣らない名盤です。
 

”Angel”

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”I'd Rather Go Blind”
”True Blue”

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マイ・ブラッディ・バレンタイン「愛なき世界」 1991年UK

2008-07-22 00:35:56 | ブリティッシュロック

Loveless Loveless
価格:¥ 1,342(税込)
発売日:1991-11-05
MY BLOODY VALENTINE 『LOVELESS』1991年UK
マイ・ブラッディ・バレンタイン「愛なき世界」
 
1.Only Shallow
2.Loomer
3.Touched
4.To Here Knows When
5.When You Sleep
6.I Only Said
7.Come In Alone
8.Sometimes
9.Blown A Wish
10.What You Want
11.Soon
 
 
Kevin Shields(ケヴィン・シールズ Vo&G)
Colm O'Ciosoig(コルム・オコーサク Dr)
Bilinda Butcher(ビリンダ・ブッチャー G&Vo)
Debbie Googe(デビー・グッギ B)
 
 
マイブラのこの音楽世界は、他ではなかなか見つからない。 
マイブラに続くシューゲイザーと呼ばれるフォロワーは数あれど、マイブラのような世界には、なかなか出会えない。
 
間違いなく負の音楽だろう。
怒り、叫び、憤り、混乱、否定、そして悲しみ、はかなさ、弱さ。
それら相反する言葉にならない感情の塊を、そのままで、限りなく極限まで音像として表現しきろうとすること。それら全ての美しさ、希望。
 
やりきれない帰り道、大声で力一杯さけんで何もかもぶちこわしてやりたい日、地の底まで沈み込むような夜、誰とも話したくもない週末、何度となく、このアルバムは自分とともにあった。このアルバムほど、共にいられるアルバムは、なかなか見つからない。
おそらくは、そうやって世界中の負の気持ちに、応え続けてきたのだろう。
 
ケヴィン・シールズという人の頭の中、超個人的な内面の行き所を音に変えることに成功したこのアルバムが、91年という年に、これから始まる90年代という時代の気分を早々に探り当ててしまった。
 
ニルヴァーナ、オアシス、スマパン、レディオヘッド、コールドプレイ、彼らが彩った90年代の音の本質は、ここから始まったと言って構わないだろう。
 
多分に80年代後半からの流れを残している。
同じアラン・マッギーのクリエイションのジーザス&ザ・メリーチェインの轟音と甘美的で内面的なヴォーカルスタイル、ストーン・ローゼスの”音”そのものによるグルーブ至上主義。
 
プライマル・スクリームのボビー・ギレスビーの朋友だったクリエイションのオーナーアラン・マッギーによって、ジザ・メリ、ハウス・オブ・ラヴ、ライドなどに続けて出されたのが、本作だった。制作に4600万円をつぎ込み、破産寸前になったレーベルがSONYの資本参加でかろうじて救われ、94年以降のオアシスの快進撃で持ち直し、英国一のインディレーベルと言われるようになった話はあまりにも有名だ。
  
時代感覚に鋭敏で、独特の嗅覚でなだたる名バンドを送り出してきたアラン・マッギーが思う存分ケヴィン・シールズの音作りに金をつぎ込むことに賭けた。音楽人としての最高のわがままだったのかもしれない。金銭的に取り戻せるという算段があった訳ではないかもしれない。しかし、アラン・マッギーをそれだけの気持ちにさせる音世界が、このアルバムにはあったのだろし、それはかれの独りよがりではなかったどころか、90年代の精神性を見通していた彼の眼力を、あらためて証明したことになった。
 
 
音響的な側面と、精神的な側面が、美しいメロディーの上で高い次元で融合しあっている希有な作品だ。暴力性と憤懣に答えうる轟音とは何かをよく分かっている轟音と、ゆがんでうねって捻くれてゆくディストーション、そして奥に潜む希望としての無垢できれいで、壊れそうに繊細なメロディー、人間くささを感じさせない中性的な声が、まるで誰にとっても心の声に聞こえてくる感情移入させやすい呟くようなヴァーカル。
  
それらが津波のように90年代のWall of soundとも言うべき分厚い音の層になって押し寄せてくる。4人の音とは思えないほどのオーケストラのような音圧、それでいながら胎内から響いてくるうめき声のような精神的な声が、圧倒的な世界観として迫ってくる。
 
音の分厚さ、中性的なヴォーカル、普遍的なサイケデリア、それらが00年代も終わりになろうかという今でも、ソフィア・コッポラやスカーレット・ヨハンソンら著名な女流アーティストなどを初め評価は絶えることがないばかりか、ついに今夏は再結成まで果たすことに。
いつまでも彼らの新譜が待ちわびられていること自体、彼らのこのアルバムがいかに唯一無二であったかを証明している。90年代の最高傑作の一つであることは疑う余地もない。
 

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トラフィック「ジョン・バーレイコン・マスト・ダイ」 UK

2008-06-15 13:42:19 | ブリティッシュロック

ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2006-06-21

 

Traffic「JOHN BARLEYCORN MUST DIE」1970年UK
トラフィック「ジョン・バーレイコン・マスト・ダイ」
 
 
Side A
1. Glad
2. Freedom Rider
3. Empty Pages
+4. I Just Want You To Know
 
Side.B
5. Stranger To Himself
6. John Barleycorn
7. Every Mother's Son
+8. Sittin' Here Thinkin' Of My Love
+9. Backstage & Introduction
+10. Who Knows What Tomorrow May Bring [ Live Version ]
+11. Glad [ Live Version ]
 
(Producer) Steve Winwood, Chris Blackwell, Guy Stevens
Steve Winwood (vo,g,org,p,b,dr), Jim Capaldi (dr,perc,vo), Chris Wood
(fl,sax,perc)
 
 
なんだかわからないが、とにかく後期トラフィックは自分の感性の壺に面白いほどはまってくる。前期トラフィックを経て、クリーム後に強力なボーカリストを求めていたクラプトンとウィンウッドが組んだブラインド・フェイスを経験してから、ウィンウッドとトラフィックは急変する。それもとても良い方向に。
  
未だスペンサー・デイビス・グループの延長上のR&B路線に引きずられていた部分が、クラプトンの自由なインプロヴィゼーション、フリージャズに影響を受けたせいか、完全にフリージャズの影響を表し始めたのが、この後期トラフィック第1作であり、傑作「ジョン・バーレイコン・マスト・ダイ」だ。
 
なんといってもロック史上最高に格好良い瞬間、と行って過言でない時間がいきなり訪れる。1曲目の「Glad」から「Freedom Rider」に移る瞬間がそれだ。トラフィックの第二作からこれほど彼ウィンウッドを変えたものはなんなのか、本来の彼の音楽性やFreeJazzを彼なりに斟酌した結果もあろうが、やはりファンとしてはクラプトンに影響をうけた、と捉えてしまう。最もブラインド・フェイスでのクラプトンは表に出ることを嫌い、裏方に徹していたわけで、何かを探し求めていたウィンウッドが自主的にクラプトンから良いものを学んだ、という感覚の方が近いのかなと思う。
 
結果的に、クリームよりもよっぽどセンスの高い、フリージャズとロックの融合、つぼを心得たハイセンスなインプロヴィゼーションが展開されることになった。
 
そして、スティーブ・ウィンウッドの、白人レイ・チャールズと呼ばれたホワイト・ソウル・ボーカルが、R&Bを離れたところで逆に際だつことになるのだった。
 

 
ウィンウッドのソウルフルなブルーアイド・ソウルなボーカルは、思いっきりR&Bな曲の中では、どうしてもオリジナリティが出ずに、ソングライティングの面でも、活かされ切らずに来ていた、のだと思う。
 
最小限に音数を絞り込み、音の隙間を、センスと歌心で絶妙に埋めてゆく。
自然体の気張らないウィンウッドのボーカルが、かえってホワイト・ソウルの彼の資質を際だたせる。前期トラフィックの頑張ったパンパンのウィンウッドのボーカルよりも、はるかに隙間のある後期の自然なボーカルの方が、ずっとウィンウッドの黒さ、良さを浮き彫りにすると思う。
   
 
ここに、ソロ時代にまで至るウィンウッドの本当のトラフィック・ワールドが現出した。
トラフィックはこのアルバムの後、さらにFreeJazz路線、気の利いたセンス良いインプロヴィゼーション路線を突き進む。音はさらに洗練され、抑制され、ウィンウッドの黒さがミニマムな音の中で、大人の黒さを増す。
 
ボーカルの力にとらわれすぎていた、と言ったら言い過ぎかもしれないが、間違いなくウィンウッドはソングライティング、メロディーセンスの才能で生き残ってきたアーティストだ。その本当の道の始まりは、このアルバムだったのではないか、と思っている。
 
 
本作は、後期トラフィックの第一作であり、まだどこか前期の元気なブラック路線の入り交じったバランスの元に成り立った、トラフィックとしてのトータルな意味での代表作、といってよい作品だろう。
 
このジャズ的センスに彩られた洒落たブリティッシュ・ソウル路線は、ポール・ウェラーなど、その後のブリティッシュロックに多大なる影響を及ぼす。 
 
クリームらブリティッシュ・ブルース・ロックのブームがのこしたインプロヴィゼーションは下火になっていったものの、そこにまだまだ見落とされた鉱脈があることを信じ、自らの信じる力で、ブリティッシュ・ロックに一筋の道を切り開き、道筋をつけたウィンウッドのトラフィック。間違いなく、史上に残る名盤であり、史上に残る名バンドの奇跡。
必聴です。
  
Glad

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Freedom Rider

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