風の回廊

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「国民生活第一」への改革は何処へ向かうのか(3)政治主導と地域主権

2010年09月12日 | 日記
Samson Fran醇Mois - Chopin Piano Concerto No.2 1-4



 一昨日、鈴木宗男議員の上告棄却に関する、弁護団と本人の記者会見がありました。鈴木議員側は異議申し立てをするようですが、異議申し立てで棄却決定を覆すことは困難で、事実上、収監と国会議員失職が決定されました。
なぜこのタイミングなのか?という疑問が残ります。
 鈴木議員は、これまで検察の在り方について、「検察の暴走」「検察の青年将校化」「シナリオに基づいた取り調べ」と主張し、取り調べの可視化、冤罪の可能性が高い人の支援、特に小沢さんと元秘書の一連の検察の捜査が始まってからは、その主張を一段と高いステージで語ってきました。

 最高裁の決定は、密室の暗闇の中で行われ、実態は何ひとつ伝わってきません。だから余計疑心暗鬼になります。

◇代表選の最中、何かしらの権力の力が働いたのではないか。
・その権力は、事件の背景のひとつでもある、鈴木議員の存在を良しとしなかった外務省なのか?

・外務省の中で次第に力を持ち政治主導を果たしてきた鈴木議員の存在を抹殺しようとした当時の官僚主導勢力の自民党の最大派閥、清和会(町村派)なのか?

・あるいは、小沢さんを明確に支持し、小沢さんに対する検察の批判繰り返し、「政治とカネ」が検察のシナリオだと主張する鈴木議員が邪魔な菅政権という権力なのか?
・あるいは、もっとも鈴木議員に批判されている検察の力が働いたのか

昨日行われた、郵政不正事件の村木厚子さんの判決は、大阪地検特捜部の暴走、シナリオに基づいたでっち上げだと知らしめる無罪判決であることが、想定され、その影響を少しでも押さえたい、ニュース性を少しでも薄めたい検察の意図が、このタイミングで図られたのか?

・そしてもうひとつ、9月1日に日本記者クラブ主催の昼食会で、大林宏検事総長が招かれ、「国民の司法参加と検察」のテーマで講演しました。その後の代表質問で大林検事総長は、小沢さんの一連の捜査に対して、事実上の敗北宣言とも言える発言をしました。内容は小沢さんがこれまで記者会見やことあるごとに言ってきた「一年あまりにもわたる捜査にも関わらず、立件する証拠はなかった」というものです。
これは東京地検特捜部の大失態を認め、小沢さんの「政治とカネ」の問題はなかったと認めたことです。そして、村木さんの想定されていた無罪判決。検察のこのふたつの大失態と何らかの関わりがあるのではないか……そんなことも感じます。

 政治的に影響を及ぼす可能性の高い司法の決定は、その重大性から、時期を避けるのがまともな司法だと思いますが、そうではなかった。代表選に影響しないそれよりもずっと前か、後でもよかったのではないか、と思うのです。
こうしたことに僕は、権力の腐敗、政治と官僚の癒着、司法の官僚権力の奴隷化を感じるのです。
そして最悪の奴隷は、マスメディアですね。

 いずれにせよ、小沢さんにとっては痛手であり、10月に行われる衆院選補欠選挙、北海道五区で立候補する町村議員(自民)にとっては、救いの決定であるし、鈴木議員が、事実上失脚し外務官僚と検察、官僚全体が、ひと安心していることは間違いありません。
 話は、代表選から少し離れたところから入ってしまいましたが、最高裁をはじめ司法の世界。また検察を含め官僚組織の中で行われていることは、私たちには伝わってきません。
司法の場は明らかにされない部分があるのは、ある程度仕方のないものなのかもしれませんが、検察や官僚の実態が伝わって来ないのは由々しき事態であり、まるで社会主義国の情報公開程度だと思います。なぜかと言えば、政治主導が行われていないからです。

 ようやく本題に入りました。これ以降は敬称略です。
菅政権の財政方針は、緊縮財政で「一律10%削減」という、どこかで見たような見出しです。
財務省が作った案をそのまま方針としていた自民党と同じですね。自民党は伝統的に緊縮財政を敷き、「財政の健全化」を訴えてきましたが、実態はどうだったでしょう?お分かりのとおりです。つまり緊縮しても財政は健全化するどころか悪化の一途をたどってきました。なぜかと言えば、システムが硬直化し過ぎていて、無駄が多すぎるからです。菅政権の来年度の予算案では、小泉・竹中構造改革で生まれた格差に苦しむ地方が、さらに10%分苦しまなければいけないかもしれませんね。これでは脱官僚とは言えません。
 
 国から地方に歳出される予算は、地方交付金ですが、一律に10%減らされたらたまったものではありません。特に地方税という「上がり」が少ない県の財政は、地方交付金の占める割合が、ひじょうに高く、交付金の減額は、今のシステムのままでは格差はさらにひどくなり、死活問題です。
 中央官僚の「紐」が付き、各省庁の縦割で硬直的な地方交付金を、一括交付し、各省庁がこれまで雁字搦めにし、非効率的なシステムで無駄ばかり生み出してきたシステムを変え、地方に自由裁量権を与え、地方の独自性を確立し、地方独自の特色ある自治を作って行こう。
というのが、民主党の地域主権の柱です。そして官僚改革の柱です。「事業仕分け」ばかり目立ち、事業仕分けこそ、無駄を省く最大の効果だと思っていたら認識不足です。
「紐付き交付金」の紐を断ち切り、各省庁の地方への権限を大きく縮小させ、地方に委ねることで、無駄を省いていく。地方が生き返り、みずみずしくなり、同時に官僚の権力も弱体化する。
そして責任を持って遂行するのが、選挙で国民に選ばれた政治家です。
まさに政治主導、官僚改革の最大の効果なのです。

 小沢は、ぶれることなく言い続けています。
民主党が行った、各都道府県首長、行政へのアンケートでは、自由裁量権を与えてもらえば、現在の交付金の70%で、今よりもまともな自治が生まれるという答えだそうです。実際、福祉、医療、保育、教育などそのほとんどは地方が運営しているのに、予算の使い方は、各省庁の手にあるんですね。金を握っているものこそ、国家の権力者です。まさに官僚主導です。
 地方交付金は、約21兆円で、このうち15兆円が、社会保障費です。社会保障費は、増えることは間違いなく、減ることはないけれど、ここにも無駄が潜んでいるはずです。いわゆる「縦割り行政」が、効率化の道を阻んでいます。
 さらに地方への予算として、裁量的経費(事務的経費)が、約15兆円あります。
国庫から出る地方が使えるお金は、36兆円です。各首長、行政が答えたとおり、70%の予算で十分だ!とすれば、約10兆円が、創出されるのです。

 小沢はこんな例を出して説明しました。
 「北陸のある県のある地方で、融雪設備の補助金を出してもらうように要請しようとした。しかし、どこを調べても、融雪設備単独で貰える補助金はない。スキー場を新たに作ると抱き合わせで融雪設備ができる補助金があった。スキー場は必要なかったが、融雪設備はどうしても必要だったので、申請した。補助金は全額出ないので、融雪設備にはもちろん、スキー場建設にも県が借り入れを起こした。しかし、数年後スキー場は、赤字を出し続け閉鎖した。これが、『紐付き交付金の実態』だ。官僚主導の実態。融雪設備も、スキー場も仮に同額だとすれば、借り入れも含めて、半分のお金で済んだわけだが、半分はスキー場の閉鎖と共に消えてしまった。残ったのは、本来必要のないスキー場の借り入れと、赤字だ」
 
 このような実態が現行のシステムでは、罷り通っているわけです。おかしいと思いませんか?

一方の菅は、一律10%削減と言っても、必要なものは出すし、必要でないものは出さないと、強気だったが、代表選の中盤あたりから、小沢の主張に抱きついてきた。
 本来小沢の主張は、民主党の主張であるわけだから、菅は短期間のうちに変節しなくてもよさそうなものだが、演説会と討論会でコロコロ変わっている。なぜ変わったのか、こうまで変節するのか、考えてみると、演説会で圧倒的に支持され、歓声が上がるのは、小沢の演説で、これもひとつの理由だと思う。新宿、大阪・梅田、札幌で行われた演説会をノーカットで見ると、菅への支持は、小沢の10分の1もない。可哀想なくらい、小沢の演説が喝采を浴びている。
そして説得力とその熱意に感動さえ覚える。
またネット世界での、圧倒的な小沢支持と菅不支持。この現象を見ると、メディアの報道や世論調査の結果は、俄かに信じがたい。たぶん菅も感じているはずだ。
 メディアは、「動員による」と一笑に付したが、その時の、茫然とした菅さんの姿は、まるで敗者の姿だった。演説の内容も、どう控えめに見ても、小沢の演説が遥かに勝っていた。
菅の演説は、市川房江を担ぎ出し参議員に当選させたこと、薬害エイズ問題の時の自慢話から始まり、
「一に雇用、二に雇用、三に雇用!」を毎回連発し、雇用を創出する経済政策は、ひじょうに曖昧でした。
 「動員」の疑いについてですが、演説を実際聴きに行った人の話を聞くと、動員をかけていたのは菅の方で、一目でわかるブルーの小物を持つ人たちがまとまっていたという。
動員についてはいずれにしても、そこで行われたメディアのアンケートの酷さはなかったようだ。
これについては、多数の証言者がいるので、時間があればいずれ書こうと思う。
 
 いずれにせよ、菅の地域主権、政治主導、官僚改革、財政の創出は、民主党のこれまでの主張から大きく後退したことは間違いない。
小沢は「国民に選挙で選ばれた政治家が、主導していくことこそ、主権在民の民主主義国家です」と主張する。「官僚になめられる政権は、国民主権から遠い」とも。

 さらに小沢は言う。「地域主権にまだほとんど手つかずの中で、消費税増税はいかがなものか。格差社会が生み出した、国民の異常な疲弊状態の中で、セーフティーネットとして創出した子供手当の減額もいただけない。まず本気で取り組むのは、政権交代の際の、国民の皆様との約束であるマニフェストを実行することだ」

 「バラマキ」だと批判されることが多い、「子供手当」だが、僕はバラマキだと批判される理由が解らない。子供手当に限って言えば、23000円/月/人は、充実しているフランスに比べれば、まだ少ないし、満額でようやくヨーロッパ並みである。その他の手当を含めば、まだまだ日本は先進国の中で社会保障後進国である。
直接、国民に手渡すお金は、官僚の紐が完全に切れた、政治主導によるセーフティーネットの一環であり、政治主導の賜物だと思う。何よりも「バラマキ」なのは「紐付き給付金」ではないだろうか?
 農家の個別保障制度も然り。小沢は漁業まで拡大したうえで、競争力をつけ、自由貿易化させ、made in japanの品質の良い農産物、魚介類をアジアに広めていくのだという。その前には当然、「食料自給率の健全化」を目指していることは言うまでもない。
 「高校の授業料の無償化」が、果たしてバラマキだろうか?格差社会の中で、高校に行けない人たちのための、セーフティーネット。すべての国民への公平なセーフティーネットだと思えないのだろうか。

 いずれにせよ、小沢の政策はとても解りやすく、説得力があり夢がある。
菅の政策は、どう控えめに見ても自民党化していて、そんな菅政権は必要ない。
 「首相がコロコロ変わると国際的な信用を失う」という理由で、菅を支持する人たちがいるが、言い出しっぺは、誰だと思いますか?
普天間基地問題で、徹底的に鳩山を恫喝し、「ル―ピー」だと言った、キャンベル国務次官補です。
キャンベルは、普天間基地移設先は、辺野古だと強硬に言っていた。
そして、菅は「日米合意」を遵守。辺野古への移設賛成。
一方の小沢は「日米合意」を尊重しながらも「沖縄のみなさんが反対している限り、辺野古への建設は無理。アメリカもそう思っている。だから、話し合う余地は十分あるし、私は話し合う」。
 キャンベルにとっていちばん首相になってほしくないのは、小沢です。

 僕は、変節を繰り返し、創造性に欠けた政策しか持っていない首相。政権交代の時の国民との約束を、半ば手つかずの状態でありながら「現実路線」だと言って自民党化する菅政権に去っていってもらいたい。また菅執行部はまだ誰も、参院選大敗の責任を取っていない。代表選の演説や討論会では責任の在り方も何ひとつ具体的に示されていない。首相は続けたいけれど、責任はとりたくないという理論がどこにあるのでしょう。

 今日面白い記事を見ました。自民党執行部が変わり、石原伸晃が新幹事長にいなりましたが、彼がこんな発言をしています。
「政策的には、菅さんと近い。『日本の財政には、漫然と構えている余裕はない』という認識があるなら、抱きつかれてもいい」

 自民党の政策と明確な対立軸を掲げ、政権交代を果たしにも係わらず、自民党の執行部から、「政策が近い」と言われるなんて、菅政権はいったいどこを目指しているのでしょうか。

                                    続く






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