◇在日アメリカ軍は、今も抑止力として機能しているのか
冷戦時代に取り交わされ、延長されてきた「日米安全保障条約」を法的根拠とする、在日米軍の存在は、冷戦時代のソ連の膨張政策を防衛する一定の役割をしてきたと思います。
しかし、僕の「思います」という観念の中には、「思わされてきた」という思いも含まれ、自民党政権とマスメディアによる意図的な操作も感じないわけにはいきません。
特に冷戦崩壊後、各国の世界戦略は大幅に変化しました。
アメリカが世界最強の軍事力を持っている事は否定しようもなく、中国の発展する経済が可能にした軍事力の過激な増大と、周辺異民族への弾圧や北朝鮮の核ミサイル開発が危険視され、在日米軍の抑止力は必要不可欠だという論調に日本は凝り固まっていますが、実際はどうなのか。
元外務省国際情報局長、元防衛大学校学長の孫崎享さんは、こんなふうに話しています。
その前に孫崎さんの話の信憑性を裏付けるために、外務省の国際情報部がどんな部署なのか説明しなければいけません。
外務省国際情報局は、アメリカのCIAやイギリスのMI6に相当する機関です。ただCIAと違うのは、他国を工作する機関ではなく、他国からの工作を防ぐ防諜機関です。CIAやMI6は、両方の能力を持ちますが、日本には他国を工作する機関は存在しません。内閣情報局という機関がありますが、彼らは海外経験がほとんどなく、防諜力はあるものの限られた範囲に収まります。
孫崎さんは、外務省時代アメリカ留学を経験し、さらにロシア、中東諸国への赴任経験があり、留学時代の研究は、ソ連の核戦略でした。そして国際情報局時代は、CIAと数多く接触し、アメリカの国家戦略の深部まで知る貴重な存在です。現在は、鳩山首相の私的諮問機関で重要な役割を果たしています。孫崎さんが官邸に入ったあとは、たとえば普天間基地問題に関して必ずこれまでと違った動きがあります。
それでは本題です。
米ソ冷戦時代、あたかも米ソの核攻撃能力、核防衛能力が、均衡状態であったかのように考えられていますが、実はその差は歴然とし、圧倒的にアメリカが優位に立っていたそうです。
ソ連がアメリカにようやく追いついたのは、それも核攻撃だけ追いついたのは、冷戦末期の頃で、オホーツク海に核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が現れた時だそうです。核防衛能力に至っては歴然とした差があったのが現実だそうです。
冷戦時代の米ソの軍事的戦略は、第二次大戦時のように大量兵器と大量兵力によって地域を奪っていく戦略は、下位の戦略として位置づけられ、ワシントンにいかに核ミサイルを撃ち込めるか、モスクワに核ミサイルを撃ち込めるかが、最高位の戦略で、それをソ連が可能にしたのが冷戦末期で、核戦略が同等になった時、何が行われるかと言えば、軍縮なんだそうです。
それ以上高める必要が、お互いなくなってしまう。こうした側面も冷戦構造の崩壊に繋がっているというのです。ソ連はそこまで到達するのが精いっぱいで、それ以上の、たとえば核防衛能力をアメリカ並みに準備することが困難な状況になってしまったというのです。アメリカ並みの国力と技術を持っていれば、今も緊張状態にあったかもしれない。しかし続かなかった。
今後、ロシアがアメリカ並みの核能力を持つには、10年以上かかり、懸念されている中国に至っては、30年経ってもアメリカに追いつかないそうです。ましてや崩壊寸前の北朝鮮の戦略など脅威にならず、仮に軍事的行動を起こしたとしても、燃料がたちまち途切れ、戦略はあっという間に崩壊し、戦略どころか、国家そのものが崩壊してしまうらしいです。
現実は、メディアや学者が流すほどの脅威は、極東に存在しないというのが孫崎さんの論調です。
これを裏付けるのが、アメリカ海兵隊の再編です。いずれ日本から海兵隊のほとんどはグァムに移転します。
なぜ移転可能なのかと言えば、危機が薄らいだからに他ならなく、ひとつは台湾海峡の危機です。
台湾海峡の台湾と中国の緊張状態に沖縄の基地と通常戦力、海兵隊の存在が、抑止力となっているというメディアあるいは専門家の論調ですが、成長する経済大国中国を経済的パートナーとして近づきつつある台湾の姿勢が、台湾海峡の危機を無くしているのです。
また、日本中が硬直的に怯えているかのような北朝鮮は、先ほども書いたように、崩壊寸前で、他国を脅かすような軍事力に乏しく、逆に日本の自衛隊、韓国の軍隊、アメリカの核に至っては、建国以来怯えているのが現状で――実際、朝鮮戦争の時マッカーサーは、北朝鮮への核使用を強硬に主張した――だからこそ、恫喝的な戦略しかなく、実際の脅威になり得ていないそうです。
◇なぜ海兵隊をグァムに後退させるのか。
このように冷戦崩壊以降、極東の危機感が薄らぎ、在沖縄海兵隊を中東戦略に専念させるためには、沖縄に駐留しているより、グァムに駐留した方が地政学的に有効だというアメリカの判断が「海兵隊再編」として実態化しているのです。
また海兵隊のローテーションを考えた時、米軍兵士が、一番寛げるのが、戦略上も重要な自国であるグァムなのです。
兵隊の福利厚生もしっかり考えるアメリカは、兵士の休暇にも配慮している。だから地政学的にも問題のないグァムが、最良なのです。「他国の沖縄よりも寛げる」というわけです。
この話は嘘みたいですけど、立派な理由のひとつらしいです。
普天間基地移設で、硫黄島なら何もなくてベストではないか。という論調がありますが、アメリカは絶対受け入れないそうです。なぜなら、酒場もない、レストランもない、女性もいない……
これが、アメリカの硫黄島案絶対拒否の最大の理由らしいです。
つまり「日米安全保障条約」を成約せしめた、極東の危機、日本の危機は、冷戦崩壊と共に当初の目的を必要としなくなり、もともと、在沖縄海兵隊自体が、日米安保に規定される「抑止力」としての目的で配備されているわけではなく、あくまでも中東戦略のために配備されているのに過ぎず、だから再編成され、在沖縄海兵隊12,000人の内8,000人が、グァムに移るのです。
あたかも、極東の安全のため、日本の安全保障のために、海兵隊のヘリ部隊が使用している普天間基地が移設されるかのようなメディアの論調ですが、論点がまったく合っていません。
さらに普天間基地を使用している海兵隊のヘリコプター部隊までグァムに移ります。
こうなると、普天間基地の必要性が、なくなってくるのではないか。普天間基地に替わる新基地の必要性はいかがなものなか……という疑問が湧いてきます。
◇普天間基地返還にともなう新基地は、沖縄にも本土にも必要ない
このことは、アメリカ太平洋軍司令部が06年策定し発表した「グァム統合軍事開発計画」を読めばわかることで、日本のメディアはほとんど報道していません。
普天間基地問題に大きな影響を及ぼしている、「海兵隊再編」の推移は、96年「SACO合意」→05年の「日米同盟― 未来のための変革と再編」(僕がこれまで言ってきた「日米同盟」の正式名称。ここでは“変革と再編”という意味を知ってもらいたくて、略さずに書きました)→06年「再編実施のための日米のロードマップ」→そして「グァム統合軍事開発計画」という推移を理解すれば明らかなのに、メディアも政治家も普天間基地国内移設だけに硬直し、本来の意味を伝えようとしません。
普天間基地移設があるとすれば、「グァム移転」しかあり得ないはずです。
分かりやすくするため、普天間基地移設問題について各合意の中で、どのように書かれているか、また問題点を簡単に書いてみましょう。
■SACO合意(96年)
当時の橋本総理大臣とモンデール駐日大使が「今後5年から7年に十分な代替施設が完成し、運用可能になった後、普天間飛行場を返還する」と突然の記者会見で発表。
普天間基地返還の原点は、厳しい爆音被害と危険な住宅地上空の飛行訓練を一日も早くなくし、沖縄県民の基地負担の軽減を図ることであった。しかし、その後数年で飛行回数は1万回増え、1.5倍に増加し、宜野湾市民は爆音による生活破壊と常に墜落の恐怖の下に苦しんできた。
この時から9年間日本の政権は、橋本、小渕、森、小泉と目まぐるしく変わり何ら成果を見せていない。
また、この合意がなされた発端は、キャンプ・ハンセンに駐留していた3人の海兵隊員が、12歳の少女を拉致し、粘着テープでぐるぐる巻きにし、海岸でレイプした鬼畜の仕業とも言える事件で沖縄県民の怒りが爆発したことです。しかし、犯人は「日米地位協定」によって保護され身柄引き渡しは拒否されました。これがアメリカにとっての日本の地位、沖縄の地位です。
■「日米同盟― 未来のための変革と再編」(05年)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html
日本政府は、 辺野古沿岸から大浦湾にかけ長さ1,800メートルの滑走路をもつL字型の 「普天間代替施設」 を設置することを約束し、その実現を条件に 在沖縄海兵隊員の約7,000名とその家族をグァムへ移転させることが決まった。
ここで重要なのは、
兵力削減:上記の太平洋地域における米海兵隊の能力再編に関連し、第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)司令部はグアム及び他の場所に移転され、また、残りの在沖縄海兵隊部隊は再編されて海兵機動展開旅団(MEB)に縮小される。この沖縄における再編は、約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を含む。これらの要員は、海兵隊航空団、戦務支援群及び第3海兵師団の一部を含む、海兵隊の能力(航空、陸、後方支援及び司令部)の各組織の部隊から移転される。(日米同盟から引用)
*ここでは移転する主力は海兵隊司令部で、その数が7000人というニュアンスが強いですね。
■再編実施のための日米ロードマップ(06年)
http://www.mofa.go.jp/mofaJ/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html
(b)兵力削減とグアムへの移転
・約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。
・沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される。(日米ロードマップから引用)
*ここでようやく、移転するのは司令部だけではなく、司令部を含む約8000人の海兵隊の要員とその家族9000名が、グァムに移転することが書かれます。だいたい司令部だけグァムに移転してどうなるという話で、いかに通信が発達したとはいえ、司令部と実戦部隊をグァムと沖縄に分散させることなど考えらません。
ここで問題なのは、日米同盟にも日米ロードマップにも在沖縄海兵隊総数が、書かれていないことで、何割の海兵隊員とどんな機能を持った部隊がグァムに移転するかということが、専門家以外分かりません。
実際はどうなのかというと、現在沖縄にいる海兵隊員は、約12000名です。なんとそのうち8000人が普天間基地に変わる新しい基地が完成すれば(14年まで)にグァムに移転するというのです。2/3がグァムに移転しどんな戦略が立てられるのか。少なくとも海兵隊に関しては日米両国とも、「抑止力」としてみなしてこなかったことが明らかです。
■グァム統合軍事開発計画(06年)以下グァム統合計画
グァム統合計画は、軍事専門家でなければ理解できない内容ですが、この中で重要かつ問題なのは、「普天間基地に所属するヘリ部隊が、グァムに移転する」ということが書かれていることです。
「日米同盟」までは、普天間基地のヘリ部隊と海兵隊のほとんどが、沖縄に留まることが前提として論議され、合意されたわけですが、実際はそうではなく、アメリカ側の主題である「普天間基地ヘリ部隊の新基地への移設」は、存在しないのです。
さらに、海兵隊ヘリ部隊だけではなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊までグァムに行くことになっているのです。
普天間基地に変わる新基地は、沖縄はおろか、日本国内に不必要なもので、グァムになくてはならないものなのです。
このことは、外務委員会でも質問されてきましたが、自公政権は、普天間基地代替施設は、普天間基地に現在駐留するヘリ部隊が、日常的に活動をともにする他の組織の近くに位置するよう、沖縄県内に設けなければならないと結論づけたまま譲らず、「日米同盟」に書かれたままの論法で国民を騙してきました。
メディアの報道も、「沖縄米軍通常部隊と海兵隊ヘリ部隊の分散は不可欠」という論調を崩しません。海兵隊の「抑止力」も効果的だと言っていますが、当の計画の詳細には、そのようなことは、書かれていないのです。普天間基地のヘリ部隊はグァムに移転すると書かれているのです。
これを裏付けるように、08年海軍長官から米国下院軍事委員会議長に国防総省グァム軍事計画報告書として「グアムにおける米軍計画の現状」が報告されました。その中で沖縄から移転する部隊名が示されており、”沖縄のほとんどの海兵隊実戦部隊と、岩国基地に移転予定のKC130空中給油機部隊を除いて、ヘリ部隊を含め普天間飛行場のほとんどの関連部隊がグァムに行く”と示されているそうです。
◇普天間基地はどこへ行くのか
自公政権が結んだ、「日米同盟―未来のための変革と再編」「再編実施のための日米のロードマップ」「グァム協定」でさえまともに伝えようとしないメディアに大きな問題があり、さらにもっとも普天間基地移設で重要なことが書かれている「グァム統合軍事開発計画」がすっかり抜け落ちて論議され、論調の中身は「日米同盟―未来のための変革と再編」に偏っています。
日米軍事同盟が強化される方向だけを願っているかのような自公とメディアの論調は、日本の安全を逆に脅かし、自立すべき日本の行く末を貶め、いつまでもアメリカの属国として歩んでいく姿勢だと僕は受け止めています。
では、なぜ海兵隊や在沖縄米軍は完全撤退しないのか、沖縄に基地があり続け、普天間基地に替わる新基地をアメリカが求めているのかと言えば、再三語ってきたように、「日米同盟」に根拠が示されています。「日米同盟」への過程がすべてを物語り、将来の日米軍事関係を予測させるのです。
これも再三言ってきましたが、「日米同盟」は、あたかも「日米安保」の延長線にあるように論じられ、報道されていますが、まったくの別物です。
政治家や官僚に任せず、「日米同盟」をよく読んでみる必要があると思います。私たちが安閑と考えていること、イメージからほど遠い内容が書かれています。自衛隊は、アメリカ向かう紛争地帯に、軍事力として向かうことが書かれているのです。
そうした実績を、小泉政権が『テロ対策特別措置法』という期間限定の法律を作り、実績としてイラク自衛隊派遣を可能せしめ、あたかも日米安保の延長線上にある「国益」と評価し、「国際協調」という誤った整合性を与え、「日米同盟」を可能にしました。
「日米同盟」がある限り、これを是とする勢力が政権に再び就けば、日本はアメリカが、好んで起こす紛争のために尊い命を差しだすことになるのです。果たしてこれが国益でしょうか。
◇苦悩する自衛隊員の実態
日本はここ10年ほど毎年自殺者が3万人を超え、10万人当たりの自殺者は、旧西側先進国ではトップです。(上位にロシアとロシアから独立したベラルーシなどの周辺国家が固まっています)
その自殺大国日本の中で、イラク戦争以降、現職自衛隊員と退職自衛官の自殺者は、4.5倍です。この中には、イラク帰りの自衛隊員も含まれていますが、防衛省は、正しい数字を公表していないし、理由も把握していません。これは異常です。まともに報道されていない、まともに報告されていないという異常。
さらにイラク派兵、インド洋派遣中に亡くなった自衛官は35人います。そのうち自殺者は、16名で、自殺以外の死亡原因を防衛省と自公政権は明らかにしてきませんでした。
非戦闘地域ということでしたが実際どうだったのか……
こうした事実があったにもかかわらず、日本における米軍基地は、アメリカの中東戦略のために自公政権は必要だと言ってきました。
国際協調ではなく、アメリカの中東戦略のために自衛隊員は苦悩したのです。現場での16名の自殺……いったい何を物語っているのでしょうか。
◇軍事費が欲しい赤字超大国アメリカ
アメリカの中東戦略とは何か?これまで書いてきたように、軍産複合体の利益。赤字財政を膨らまし続けても求め続けなければいけない軍産複合体のための利益が、自由と民主主義を守るための正義というベールを被って邁進し続けているのです。これが「アメリカの正義の正体」です。
そうした中で、日本は最も何を求められているかと言えば、基地の提供と、『思いやり予算』という莫大な米軍基地援助資金です。
世界中に存在する米軍基地ですが、各国が援助している50%以上を日本の援助が占め、それは、ドイツの3倍、NATOの1.6倍にも及んでいる事実……
さらに、海兵隊のグァム移転と整備の経費の内約60%、60億9千万ドルを、日本が提供する約束ができています。
これが『グァム協定』であり、普天間基地移設の再確認とグァムへの海兵隊移転費費用の日本の履行が決められています。完璧に政権運営力を失っていた、麻生政権下の09年5月、急いで締結されたのが『グァム協定』です。オバマ政権は実にしたたかです。予測された政権交代前に獲れるものは獲る。という魂胆が見え見えです。
自公政権が合意した『グァム協定』は、日本側に何も言う権利はなく、文句を言う権利はアメリカが持っているという「日米通商条約」と同等の不平等協定です。
◇沖縄の人たちはすべてを知っている
これまで述べてきたことは、目新しい情報でもなく、沖縄の人たちの多くはみんな知っていると琉球新報の滝本記者は言います。宜野湾市では、市の広報誌にも載せているし、市役所へ行けば資料の閲覧もできます。本土の人はどうでしょうか?
太平洋戦争での沖縄の悲惨さや、基地問題について私たちは語ります。しかしどうしても温度差がある。私たちが、沖縄の苦悩の原因を正しく理解をしているとは思えません。
このままだと沖縄は、アメリカ海兵隊の訓練、演習地となります。普天間に代わる基地が県内に完成し、海兵隊が去れば一目瞭然で、ヤンバルの大自然は、これまで以上演習地が拡がりもっと悲惨な状況になり、新基地の周辺の自然も失われ、沖縄の人たちの苦悩は、消え去ることはありません。現にヤンバルの高江地区では、ヘリポート建設が進められ、地元の人たちは、座り込みなどをして、生活を犠牲にしながら闘っています。
自公政権は、こんな酷いことを推進してきたのです。
◇鳩山政権の現状
鳩山政権は、こうしたアメリカと普天間基地移設をめぐり、水面下で果敢に戦っています。
ぶれていると報道されますが、あのアメリカを相手に最低でも県外移設を模索しているのです。
キャンプ・シュワプ海上案合意を曲げようとしているのです。ぶれて見えるのはそのためです。
鳩山首相は、平野官房長官と国民新党が推すキャンプ・シュワプ陸上案と北澤防衛大臣のホワイトビーチ埋立案にまだ首を振っていないどころか、拒絶し県外移設を模索し続けています。
報道とは異なります。
二人の案は、キャンプ・シュワプ海上案を拒否する政権への妥協案として防衛省と外務省の官僚によるものだと僕は推察しています。平野と北澤には官僚を強力に動かすだけの能力も度胸もありません。
各大臣の言葉やメディアの報道に、うろたえることなく鳩山首相の言動だけを注視しましょう。
もっとも記者クラブメディアは、まともに報道しませんが……
こうした中で、日本中で受け入れてくれる場所は現在のところひとつもありません。
名前が挙がると、その場所の首長や議会が直ちに強い拒否声名を発表する。
では、そうした首長や地方議会は、「グァムに移設」を言っているかと言えばそうではなく、「合意に従うべきだ」と沖縄に押しつける。アメリカの戦略など何も分かっていません。沖縄の人たちの苦悩など察してもいない非情な意見です。「日米同盟」の意味だって知らない。
でも鳩山さんは戦っている。
アメリカはこうも日本に伝えています。
アメリカ政府は「地元同意がない移設先の代案が出ても交渉できない」との考えを日本側に伝えました(琉球新報22日より一部抜粋)
日本国どこを探しても、地元の同意を得られない現状が続く限り、
・普天間基地をそのまま使う。
・移転の理由のひとつになった騒音や危険性の問題は忘れてほしい。
・グァムへの在日海兵隊移転も実現できませんよ。
という難題を押し付けてきたわけです。
これだけの難題をアメリカ政府に言わせるほど、鳩山政権は戦っているわけです。
先々週鳩山さんがぶら下がりの記者会見で、県外移設を諦めたかのような発言した時、私たちは落胆しましたが、孫崎さんは直後にこう言っています。
「まだまだ、これからいろんなことが出てくる」
そしてこうも言っています。
「鳩山さんが首相でなかったら、自公政権が合意したキャンプ・シュワプ海上案が、昨年の10月の段階で決定されたはずです。ここまでアメリカと戦える総理はかつていなかった……」
僕は思うのですが、こうしたまだ占領下あるような、まるで独立国だとみなされていないようなアメリカの対日戦略に関わる、整合性のない不合理な普天間基地県内、県外移設問題は、沖縄の人たちには迷惑がかかるけれど、5月末までに決定などと言わず、じっくり交渉して、グァムに移転させる方向で決着をつけるべきだと思います。これが日本の国益です。
グァム協定で決められた、移転費用の援助は仕方ないにしても、アメリカの軍産複合体の利益のために、中東戦略のために、日本はこれ以上アメリカに援助する必要もないし、「普通の国」へ進むべきだと思います。
自公政権の罪はあまりにも重い……
主権在民の真の民主主義国であるために、まるで属国のような立場から自由になるために、真の独立国となるために、もっと国民は考えなくてはなりません。
それが子供たちのためになるのです。
冷戦時代に取り交わされ、延長されてきた「日米安全保障条約」を法的根拠とする、在日米軍の存在は、冷戦時代のソ連の膨張政策を防衛する一定の役割をしてきたと思います。
しかし、僕の「思います」という観念の中には、「思わされてきた」という思いも含まれ、自民党政権とマスメディアによる意図的な操作も感じないわけにはいきません。
特に冷戦崩壊後、各国の世界戦略は大幅に変化しました。
アメリカが世界最強の軍事力を持っている事は否定しようもなく、中国の発展する経済が可能にした軍事力の過激な増大と、周辺異民族への弾圧や北朝鮮の核ミサイル開発が危険視され、在日米軍の抑止力は必要不可欠だという論調に日本は凝り固まっていますが、実際はどうなのか。
元外務省国際情報局長、元防衛大学校学長の孫崎享さんは、こんなふうに話しています。
その前に孫崎さんの話の信憑性を裏付けるために、外務省の国際情報部がどんな部署なのか説明しなければいけません。
外務省国際情報局は、アメリカのCIAやイギリスのMI6に相当する機関です。ただCIAと違うのは、他国を工作する機関ではなく、他国からの工作を防ぐ防諜機関です。CIAやMI6は、両方の能力を持ちますが、日本には他国を工作する機関は存在しません。内閣情報局という機関がありますが、彼らは海外経験がほとんどなく、防諜力はあるものの限られた範囲に収まります。
孫崎さんは、外務省時代アメリカ留学を経験し、さらにロシア、中東諸国への赴任経験があり、留学時代の研究は、ソ連の核戦略でした。そして国際情報局時代は、CIAと数多く接触し、アメリカの国家戦略の深部まで知る貴重な存在です。現在は、鳩山首相の私的諮問機関で重要な役割を果たしています。孫崎さんが官邸に入ったあとは、たとえば普天間基地問題に関して必ずこれまでと違った動きがあります。
それでは本題です。
米ソ冷戦時代、あたかも米ソの核攻撃能力、核防衛能力が、均衡状態であったかのように考えられていますが、実はその差は歴然とし、圧倒的にアメリカが優位に立っていたそうです。
ソ連がアメリカにようやく追いついたのは、それも核攻撃だけ追いついたのは、冷戦末期の頃で、オホーツク海に核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が現れた時だそうです。核防衛能力に至っては歴然とした差があったのが現実だそうです。
冷戦時代の米ソの軍事的戦略は、第二次大戦時のように大量兵器と大量兵力によって地域を奪っていく戦略は、下位の戦略として位置づけられ、ワシントンにいかに核ミサイルを撃ち込めるか、モスクワに核ミサイルを撃ち込めるかが、最高位の戦略で、それをソ連が可能にしたのが冷戦末期で、核戦略が同等になった時、何が行われるかと言えば、軍縮なんだそうです。
それ以上高める必要が、お互いなくなってしまう。こうした側面も冷戦構造の崩壊に繋がっているというのです。ソ連はそこまで到達するのが精いっぱいで、それ以上の、たとえば核防衛能力をアメリカ並みに準備することが困難な状況になってしまったというのです。アメリカ並みの国力と技術を持っていれば、今も緊張状態にあったかもしれない。しかし続かなかった。
今後、ロシアがアメリカ並みの核能力を持つには、10年以上かかり、懸念されている中国に至っては、30年経ってもアメリカに追いつかないそうです。ましてや崩壊寸前の北朝鮮の戦略など脅威にならず、仮に軍事的行動を起こしたとしても、燃料がたちまち途切れ、戦略はあっという間に崩壊し、戦略どころか、国家そのものが崩壊してしまうらしいです。
現実は、メディアや学者が流すほどの脅威は、極東に存在しないというのが孫崎さんの論調です。
これを裏付けるのが、アメリカ海兵隊の再編です。いずれ日本から海兵隊のほとんどはグァムに移転します。
なぜ移転可能なのかと言えば、危機が薄らいだからに他ならなく、ひとつは台湾海峡の危機です。
台湾海峡の台湾と中国の緊張状態に沖縄の基地と通常戦力、海兵隊の存在が、抑止力となっているというメディアあるいは専門家の論調ですが、成長する経済大国中国を経済的パートナーとして近づきつつある台湾の姿勢が、台湾海峡の危機を無くしているのです。
また、日本中が硬直的に怯えているかのような北朝鮮は、先ほども書いたように、崩壊寸前で、他国を脅かすような軍事力に乏しく、逆に日本の自衛隊、韓国の軍隊、アメリカの核に至っては、建国以来怯えているのが現状で――実際、朝鮮戦争の時マッカーサーは、北朝鮮への核使用を強硬に主張した――だからこそ、恫喝的な戦略しかなく、実際の脅威になり得ていないそうです。
◇なぜ海兵隊をグァムに後退させるのか。
このように冷戦崩壊以降、極東の危機感が薄らぎ、在沖縄海兵隊を中東戦略に専念させるためには、沖縄に駐留しているより、グァムに駐留した方が地政学的に有効だというアメリカの判断が「海兵隊再編」として実態化しているのです。
また海兵隊のローテーションを考えた時、米軍兵士が、一番寛げるのが、戦略上も重要な自国であるグァムなのです。
兵隊の福利厚生もしっかり考えるアメリカは、兵士の休暇にも配慮している。だから地政学的にも問題のないグァムが、最良なのです。「他国の沖縄よりも寛げる」というわけです。
この話は嘘みたいですけど、立派な理由のひとつらしいです。
普天間基地移設で、硫黄島なら何もなくてベストではないか。という論調がありますが、アメリカは絶対受け入れないそうです。なぜなら、酒場もない、レストランもない、女性もいない……
これが、アメリカの硫黄島案絶対拒否の最大の理由らしいです。
つまり「日米安全保障条約」を成約せしめた、極東の危機、日本の危機は、冷戦崩壊と共に当初の目的を必要としなくなり、もともと、在沖縄海兵隊自体が、日米安保に規定される「抑止力」としての目的で配備されているわけではなく、あくまでも中東戦略のために配備されているのに過ぎず、だから再編成され、在沖縄海兵隊12,000人の内8,000人が、グァムに移るのです。
あたかも、極東の安全のため、日本の安全保障のために、海兵隊のヘリ部隊が使用している普天間基地が移設されるかのようなメディアの論調ですが、論点がまったく合っていません。
さらに普天間基地を使用している海兵隊のヘリコプター部隊までグァムに移ります。
こうなると、普天間基地の必要性が、なくなってくるのではないか。普天間基地に替わる新基地の必要性はいかがなものなか……という疑問が湧いてきます。
◇普天間基地返還にともなう新基地は、沖縄にも本土にも必要ない
このことは、アメリカ太平洋軍司令部が06年策定し発表した「グァム統合軍事開発計画」を読めばわかることで、日本のメディアはほとんど報道していません。
普天間基地問題に大きな影響を及ぼしている、「海兵隊再編」の推移は、96年「SACO合意」→05年の「日米同盟― 未来のための変革と再編」(僕がこれまで言ってきた「日米同盟」の正式名称。ここでは“変革と再編”という意味を知ってもらいたくて、略さずに書きました)→06年「再編実施のための日米のロードマップ」→そして「グァム統合軍事開発計画」という推移を理解すれば明らかなのに、メディアも政治家も普天間基地国内移設だけに硬直し、本来の意味を伝えようとしません。
普天間基地移設があるとすれば、「グァム移転」しかあり得ないはずです。
分かりやすくするため、普天間基地移設問題について各合意の中で、どのように書かれているか、また問題点を簡単に書いてみましょう。
■SACO合意(96年)
当時の橋本総理大臣とモンデール駐日大使が「今後5年から7年に十分な代替施設が完成し、運用可能になった後、普天間飛行場を返還する」と突然の記者会見で発表。
普天間基地返還の原点は、厳しい爆音被害と危険な住宅地上空の飛行訓練を一日も早くなくし、沖縄県民の基地負担の軽減を図ることであった。しかし、その後数年で飛行回数は1万回増え、1.5倍に増加し、宜野湾市民は爆音による生活破壊と常に墜落の恐怖の下に苦しんできた。
この時から9年間日本の政権は、橋本、小渕、森、小泉と目まぐるしく変わり何ら成果を見せていない。
また、この合意がなされた発端は、キャンプ・ハンセンに駐留していた3人の海兵隊員が、12歳の少女を拉致し、粘着テープでぐるぐる巻きにし、海岸でレイプした鬼畜の仕業とも言える事件で沖縄県民の怒りが爆発したことです。しかし、犯人は「日米地位協定」によって保護され身柄引き渡しは拒否されました。これがアメリカにとっての日本の地位、沖縄の地位です。
■「日米同盟― 未来のための変革と再編」(05年)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html
日本政府は、 辺野古沿岸から大浦湾にかけ長さ1,800メートルの滑走路をもつL字型の 「普天間代替施設」 を設置することを約束し、その実現を条件に 在沖縄海兵隊員の約7,000名とその家族をグァムへ移転させることが決まった。
ここで重要なのは、
兵力削減:上記の太平洋地域における米海兵隊の能力再編に関連し、第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)司令部はグアム及び他の場所に移転され、また、残りの在沖縄海兵隊部隊は再編されて海兵機動展開旅団(MEB)に縮小される。この沖縄における再編は、約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を含む。これらの要員は、海兵隊航空団、戦務支援群及び第3海兵師団の一部を含む、海兵隊の能力(航空、陸、後方支援及び司令部)の各組織の部隊から移転される。(日米同盟から引用)
*ここでは移転する主力は海兵隊司令部で、その数が7000人というニュアンスが強いですね。
■再編実施のための日米ロードマップ(06年)
http://www.mofa.go.jp/mofaJ/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html
(b)兵力削減とグアムへの移転
・約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。
・沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される。(日米ロードマップから引用)
*ここでようやく、移転するのは司令部だけではなく、司令部を含む約8000人の海兵隊の要員とその家族9000名が、グァムに移転することが書かれます。だいたい司令部だけグァムに移転してどうなるという話で、いかに通信が発達したとはいえ、司令部と実戦部隊をグァムと沖縄に分散させることなど考えらません。
ここで問題なのは、日米同盟にも日米ロードマップにも在沖縄海兵隊総数が、書かれていないことで、何割の海兵隊員とどんな機能を持った部隊がグァムに移転するかということが、専門家以外分かりません。
実際はどうなのかというと、現在沖縄にいる海兵隊員は、約12000名です。なんとそのうち8000人が普天間基地に変わる新しい基地が完成すれば(14年まで)にグァムに移転するというのです。2/3がグァムに移転しどんな戦略が立てられるのか。少なくとも海兵隊に関しては日米両国とも、「抑止力」としてみなしてこなかったことが明らかです。
■グァム統合軍事開発計画(06年)以下グァム統合計画
グァム統合計画は、軍事専門家でなければ理解できない内容ですが、この中で重要かつ問題なのは、「普天間基地に所属するヘリ部隊が、グァムに移転する」ということが書かれていることです。
「日米同盟」までは、普天間基地のヘリ部隊と海兵隊のほとんどが、沖縄に留まることが前提として論議され、合意されたわけですが、実際はそうではなく、アメリカ側の主題である「普天間基地ヘリ部隊の新基地への移設」は、存在しないのです。
さらに、海兵隊ヘリ部隊だけではなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊までグァムに行くことになっているのです。
普天間基地に変わる新基地は、沖縄はおろか、日本国内に不必要なもので、グァムになくてはならないものなのです。
このことは、外務委員会でも質問されてきましたが、自公政権は、普天間基地代替施設は、普天間基地に現在駐留するヘリ部隊が、日常的に活動をともにする他の組織の近くに位置するよう、沖縄県内に設けなければならないと結論づけたまま譲らず、「日米同盟」に書かれたままの論法で国民を騙してきました。
メディアの報道も、「沖縄米軍通常部隊と海兵隊ヘリ部隊の分散は不可欠」という論調を崩しません。海兵隊の「抑止力」も効果的だと言っていますが、当の計画の詳細には、そのようなことは、書かれていないのです。普天間基地のヘリ部隊はグァムに移転すると書かれているのです。
これを裏付けるように、08年海軍長官から米国下院軍事委員会議長に国防総省グァム軍事計画報告書として「グアムにおける米軍計画の現状」が報告されました。その中で沖縄から移転する部隊名が示されており、”沖縄のほとんどの海兵隊実戦部隊と、岩国基地に移転予定のKC130空中給油機部隊を除いて、ヘリ部隊を含め普天間飛行場のほとんどの関連部隊がグァムに行く”と示されているそうです。
◇普天間基地はどこへ行くのか
自公政権が結んだ、「日米同盟―未来のための変革と再編」「再編実施のための日米のロードマップ」「グァム協定」でさえまともに伝えようとしないメディアに大きな問題があり、さらにもっとも普天間基地移設で重要なことが書かれている「グァム統合軍事開発計画」がすっかり抜け落ちて論議され、論調の中身は「日米同盟―未来のための変革と再編」に偏っています。
日米軍事同盟が強化される方向だけを願っているかのような自公とメディアの論調は、日本の安全を逆に脅かし、自立すべき日本の行く末を貶め、いつまでもアメリカの属国として歩んでいく姿勢だと僕は受け止めています。
では、なぜ海兵隊や在沖縄米軍は完全撤退しないのか、沖縄に基地があり続け、普天間基地に替わる新基地をアメリカが求めているのかと言えば、再三語ってきたように、「日米同盟」に根拠が示されています。「日米同盟」への過程がすべてを物語り、将来の日米軍事関係を予測させるのです。
これも再三言ってきましたが、「日米同盟」は、あたかも「日米安保」の延長線にあるように論じられ、報道されていますが、まったくの別物です。
政治家や官僚に任せず、「日米同盟」をよく読んでみる必要があると思います。私たちが安閑と考えていること、イメージからほど遠い内容が書かれています。自衛隊は、アメリカ向かう紛争地帯に、軍事力として向かうことが書かれているのです。
そうした実績を、小泉政権が『テロ対策特別措置法』という期間限定の法律を作り、実績としてイラク自衛隊派遣を可能せしめ、あたかも日米安保の延長線上にある「国益」と評価し、「国際協調」という誤った整合性を与え、「日米同盟」を可能にしました。
「日米同盟」がある限り、これを是とする勢力が政権に再び就けば、日本はアメリカが、好んで起こす紛争のために尊い命を差しだすことになるのです。果たしてこれが国益でしょうか。
◇苦悩する自衛隊員の実態
日本はここ10年ほど毎年自殺者が3万人を超え、10万人当たりの自殺者は、旧西側先進国ではトップです。(上位にロシアとロシアから独立したベラルーシなどの周辺国家が固まっています)
その自殺大国日本の中で、イラク戦争以降、現職自衛隊員と退職自衛官の自殺者は、4.5倍です。この中には、イラク帰りの自衛隊員も含まれていますが、防衛省は、正しい数字を公表していないし、理由も把握していません。これは異常です。まともに報道されていない、まともに報告されていないという異常。
さらにイラク派兵、インド洋派遣中に亡くなった自衛官は35人います。そのうち自殺者は、16名で、自殺以外の死亡原因を防衛省と自公政権は明らかにしてきませんでした。
非戦闘地域ということでしたが実際どうだったのか……
こうした事実があったにもかかわらず、日本における米軍基地は、アメリカの中東戦略のために自公政権は必要だと言ってきました。
国際協調ではなく、アメリカの中東戦略のために自衛隊員は苦悩したのです。現場での16名の自殺……いったい何を物語っているのでしょうか。
◇軍事費が欲しい赤字超大国アメリカ
アメリカの中東戦略とは何か?これまで書いてきたように、軍産複合体の利益。赤字財政を膨らまし続けても求め続けなければいけない軍産複合体のための利益が、自由と民主主義を守るための正義というベールを被って邁進し続けているのです。これが「アメリカの正義の正体」です。
そうした中で、日本は最も何を求められているかと言えば、基地の提供と、『思いやり予算』という莫大な米軍基地援助資金です。
世界中に存在する米軍基地ですが、各国が援助している50%以上を日本の援助が占め、それは、ドイツの3倍、NATOの1.6倍にも及んでいる事実……
さらに、海兵隊のグァム移転と整備の経費の内約60%、60億9千万ドルを、日本が提供する約束ができています。
これが『グァム協定』であり、普天間基地移設の再確認とグァムへの海兵隊移転費費用の日本の履行が決められています。完璧に政権運営力を失っていた、麻生政権下の09年5月、急いで締結されたのが『グァム協定』です。オバマ政権は実にしたたかです。予測された政権交代前に獲れるものは獲る。という魂胆が見え見えです。
自公政権が合意した『グァム協定』は、日本側に何も言う権利はなく、文句を言う権利はアメリカが持っているという「日米通商条約」と同等の不平等協定です。
◇沖縄の人たちはすべてを知っている
これまで述べてきたことは、目新しい情報でもなく、沖縄の人たちの多くはみんな知っていると琉球新報の滝本記者は言います。宜野湾市では、市の広報誌にも載せているし、市役所へ行けば資料の閲覧もできます。本土の人はどうでしょうか?
太平洋戦争での沖縄の悲惨さや、基地問題について私たちは語ります。しかしどうしても温度差がある。私たちが、沖縄の苦悩の原因を正しく理解をしているとは思えません。
このままだと沖縄は、アメリカ海兵隊の訓練、演習地となります。普天間に代わる基地が県内に完成し、海兵隊が去れば一目瞭然で、ヤンバルの大自然は、これまで以上演習地が拡がりもっと悲惨な状況になり、新基地の周辺の自然も失われ、沖縄の人たちの苦悩は、消え去ることはありません。現にヤンバルの高江地区では、ヘリポート建設が進められ、地元の人たちは、座り込みなどをして、生活を犠牲にしながら闘っています。
自公政権は、こんな酷いことを推進してきたのです。
◇鳩山政権の現状
鳩山政権は、こうしたアメリカと普天間基地移設をめぐり、水面下で果敢に戦っています。
ぶれていると報道されますが、あのアメリカを相手に最低でも県外移設を模索しているのです。
キャンプ・シュワプ海上案合意を曲げようとしているのです。ぶれて見えるのはそのためです。
鳩山首相は、平野官房長官と国民新党が推すキャンプ・シュワプ陸上案と北澤防衛大臣のホワイトビーチ埋立案にまだ首を振っていないどころか、拒絶し県外移設を模索し続けています。
報道とは異なります。
二人の案は、キャンプ・シュワプ海上案を拒否する政権への妥協案として防衛省と外務省の官僚によるものだと僕は推察しています。平野と北澤には官僚を強力に動かすだけの能力も度胸もありません。
各大臣の言葉やメディアの報道に、うろたえることなく鳩山首相の言動だけを注視しましょう。
もっとも記者クラブメディアは、まともに報道しませんが……
こうした中で、日本中で受け入れてくれる場所は現在のところひとつもありません。
名前が挙がると、その場所の首長や議会が直ちに強い拒否声名を発表する。
では、そうした首長や地方議会は、「グァムに移設」を言っているかと言えばそうではなく、「合意に従うべきだ」と沖縄に押しつける。アメリカの戦略など何も分かっていません。沖縄の人たちの苦悩など察してもいない非情な意見です。「日米同盟」の意味だって知らない。
でも鳩山さんは戦っている。
アメリカはこうも日本に伝えています。
アメリカ政府は「地元同意がない移設先の代案が出ても交渉できない」との考えを日本側に伝えました(琉球新報22日より一部抜粋)
日本国どこを探しても、地元の同意を得られない現状が続く限り、
・普天間基地をそのまま使う。
・移転の理由のひとつになった騒音や危険性の問題は忘れてほしい。
・グァムへの在日海兵隊移転も実現できませんよ。
という難題を押し付けてきたわけです。
これだけの難題をアメリカ政府に言わせるほど、鳩山政権は戦っているわけです。
先々週鳩山さんがぶら下がりの記者会見で、県外移設を諦めたかのような発言した時、私たちは落胆しましたが、孫崎さんは直後にこう言っています。
「まだまだ、これからいろんなことが出てくる」
そしてこうも言っています。
「鳩山さんが首相でなかったら、自公政権が合意したキャンプ・シュワプ海上案が、昨年の10月の段階で決定されたはずです。ここまでアメリカと戦える総理はかつていなかった……」
僕は思うのですが、こうしたまだ占領下あるような、まるで独立国だとみなされていないようなアメリカの対日戦略に関わる、整合性のない不合理な普天間基地県内、県外移設問題は、沖縄の人たちには迷惑がかかるけれど、5月末までに決定などと言わず、じっくり交渉して、グァムに移転させる方向で決着をつけるべきだと思います。これが日本の国益です。
グァム協定で決められた、移転費用の援助は仕方ないにしても、アメリカの軍産複合体の利益のために、中東戦略のために、日本はこれ以上アメリカに援助する必要もないし、「普通の国」へ進むべきだと思います。
自公政権の罪はあまりにも重い……
主権在民の真の民主主義国であるために、まるで属国のような立場から自由になるために、真の独立国となるために、もっと国民は考えなくてはなりません。
それが子供たちのためになるのです。