風の回廊

風を感じたら気ままに書こうと思う。

お盆に思うこと

2010年08月14日 | 日記
ショパン/ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想」/演奏:寺嶋 陸也



お盆ですね。
昨日、ご近所で世話になっている3軒の家で迎えられた新盆のお見舞いをさせていただいてから、心地よい風が吹く静かな時間の中で迎え盆を済ませました。

お盆は、盂蘭盆会(うらぼんえ)と言って、元々はゾロアスター教にも含まれるアニミズム(自然界を構成するすべてのもの、森羅万象に精霊が宿る)の精霊=ウルヴァンを鎮魂する古代イランに起源があるとされています。というかひとつの説ですが。
それがインドに伝わり、仏教の根底に流れる『山川草木悉皆成仏』(自然のすべてのものに生命が宿る)という思想と近似融合し、少しずつ姿かたちを変えながら中国経由で日本にやってきて定着した……こんな流れがあります。
また盂蘭盆会には、先祖の霊を供養するとともに、餓鬼道に堕ちた救われない霊に対しても、供物をもてなし供養するという寛容の仏教行事でもあるんですね。

自然の恵みと脅威に、もっとも敏感に生きてきた縄文時代の宗教観は、アニミズムに支えられ、神が宿る自然界を構成するものから与えられる恵みに感謝し、恵みから遠いものには、叶えられるよう救済の祈りをあげ、荒ぶる脅威に対しては鎮魂という宗教行事があり、今の時代もかたちを変えながら続いていますね。
そんな日本人のDNAに記憶されている宗教観に盂蘭盆会の思想は、抵抗なく、ごく自然に受け入れられたと思います。そして今日まで継承、持続されてきました。
なんとなくお盆になると気持ちが落ち着くのは、こうしたDNAの記憶への回帰からなのでしょうか……僕はそんなふうに思ったりします。
 
僕は基本的に無神論者で、人間のかたちをした神などいるわけないし、いてたまるか、と思っているし、神というものは、人間の観念が創り上げるもので、ひじょうに自分に都合の良い存在で、そうした観念が地域、民族の特質、自然環境、社会環境を反映しながら、地域、民族の融和、あるいは支配構造の骨格の重要な部分を占めながら成長してきたもの、その中核的な存在という考え方です。

たとえば沖縄の神様は、神は“受容という愛”そのものです。それは自然豊かな中で生まれ、育まれた沖縄の人たちの奥行きの深いおおらかな愛情という観念の中で創られた存在だからです。
薩摩と中国という沖縄にとっては強国の間で、厳しいながらもしなやかに生き抜いてきた。そして太平洋戦争で唯一米軍の上陸を受け、県民の4分の1もの犠牲者を出しながら、今もなお米軍の基地を抱えながら生き抜いている沖縄の人たちのしなやかさは、ひとつに宗教観が大きく影響していると思う。

いっぽう、砂漠という厳しい自然環境とその中で移動(遊牧)と迫害の中で生まれたユダヤ教の思想の骨格をなす、神との契約、選民思想にどこか理解しがたい偏狭さと特殊性を感じます。おおらかさの欠如と言ってもいいのかな。自然の恵みを受ける機会が圧倒的に少ない砂漠の遊牧民の観念の中で生まれた宗教なんだな……こんなふうに感じてしまう。

理不尽な迫害もされてきたけれど、理不尽な迫害も犯してしまうという、寛容性に欠けた宗教。アブラハムの宗教から生まれたユダヤ教、キリスト教もイスラム教にも似たようなおおらかさの欠如を感じます。
特定の神を唯一絶対神として、その神を信じる者だけが救われるという狭量さです。

こんなことから、前時代的で原始的で高名な宗教学者や現代人からあまり相手にされないアニミズムや初期の仏教は、すごく共感できる。基本的には無神論者だと言ったのはこのためで、寛容の宗教観に対してはいいな……と思う。

闘いを好まない、歴史的に宗教をめぐる対立で血を流したことが少ない平和的な仏教と天照皇大神という唯一絶対神的な神様はいるけれど、それでもアニミズムから派生した八百万の神々というものすごい大所帯の神様たちを信仰の対象としていた神道が、日本の宗教観の主流をなしていた時代は、わりと平和だったけれど、狭量な時の為政者たちによって国家支配に宗教が利用されると、その国家も宗教もたちまち歪んでしまう。

天皇を神として強制的に信仰させた明治から戦前の日本で、その宗教的核となったのが、靖国神社ですね。戦争と切っても切り離せない神社。情緒的に感情的に戦争を美化させてしまう効果を持ち続けている神社です。

元々靖国神社は、たしか大村益次郎によって、戊辰戦争の時、錦の御旗の下へ集結した官軍の戦死者を神として祀り魂を鎮めよう、という意見に対して建立された『東京招魂社』が起源で、管轄は軍部でした。
戦争で亡くなった人たちすべての魂を鎮めるための神社ではありません。
あくまで官軍、天皇の国家のために戦死した軍人、軍属、ごく一部に民間人が、英霊として、神様として祭られているという、極めて非民主主義的な神社で、本来なら新憲法発布をもってその役割を終わりにすべき神社だったのです。

しかし今も存続し建立以降、この決まりはほとんど変わっていません。
旧幕府軍や彰義隊、新撰組、奥羽越列藩同盟の戦死者。西南戦争の西郷隆盛他薩摩軍は、天皇の国家に歯向かった賊軍であり、靖国神社は受け入れません。
すべて、天皇を中心とした国家のための神社なのです。
だから、対中戦争、太平洋戦争を指揮し、侵略の限りを尽くしその国の多くの無辜な生命を奪い、戦争に駆り出された兵士、軍属、国内にいながら米軍の圧倒的な軍事力で多くの国民の犠牲者を生み出した元凶であるA級戦犯たちも英霊として祀ってしまった……変わったのはここだけでしょうか。

宗教の自由、信仰の自由は憲法によって保障されている……と靖国神社を擁護する人たちは言いますが、靖国神社の成り立ちとこれまでの歴史を考えれば民主主義の下での宗教の自由、信仰の自由と意味が異なることが判ると思うのです。
戦争で犠牲になった兵士たちの命は尊いと思います。酷い死に方だと思います。
だから私たちが行う先祖の供養と同じように慰霊されなければならない。しかしその方たちの霊を供養するのは、民主主義の下で否定された、天皇の中心の国家という概念と関わりのない、無宗教慰霊施設を国家が創り、そこで供養すべきなのです。宗教を超えた寛容の慰霊施設。けして神として祀ってはならない。尊い命として供養する。

宗教というものは、唯一絶対神的な力を持つと、時の流れの中で必ず争いが生まれます。唯一絶対的観念は、他宗教、他宗教民族、地域を異端とみなすからです。
日本もまったく根拠のない万世一系という天皇家の長を唯一絶対神として、それも現人神として祀り、絶対君主としてすべての権限を与え、国の体系の骨格としてから歪んだ国家になってしまった。明治維新は、封建制から近代国家への道を切り開いたものの、方向性を間違えてしまったようです。
歪んだ宗教を奉じた国家は歪み、その国だけではなく周辺をも貶める……

宗教は寛容がいちばんと思うお盆です。



武井繁明



8月13日(金)のつぶやき

2010年08月14日 | 日記
08:51 from web
『普天間爆音訴訟、国は上告せず 386人への賠償確定 』http://t.asahi.com/6tw当然と言えば当然の帰結だが、飴と鞭の飴ではないことを望む。
09:14 from web
【毎日jp】在日米軍再編:普天間移設 国外移設派、訪沖へ 民主20議員、代表選争点化狙う http://bit.ly/aLKg3gこう着状態の普天間問題で小沢氏が打開に向け動くことへの期待があるとみられる――やはり小沢さんしかいない!
15:34 from Ustream.TV
岡田は2005年時点で、普天間基地国外、県外移設を諦めていた。野党時代にすでに諦めていたなんて情けないし、鳩山さんの国外、県外へ意志が伝わるはずもなかった。民主党の外相失格! (#iwakamiyasumi live at http://ustre.am/eOVh )
15:54 from web
自公民相乗り支持?民主党支持者を裏切ったも同じ!RT @theokinawatimes 【記事更新!】北沢氏「仲井真さん当選して」 知事との会談で発言 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-08-13_9211/
18:50 from web
知らないでは済まされませんねRT @Adhi_Parla (略)米軍駐留費をどれだけ日本が負担しているのかをドイツや韓国など他の米軍駐留国と比較してみるべき。米駐留費負担は日本がダントツ1位だが、2位のドイツの負担額と比べても、なんと9倍!(略)国民が事実と背景を知って考える時だ
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8月12日(木)のつぶやき

2010年08月13日 | 日記
21:38 from web
『防衛省、思いやり予算を特別枠に 11年度概算要求』47ニュースhttp://bit.ly/csAJdu防衛省は、ペンタゴンの一機関に過ぎない存在だと考えるととても分かりやすい。さて、菅総理がどうでるか?
21:49 from web
伊波氏支援に難色 県知事選で民主・安住氏 - 琉球新報 - http://bit.ly/bVSrEb 安住氏は「党本部と方針が違うことは誰が見ても明らかだ」と言っているが、だいたい安住が今も選対委員長だなんて誰も思っていない。安住は口を慎め!
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8月11日(水)のつぶやき

2010年08月12日 | 日記
20:38 from web
同意!「政治的スタンス違う」と言った安住こそ政治的スタンスが違う!RT 民主党の中に伊波氏をかつぐ勢力は存在しないのか?かつげぬ民主党など不要だ。RT @theokinawatimes 伊波氏と協力困難 県知事選 民主・安住氏が認識 http://bit.ly/9FXgDl
20:43 from web
普天間基地移設問題は、まだこれからです!新総理、新体制で国外へ!川内議員を応援します!!RT @kawauchihiroshi こんばんは。今日からツイッターを始めました。民主党の建て直し、政権の再構築に向けて折に触れてつぶやきます。
21:10 from web
先頭を切って言っているのは菅さんでしょ。ギリシャを例に出して。ガ~ン!と言ってあげてください。RT @kawauchihiroshi さらに、財源がない、財源がない、と言ってる人がたくさんいますが、財源はあります。これも代表選挙の争点のひとつです
22:16 from web
ガリガリ君を食べながら、南沙織を聴いている。シンシアは夏が似合う!
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8月10日(火)のつぶやき

2010年08月11日 | 日記
21:14 from web
海外でも国内でもアメリカくらい銃弾を放つ国はないが、『アメリカ本土に銃弾は一発も飛んでこなかった』。ここからアメリカがどのような国かよく理解できる。総論的にも各論的にも。
21:22 from web
鳩山さんは幹事長時代の衆院選の前年、例年どおり夏休みを軽井沢で過ごし、例年どおり鳩山Gの懇親会を開き、その足でGのメンバー30人を引き連れ、八ッ場ダムを見学し、その場で建設中止の記者会見を開き、マニフェストに載せる約束をした。実に見事な夏休みの使い方だった。さて菅さんや枝野は?
21:42 from web
金鳥の夏、ガリガリ君の夏……。今食べながらつぶやいている♪
21:49 from web
スイカバーも好きだけれど、種がチョコレートなのは興醒め。でも明日の夜は、スイカバーを食べながらつぶやこうかな♪
21:56 from web
朝日の変節を見て、本多勝一元記者や、”女性国際戦犯法廷のNHKの特集番組を自民党の安倍晋三・中川昭一両議員による政治介入があり、圧力を受けたNHK側は放送直前に番組内容を大幅に改変した”事をスッパ抜いた本田雅和記者はどんな気持ちだろう。本田さんはこれが原因で夕張に飛ばされた。
21:59 from web
子ども頃なら「寝小便をするから止めなさい」と言われました(笑)@trochilidae @rsmoon お腹壊さんように(笑
22:05 from web
スイカなんか夜、絶対食べさせてもらえなかったですね(笑)@trochilidae 寝小便て(爆
22:13 from web
ピンチになるとしゃっくりが止まらなくなる花山大吉♪RT @mankin911 焼津の半次は蜘蛛嫌い、月影兵庫は猫嫌い→花山大吉は猫平気・・・これで番組が繋がるとは!(笑
22:48 from web
刀捌きと言えば、大吉、兵庫、拝一刀を超える者はいないでしょう(微笑)@mankin911 最近、月影を毎日見ているので、しゃっくりの件すっかり忘れていました!(笑 しかし近衛(大吉&兵庫)の刀捌きは凄すぎる! RT @rsmoon ピンチになるとしゃっくりが止まらなくなる花山
22:50 from web
個人的にサマータイムを実施!朝5時から仕事をしているのでおやすみタイムです。
今日もありがとうございました♪おやすみなさい。また明日♪
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8月9日(月)のつぶやき

2010年08月10日 | 日記
06:52 from web
おはようございます♪:鳩山G「09政権マニフェストの原点に返り『国民の生活を守る』集い」、小沢G「「真の政治主導を考える会」―新人議員取り込み作戦開始。政局の熱い夏になりそうですね。
06:55 from web
おはようございます。こちらこそよろしくです♪09マニフェストを取り戻しましょう!@Yosane0310 おはようございます。始まりましたね。きょうもよろしくです
21:51 from web
当ブログ『風の回廊』http://bit.ly/aY5MdV を更新しました。『もうひとつの核兵器―劣化ウラン弾 日本はすでに核兵器加害国になっている』
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もうひとつの核兵器-劣化ウラン弾~すでに核兵器の加害者となっている日本

2010年08月09日 | 日記
◇もうひとつの核兵器―劣化ウラン弾

45年の原爆開発以来地下核爆弾実験を含め、核保有国がこれまで2099に及ぶ原爆実験を地球上で繰り返してきた。こうした実験の繰り返しの中で核弾頭ミサイルが開発され、冷戦時代に米ソを中心にボタンひとつ押せば、世界が壊滅する状況を作り上げたが、まだボタンは押されていない。戦略核兵器として用いられたのは、広島、長崎に投下された2発だけとされている。
 しかし、91年の湾岸戦争でアメリカ軍とイギリス軍が、その後のボスニア・コソボ紛争でNATO軍によって使用された劣化ウラン弾は核兵器と言えないだろうか。
 湾岸戦争で劣化ウラン弾の被害を受けたイラクの医療現場から、被害者の症状は原爆病と同じだという声があがり、現地取材したジャーナリストの取材によっても明らかにされている。

 劣化ウラン弾は、核燃料や核兵器を生産するためのウラン濃縮過程で生まれる放射性廃棄物で、原子力産業がその処理に困っていた現実があった。その劣化ウランの特性に目を向けたのが兵器産業で高い破壊力と安価なことから武器として70年代後半から開発、生産した経緯がある。劣化ウラン弾は高速で標的に激突し、その衝撃と発熱で激しく燃焼し、微粒子となり飛散し、大気や土壌、水を汚染する。
 体内に入れば内部被爆され――放射性物質を口から取り込む、汚染された飲食物を摂取する・放射性物質が皮膚の傷口から血管に入る、気体を肺で吸い込む――ガン、白血病、肝臓障害、腎臓障害、腫瘍、奇形児出産などが発生する。そして被害を受けた地域は、何万年に及び汚染される。

 米陸軍環境政策局によれば大口径の劣化ウラン弾が、1400発以上が湾岸戦争で使用され、対地攻撃機などからの30ミリ劣化ウラン弾は94万発も発射され、その使用総量は800トンに上るという。その放射能原子の量は『広島に落とされた原爆の1万4千倍から3万6千倍』(矢ヶ崎克馬・琉球大学教授)とも言われている。
さらにイラクでは、2003年から始まるイラク戦争でも米軍が大量に使用し、自衛隊が派遣されたサマワ郊外でも劣化ウラン弾が複数発見されている。


◇核兵器と認めないアメリカと国連

 しかし、この殺人核兵器が放射能被害をもたらすことを使用したアメリカとイギリスは認めていない。アメリカは、劣化ウラン弾の使用地域での内部被爆や化学毒性、白血病、奇形児出生率の異常増加。湾岸戦争症候群(1991年の湾岸戦争に従軍したアメリカ軍・イギリス軍等の多国籍軍兵士に、集団的に発生したとされる脱毛症・疲労感・痛み・記憶障害・倦怠感や関節痛などの一連の病状を総称したもの。また、帰還兵のみならず、出産異常や子どもたちの先天性障害の多発が報告されている)、の懸念や被害報告に対し使用当事者であるアメリカの政府公式見解では、

『劣化ウラン弾での健康被害を否定し、「この症状は劣化ウラン弾による影響ではなく、フセイン政権がかつて用いた化学兵器の残留物の影響である」と主張している。
 また、国連総会の補助機関であるUNEP(国際連合環境計画 )の公式報告書でも、ボスニア、コソボにおける劣化ウラン弾使用の放射線による影響を懸念、重要視していない。またWHO は UNEP の収集したデータを基に「劣化ウラン弾が紛争で使われた地域の住民や滞在していた民間人に対して、劣化ウラン弾毒性に関する医学的スクリーニングを行う健康上の理由はない」と結論づけている』(『』内はwikpediaから部分引用)

 このように現地からの報告と異なる見解だが、UNEPとしては、何としても認めたくない理由がある。湾岸戦争では、国連が米英を中心とする多国籍軍の派遣を認めたからだ。

 しかし、実際現地を取材した多くのジャーナリストのルポルタージュや写真を見れば、劣化ウラン弾が、核兵器だと結論づけられる証拠ばかりだ。

 イラク戦争前のイラクのある市の病院の医師は
「毎日4~6人の子供が亡くなっている。湾岸戦争前の10倍で、白血病患者も10倍になり、白血病になれば、ほとんどの子供は死んでしまう」と証言する。
こうした異変の原因が「湾岸戦争当時代使われた劣化ウラン弾によるものだ」と医師の誰もが言う。こうした状況に加え、国連による10年に及ぶ経済制裁により、食糧事情、医薬品、医療機器状況は悪化の道を急激に辿り、救える命まで救えないのだと言う。



Bach 's Chaconne for Solo Violin / Itzhak Perlman (Part 1/2)


◇イラク、クエート・サウジアラビア非武装地帯で

 劣化ウラン弾の使われた証拠を求めてイラク、クエート、サウジアラビア国境の非武装地帯に外国人ジャーナリストとして初めて入ったフリーカメラマン・ジャーナリスト森住卓氏によれば明らかに劣化ウラン弾によって無残に破壊されたイラク軍戦車から、通常の10倍以上の放射能が測定されたという。
 またサウジラビ兄原油を送り出すための施設ポンプステーションは、湾岸戦争時徹底的に破壊されたのだが、そこで見つけた酸化した30ミリの劣化ウラン弾から通常の100倍以上の放射能が測定された。

 湾岸戦争とそれに続く経済封鎖により、学校に行けなくなった子どもたちは、生活のために劣化ウラン弾や薬莢を拾い生活の足しにする。あるいは、子どものいいおもちゃになる。
こうして子どもたちへの放射能被害がどんどん広がっていった。
子どもも大人も劣化ウラン弾の識別はできないばかりか、危険性の認識さえ持っていない。
 また劣化ウラン弾によって放射能汚染された地域の農作物が、市場に出回っているらしい。土壌汚染された地域の農作物を食べれば、内部被爆が起こりやがて死に至る。
経済封鎖によって慢性的な少量危機にあったイラクでは、食料の安全性に気を使う余裕など到底なかった。


◇死が意味を持つイラクの子どもたち

 森住さんが、ある病院に取材に行った時、生まれたばかりの無脳症の子どもに衝撃を受けた森住さんに医師はこう言ったという。
「写真を撮りなさい。この子はあと数時間で死ぬ。あなたが写真を撮って世界中に発信することでこの子は生まれてきた意味を持つ」

 僕はその写真を森住さんの講演会で見た。短い時間に写真を撮られるために生まれてきた子ども。もし森住さんが、そこに居合わせなかったら、写真を撮られることもなかったかもしれない。
世界に発進されることもなく、少なくとも講演会に参加した200名の人たちに自分の生まれてきた意味を訴えることができなかった……
そこには、両親と家族の虚無と絶望とやがて生まれる怒りしかもたらさなかったはずだ。
僕などとても言葉で表せない、言いようのない生であり死だ。


◇すでに核兵器加害国となっている日本

 8月6日、8月9日は、広島、長崎の原爆の日で、平和式典が執り行われる。原爆の被害を世界で唯一受け、尊い多数の無辜な命を奪われたことから、当然行われなければならないし、後世と広く世界に伝えるためには、重要な式典であることは間違いない。
今年は、ルース駐日米大使や潘 基文国連事務総長をはじめ、これまで最高の各国要人が参加したことから、注目度が高く、オバマ大統領のプラハでの演説「米国は核廃絶に向けて行動する道義的責任を有する」が機能したからだと言われている。
たしかにそうなのだろう。しかし、僕はそれとは別に毎年この季節にある種の違和感を覚える。
 僕も含めて多くの人が「唯一の被爆犠牲者が生まれた日本は、核廃絶へ向けて世界のリーダーとして行動すべきだ」と言葉にする。たしかに正論であり、尊い言葉だと思うし、そうした姿勢も尊い。
しかし、核兵器の被害を受けたのは日本ばかりではない。ビキニ環礁で13年間にわたり、アメリカの核実験が続けられたために、その被害を受けた周辺の島民の被爆者もいる。
湾岸戦争やイラク戦争、ボスニア、コソボ紛争で劣化ウラン弾という核兵器の被害を受けた人たちも多数いる。

 そして、私たちが言う「世界で唯一核兵器の被害を受けた日本」「核廃絶ために世界のリーダーとして行動すべき日本」は、湾岸戦争では、アメリカに恫喝されたとはいえ多国籍軍に、135億ドル(1兆6千億円)もの莫大な資金を、アメリカを中心とする多国籍軍に援助している。
 イラク戦争では、後方援助、復興援助という名目でイラクに自衛隊が派遣された。
後方援助と言えば聞こえがいいが、米軍や戦時物資を運ぶ兵站部隊としての役割を果たしている。戦争遂行は、最前線の戦力だけでは維持できない。兵站活動は戦争遂行の重要な部分であり、どう言葉を変えても、武器を使用しなくても戦争に参加していることになる。
 つまり日本は、二つの戦争を通して核兵器の加害国の一員となったのである。
さらに、日本に留まらず、イラクにもボスニア、コソボにも核兵器である劣化ウラン弾を使用した米軍(駐留米軍)に“思いやり予算”という笑えないジョークのような名目でこれまで3兆円以上を援助しているのである。その駐留米軍の海兵隊の一部は、あの凄惨な結果をもたらした「ペルージャ総攻撃」の主力部隊である。
これは湾岸戦争が始まりではなく、核兵器は使わなかったにせよ、ベトナム戦争でも日本の援助を受けた米軍がベトナムで大量殺戮しているのである。死亡者の大半以上が民間人である。
 さらに!はまだ続く。米軍のグアム統合軍事開発計画の予算、102億7千ドルのうち、合衆国の2008会計年度ドルで28億ドルの直接的に提供する資金を含む60億9千万ドルを提供するグアム協定が結ばれている。核兵器のみならず人殺しのための援助をし続けているのが日本の一面である。その援助額は、アメリカの同盟国27ヵ国が、援助する半分以上を日本単独で行っているのである。

 こうした認識が、私たちにあるだろうか……
もし、こうした認識がなく「唯一核兵器の犠牲を受けた国として、核廃絶のために世界のリーダーにならなければいけない」と言っているなら、絵空事になってしまうし、そんな国から発信された言葉は、世界に拡がってはいかない。少なくてもイラク国民には通用しないだろう。
イラクの人たちの心に響くことはなく、ただ憎しみを増長させるに過ぎない言葉となる。

 こうした認識のない“歪んだ正論”をこの時期聞くことを僕は、正直に言って辟易している。
知らないでは済まされない。核兵器の戦略的攻撃を受けた唯一の国だからこそ、知らないでは済まないのである。
原爆の日近くのこの時期だけではなく、私たちは核兵器廃絶に向けた意識の“持続”が必要となり、それにはまず事実を知ること。知ろうとすることだと思う。
それがささやかなものであるにせよ、とても大切なことだと思う。
そうすることによってしか“歪み”は矯正されない。


 

8月8日(日)のつぶやき

2010年08月09日 | 日記
08:32 from web
マスコミ不信、政治不信、検察不信――日本の三大不信。政治不信と検察不信は、小沢さんが日本の舵取りを完全に行えば、消えるかもしれない。
08:37 from web
? トルーマン大統領は、原爆投下を最終決定したポツダム会談の日の日記にこう記している。「このことは遺憾であるが必要なことなのだ。なぜなら 日本人は野蛮人であり、無慈悲、残酷、狂信的だから……」
08:47 from web
?トルーマン大統領は「対日米軍上陸作戦―45年11月に予定されていた九州上陸:オリンピック作戦、続く九十九里浜上陸:コネット作戦―で見込まれる100万人以上米軍犠牲者と日本人犠牲者を出さないため、戦争終結を早期実現すべく原爆を投下する」という理由で原爆投下を決定した。
08:48 from web
rsmoon ?しかし極東軍総司令官D.マッカーサーは「 日本上陸作戦 ( オリンピック作戦 ) を実施した場合も、沖縄戦のような大きな人的損害( 米側死傷者 42000名 )が出るとは考えていない 」とする報告書を国防総省に提出していた。
08:54 from web
?原爆投下が決定された7月の終わりには、日本の陸海空軍は壊滅状態であり、主要都市は、焼夷弾で焼け野原となり、軍需工場のほとんどは爆弾投下で、機能を失い、国民は疲弊のどん底で喘いでいた。11月のオリンピック作戦までに、日本が降伏するのは明らかで降伏に向けて日本政府は模索していた。
08:56 from web
?アメリカ政界、軍部でも、賛否両論があり、原爆使用を強行に反対する共和党有力議員からは、「穏健的な立憲君主制―天皇を排除しない―をポツダム宣言に入れれば、日本は直ぐに降伏する……」という意見が多く出された。
08:57 from web
?あのアイゼンハワー将軍(後大統領)やマッカーサーでさえ原爆使用には大反対で、現に、爆を投下しなくても日本の敗戦は、解りきったことであり、問題は天皇の扱いだけで、原爆使用の必要なんてなかった。
09:01 from web
?トルーマン大統領にとって、原爆を使用することで、ソ連の脅威を抑止し、戦後の国際体制の中でソ連を越えて、大いなる力を発揮できるという理由しか浮かんでこなかった。トルーマンは、ポツダム会談の席上、開発実験の成功を知り歓喜した。前日には、18個の原爆投下を命令していた。
09:02 from web
?南部出身のトルーマンの資質には、カラード蔑視が強くあり、真珠湾奇襲や死のバターン行進を憎み、アジアで侵略の限りを尽くし、決定的な敗北の道を歩んでいるにもかかわらず、激しく無謀な抵抗を続ける日本人に軽蔑と憎しみとそして同時に怖れが生まれた。
09:04 from web
?大統領の資質として、ルーズベルトに遥かに劣るトルーマンは、戦後の国際秩序構築を担う中心的な力を持っているとは自分でも思っていなかった。そこで「もっとも効果的にもっとも早急に日本を降伏させる術は何か……」という命題の唯一の答えは原爆だった。
09:06 from web
?「そこから戦後の世界体制をアメリカに最大の利益あるものとして導かねばならない……」というトルーマン大統領の戦略は、太平洋の果ての極東においては、その意味は特に大きかった。ソ連が歴然と構え、中国の共産化が危惧され始めていたからだ。
09:07 from web
?単独対日勝利を成し遂げ、日本を占領し、日本を橋頭保として共産主義を封じ込めることが、アメリカの太平洋戦略の最大の使命になった。 極東の向こうにはマラッカ海峡がありその向こうにはインド洋が拡がり、アラビア海へ続きます。
09:11 from web
?西へ!西へ!というアメリカのフロンティアスピリットは、トルーマンによって継承された。(以上、私のブログ『風の回廊』http://bit.ly/9eHTBz から、抜粋)
09:15 from web (Re: @Yosane0310
@Yosane0310さん @MP6400 さん:おはようございます。今日も猛暑でしょう。身体を自愛しながら乗り切りましょう!よろしくです♪
17:20 from web
興味深い記事ですね!RT @Izaya2nd 小沢氏、「辺野古も徳之島も無理だ。9月の代表選の争点になるな」と漏らしたという。http://bit.ly/bcSFrd(記事の最下部参照) やっぱり小沢氏は9月の代表選で行動を起こしそうですね。
19:12 from web
注意:rsmoonはフォロワーさんを全て性転換させてしまうという恐るべき特殊能力を持っています。 http://shindanmaker.com/38358 ―― だって(笑)
19:56 from web
苦笑するしかありません♪ @kagetora136 さっ最低だ~!(笑) RT @rsmoon: 注意:rsmoonはフォロワーさんを全て性転換させてしまうという恐るべき特殊能力を持っています。 http://shindanmaker.com/38358 ―― だって(笑)
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8月7日(土)のつぶやき

2010年08月08日 | 日記
19:46 from web
同意!現代史の欠如が無関心層を作っている。Rt @tosa_suigei 勉強嫌いだった私が言うのも何だが、学校の日本史はまず昭和史から始めて縄文へと学習を進めるのがよくはないか。最後に授業の時間が足りなくなっても(足りないはず)、縄文人や卑弥呼さんたちは怒らないと思う。
20:26 from web
「核による抑止力」と聞くと「悪による抑止力」と聞こえるのは歳のせいだろうか……
20:32 from web
特捜に渡ってたりして!RT @Asagaokunn 政権交代直前の昨年9月、内閣官房機密費2億5千万円を目的外で使用したとして当時官房長官だった河村建夫衆院議員(自民党)が詐欺と背任容疑で告発された問題官房機密費、使途照会へ 東京地検特捜部 http://goo.gl/3cle
20:54 from web
『イスラエルの蛮行を撮れ』http://bit.ly/d7bLiF こんな蛮行を繰り返す人々が、神に選ばれた人々の末裔なのだろうか。こんな神も選民も到底信じることはできない。
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8月5日(木)のつぶやき

2010年08月06日 | 日記
00:02 from web
【鳩山研修会に小沢氏出席の方向 代表選前、「小鳩」連携?】http://bit.ly/dkJyFE やはりこう来たか!こう来なくちゃ!菅さんの所は閑古鳥が鳴くか。
00:17 from web
毎日【毎日jp】菅首相:消費税率「10%」事実上撤回…党政調に委任 http://bit.ly/cjsuxJ両院総会で反省として総括し、批判の対象となったものは、潔く撤回した方が、菅さんのためにも民主党のためにもなると思う。
19:56 from bitly
http://bit.ly/d0ORDo
20:04 from web
《首相、集団的自衛権の解釈変えず 参院予算委で答弁》http://bit.ly/d0ORDo 当然と言えば当然だけれど、国民が不安視し願わないことは、どんどん取り消してほしい。総理の私的諮問委員会の役割って何だろう?
20:10 from web
◇客観的事実として――アメリカはなぜ原爆を広島、長崎に落としたのかhttp://blog.goo.ne.jp/rsmoon/たった今ブログ更新しました。
20:18 from web
【国家戦略局を議論する】オリーブニュースhttp://bit.ly/ddwp28 「国家行政組織法配下の省庁が実質的な政策権限を法律明示のかたちで持っており、この政策権限がそこにある以上、国家戦略局はどうしても大きな族議員システム的にしか機能しない」
やれやれです。
22:25 from web
rsmoonさんの恋人の条件は⇒「趣味が合うか」と「服装」と「体」と「体」と「体」です。 http://shindanmaker.com/11603 #joken やれやれです……
23:47 from web
『マッカーサーの2000日』の著者・袖井林二郎さん(国際政治学者)は、8月15日に日本国中”深い虚脱”に陥った、と表現していました。僕は”終戦”に違和感を持っていますRT @iwakamiyasumi 続き。昔の方々が、戦争終結の時点での安堵感を込めて、8月15日を終戦記念日と~
by rsmoon on Twitter

◇客観的事実として――アメリカはなぜ原爆を広島、長崎に落としたのか。

2010年08月05日 | 日記
 アメリカの核兵器開発は、1939年のF・D・ルーズベルト大統領による当時20億ドル巨費をかけた「マンハッタン計画」に起因します。ルーズベルト大統領に核兵器開発を進言したのは、核分裂の原理を考案した中心的人物であるレオ・シラードやオッペンはーマーなどの物理学者で、この核分裂の原理自体は、ドイツも日本も理解していました。ただ、原理を理解することと、それを工学的に製造することには大きな距離がある。そもそも、ウラン濃縮の核化学もほとんどまだ研究されていなかったのです。
 しかし、ナチス・ドイツとの戦争が始まると、ことは一気に運びました。シラードやオッペンハイマーらの物理学者は、ルーズベルト大統領に原子爆弾開発を強硬に進言したのです。
 彼らは、ナチス・ドイツに核兵器開発の遅れを取りたくなかったためでした。ドイツに先を越されたら致命的なことになる……。また戦後に二大大国となることが決定づけられていた、政治・経済体制が異なる米ソの核戦略競争、世界に及ぼす軍事的影響力の競争があり、こうした覇権主義的な競争原理そのものが「マンハッタン計画」でした。
こうしてオッペンハイマーを中心とする原子爆弾開発プロジェクトが生まれたのです。そして、大戦末期に開発が成功する可能性が高かったこの核兵器ににわかに注目が集まりました。

 より実践的な使用方法として。

 この強力破壊兵器は、ルーズベルト大統領の任期中の死により、副大統領から自動的に大統領に就任したH・S・トルーマンにとっては、魅惑の兵器としてクローズアップされたのです。

 1945年4月からの経緯です。
 ヤルタ会談で―45年2月クリミア半島ヤルタで行われた首脳会談―ルーズベルト、チャーチル、スターリンによって、戦後の世界秩序が米ソを中心に規定され、アメリカにとって日本への勝利は、他の連合国に手を借りずに勝利するという至上命令が生まれました。
5月にはナチス・ドイツが無条件降伏し、ナチス・ドイツとの核兵器開発競争はなくなったものの、ソ連はヨーロッパに主戦力を置く必要がなくなり、日本に目が向けられることは明らかで、原子爆弾開発は、単独対日勝利を至上命令としたトルーマン大統領にとってさらに急を要することになったのです。

 真珠湾の屈辱的奇襲への完全復讐もあったでしょう。南部出身のトルーマンの資質には、カラード蔑視が強くあり、真珠湾奇襲や死のパターン行進を憎み、アジアで侵略の限りを尽くし、決定的な敗北の道を歩んでいるにもかかわらず、激しく無謀な抵抗を続ける日本人に軽蔑と憎しみを持ち、同時に怖れが生まれました。大統領の資質としてトルーマンは、ルーズベルトに遥かに及びません。戦後の国際秩序構築を担う中心的な力を持っているとは自分でも思っていなかったはずです。
 そこで「もっとも効果的にもっとも早急に日本を降伏させる術は何か……」という命題のトルーマン大統領の唯一の答えは原子爆弾でした。
「そこから戦後の世界体制をアメリカに最大の利益あるものとして導かねばならない……」
というトルーマン大統領の戦略は、太平洋の果ての極東においては、その意味は特に大きかったのです。ソ連が歴然と構え、中国の共産化が危惧され始めていたからです。単独対日勝利を成し遂げ、日本を占領し、日本を橋頭保として共産主義を封じ込めることが、アメリカの太平洋戦略の最大の使命になったからです。 極東の向こうにはマラッカ海峡がありその向こうにはインド洋が拡がり、アラビア海へ続きます。
西へ!西へ!というアメリカのフロンティアスピリットは、トルーマンによって継承されました。


Adult Children ~ Lacrimosa Requiem k.626 :Mozart


「日本への勝利は、ソ連の手を借りず単独で勝利しなければならない。原子爆弾を使って」

 1945年4月に既に原爆完成予定を知っていたトルーマンにとって、原爆は日本で投下しなければならないものとなっていたのです。
同じ月、ソ連は、日ソ不可侵条約を延長しないことを日本に通達し、日本への参戦が現実化してきました。ヤルタでは参戦の密約がルーズベルトとスターリンの間であり、ここに来て急遽アメリカの戦略変更が行われたわけです。
 原爆の威力をソ連に見せ付けること。原爆を実際に使用し、その破壊力を見せ付けることが、トルーマンにとって何よりも重要な戦略になったのです。
 トルーマンは、ポツダム会談の席上、開発実験の成功を知り歓喜し、ポツダム宣言が行われる前日(7月25日)には、日本への投下の命令を下していました。それも、18個の原爆投下を命令したのです。

ポツダム宣言は、日本の無条件降伏を謳ったものですが、この無条件降伏には、アメリカ政界、軍部でも、賛否両論があり、原爆使用を強行に反対する共和党有力議員からは、「穏健的な立憲君主制―天皇を排除しない―をポツダム宣言に入れれば、日本は直ぐに降伏する……」という意見が多く出されました。ノルマンディーの英雄(アメリカにとっては…)のアイゼンハワー将軍(後大統領)や太平洋戦争の英雄、マッカーサーも原爆使用には大反対でした。現に、原爆を投下しなくても日本の敗戦は、判りきったことであり、問題は天皇の扱いだけでしたから、原爆使用の必要なんてなかったのです。
 原子爆弾を開発した、シラードやオッペンハイマーも日本の民間人に使用することに反対し始めました。原子爆弾の民間人への使用に反対した軍部や共和党、学者らは、フェアな精神に悖る。人倫に悖る。後世にヒットラーのドイツ以上の残虐な国家として記憶される。という危惧を抱いていました。

 しかしトルーマン大統領は「自国兵士の損失と日本国民の犠牲者をこれ以上出さないために、対日米軍上陸作戦――45年11月に予定されていた九州上陸:オリンピック作戦、12月に予定されていたく九十九里浜上陸:コロネット作戦――で見込まれる100万人以上米軍犠牲者の出さないため、戦争終結を早期実現しなければならず原爆を投下する」という理由で原爆投下を決定しました。一国の大統領ですから、確かにあるかもしれませんが、大義名分に過ぎません。

 ひとつにはポツダム会談の当日の日記に
「このことは遺憾であるが必要なことなのだ。なぜなら 日本人は野蛮人であり、無慈悲、残酷、狂信的だから……」と記しています。

 また、極東軍の最高司令長官であるマッカーサー元帥は
「 日本上陸作戦 ( オリンピック作戦 ) を実施した場合も、沖縄戦のような大きな人的損害( 米側死傷者 42000名 )が出るとは考えていない 」とする報告書を国防総省に提出していました。

 そして何よりも、正式決定されたポツダム会談の7月の終わりには、事実上日本の海・空軍は壊滅状態であり、陸軍も壊滅に近い状態でした。主だった都市は、焼夷弾で焼け野原となり、主だった軍需工場はすべて爆弾が投下され、破壊され機能をまったく失い、何よりも国民が疲弊のどん底で喘いでいました。
どう考えても、11月のオリンピック作戦までに、日本が降伏するのは明らかでした。現に降伏に向けて日本政府は模索していました
しかし、決定は下されたのです。

 またアメリカ政府は、原爆の破壊力、とりわけ殺傷力については、正確なデーターを持ち合わせていませんでした。日本人の犠牲などは、ホワイト・ハウスでは眼中になかったのです。
トルーマンにとって、原爆を使用することで、ソ連の脅威を抑止し、戦後の国際体制の中でソ連を越えて、大いなる力を発揮できるという理由しか浮かんでこなかったのです。
このことはトルーマン残した数々の言葉から明らかです。

 ポツダム宣言の内容に、中心的な役割を果たしたのは、トルーマンであることは言うまでもありません。
「日本は無条件降伏を呑むはずがない。必ず拒否する。その後原爆を投下する」という「時刻表」がトルーマンと強硬的なバーンズ国務長官の中にはありました。
現に日本政府の正式回答を待たずに、当時の鈴木貫太郎首相のラジオ放送の「黙殺」の意味の声明に「即座に拒否した」と反応し、ことを進めています。戦争を早く終結させるには、日本の政府と軍部の課題であった、天皇の地位をどうするか。を穏健的に宣言に明記すれば事足りたのです。実際、天皇は責任を取らされることなく、国家元首の地位を与えられたのだから。しかし、ポツダム宣言の内容は、トルーマン主導の無条件降伏として発せられました。
 
 原爆投下とひとつのセットとして……

 このとき、ポツダム宣言参加国のイギリス代表は総選挙のためポツダムには不在。中華民国の蒋介石もポツダムにはいなかったのです。蒋介石に至っては後に、電報で事後確認ということでした。
 ソ連は、7月26日の時点では、中立的な立場であり参加していません。もちろん、内容はスターリンが、その時は知るはずもなかったのです。
ただし、トルーマンはソ連に対しては、原子爆弾の存在の情報を大量に流しました。「参戦は必要ないよ!!」というデモンストレーションだったのです。
そして、投下の是非を左右されるかもしれない、原子爆弾使用反対の共和党議員には、原爆投下2日前にようやく知らされました。

 かくして、原爆は広島、長崎に落とされたのです。


 明日6日は、広島に原爆が落とされた日です。そして9日は長崎へ。
瞬時に消えるように亡くなった人。核がもたらした症状に苦しみながら、数日後、数カ月後、数年後に亡くなった人。原爆症の症状に苦しみながら命を短くした人。生涯その症状と言われのない差別に苦しん人たちのご冥福を心よりお祈りいたします。
そして今も苦しみ続けている人たち。原爆の被害にあったすべての人たちと家族の方たちに様々なかたちで幸あれ……と願います。

武井繁明




8月4日(水)のつぶやき

2010年08月05日 | 日記
15:16 from web
国家を変えよう!に同意しますRT @Yosane0310 国歌はOKですが、「君が代」は時代に合わない歌詞を変えれば良いのに、と思ったり。RT @keiichi__: 僕も子供の小学校の入学式で~RT @chihirolovejohn http://bit.ly/d2q9KS
15:19 from web
国歌を変えよう!に同意しますRT @Yosane0310 国歌はOKですが、「君が代」は時代に合わない歌詞を変えれば良いのに、と思ったり。RT @keiichi__: 僕も子供の小学校の入学式で~RT @chihirolovejohn http://bit.ly/d2q9KS
15:27 from web
哲学者タケセンの『思索の日記』からhttp://bit.ly/cgLRDd 「愛国心」の要請!?ー官府による方向づけは、脆弱な社会と人間しか生みません、秩序をつくりません
19:45 from web
【毎日jp】菅首相:国家戦略室の局昇格法案 秋に成立目指す考え表明 http://bit.ly/d6R6l8みん党の江田議員に言われ、ブレブレの首相と官房長官。この政権は、意志薄弱政権とも言える。
23:56 from web
『風の回廊』http://blog.goo.ne.jp/rsmoon/これまであまりmixiでは書かなかった政治記事を1月から書くようになり、それをブログ化しました。1月、2月分と8月をアップしたのでよかったら読んであげてください。少しずつ3月~5月分をアップする予定です。
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不可解な千葉法務大臣の死刑執行決裁と少しだけ死刑制度にふれる

2010年08月04日 | 日記
7月28日、二人の死刑囚の死刑が執行されました。ちょうど一年ぶりで、民主党政権では、初めての死刑執行です。
この二人の死刑囚がどのような犯罪で死刑が確定したか、ということは述べません。また千葉法務大臣が、今回の参院選で落選したことも関わりなく話したいと思います。ここでは別の観点で、千葉法務大臣の死刑執行決裁についていくつか述べたいと思います。

法律上の千葉さんの死刑執行の決裁は、なんら問題もなく正当なものなのですが、僕は千葉さんが、現在まで11ヶ月間の任期の中で、決裁してこなかったことと、今回の決裁に大きな格差を感じ、その格差は、菅首相が言うように「法務大臣として適正に処置した」という言葉では埋まらないほど距離と深さがあり、その深みの底には澱のようなものがうっすらと溜り、なかなか払拭できません。さらに格差を深めたのは千葉さんが、法務大臣として初めて死刑執行に立ち会ったことです。

千葉さんはこれまで、アムネスティ議連の事務局長の経験や、死刑廃止議連にも所属していた経緯があり、バリバリに死刑制度廃止に力を注いできた方です。そんな方が、死刑執行を決裁する立場になったわけですから、できれば任期中死刑執行の決裁をしたくなかったと思います。
事実この11ヶ月決裁しなかった。その間、おそらく法務官僚(刑事局)から死刑執行の決裁の要求があり、自身の信念と職務責任の間で葛藤され、それでも、信念に基づき決裁しなかったのではないかと心中察するに余るものがあります。
だから、死刑執行決裁に至り、刑の執行に立ち会ったことは、これまでの千葉さんのキャリアと信念を崩した責任から生まれたことは、とてもよく理解できるし、ただならぬ決意だったでしょう。
執行立会後の記者会見で、死刑制度のあり方について検討するための勉強会を発足させるとともに、東京拘置所内にある死刑を執行する場を報道関係者に公開するよう指示したことも千葉さんの信念が、そうさせたのでしょう。

しかしだからと言って、僕が感じた格差が埋まるものではありません。
なぜなら、千葉さんは法務大臣という立場で、死刑制度のあり方検討する勉強会をこの時点でなくても、この11ヶ月間のどこかで、本来なら就任してまもなく設立することはできたし、09マニフェストにもある、取り調べの可視化によって、冤罪を防ぐ法案に向けた取り組みができたはずです。千葉さんだからこそ、早急に取り組まなければいかなかったし、多くの人たちはそう期待していました。

民主党は野党時代のねじれ国会で、千葉さんを中心に2度取り調べ可視化法案を参議院で通しているのです。その千葉さんが法務大臣になったからには、政権交代後真っ先に、この法案は通るだろうと思っていました。しかし今もなお、積極的に検討されている様子はありません。

推測の域を出ませんが、おそらく千葉さんは、法務大臣就任後、死刑執行を促す法務官僚高官に「冤罪防止が最優先課題」とし09マニフェストの取り調べの可視化、死刑に関する情報公開を官僚に指示したと思います。
世間では何もしない法務大臣の烙印を押されてしまいましたが、大臣室の椅子に座り、何もしないわけにはいきません。官僚に自分の政策を告げたと思います。しかし、どちらも法務官僚の厳しい抵抗にあい、平行線のままの状態が続き、落胆の日々を過ごしてきたのだと思う。
死刑制度は、国民から高い支持を受けており、そうした狭間での葛藤も大きかったと思う。しかし、千葉さんは改革するために送られた法務大臣です。
何もできなかったでは済まされない。

しかし結局、岡田外務大臣や北澤防衛大臣、前原国交大臣がそうであるように、官僚の厚く高い壁を壊すことができなかった。官僚を上手く使いこなす手腕を発揮できずに11ヶ月間を孤立し悶々と過ごしてしまったのではないか。
そんなふうに思います。

法務官僚の上層部は、検事です。死刑に関わる刑事局は全員検事です。検事は官僚体制を守る精鋭です。官僚改革への最大の抵抗勢力は、法務省の上層部です。女性だからということではなく、千葉さんには荷が重すぎたのではないか。そんなふうに思います。
あの田中真紀子さんでさえ、外務省の官僚に干されてしまった。それ以上の抵抗勢力の法務官僚の力の前になすすべもなかった。これが現実ではないでしょうか。
ですから、今回の死刑執行決裁と勉強会と執行場のメディアへの公開は、官僚との闘いの中で決着点を見いだしたものだと思います。そして千葉さんの信念から生まれた責任として執行に立ち会った。

こんなふうに思うことでようやく、底に溜まった澱が消え、格差の深度が幾分浅くなりましたが、官僚制度が改革されるまで、埋まることはないと思う。
しかし一方でもし、取り調べ可視化法案が立法化されていたら、これほどの格差を感じることはなかったと思います。

そして、死刑制度ですが、僕は存廃を含めて、制度全体と刑罰の在り方、刑法も含めじっくり見直すべきだと思います。少なくとも現行の捜査、取り調べ、手続き、報道の姿勢の下では、死刑を執行してはならないと思っています。
なぜなら、現行の密室での取り調べでは、冤罪が生まれる可能性が十分にあるからです。そして現実に生まれている。
被疑者への取り調べの可視化と、弁護士同席による取り調べだけではなく、事件の目撃者、証人の取り調べも可視化しなくては、冤罪を防ぐことはできません。もちろん、冤罪をこれだけで防げるものではありません。

さらにマスメディアの逮捕時点であたかも犯罪者であるような過熱な報道……冤罪はメディアによっても作られます。
近代刑法の大原則である「推定無罪」を逸脱した報道と検察のリークは、本来あってはなりません。メディアの報道によってこれまでどのくらいの無罪の人たちが、社会から不当な扱いを受け、生活が損なわれてきたか。
密室での取り調べでどれだけの冤罪が生まれたか……
このような状況では、僕は死刑執行だけではなく、裁判員制度も反対です。
どんな証拠があるにせよ、取り調べは密室であってはならない。可視されるものでなくてはなりません。
日本が民主主義国だと威張っていられないことはこんな初歩的なことにも原因があります。


アメリカのある州では「冤罪の可能性が1%でもある限り、死刑制度を維持することはできない」という理由で、死刑制度が廃止されました。この言葉は重いと思います。

日本では死刑制度を支持する人たちが増えています。その多くは、被害者と被害者の遺族を思う心情的、感情的支持が多く含まれていると思います。
もちろん、被害者とその遺族が失ったものは、僕など言葉に現わせないほど大きく、何によっても埋まるのもではなく、せめて加害者の死を持って償うことが、けじめとしてあってもいいと思います。

しかし、死刑制度を存続させるなら、冤罪をなく無くす方向に向かうように国民も考えなくてはいけないと思う。死刑制度だけ賛成して、冤罪を防ぐための意見を口にしないのはどう考えてもおかしい。

被疑者、目撃者、証人の取り調べの可視化と、被疑者取り調べの弁護士の同席は早急に立法化しなければいけないと思う今日この頃です。


武井繁明

菅政権の行方、民主党の行方、日本の行方

2010年08月02日 | 日記
29日、民主党の参院選敗戦を総括する両院議員総会が開かれ、Ustreamでライブ中継と、夜、ビデオ配信があったのでビデオ配信を見ていました。
政権与党として、こうしたかたちで国民に、マスメディアにも余すことなく公開することは大変良いことだと思います。
視聴者は、2つの放送を合わせて4000人を少し超えるくらいでしたがUstreamの良さは、放送を見ながら、ツイッターなどでライブチャットできること。放映画面の右側に多くの人たちのツイートがタイムラインで流れること。ツイッターに同様に流れること。そしてツイッターを通して拡がり、フォロワーたちの間で意見交換されること。
つまり、実際見た4000人以上の視聴効果があるということです。テレビではなかなか見ることのできない、貴重なインタヴューや討論を見ることができるので、みなさんぜひUstreamを愛用してください。
新聞やテレビの報道が、いかに歪められているか、知らないことが多いか気づく優れた番組がたくさんあります。

それはそれとして、両院議員総会ですが、執行部がまとめた総括案の内容は、反省というより言い訳じみていて、責任の弁を無気力な表情で棒読みしている菅首相の姿が、現在の党執行部、内閣の立場を象徴し、枝野幹事長の総括案の発表と参加議員の質問への答弁は、言葉数だけが多く心からの反省と今後へ向けての情熱みたいなものはまったく感じませんでした。いつものとおり優等生的な発言に終始し、ところどころ暗に小沢さんを批判し、スケールの小ささ、実力のなさを露出していました。
最悪なのは、安住選対委員長で時ににやけ、執行部擁護の議員の発言に頷き、まったく反省というものを感じさせることなく、あれはバラエティー番組に出過ぎた弊害でしょうね。
反省し議員の様々な意見を受けて立つ側というのはこんなものなのかな……と思いましたが、政権党であること。その中枢である党の執行部であることを考えると暗澹たる思いです。

一方、責任を追及する議員の言葉には――特に今回の参院選でなんとか当選した議員――悲壮感があり、路頭に迷うかもしれない落選議員への思いやりとの連帯感を感じました。そして菅、枝野両氏を中心とする執行部の姿勢と目指す方向が、いかに独断的で、視界不良で国民の期待、支持者の期待を裏切るものであったかが、明らかにされました。

自民党と比べた場合、全得票数でいえば、300万票ほど民主党が多く、比例代表では400万票ほど民主党が上回っています。しかし、議席は伸びず目標から大きく後退してしまった。

その理由は、

◇昨年の夏の衆院選マニフェストで掲げた、「生活第一」を執行部が独断で変えたことです。
◇多くの人に支持され、期待され、実現を願った09マニフェストによって政権交代となったことを忘れ、それも討議されることなく変えられてしまったことで党の結束を欠いてしまったこと。
◇「官から民へ」(官僚制度改革)を官に戻すかのように国家戦略局を無力化させ、
◇4年間は、消費税を上げませんよ、と公約したにもかかわらず、討議なしに、菅総理の独断に近い突飛なかたちで、それも自民党に倣う10%という数字を出してしまった。「自民党が掲げる10%は、参考に値する」とまで言ってしまった。その後のスレズレ発言。
◇そして、普天間、辺野古問題を無視してしまったかのように候補者を立てなかったこと。
◇アメリカへの追従が、菅体制になりその姿を鮮明に現してきたこと。
◇そして、迷走と言われた鳩山政権の10ヶ月の評価をしていないこと。メディアによって歪められた、鳩山政権が果たした評価されるべきものをひとつもアピールしなかった。

選挙戦の最前線で闘った議員によれば、もっとも厳しかったのは「嘘つき!」と言われ「09マニフェストを実現できぬまま後退させて、自民党になるのか。菅さんが言っていることは、古い自民党と同じではないか」
こんな声があちこちで聞こえ、罵倒されたといいます

政党政治は、他の政党と対立軸としての政策を掲げなければ、政権をとることはできないんですね。まして、55年から昨年9月まで約60年(55年体制)、細川連立政権を除けば、連立時期があっても自民党が政権党として支配し続けてきた現実の中で、対立軸のない政党、あるいは対立軸はあるが非現実的な政策を訴えてきた政党や少数政党は、自民党に勝ったためしがない。

民主党とて同じで、鳩山、菅、岡田、前原と続く代表は、自民党に対する対立軸としての政策を上手く立案できなかった。自民党と変わりないじゃないか、というのが有権者の声だった。
前原さんに至っては、自民との政策を改革する程度の姿勢しか持ち合わせていなかったんですね。

ところが、小沢一郎が代表になりたった2年で参院選に勝ち、それから2年で政権交代を実現した。
それはそれまでの民主党の自民党より少し目新しいくらいの政策から「生活第一」というひじょうに解りやすい政策の中に「官僚改革」「対米対等」「自主外交」「アジア重視」「自衛隊海外派遣の国連主義」を塗り込んだ、自民党との明確な対立軸を掲げ、実現可能だと有権者に広く浸透させたからに他ならないわけです。
しかし、現執行部は(旧民主党勢力)小沢さんを排除しただけならまだしも、国民が支持し、期待し、実現を願った09マニフェストから後退してしまった。
民主党支持者はもちろん、多くの国民を落胆させてしまったのですね。

ツイッターを見ているとよく解ることですが、熱心な民主党支持者の多くが、菅政権、特に執行部に対して痛烈に批判しているんですね。これは両院総会で責任追及の意見を述べた、議員と同じ内容です。

「09マニフェストをなぜ独断で後退させたのか。政権交代を果たさせていただいた国民の想いを無きものにするつもりなのか」

ほぼこの一点です。そしてツイッターの民主党支持者も、発言した議員も執行部、菅首相への辞職を求める声が圧倒的です。

僕は菅さんの代表選挙と、勝利記者会見を見て、「やばいな……」と思いました。
僕はそれまで、菅直人という政治家は、民主党の中でも、ここ20年
くらいの政治家の中でも、とても信頼し高く評価し、いずれ菅さんは総理大臣になるだろう。それも早くなってもらいたい。長くやっていただきたい、と思っていたほどで、菅さんほど、小沢さんが切り拓いた改革後の日本にふさわしい政治家はいないだろう。そのくらい好きな政治家でした。
自・社・さきがけ連立政権で厚生大臣に就任し、薬害エイズ事件処理について厚生官僚が隠し続けたファイルを探し出し、官僚の反対を押し切り、白日の下に晒し、薬害エイズ事件の被害者たちに、初めて行政の責任認め、涙を流しながら土下座をして謝罪したことは、鮮明に焼きついたまま忘れることはできません。それほど、画期的で優しい政治家です。 
菅さんとは比べものにならないけれど、僕も市民運動をしていたこともあるし、そういった雑草の中から、日本を代表する政治家になったことは、最高の喜びです。親近感も覚える、苦労も少しは解ります。市民運動というのは、毎日が挫折ですから。膝を立てるのが本当に大変なんです。

ところがどうでしょう。そんな菅さんが、アメリカの思惑とそれに従順な官僚とマスメディアによって貶められた小沢さん、鳩山さんが辞任した、極めて緊急事態の中で、極めて責任重い立場になった時、「代表選で勝った。これで総理大臣になれる」という喜びでいっぱいの表情でした。
それはたしかに嬉しいでしょう。それはとてもよく解りますが、あたかも総理大臣になることが目的だったかのように僕には見えてしまったのです。

それは29日の発言にも現れていました。
「30年間の政治家生活の最大の目標は、政権交代だった。政権交代だけを夢見て必死に歩んできた」と言うのです。
その日の菅さんは萎えていましたが、僕は代表選勝利の時の「ついにやった!」というような笑顔、勝利声明の記者会見での上ずった言葉とその時の表情を思い浮かべ、「やばい……と感じたとおりこの人は、政権交代止まり、それからさらに切り拓く、いちばん力を必要とする時期の政治家ではなかったんだ。ましてこの緊急時に……」という深い落胆と虚脱感に襲われました。

世論調査では菅内閣を支持する人、支持しない人がほぼ同じの40数パーセントです。そして首相を辞任しなくてもよいと答えた人は、80%にも上ります。この不可解な現象……
(小沢さんがこれから影響力を持つのは好ましくないと答えた人は85%――笑えますね。質問も結果も)
この数字に菅さんも執行部も頼っていたら、民主党もこの国も大変なことになってしまうでしょう。

世論調査の数字というのは、マスメディアの報道が、どの程度国民に行き渡ったかの後追い調査に過ぎません。なぜかと言えば、新聞とテレビの報道を鵜呑みにし、疑いもなく信じている人が、とても多いからです。そこから真実は見えにくいですね。
(僕は学生時代、大手町にある大手新聞社の世論調査部で月に7日から10日ほど、ほぼ4年間アルバイトをしていました。だから世論調査について経験的に実感的に解ることがあります)
さらに言えば、この国の有権者の4割以上は、投票にいかない政治に無関心な人です。
だから、「首相が次々と交代するのはよくない」と報道されれば、そう思い込み、それがあたかもまっとうな意見だと信じてしまうのですね。
さらにアメリカの国務次官補のあのキャンベルさんに「首相が短期間に変わるようでは日米関係に必要な信頼関係が構築しにくくなる」なんて言われ、それが報道されると、「それは困った。大変なことになる。菅内閣は支持しないけど、今辞めてもらうのは困る」ということになるわけです。
「鳩山はルーピーだ」と言ったのは、このキャンベル国務次官補で、それをライターが面白おかしく書き、ワシントン・ポストのコラムに載せて、日本では、ジョークだということも解らないマスメディアが、あたかも鬼の首を獲ったかのように報道し、それに乗った多くの読者が「鳩山は愚直な政治家だ!」と思い込んでしまったわけです。
「ルーピー」発言と同じように、報道に呑まれてしまう脆弱さが示す世論調査の不可解な数字と言えるでしょう。
(キャンベル国務次官補は、ルーピー発言後、日本の状況の異常さに怖れをなし、来日し鳩山さんに謝罪しています―報道されませんでしたが)

40%の内閣支持率ですが、けして悪くない数字ですね。内閣支持率で40%を維持できていれば安定している内閣と言ってもいいでしょう。もちろん調査する側の認識です。しかしこの数字もマスメディアがもたらしたもので、メディアが、鳩山・小沢体制の時のように目の敵にして報道しないからです。ほどほどに褒め、ほどほどに批判しているからです。
既得権力のマスメディアにとって、鳩山・小沢体制よりもずっと菅体制のほうが危険な存在ではなく、すでに手にして長い権力を保持し続けるのに菅体制のほうがずっと都合がいいのです。
それは官僚も同じです。野党も同じです。特に自民党やみんなの党、自民党から出た訳の解らない塵みたいな政党も同じです。

そして官僚、メディア、旧政権といった既得権力が、もっとも怖れているのが、国民の多くが、メディアによって騙され影響力を持ってもらいたくないと言っている小沢一郎さんです。
明治以来、この国の権力を握り続け、まやかしの民主主義国家をあたかも本物の民主主義国家のように装い、国民が本来得ることできた様々な利益を蔑にしてきた官僚体制を改革し、日本を本来あるべき姿を切り拓くことができる政治家は、今や小沢一郎さんしか残されていないのです。そのことをいちばんよく知っているのは、官僚とメディアと野党です。
だから、官僚とメディアは、小沢さんを政治的に抹殺しようとしているんですね。表に出れば出るほど打たれるのが小沢さんです。

そして菅首相も執行部も、小沢さんから離れそちら側に向い、歩み始めました。
「静かにしていてほしい」と小沢さんに言った菅首相も、枝野幹事長もこれは、自らを損ねる致命的な発言になりました。
小沢さんを固定的に支持する人たちは、世論調査の数字にすれば20%くらいあると言われています。この人たちは世論調査の数字に左右されません。その全国に散らばっている20%の人たちにこの発言が与えた影響は測り知れません。

今のままの菅体制では09マニフェストは実現されません。改革の芽が、折れてしまう可能性が高くなり「生活第一」とそこに塗り込められた、今の日本にとって必要な姿勢――「官僚改革」「対米対等」「自主外交」「アジア重視」「自衛隊海外派遣の国連主義」――がどんどん薄くなってしまうんです。
一昨日の報道だったかな、「非核三原則」の内、「核を持ち込ませず」という原則を、核の抑止力の観点から緩めようという動きが、菅首相の私的諮問機関から生まれました。こんなことは許せません。許してはいけません。自民党でさえ、表だって発言しませんでした。あくまで個人的には。というレベルでした。
これだけではなく、09マニフェストから遠のく政策が、あちこちに見え始めています。

こうした状況の中、両院総会での責任追及の声はとても厳しかったです。それは報道されている以上に厳しいものでした。鳩山さんは、アメリカの意志をから逃れられない外務、防衛官僚のサボタージュで、普天間基地移設問題で敗れた。でも果敢に闘った。沖縄の議員は、鳩山さんを咎めず、菅さんの闘おうとしない姿勢に辞職を迫りました。

「総理の言葉に09マニフェストを実現しようとするやる気が、今の言葉からまったく感じられない。情熱が感じられない。できるだけ~、できればそのように~。そうしたいと思う。などと言葉に信念が感じられない。09マニフェストを実現は、国民との約束だ。約束を遂行する志がないなら直ちに総辞職すべきだ」――川内博史議員(鹿児島)

「鳩山さんも小沢さんも、あなたたちに政権を譲るために辞職したのではない。あなたがたは09マニフェストを実現させるために辞めたことを感じていない。執行部には知ばかりあって情がない。情熱がない。選挙で敗れた人は、戦争でいえば戦死した人だ。それに対する責任は、指揮官が果たすのが当然だろう」―東祥一議員(東京)

「参院選は自民党が1回もボールも触っていないのに10本以上、オウンゴールだった。執行部はだれにも相談しないで勝手に衆院選マニフェストを変え、消費税を上げると宣言した。いつから北朝鮮になったのか。」―小泉俊明議員(茨城)

「選挙で支持者や有権者から嘘つきだと言われ、多くの仲間が勝てる選挙で敗北した。なぜ責任を取らないのか理解できない。言い訳を聞きに来たわけではない。総括案は到底承認できない。言い訳を聞くために出席したわけではない」――森裕子議員(新潟)

そして誰ひとり「政治と金」、鳩山・小沢問題で選挙に負けたと言う人はいませんでした。
辞任したことで責任を果たした。結果支持率がV字回復した。ということもありますが、小沢さんは、冤罪であることを政治家なら知っているんですね。検察とメディアのシナリオに貶められたことを知っているから、こうした席ではそんな話にはならないのだと思う。

いずれにせよ、こうした舞台状況を作ったひとりは、私たち有権者です。
政権交代は、一度の選挙の勝利では成りません。衆議院の多数党は、政権を作れますが、政権の政策を立法化するには、参院でも過半数以上を占めるか、衆院で3分の2以上の議席を持っていなければ、政策の立法化はとても難しくなります。
政権の土台を盤石にしようとする政治家は、参院選を重視しました。
佐藤栄作さんがそうであり、田中角栄さんがそうでした。流れが確実に勝利に結びつくという確信があれば、衆議院を解散し衆参ダブル選挙に打って出て、政権を盤石にします。
中曽根康弘さんがそうでした。

しかし、民主党現執行部は勝てる選挙で負けてしまった。連立による過半数可能な選挙で惨敗しました。
3年後に参院選がまたあります。衆院は解散すれば総選挙になるから、めどを立てにくい。
今回の参院選の得票数をそのまま衆院選にあてはめてシュミレーションすると、民主党が260~310議席を獲得するという数字が出ています。
つまりここ当分、自民党は衆院で勝てそうもない。政権交代できない。しかも前回の参院選で、大きく負けたから、次回の参院でも過半数は獲れそうもない。
民主党も次回の参院選で過半数を取るのは不可能に近い負け方を今回してしまった。
つまり、ねじれ状態が、少なくとも次々回の参院選の6年後まで続く可能性が高い。
その間、政策らしい政策は立法化されず、国は停滞する……

これが極めて現実的なこれからの日本です。

さらに、政界再編もあり得る環境を、私たち有権者は舞台として作ったわけです。
割れるとすれば、民主党と自民党であり、狭量で近視眼的な仙石官房長の「自民党との大連立もないわけではない」という発言まで飛び出す始末です。
自民党と連立する民主党は、09マニフェストを捨てたも同じで、民主党とは言えず、その時は自民党です。
こんな舞台も私たちは用意してしまった。

小沢さんのシナリオでは、3回の選挙で(3年前の参院選、昨年の衆院選、今回の参院選)政権交代を揺るぎないものとしようとしたわけです。だから二人区で強引ともいえる二人の候補者を立て、自ら身を引く時を待ち、辞任しました。メディアは鳩山さんが小沢さんに辞任を求めたと報道しましたが、実際は逆だろう。というのが、そのあたりをよく知る人たちの見方です。

もし……という言葉は、リアルではないけれど、それでもあえて、もし小沢さんが、検察とメディアに貶められることなく、昨年夏選挙直前に代表を辞めることなく総理大臣の座に着いていたら、壁は厚く高いにせよ、今回の選挙に勝ち、政権交代を盤石にしたのではないか。4年間で、この国をあらたに切り開き、鳩山さんなり、菅さんにスムーズにバトンタッチできたのではないか……
切り拓き、改革を半ば成功させた後なら、鳩山さんにしても、菅さんにしても、改革を継承し優れた総理大臣として活躍できたのではないか……というのは、僕の妄想でしょうか。

いずれにせよ、日本の行方は私たちの意識、意思、意志、行動にかかっていますね。
政治家を選ぶのも、政党を選ぶのも私たちにしか委ねられていないのだから。


武井繁明


*マイミクのタケセンさんのコラムを読んで反省と至極納得し、政治コラムは、実名で書くことにしました。