風の回廊

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真実からの乖離(2) 小沢問題から~(14)

2010年02月24日 | 日記
以下は、前回の『真実からの乖離(1) 小沢問題から~(13)』コメントしていただいたthis boyさん宛てにレスを書いているうちに、内容は前回のものに沿っているように思え、またいつものように長くなってしまったので、加筆しthis boyさんへのレスを含んで本日のコラムとさせていただきました。
(this boyさん、手抜きをしてごめんなさい(^^ゞ)


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だいぶ各論めいたことを僕は言うようになってきましたが、政権交代が成ったからには、私たちも少しずつ各論に踏み込むべきだと思います。

そこで、在日米軍基地問題を考える場合、「日米安全保障条約」を横に置いて語るにはいかないので、語りますが、現在の自動的更新は、早急に改めなくてはいけないと思います。
やはり、新しい国際関係に即した安全保障条約でなくてはいけないし、ここがおろそかになっていたから「日米同盟」のような「無法の同盟」が生まれたてしまったわけです。

すでに冷戦が崩壊し、イデオロギーの柵は大まかにいえば取り払われ、イデオロギーが国際問題の根幹となす時代ではなくなり、それに替わり地下資源戦略が、国際問題の根底に大きく流れています。民族問題も、宗教問題もその上に重なる場合が多い現実です。
特に先進国と近代化を図る中国とインドは、これからさらなる地下資源戦略を強化していくでしょう。同時に民族問題も宗教的な問題も多く生まれると思います。

世界的な環境問題、CO2排出量の問題なども、地下資源戦略に含まれ、また含まなくてはいけない包括的な問題です。しかし、どこか目をそらされていように思います。
イラク戦争は、テロ国家撲滅という名の影に、アメリカの長期的地下資源戦略が横たわっています。
地下資源戦略、世界的環境問題、国際協調、安全保障は、それぞれが強くリンクしているのが現実ですが、それぞれ個別的に語られ過ぎているように思います。だから本質が見えなくなり、真実から乖離している現象が起こっている。これはひとつの例です。

沖縄米軍基地問題も同じで、本来「日米安保条約」に大きく起因しているのに、あるいは、ずっと昔の中国の共産化、朝鮮戦争、ソ連の膨張主義、いわゆる冷戦体制に起因しているのに、わりと「基地問題」という単体で語られています。

沖縄の米軍基地問題は、大戦末期の米軍沖縄上陸→占領→アメリカ統治→返還という流れの中で、いわば沖縄の米軍基地の変化を見れば、アメリカの国際戦略と日本の関係が、解ってしまうと言うべき、日米関係の象徴的存在と言えます。
大きく変わったのは、大戦後の連合軍の二大国米ソが、それぞれの国家体制、経済システムで世界戦略をいっそう進めた結果、いわゆる東西に世界が別れるという冷戦構造が生まれたことにあります。
アメリカは、敗れた日本を「非武装、民主化」を最大のポイントとして改革してきましたが、冷戦構造が生まれ、いわゆる「逆コース」を日本に作り始めました。「非武装化から武装化への逆コース」です。警察予備隊から自衛隊へ……

冷戦初期から中期のアメリカの国際戦略は、共産主義の「封じ込め政策」です。貧困な国が共産主義を求めてドミノのように共産化する(ドミノ理論)ことを恐れたアメリカが採った戦略で、日本は極東での「橋頭保」としての役割を求められました。
「豊かな経済社会と軽微な軍事力」。これが、戦後アメリカによって日本に求められた姿です。
同時に、沖縄の米軍基地が強化されます。日本の防衛は、さらなる共産化を食い止め、極東だけではなく、アジア全域の防衛にもアメリカにとって必要だったからです。
特に貧しい東南アジア諸国の共産化を恐れ、フィリピン、南ベトナムを傀儡化し、共産化した北ベトナムと対峙し、やがてベトナム戦争が起こり、沖縄は中継基地としてアメリカになくてはならない存在になりました。
当時のペンタゴンの高官は沖縄の存在を『もし、沖縄に米軍基地がなかったなら、ベトナム戦争の遂行はあり得なかったろう』と言っています。

この間には、アメリカの世界戦略の法的後ろ盾のひとつとして「日米安全保障条約」が締結されました。いずれ日本に返還しなくてはいけない沖縄。そこにある米軍基地。その他の在日米軍基地の存在理由が、条約によって法的に確立します。これ以上の保証はありません。
だから、返還後も変わることなく沖縄の基地は在り続け強化されてきました。
一方本土は、学生や労働組合などの政治的左派勢力によって、基地反対運動が起こり、基地の撤退が実現したり、新たな基地、演習場建設は、最小限に食い止められました。
(内灘闘争、妙義闘争、立川闘争など)

こうして沖縄に日本の米軍基地の面積の75%が集中するという異常な構図が生まれました。
つまり沖縄は、日本政府によって放っておかれたのです。沖縄にも反対運動がなかったわけではなく、右左に関係なく県民全体の反対運動があったわけですが、政府は本土だけを解決し沖縄に至っては、返還後も解決しようとしなかった。「日米安保」を基に沖縄に押しつけたまま現在に至ります。

沖縄の米軍基地問題を解決するには、冒頭でも述べたように、「日米安保」を自動更新などと放っておかないで、改訂するか、あるいはもっと包括的な平和的な条約に変えてゆき、段階的に沖縄から基地が撤退されるべく事を運ばなくてはいけません。
しかし、国民の多くはすでに「日米安保」は、空気のような存在として捉え、問題視することがなくなってしまった。この現実では、政治家も動きません。
沖縄の基地問題の解決も、長い時間がかかってしまいます。

このように、日本の安全保障は、「日米安保」が絶対的大前提になっているから、アメリカの中東戦略が「日米安保」に重なっても誰も不思議に思いません。
でもアメリカは、そのままにしておかない。実にしたたかに、アメリカの世界戦略、とりわけ中東戦略の極東での地政学的重要ポイントして、日本を包括してしまいました。
これが「日米同盟」だということは、前回書きました。
このことにも、多くの国民は「日米協調関係の自然の推移。日米安保が進化したんだろう」程度の認識でいます。
国民だけならいざ知らず、国会議員もよく分かっていないようで、最近民主党議員が、ブログで「日米同盟」を取り上げるようになった……
自民党はまともに語ろうともしない。そんな現状です。

ここで沖縄にいる海兵隊が、「日米安保」で期待される抑止力になっているか?ということを考えたいと思います。
ずっと以前からアメリカの目的は中東戦略に向けられていて、「日米安保」で期待する抑止力なんかないんだそうです。
では何が抑止力になっているかというと「自衛隊」です。
専守防衛の自衛隊ですが、現代兵器を有する自衛隊が、すでにその役割を果たしている。だから、沖縄に米軍基地はいらない……
アジア諸国が、日本の軍事力増強にあれだけ拒絶反応を示すのは、過去の記憶もありますが、すでに抑止力となっていることも示しています。

こうした軍事力を自衛隊に持たせた上での「日米同盟」であり、アメリカの中東戦略なのです。
アメリカの軍産複合体は、自国の兵器を「日米安保」を名目に日本に買わせ、「日米安保」に期待される抑止力として自衛隊を強化膨張させ、その上在日米軍基地の経済的負担まで(約6割?)日本にさせているわけです。
その間に、中東戦略をどんどん膨らませていった。

中東戦略は、19世紀後半から続くアメリカの世界戦略のひとつです。
フィリピンをめぐりスペインと戦争したのも、太平洋の利権をめぐり日本と戦争したのも、太平洋→インド洋→アラビア海の中東への海上ルートの確保のためです。
その戦略は、カラープランと呼ばれ、仮想敵国は色で呼ばれていました。日本はオレンジです。
対日戦略は19世紀末から、「オレンジ作戦」として、太平洋戦争まで在り続けました。
こうしたしたたかな準備に日本が、挫折するのは決まっていました。
アメリカのフロンティアスピリッツは、「西へ、西へ」アメリカ大陸を横断し、太平洋を超え、インド洋、アラビア海へ向かっていたのです。
これは「とんでも論」ではなく、僕が大学時代に、国際地域研究―アメリカ現代政治の中で学んだことです。話が少しそれました。

つまり「日米安全保障条約」という、日本国民がすでに受け入れて久しい体制の中で、これを隠れ蓑にして、アメリカの中東戦略の最大の協力者として日本を変な方向に育ててしまったわけです。
すでに「日米安保」は、「日米同盟」の下に沈み切っています。「日米安保」で担保された沖縄米軍基地ですが、「普天間基地移設日米協議」の中でこんな話がありました。

「米軍基地は、沖縄でなければいけないのか?」という問いに、アメリカ側の答えは「そこに基地があるから」と答えたそうです。
「思いやり予算」でたっぷりお金を出してもらっているし、気候もいい。遊ぶところも充実している。だから沖縄がいい。この程度らしいです。
「防衛面で沖縄のことを心配している」という本土の世論に対して沖縄の人は「もう結構です」と言っています。
沖縄の人たちは、在日米軍(海兵隊)の目的が、沖縄の防衛だとか、「日米安保」のためにだとか、思っていません。中東戦略が目的であることを、身近に見て良く知っているんですね。
(沖縄の報道は、メジャーメメディアよりも、ずっと詳しく真摯に書いています。沖縄の米軍基地問題を知るには、朝日だとか読売などではだめです。琉球新報や沖縄タイムズを読むべきです)実際沖縄から、イラク、アフガンに行っているわけですから。過去にはベトナムに行っていた。

すでに現状は「日米安保」の範疇ではなくなっています。

さらに対日交渉にあたっているキャンベル国防次官補は
「事実は、日本政府が、沖縄以外で海兵隊のプレゼンスを支える基盤提供が政治的に不可能だということだろう。日本側の政治的事情と米側の作戦上の理由を混同してはならない」と言っています。

つまり、沖縄の米軍基地は、日本の国内政治の問題なんです。

「米軍にとって沖縄の戦略的位置が好都合だから」という理由を金科玉条のごとく唱えてきた日本の防衛省の言い分と異なります。
ここで官僚と自民党が、いかに国民をだましてきたかということが分かります。

さらに「仮に日米政府が北九州や四国なりに軍事インフラを提供すれば、それへの移駐は可能か」という防衛庁(当時)側の問いに対してキャンベルは「当然だ。沖縄以外にそのような場所があれば、われわれは瞬時に移駐を決断するであろう」と応じています。

こんなことは知らなかったですよね。でも沖縄の新聞は伝えています。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152829-storytopic-53.html

これまで私たちは、「海兵隊は台湾有事や北朝鮮の脅威に対して必要な抑止力であり、戦略的に見てどうしても沖縄に位置しなくてはならない」という説明を、さんざん聞かされてきました。それが米軍側の強い要請であるということも、重ねた上でずっと聞かされてきました。
でもそうじゃない……沖縄に基地は「日米安保」上は、もういらないんです。
沖縄の米軍基地問題は「日米同盟」上の問題に、いつのまにかすり変わってしまったわけです……
知らないって怖ろしいことです。

本質から乖離したまま、「普天間基地移設問題」が騒がれています。
メジャーメディアから「日米同盟」の文字が、移設問題に絡んで出てきません。
鳩山首相や小沢幹事長の頭には、もちろん入っています。だから選択が難しい。
要素が入り乱れているからです。沖縄の人にこれ以上負担をかけたくない。これは選挙公約でもある。
しかし、防衛省(官僚)と自民党が長く作ってきた、沖縄への米軍基地集中化政策の構図を崩し、県外へ移設するほど、本土の世論も体制もできていない。
さらに「日米同盟」としては、(アメリカの中東戦略)としては、沖縄よりも佐世保港に近い長崎県大村自衛隊基地が望ましい。

体制を改革する。日米関係を対等にすることは、時間がかかります。
その上体制にはびこる既得権益集団(自民党、官僚、一部の財界、メジャーマスメディア)の抵抗が強く、なかなか前に進みません。
鳩山政権がやろうとしていることは、自民党政権がやってきたことよりもずっと国民の利益になる正しいことだと思っています。
ですから、メジャーメディア情報を鵜呑みにせず、本質から乖離することなく視線を注いでほしい……
さらに言えば、メジャーメディアが伝えていることが正しいという幻想は捨ててほしい。捨てなければ、ますます本質と乖離する。そんなふうに思う今日この頃です。


以下はアメリカ民主党の対日政策に大きな力を持つ、知日派の大御所ハーバード大学教授、ジョセフ・ナイが、ニューヨークタイムズに寄せた論文です。この論文は、日本側への重要なメッセージとして深い意味が含まれています。日本では、1月8日に第一報が朝刊に要約として記載されたにも関わらず、メジャーメディアは、その後まったく扱わなくなってしまいました。
なぜなのか……
ぜひ読んで、考えていただきたい。


《日米同盟は、基地移設問題を超える重要性を持つ。(ジョセフ・ナイ)》
http://www.nytimes.com/2010/01/07/opinion/07nye.html?ref=opinion&pagewanted=print

東京から見ると日米関係はまさに危機に直面している。
足下の問題は、沖縄にある米軍基地の移設交渉をめぐる外交上の膠着状態だ。単純な問題のように見えるかもしれない。しかしこれは米国の最も重要な同盟国の1つとの間に深刻な亀裂(rift)を招きかねない。
私が10年以上前にペンタゴンにいたときに我々は沖縄に軍を配備する負担を減らす計画に着手しはじめていた。日本の米軍の4万7000人の半分以上が沖縄に駐留していた。
そして普天間基地には、宜野湾という人口密集した都市に近いという固有の問題があった。
何年にも及ぶ交渉の結果、日本政府と米国政府は、2006年に基地を沖縄のそれほど人口が多くない地域に移動させ、2014年までに、8000名の海兵隊を日本からグアムに移転させることに合意した。
この計画は、昨年夏に、日本国民が、過去半世紀この国を支配してきた自民党に代わって、民主党を政権につけたため突如危機に瀕することになった。
ペンタゴンは、鳩山首相が、10年以上もかけた日米両国の交渉結果であり、今後の海兵隊の予算に大きな影響を及ぼし、再編を余儀なくさせるようなこの合意を破ろうとしていることを心外にに思ったとしても当然だ。
ロバート・ゲイツ国防長官は10月の訪日の際に、不快感を隠さず、計画の再検討を、「非生産的」と呼んだ。
11月に来日の際に、オバマ大統領は普天間問題を検討するための政府高官による協議に合意した。しかしその後、鳩山氏は、再移転についての最終決定は少なくとも5月まで延期すると発言した。
ワシントンの中に、日本の新政権に対して強硬姿勢を取りたいと考えているものが存在することは、驚くにはあたらない。しかし鳩山氏をアメリカ政府と、アメリカ人に対して大幅な譲歩を行った場合には連立政権からの離脱ありと脅す、ちっぽけな左翼系政党(参議院における過半数が彼らとの連立に依拠している)の間の板ばさみにすることは我々にとって賢明とは言えない。さらに問題を複雑にするのは、普天間の将来に対して沖縄県民の意見が分かれていることである。(contentious)
鳩山氏が最終的に基地移計画に関して譲歩した場合でも、我々は、日本に対してより忍耐強く、戦略的なアプローチを取る必要である。我々は、いわば、二次的な問題のために我々の東アジアにおける長期的戦略に脅威を与えている。
新しい政府が提起しているのが普天間問題だけではないことにも留意すべきだろう。新政権は、より対等な同盟関係、中国との関係の改善、東アジア共同体の設立などの発言を行っている。しかしこれらのどれもが内容が明らかとはいえない。
私が1995年にペンタゴンの東アジア戦略報告の策定に関わった際には、この地域には米国、日本、中国という3つの主要な政治権力が存在し、日本との同盟を維持することが、中国がどんどん大きくなる環境自体を形成していくという現実認識から出発した。我々はWTO加盟を促すという形で、中国を国際システムの中に統合したいと考えた。しかし我々は、将来のより強大化した中国が攻撃的になる危険に対するヘッジが必要にもなったのだ。
1年半に及ぶ広範な交渉の後に、米国と日本は、我々の同盟関係は、冷戦時代の遺物というよりは、この地域の安定性と反映の基礎であるということに合意した。ビル・クリントン大統領と橋本龍太郎首相が1996年の東京宣言の中でこの点を確認した。この「統合するが、ヘッジもする」という戦略によってブッシュ政権時代も継続してアメリカの外交政策が導かれてきた。
今年は、日米安全保障条約の50周年である。今回の基地をめぐる論争が、双方に相手に対する厳しい感触や、さらには日本における米軍兵力の削減につながるのを放置するならば、両国ともに大きなチャンスを逃すことになる。長期的な難問である中国が存在し、核武装した北朝鮮が明らかな脅威を提起しているこの地域における最良の安全保障は、ひきつづき米軍の存在であり、日本が維持費用に対する寛大なサポートをしているのだ。
時折、日本の官僚は、自国の官僚主義的な膠着状態を解決するために、暗黙に外圧を歓迎することがある。しかし今は、このやり方は妥当ではない。ここで米国が新しい日本の政権を軽んじるならば、日本国民の間に敵意を生み出すことになる。すると普天間での勝利は犠牲が多くて引き合わない勝利となってしまう。(以上)



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