■ オシムJAPAN、攻守の特徴 |
初戦カタールに引き分けた時は不穏なムードもありましたが、UAE、ベトナムと下し、結局、グループリーグ1位で通過したオシムJAPAN。この3戦での得点と失点は次の通りです。得点 8/ 失点 3
ベトナム戦、試合開始早々に許した失点はアクシデント的な感じもしたのですが、カタール、UAEでの失点は、精神面やチームとして「いかにして試合を締めるか?!」という問題があるように思えました。しかし、個人的には、以前からオシムJAPANの守備面のおいて一つの疑問がありました。それは「ボランチの守備」です。まずは、この疑問点に関してきちんと説明していきます。
◆ 攻撃面の特徴
オシムJAPANのサッカーはポジションに大きく依存することなく、二の矢三の矢と選手が動き攻撃をするのが特徴と言えます。例えば、チェルシーなんかは、ドログバにボールを入れてしまえばなんとかしてくれる的な側面もないとはいえません(大雑把に言ってますので誤解のないように)
つまり、オシムJAPANにおいて攻撃の特徴は、一選手の能力に依存することなくチームとして攻守を行う意識・狙いが高いと思うのです。また、選手が動いたスペースに他の選手が移動し・・・というような具合です。
◆ 守備面の特徴
オシム監督就任時、現代のトレンドから逆行するようにマンツーマンディフェンスで戦う事が多かったのが特筆すべき特徴でした。今回のアジアカップではゾーンディフェンスを採用していますが、ライターの西部氏の言葉を借りれば「戦術は古いか新しいかよりも、常に効果的かどうかで論じるべきもの」であるのですが、個人的には当初マンツーマンを採用していた別の理由があったと思っています。以前、雑誌かTVのインタビューでオシム監督が「日本人(マスコミ等)は責任の所在を明確にしない」みたいな発言をしていました。マンツーマンの場合は、個々の選手のマークする相手が基本的に決まっています。つまり「個々の守備意識」を植え付けるという狙いです。
但し、今回のアジアカップにおいては、ちょっと違って、この気象条件下でマンツーマンをするよりもゾーンで守った方が効率的だと考えての判断なのだと思います。
■ ポゼッション志向とボランチの守備問題 |
前置きが多少長くなりましたが、ここからが本題「ボランチの守備」についてです。
まずは、ベトナム戦の2つの動画をご覧下さい。
◆ ボランチの守備の問題
【左は前半18分頃】【右は前半4分頃】
ちなみに、映像が粗いので選手が誰か分からないと思いますので、下の画像で各シーンごとの選手名を確認して、映像をご覧下さい。
【左動画詳細】
1.鈴木がボールホルダー | 2.遠藤へのパスが潰される |
3.ベトナムのカウンター(鈴木が対応) | 4.DFラインが左サイドへシフト |
5.ベトナムのシュートが枠を外れる | |
【右動画詳細】
1.中村憲剛がパスを出した後、サイドへ移動 | 2.ベトナムのくさびのパスに中澤がプレス |
◆ 攻守のバランスが課題
基本的にフォーメーションに沿ったポジションに依存することなくプレーするのがオシムJAPANのシステムです。しかしながら、その攻撃面の特徴と守備面の特徴が必ずしもバランスが取れているとは言えないのが現状です。
攻撃時、空いたスペースへ移動する選手、他の選手は次の動きをします、そして再び他の選手が動く・・・この動きの中で、W中村や遠藤がパサーとしての能力を発揮して最後のアクションへの崩しに入ります。
ところが、この過程でボールを奪われた時、前掛かりにポジションを変えて動いた選手が空けたスペース・・・ボランチ・エリア(便宜上こう表現してます)を突かれてカウンターを喰らっているのです。事実、上記動画以外の過去の試合でも、何度かありました。
カタール戦のFKを与えた前の局面もそうですし、UAE戦も同様です。また、コロンビア戦、サウジ戦なんかでも書いていました。つまり、現時点で、この攻撃面の特徴と守備面の特徴のバランスが取れていないと思いますね。
今回のアジアカップグループリーグでは、相手チームが日本のボランチ・エリアを上手く使えなかっただけだと思います。但し、上記画像のような形であれば、イランなんかはきちんとフィニッシュまで持っていく可能性もありますし、こういう穴みたいなものを強豪国は、見逃さないと思うのです。
オシムJAPANの攻撃面の特徴が悪いというのではなく、やはりこの攻撃面の特徴はオシムJAPANのカラーでしょうし強豪国と戦う事を想定してチームを構築していると思うのです。しかし、その煽りを受けて守備面で一つの問題が起きているのは明確です。だからこそ、チームとしてシステム的に何か決め事を作るとか、選手の動きの質を改善するとか、選手個々がリスクに対する意識を高めるとかする必要があると思うのです。
◆ 変えが効かないプレーヤー鈴木をどう使うか?
ベトナム戦は[4-4-2]でした。(便宜上)ボランチは鈴木啓太と中村憲剛でした。
鈴木は守備的意識が高くこのチームにとってなくて変えの効かないプレーヤーの一人です。ベトナム戦に限らず、どの試合でも持ち味のチェイス&チェックで危険な局面を潰していました。
ところが、攻撃時になると、タイミングを見計らって前へ動き出します。但し、そのほとんどがサイドへ動いているのです。これは鈴木が問題であるというわけではなく、むしろ、先に挙げたオシムJAPANの攻撃の特徴によるものでシステム的な問題とリンクしているのです。日本はグループリーグの3戦をポゼッションを高めて、ピッチをワイドに使いサイドから崩すことを一つの形としていました。
例えば、駒野なんてウィング並みの位置まで上がったりしています。(これも駒野が悪い訳ではない)
そこで、仮に日本の左サイドがボールサイドだったとすると・・・必然的に鈴木はその駒野の上がった裏のスペースを意識して移動します。これはポジション的なバランスと共にオシムJAPANの攻撃の特徴で、さらに守備面でのリスクマネージメントによるものです。
◆ CBとの連携
次に、そうなると必然的にセンターのフィルターがなくなる危険性があります。上記画像で中澤がベトナムのFWにプレスにいっていますが、1トップを残しているなら2CBでも構わないでしょうけど、2トップが前線に残っているような場合では、後方は3人必要でしょう。(日本のDF陣と世界を視野に入れ、1人余らせるリベロ的発想をすれば)
「阿部、中澤、鈴木(or 中村憲剛)」、「阿部、中澤、加地」(この場合、加地は央に絞り気味にポジションする)
ただ、現時点でここまでの細かいシステム的な問題を指摘するのも酷な感じもしないでもないのですが、その一方でさすがにベスト8となるとこれまでのようにはいかないと思うのです。ベスト8で対戦するオーストラリアなんかはきっと狙ってくると思います。
◆ 前線の渋滞、解消?!
最後に、昨年オシムJAPANで前線が渋滞する傾向がありました。しかし、今回のアジアカップの3戦を見る限り、攻撃面において、相手の実力の問題は多分にありますが、サイドを変えたり、再ビルドアップをしたりと工夫・変化が見られます。この気候条件下でプレーしたことにより、昨年のような極端なリアクション志向からアクション志向(ポゼッション志向)になり、チームの攻撃面のバランスが良くなったのは、なんとも皮肉な話です。
◆ 長期的には、選手の起用方法の変更もある?
今回の記事の補足。
書いていたら、文章の構成が訳分かんないことになったので、最後にもってきましたが。中盤の守備の問題に関しては、根本的に選手起用を変えるってのもあります。中村憲剛と遠藤の守備の意識は今回気づいたのですが、いささか問題のような時があります。
ベトナム戦、遠藤が自分のミスで奪われたボールを追わなかったシーンがありました。この辺は、欧州でプレーする中村俊輔、高原とは大きな違いです。上記左動画で、中村俊輔がDFラインの近くまで追っています。中村憲剛は、右サイドの加地より自陣に近い位置にいたにも関わらず・・・守備の意識が低いです(UAE戦でもあった)
今回のメンバーとは別に長期的な視点で見れば、もう少し守備的な選手をあと1、2人はスタメンで入れてくる方法もあるかもしれません。この辺は、オシム監督の中で、手探り状態なのでは?と思っています。つまり、日本とW杯で対戦する国との力関係を日本の選手を中心に考えた時に、どれだけやれるか?どれだけ成長するか?など考えていると思います。9月かな?欧州遠征でスイス、オーストリアと対戦しますし、8月下旬にはカメルーンともやるようです。この辺の試合でのメンバー(欧州組は別として)で推し量ろうとするかもしれません。分かんないですけどね・・・(笑)
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守れないし、攻撃も組み立てられないみたいな。
2人のコンビ次第かな~。個人的な好みは稲本ヤット
稲本小野 今野ナオヤ 名波稲本でした
現在、鈴木はオシム監督からの信頼度がものすごく高いですよね。私も彼は良い選手だと思いますし、特に落選したアテネ以降、リスクマネジメントの質(読みの鋭さや相手の攻撃を遅らせるための動きなど)が格段に上がったように感じています。
ただ、私は今後今野のボランチも数試合続けて観てみたい気がします。ビルドアップの際のパスセンスは鈴木にやや劣りますが、やはり一対一でクリーンに相手からボールを奪う能力は非常に高いですし、運動量も非常に高いものを持っているからです。
どちらが良いかという意味ではなく、興味として、今野がボランチの場合、どういったチームができあがるのか(チームがどう変わるのか)を観てみたいです。
「攻撃面の特徴と守備面の特徴のバランス」攻撃の連動性はこの大会で見せてもらっています。
次は守備とのバランスですね。
中村憲剛と遠藤の守備意識。次の試合はそこも注目して観戦していきますね。
僕も中村(憲)は気になってました。
ボールさばきはまだいいとして守備の意識が無さすぎのような。
今野をボランチでぜひ使って欲しいです。パサーはいっぱいいますから。
欧州組を呼んだあたりから暑さに対応したアジア杯向けのシステムに切り替えてきた気がします。
上の画像3などを見ると鈴木がチェックに言ったときはケンゴが底に入って組み立てる感じみたいですね。
相手が2トップでも(プジョール)中沢がチェックに行って(マルケス)阿部がオフサイドを取れれば良しという考えだったのでしょう。
この二人がバルサ並みにラインを上げるとプレスも効いたことでしょう。
メンバーが攻撃的過ぎるので、
得点より失点を気にするなら、ケンゴを橋本、遠藤を羽生、FWを山岸・佐藤、俊輔を大田・水野に変えてくるでしょう。
ノックアウト方式で強い相手になってどういうメンバーで戦うのか注目です。
こんばんは、はじめまして。
方法論として中央(ボランチ)を厚くする為に守備能力に秀でた選手を使うという手もありますね。阿部ならフィード力もあると思うし。もし、闘莉王が今回のメンバーに入っていたらどうなっていたんだろう?ってのは、ずっと思っています。
今回オーストラリアと対戦しますが、中澤&闘莉王のCBならば、高さの怖さもないと思うので、そうなると戦い方ももうちょっと違う側面での対策になったと思いますしね。
今後もどうぞよろしくお願いします。
こんばんは。ボランチのコンビは色々と試すのも良いと思いますね。今後は、徐々にそういう起用もあるんじゃないでしょうか?
こんばんは、コメントありがとうございます。
私も今野のボランチは見てみたいですね。
コロンビア戦かな?ちょっと出たような記憶がありますけど。
要は、ボランチの組み合わせってチームとしてのバランス
次第だと思うんですよね。
例えば、ミランはちと違うけどガットゥーソとピルロとかカラーの違う選手を並べるのか?とかね。
まぁ、新右衛門さんは欧州サッカーに詳しいと思うので、細かく言わなくてもお分かりだと思いますけど(^^ゞ
こんばんは。
あまり、このボランチの守備の問題を指摘している人っていないのかな?って思っています。
攻撃面は、やはりいい形でフィニッシュ行けてますしね。
でも、これからの決勝Tについては、守備面は非常に重要になってくると思っています。