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詩のような短編集、J.S.ボルヘス:パラケルススの薔薇

2011-09-15 23:23:50 | 本たち

短編4作品とボルヘスへのインタビューが、収録されている本。
いずれの短編も、非常に美しく、絵画的であり、ストーリーは詩的気品に溢れている。

この中の"青い虎"が、ことに好きだ。
青い虎の幻想にとりつかれ翻弄されるが、果たしてそれが不幸なことだったのかと。
幻想を糧に生きて行けるならば、大いに望むところ。
ある種の人間には、幻想が現実よりも重要ということもある。
見方を変えるならば、幻想と現実の区別がどうやったならつけられるのか、何に重きを置き、自分にとっての真実とはなになのか、定かなことはいえないだろう。
ともあれ、幻想を幻想のまま崇め奉るのか、それとも、幻想に飛び込んでしまうのか、どちらが正しいとも悪いとも、決めるのは個人次第なのだ。

ボルヘスは、自分を三面鏡に映し出したときに味わう、多重多層な鏡像に不安と不思議さを見出した。
現実の不確かさ。
それがひいては、心の多重多層な面との問いかけになり、迷宮のような困惑と魅力に満ちた作品を生み出したのだと思う。
だが、もしかすると、自分がボルヘスの術中に嵌っているだけなのかもしれない。
それも構わない、むしろ積極的に迷宮を楽しみたいとすら思っている。


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