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『モラン神父』と『トーマの心臓』

2013-10-15 23:28:29 | 映画
1961年のジャン=ピエール・メルヴィル監督で、ジャン=ポール・ベルモントとエマニュエル=リヴァ
主演『モラン神父』は、モノクロ作品で抑えられた演出が、哀しく切ない物語をいっそう深みのあるものにしている。
愛し合いながらもどうにも変えることのできない運命を覚悟を持って受け入れる人の孤独が、やりきれない。
萩尾望都原作のマンガ『トーマの心臓』は、潔癖ゆえに自らの罪深さを許せずに全てを拒み続ける少年ユリスモールは、彼の心の穴を埋めるために自らの命を差し出したトーマの愛を受けいれるまでにどれほど迷い苦しんだことだろう。
やがてユリスモールを取り巻く多くの優しき友人に支えられて心の鎧がはずれ、全てを包み込んでいる大きな愛の存在に気付いて神を感じ悔い改めることができるのだが、誰一人として心が満たされないという切なさを残す。
どちらも人とは心の充足を得られない欠けた存在であることを突きつけてくる。
それは、皮肉なことに”神”ですら埋め合わせはできない。
なんとも哀しく、心臓がキリキリと締め付けられることよ。
では、救いはあるのか。
「また、会おう。」
絶望にくれることなく”希望”を持って生きる、それが人に与えられた唯一の救済と、パンドラの箱に残っていたものだ。

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