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喫茶店、カフェの思い出。たぶん其の一。

2011-02-07 23:04:38 | 趣味たち
煙草は嗜まないが、コーヒー・紅茶・中国茶・日本茶・ハーブティー、ワイン・ビール・ウィスキー・中国酒・日本酒、これらの嗜好品は、心の栄養として欠かせないもの。

今回は、特にコーヒーに関係する喫茶店の話。

喫茶店との印象に残った初めての出会いは、小学生になるかならないかの時。
札幌の旧道庁か時計台あたりにあった喫茶店で、オーク調の店内には振り子式の掛け時計が壁一面に飾られ、白熱灯の暖かく黄味を帯びた光が、店内を明るすぎることなく照らしていた。
まだ子供だったからクリームソーダをたのんだが、母とその妹はコーヒーをたのみ、目の前のテーブルに置かれたコーヒーのカップから立ち昇るなんともいえない香ばしい香りで、喫茶の魔力にかけられてしまった。

徳川御三家の一つ、尊皇攘夷派による「桜田門外の変」「天狗党の乱」でも有名な、日本三名園・偕楽園のほど近く、閑静な住宅街に、スペイン風の喫茶店があった。
白い壁、テラコッタの屋根瓦、木のタイルを敷き詰めた床、アーチ型の間仕切り、室内から続くテラスには大きなケヤキや様々な花木があり、鋳物製のガーデンテーブルセットが置かれている。
なかの家具調度は、重厚なスペイン製で統一され、テーブルと椅子のセットは全て趣向を変えた念の入れようだった。
月に何回か、ギターやアンサンブルのミニコンサートを催していたが、残念なことに楽しむ機会にめぐり会えなかった。
子供のときから大人になるまで、幾度となく訪れた。
子供のときには、「兼高薫世界の旅」さながらの異国情緒溢れる店内の見せ方に、ヨーロッパへの憧れを強く抱いた。
高校生の終わりごろ、ここで初めてエスプレッソに出会い、コーヒーの新たな姿に衝撃を受けた。

中学生の頃か、父がとある喫茶店のロゴが焼き印されたコーヒーミルを買ってきた、自家焙煎のコーヒー豆とともに。
コーヒー豆を自宅で挽いてドリップする工程を初体験した。

ちょっと早すぎたかもしれないが、高校生のころには、一人でぶらりと喫茶店にいって、そこに漂う文化的大人の雰囲気を鼻腔から控えめにしかしおもいきり吸い込んだものだ。
そのときからしばらく、しばしば訪れたその店も、自家焙煎のストレートコーヒーとオリジナルブレンドが売りだった。
いまでは、地元ブランドとしてビジネスを拡大し成功している。

また、30平方メートルくらいの小ぶりな店舗で、昭和の色を濃く残していた喫茶店もある。
チェーン店らしからぬ雰囲気と店の人の押し付けのない職人的感じがとても気に入って、本を片手にコーヒーをゆっくり味わった。

それらの喫茶店も、一つを除いて、みな消えてしまった。
喫茶文化が廃れてしまった。
おしゃれな外資系大手チェーン店のせいだけともいえない気がする。
文化の担い手と対象者が、若年層にシフトしたからだろう。
煙草はまったく嗜まないが、コーヒーと紫煙のくゆる喫茶店は、芸術を愛する大人たちの社交の場、癒しの空間だったはず。
文化に憧憬を抱いた若者たち、人生と芸術を語る言葉を持った幅広い年齢層の大人たちが、交わる機会を与えた喫茶。
文化は、異種との出会いの衝撃で躍進する可能性が高い。
人と人が、直に触れ合える場所のひとつ、喫茶店、どうかこのよさをもう一度思い起こして欲しい。